The Sweepers   作:インノケ

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作戦始動

ユウ、出撃する


15話

「これより作戦を開始します。作戦名は『コッペリウス作戦』。全艦、発進してください!」

 号令とともにウェルナーのエンジンがうなり声をあげる。わずかな振動の後、窓から見える星々が流れ出す。ドライツェーン、マハールの両艦も始動したようだ。レーダー上ではウェルナーに続いて動き出す点が表示される。まずはA標的を見つけ出すこと、そうすれば作戦は第二段階に移る。なんとしてもやり遂げるのだ。決意を新たにすると、環境のモニターに二つの顔が映る。ドライツェーン艦長のアンドレ・グレゴリアスとマハール艦長のユウキ・ダイゴだ。どちらもまさに艦長といった威厳ある風貌の男性である。

『マハール、発進しました。魔女の皆さんとご一緒で来て光栄ですよ』

『同じくドライツェーン、発進した。ミヤナガ君、よろしく頼むよ』

「はい。皆さんのお力、頼りにしています」

こういった挨拶をするだけでも士気というのは上がるものだ。それを承知で両艦長は通信を入れてきたのだろう。いろんな人に気を使わせているなと思いながらも、今はそれがありがたかった。

「ウェルナー、ドライツェーン、マハールの三艦は作戦通り操作ミュータント頻出地域への警邏に向かいます。A標的の発見後はこちらから段階の移行を通達します。いつでも出せるよう、準備をお願いしますね」

『了解した』

『了解です』

モニターから二人が消え、艦橋は静まり返る。あとは待つだけだ。どうか、うまくいきますように。

 

 報告が飛んできたのはそれから半日ほどたったころだった。

「ユウ君、ホットラインよ」

モニターに一人の女性が映る。

『ブロック23、スメラギ所属のハンナ・イェンです。挙動のおかしいミュータントを発見、現在交戦中です! 対応をお願いします』

「了解しました。スメラギはそのまま戦闘を続けてください。司令部へ連絡後、こちらの指揮に入っていただきます」

『了解』

モニターが切れると、僕はやらなければいけないことに取り掛かった。

「ゲオルグさん、司令部にスメラギの作戦編入の旨を送ってください。グレゴリアス艦長、ユウキ艦長、ブロック23で操作ミュータントが発見されました。ドライツェーン、マハールがブロック23に到着次第第二段階へ移行、MS隊を発進させてください」

『いよいよか。了解した』

『了解しました。急行します」

三艦は回頭後一路ブロック23へ向かった。

 

 20分ほどで僕たちはブロック23へと到着した。既にスメラギのMS隊が掃討に当たっているものの、観測された外縁個体は予測よりもやや多いものであり、思うように数が減らせていない。ときどき出てくる親衛隊によってペースも乱されじり貧のようだ。ドライツェーン、マハールのMS隊の出撃を確認し魔女の箒の各員もコックピットで出撃待機をしている状態だ。

「最悪、数が減らせなくても親衛隊から遠ざけてくれればなんとかなります。ご武運を!」

両MS隊に指示を飛ばし、コックピットの中で深呼吸をする。フォルテンツィアでフリーバトルをする機会こそあったものの、戦場で先頭に立つのは初めてなのだ。指揮をする時とは別の緊張に襲われる。すると、コックピットモニターにウインドウが開かれる。ジュウザブロウからの通信であった。

『ユウ……、大丈夫……?』

「大丈夫です。期待に応えてみせますよ」

自分を鼓舞する意味も込めてモニターにガッツポーズを決めると、ジュウザブロウが軽く噴き出す。

『ふふ……でも、がんばりすぎないように……』

「え?」

『初めにあった時と比べて……頼もしくなったけど……私たちを頼ってくれても……いいのよ……?』

鋭い目がすっと細くなり、笑顔でこちらを見てくる。魔女の箒はみんながやさしい。それでいて強いのだからなんという人たちだろう。僕は僕を宇宙に放り出したあの悪質クライアントに感謝すら覚えた。彼らに拾われて、彼らと肩を並べて戦うことができる。このデスゲームの中だからこその強いきずなを感じることができたのだった。

「ありがとうございます。でも、ジュウちゃんが僕を頼ってくれてもいいんですよ?」

「え……」

ジュウザブロウの目が今度は真ん丸になる。驚かせられたようだ。笑いながら心の中で、彼らのようになりたい。なってみせる。そうつぶやいた。

 

『ユウ君、外縁個体の数が規定数になったわ』

ゲオルグからの通信が入る。ついに来た。ここからが正念場だ。

「全作戦機に告ぎます。作戦はこれより第三段階に移行。できるだけ外縁個体を親衛隊から遠ざけてください!」

A標的が外縁個体から親衛隊を追加で抽出する可能性を考えるとこうした方がよいだろう。通信機に各小隊長の了解のコールが入る。次は僕たちの番だ。

「魔女の箒各機、順次出撃します。つづいてください」

僕は自分の機体をカタパルトへと運ぶ。自分の手で作り上げた、自分の戦いをするための機体。カタパルトのコントロールがこちらに移ったのを確認し、フットペダルを踏み込んで叫んだ。

