The Sweepers   作:インノケ

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ミッションブリーフィング

ユウ、先頭に立つ


出撃編
14話


 フォルテンツィアの特徴として、直接戦闘エリアに行くことができないというのが挙げられる。行きもそうだったが、一度セントラルエリアへ行ってから他の戦闘エリアへ行く必要がある。僕が向かおうとしている宇宙エリアもまた、セントラルエリアから上がるのだ。現在、魔女の箒の母艦ウェルナーは宇宙軍の基地を間借りして僕の到着を待ってくれている。僕は彼らと合流し、暗礁宙域の警邏に入る手はずになっている。各NPCバトルエリアにはそれを統括するスイーパー司令部が存在する。この暗礁宙域ではグワジン級戦艦グワデンに司令部が置かれており、ジャックを介して頼み込んだことにより実現したのだ。基地に着くと、はやる気持ちを抑えられなかった僕は真っ先に魔女の箒の待機室へ向かう。ドアの前に立ち深呼吸を一つしようとした時だった。

「来たわねんユウ君!」

後ろからまるでラリアットのように太い腕が首に絡みつき、そのままきつく抱擁された。

「モトナリさん! あ、首折れちゃいますよ!」

「一か月ちょっとぶりなんですもの! このくらいいいでしょ」

まるでプロレス技を極められているかのようになりながら再会を喜ぶ。端末をかざしドアを開けると、中でも懐かしい面々が待っていた。

「お久しぶりですわ、ユウ」

「ユウ……かっこよくなった……?」

真っ先に迎えてくれたのはビリーとジュウザブロウだった。こうして再会を喜び合える仲間がいるというのは、このGBWFの中でこんなにも嬉しいことはないと改めて認識させられる。そしてもう一人、会いたかった人がいるのを僕は見つけた。

「ゲオルグさん!」

「ユウ君、フォルテンツィアではいろいろ学べたかしら?」

壮年風の顔に刻まれたしわがにっこりとほほ笑むことでより深くなった。いつものやさしい笑顔である。

「無事でよかったです。本当に良かった」

「あたしたちは魔女よ? そう簡単にくたばったりはしないんだから」

やさしい笑みは茶目っ気を帯びたものに変わる。撃墜判定を受けた後、機体から脱出したところを他のメンバーに救出されたため無傷で済んだそうだ。MSと比べて生身の肉体は非常に小さくあたり判定もそれに準じるため、狙って殺そうとしない限りは攻撃が当たることはそうそうないのだ。一通り挨拶を終えると、僕は本題に移った。

「今回の一連の事件についてですが、概要は多分皆さんも知ってると思います。そこでグワデンの司令部はこの事件の対策班を編成し、討伐作戦を発令しました。作戦目的はミュータントを操作していると思われる対象、A標的の確保、又は撃墜です」

待機室に設けられたモニターに自分の端末をつなぎ、司令部からの指令を映しだす。これが僕に与えられた指令だった。頼み込んだ際、司令部は発起人である僕を対策班の班長に任命、さらにいくつかのクランがこの対策班に回されることになった。

「本作戦は司令部名義のユーザークエストとなっており、対策班はそれの参加者という形になります」

ユーザークエストとは運営から提供されるローカルクエストやクリアクエストとは違い、プレイヤーが目標と報酬を設定するクエストのことである。GBWF内では契約の代わりにも用いられるものだ。次にモニターには三隻の艦が表示される。

「作戦旗艦は魔女の箒所属の本艦ウェルナー。また、デラーズ・フリートよりムサカ級ドライツェーンとサテリコン3よりアストラーザ級マハールが参加します」

「よく三隻も出せたわね。ただでさえ人がいない宙域なのに」

ゲオルグの言う通りこれは破格の戦力だ。ジャックが言うには華々しい活躍の少ないデラーズ・フリートがこれを機に目立った作戦をしたかったのだろうとのことだ。

「各艦は基地を出て、暗礁宙域内の警邏に入ります。別エリアで操作ミュータントが発見された場合、その情報は司令部を介さず直接ウェルナーに届くようになっているので、報告がき次第作戦は第二段階に入ります」

モニターにはエリアマップと各艦の警邏ルートが表示される。作戦に参加していないクランからも情報提供が受けられるようになっており、ウェルナーへとホットラインが敷かれているのだ。

