ユウ、いってきます
数日後、賭博から帰ってきたジャックが変わった話を持って帰ってきた。
「ユウ、お前木星とか興味あるか?」
「お帰りなさい。突然ですね、木星ですか」
ガンダム世界においても大きな意味を持つ木星は、もちろんこのGBWFにもエリアとして実装されている。ゲーム内距離の関係で高速艦なら1、2時間で着いてしまうものの、大推力の機体でないと行動することすら難しい特殊なエリアだ。
「木星にミュータントがわくようになったらしくって、この間のクリルタイで対応策が練られてたんだがな」
クリルタイというのはスイーパークランが一堂に会し、スイーパー全体の方針を決めていく会議のことだ。各クランの代表や旗艦が揃うので、宇宙ではちょっとしたお祭りになる。
「ブッホのジャンク屋がブッホ・コンツェルン側から新しく編成されるクランを送り込むって話だったんだが、いかんせん人員不足でな」
スイーパーはその損耗率の高さからいつでも人員不足に陥っている。艦があってもパイロットがいないというのはさまざまなクランが抱えている問題だ。
「その送り込まれる部隊、コスモ・バビロニアがメンバーの募集をかけてるんだよ」
「よくその名前使われてませんでしたね」
「コスモ・バビロニア“帝国”はあったらしいんだがな。ただのコスモ・バビロニアはまだなかったから使わせてもらったらしいぞ」
クラン名や艦艇の名前は命名の際、他と被りがあると再入力を求められる。原作再現を使用にも大体の名前は使われており、涙を呑むプレイヤーも多い。苦肉の策がサテリコン3のようなナンバリングをしたりナカグロの有り無しで分けたりといった名前だ。
「ホントはクロスボーン・バンガードにしたかったらしいがな。で、興味あるか?経験者は士官待遇らしいぞ」
戻ってきてから、これからどうするかをいつも考えていた。フォルテンツィアのジャックさんの下でビルダーとしてやっていくか、魔女の箒に戻るか。しかしそのどちらも正しくない気がしていた。もっと他にやるべきことがあるのではないか、そう思っていた。
「……受けます、その話。ダギ・エクスなら木星でも動けますし、ちょうどよかったのかもしれません」
「そういうと思ってな、実はとっくに名簿にねじ込んでおいた」
「そんなことだろうと思いましたよ」
得意げなジャックに思わず苦笑する。なんにせよ、これで本当の意味でスイーパーの仲間入りを果たすのだ。遠く木星に思いをはせて、さっそく機体の調整に入った。
木星へ発つ前日、僕はフォルテンツィアの丘の上にあるフォルテンツィア教会を訪れていた。元は運営が皮肉のつもりで作ったオブジェクトも、このデスゲームでは拠り所があるだけで心が楽になるというものだ。フォルテンツィア教会は増築が幾度か行われた大きな建物であり、中には数人が祈りをささげたりくつろいだりと思い思いの過ごし方をしていた。僕は庭に出ると、そっと目を閉じて共に戦った仲間のことを思い出した。
「かっこいいでしょう、このスーツ?ジュウちゃんに見せるために着てきたんですよ。僕、木星へ行ってきます。しばらく会えないと思ったから、挨拶に来ました。教わった魔女魂、見せて気ますよ。見ててくださいね」
そっとつぶやいて出ていこうとすると、ここの神父だろうか。神父服の老人が近づいてきた。
「ご挨拶ですか?」
「ええ、遠くへ行くことになったので」
彼もまた、ゲオルグのような優しい瞳の老人であった。彼は僕を見てから微笑み、それかあ言った。
「では、いってらっしゃい。いつか無事にお帰りになるように、私はいつでもお祈りをしております」
それは、送り出す言葉であり、帰る場所があることを教える言葉だった。僕は少し面喰ったが、微笑み返し言った。
「ありがとう。行ってきます」
The Sweepers、完結です。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう。行ってきます。
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