「ミヤナガ・ユウ、ダギ・エクス。出ます!」

強烈なGに押されながら機体が猛スピードで加速し、宇宙へと射出される。ダギ・エクス、僕の新しい機体だ。バックパックを従来のものから上半分はクロスボーン・ガンダムのようなバインダーに、下半分はクラスターミサイルコンテナになったX型のものへと変更。ビーム・ライフルははメガ・ビーム・スナイパーライフルに。頭部も小改修を加えたものへと変更した。全機の出撃を確認すると僕は兵装セレクターからクラスターミサイルコンテナを選択、射出した。持てる限りの力で改修を加えたダギ・エクスはレーダーに既に親衛隊のMS群を捉えている。ミサイルの射出を待たずにセレクターから今度はメガ・ビーム・スナイパーライフルを選択し、構える。

「15秒後の発射と同時に攻撃開始です。準備してください」

『『『了解!』』』

通信が入ったのを確認すると、ライフルのチャージを始める。と同時にダギ・エクスのフェイスカバーが開き、デュアルアイと放熱用のスリットが露わになる。ジェネレーターを最大稼働させての一撃だ。この一撃で突破口を開き、親衛隊へと強襲をかける。放熱用スリットが金色に輝きを増し、デュアルアイが光を放った。引き金を引く。銃口から赤いビームの奔流があふれ出すと、向けられた先から大量の爆炎が挙がった。それを合図に魔女の箒のMSは戦場へと殺到した。確認できる親衛隊はおよそ30機ほど。先陣を切るビリーのスタークジェガンのミサイルが一斉に火を噴く。更に爆炎を超えてモトナリのビルゴがビーム・キャノンを発射する。迎撃に飛んできたズサやジムⅢの発射したミサイルごと焼き払うビームによって一直線上から敵が一瞬いなくなり、奥にA標的が確認できた。特徴的なシルエット。間違いない、ガンダムアクエリアスだ。しかしミュータントたちはその道をふさぐように集まり、迎撃を開始する。その迎撃をかいくぐってジュウザブロウのザクレロが拡散メガ粒子砲をばら撒きながら駆け抜けていく。ザクレロの追撃をしようとした個体をダギ・エクスとスタークジェガンのビームサーベルが切り伏せていく。標的が切り替わったのと同時に反転、前進してきたビルゴと入れ替わる。ダギ・エクスとスタークジェガンを追撃するために殺到してくる足の速いミュータント、ウィンダムやクラウダに待ってましたと言わんばかりのビルゴのビームキャノンが命中する。一回目のサイクルは成功だがここからが問題だ。操作ミュータントの一部が突如ビルゴに背を向けると後ろに向かって弾幕を張り始めた。ザクレロが戻ってくることを警戒した攻撃である。A標的からの指示を直接受ける親衛隊だからこそできる芸当であろう。しかし、それは既に予測された行動だ。後ろに下がっていたダギ・エクスはそのまま狙撃モードに移行、発射する。A標的の関心がこちらに移ったのか迎撃の半分がこちらを向くが、ダギ・エクスは射程外からの狙撃を行っているため命中させることはおろか捕捉すら適わない。薄くなった弾幕の中をザクレロがいくつかの爆炎を作りながら駆ける。これで倒せたのは4割ほどといったところだろうか。うまく戦術が機能しているものの操作ミュータントの動きがよく、一網打尽とはいかないようだ。再びスタークジェガンと攻撃をかける。高速で迫るスタークジェガンと複雑に飛びまわるダギ・エクスの両方をとらえるのは困難なはずだ。案の定、攻撃はどちらを狙ったともつかない明後日の方向へと向けられる。そういった機体を一機ずつ、スタークジェガンがライフルで撃ち落としていく。僕もダギ・エクスを走らせサーベルで肉薄するが、急にミュータントが逆噴射をかけいなくなる。空振りしてしまったところに通信とビームが飛んできた。

『ユウ! 危ないわ!』

見えたのは間近に迫ったヒートロッドとそれを遮ったビームキャノンのビームであった。

「ありがとうございます!」

通信機にお礼を飛ばすと同時に機体を翻し距離をとる。今までバラバラに戦っていた残りの親衛隊機はいつの間にかA標的、ガンダムアクエリアスを中心にフォーメーションを組んでいた。僕はアクエリアスのパイロットに向かって通信を入れる。

「こちらスイーパー司令部操作ミュータント対策班班長、ミヤナガ・ユウです。戦闘を停止してください。繰り返します、戦闘を停止してください!」

少しの静寂の後、突如通信機に上ずった笑い声が入ってきた。

『ひっ、戦闘を停止しろだって? ひっ、そしたら俺からこのアクエリアスを取り上げるつもりなんだろう?あげないよ!やっと僕のものになったんだ!』

「その声……リク!?」

聞こえたのは、ついさっきまで話していた友の声だった

 

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