「第二段階では、A標的を囲っているであろうミュータントの排除に入ります。情報提供によると、操作ミュータントには2種類が存在しています」

モニターにはA標的と書かれた点の周りを二重の円が囲っている図が表示される。これはリクからの情報だ。

「まず外側ですが、これはA標的を敵と見なさないように書き換えられており、それ以外は通常のミュータントと変わらない個体群。これを外縁個体と呼称します」

つまり少ない手間で調達できる兵士だとリクは言っていた。ミュータントはもともとプレイヤーを攻撃するようになっているので、操作する側からすれば自動迎撃装置のようなものだそうだ。

「そして内側のA標的と最も近い個体群、こちらを親衛隊と呼称します。親衛隊は常時A標的からの操作を受けており、特に強力な個体群です」

こちらが彼の言っていたビットMSに当たるものだ。ウィルスの効果範囲をうまく使った戦術だとわかる。

「艦砲射撃の後、デラーズ・フリート、サテリコン3の両小隊には外縁個体の排除を行ってもらいます。一定数の撃破が確認されたところで、作戦は第三段階へと移行します」

モニターには先ほどの図の拡大画像が表示される。

「第三段階では僕たち魔女の箒の小隊は親衛隊の撃破、及びA標的の捕獲に移ります。多数の親衛隊の操作をA標的が行っているので魔女の箒のかく乱戦術が有用と判断されたため、このような布陣になりました」

一通りしゃべり終えて一息をつく。人前で話すことすらあまり経験がないのに、突然任命された班長だ。緊張しないわけがない。それでも、役に立ちたいと思ったからここにいるのだ。責任は果たさねばなるまい。

「質問等はありますか?」

「よろしいかしら?」

ビリーが立ち上がる。

「もしA標的とその取り巻きが作戦非参加クランの区域にいて、既に攻撃が開始されていた場合はどうするのでして?」

「こちらに報告が上がり次第、僕たち対策班が急行します。戦闘中のクランに関してはこちらから司令部へ連絡、その後該当クランには作戦への参加が司令部より命じられます。その時点で対策班の指揮下へと編入、外縁個体の掃討部隊として戦闘に当たってもらいます」

面倒なようだが、作戦というからには報酬が発生する。あらかじめ全クランに作戦参加をさせるのは司令部の懐事情を考えると不可能なのだ。

「他に何かありますか」

「親衛隊について……特徴みたいのが知りたい……」

僕らが直接戦う相手のことだ。気になるのは当然だろう。

「親衛隊ですが、まず構成機体がお高級量産機であることが予測されます。おそらく親衛隊は現地調達ではなくA標的があらかじめストックしていたものを使用しています。ミュータントの中でも最上級の機体が投入されているでしょう」

リクによれば、僕のダギ・イルスもそうした機体の一つだろうとのことだった。

「そして、これらの個体はA標的が自ら操作していることから通常のミュータントとは全く異なる個体といえるでしょう。優先順位や兵装選択などはA標的からの直接の指示を受けていると思われます。また、数を減らすほどに動きが正確になっていくことも考えられます。これは操作個体数の減少によりA標的の負担が軽くなることから予測されます」

「ん……わかった……」

「他に質問がなければブリーフィングはこれまでとしますが」

「ユウ君は作戦中どこにいるのかしら?」

ゲオルグが立ち上がり、質問をする。

「僕は、自分の機体で攻撃隊の指揮をとります。おそらく一番索敵範囲が広いので、それを活かせるかと」

僕がそう答えると、ゲオルグはこちらの目をしっかりと見てから、ふっと微笑んだ。

「なんだか思った以上にたくましくなったわね。任せても大丈夫かしら」

「……任せてください。やりきってみせます」

彼らからの恩に報いるためにも、僕はこの作戦を成功させると誓ったのだった。

 

 数時間後、ドライツェーンとマハールのクルーとのブリーフィングを終え僕はゲオルグとウェルナーの艦橋にいた。乗機を失ったゲオルグはここで魔女の箒の直接指揮と艦の攻撃を担当することになっている。

「肩の力を抜きなさい。みんながついてるわ」

ゲオルグが僕の緊張を見抜いたのか声をかけてくる。さすがは年長者。いや、指揮官としての長い経験がそうさせるのだろうか。彼がついていてくれるだけで緊張がほぐれるのだから、これほどの指揮官はそういないだろう。いつか彼のようになれたら、そう心でつぶやき時計を確認する。3、2、1……。

「これより作戦を開始します。作戦名は『コッペリウス作戦』。全艦、発進してください!」

 

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