The Sweepers   作:インノケ

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ビルダーの仕事

ユウ、留守番をする


めぐりあい編
8話


 フォルテンツィアのジャックの家に来てから二日が経った。彼の家には多くのスイーパー希望者が訪れる。というのも彼はスイーパー用のカスタマイズだけでなく、スイーパーになるための窓口もやっているようなのだ。今も彼は、スイーパー見習いの接客真っ最中である。

「だから三つ首龍の紋章のボスに会いたいんだよ!」

「それは俺のできることじゃないからなぁ……。人手の足りないクランに斡旋するのが仕事なんだよ。わかってくれないかなぁ?」

宇宙側の人間にとって「三つ首龍の紋章」の名は大きな意味を持つ。もともと地球側との勢力戦争に参加していたクランで、今はスイーパーとしてサンダーボルト宙域という激戦区で戦い続けている。宇宙側の最強クランの一つであり、その名にあこがれを抱くものも少なくないのだ。ジャックのもとにも入団希望者や手合わせをして欲しい、果てはサインをくれといった人が押し掛ける始末である。

「くそっなめやがって、勢力戦争にビビッてスイーパーなんていう雑魚狩りに逃げた連中のクセにお高くとまるなってんだ!」

ギリ……という歯ぎしりの音が自分のものだと気づきハッとする。仲間を守るために戦っている彼らだが、こうやって理解が得られないことも多い。ここに働き口の紹介を受けに来る人だって半分は力試し程度の気分でやってくるのだ。

「とにかく、あんたの要望には答えられないよ。悪いがね」

結局、暴言男はジャックに追い出されるように出ていった。

「んー、ユウ! 俺はこれから賭博場へ行く! 留守番よろしく!」

ドアの前で仁王立ちしていたジャックだったが、突然そう告げると僕の返答を待たずに脱兎のごとく駆けだしてしまった。賭博場へ行くのはこういった輩を相手にした後の憂さ晴らしなのだ。

「留守番、か」

部屋を見渡すと、初めて入った時も目についた大量の端末が目に入る、なんでも初期のころに端末を増殖させる裏技があったらしくその産物らしい。複数つなげてクロックアップとかいろいろとまずいことをしている気もするが、藪蛇になりかねないので触れないようにしている。インベントリの整理でもしようと端末を取り出そうとしたが、外からの足音に気づき玄関へかけていく。ゲオルグたちがそうだったがこの家に入る許可を持っているのはジャックと親しい人たちだ。こういった人たちを出迎えて、賭博場か酒場に行ったと伝えるのが僕の今の仕事であった。玄関のドアを開けると僕と同じくらいの背格好の青年が立っていた。

「ん、見ない顔。ジャックさんはお出かけ中かな?」

「あ、すいません。賭博場に言行っちゃいました」

頭を下げる。

「あーいいよいいよ。上がって待ってるから。

「出かけたばっかなんでしばらく帰ってきませんけど……」

「出かけたばっか? 君、ジャックさんを待ってるわけじゃないの?」

「僕は留守番してって言われて……」

僕の返答を聞くと彼は眉を顰め、顔を覗き込んできた。

「留守番って、君ジャックさんの兄弟か何かなの?」

「で、弟子みたいなもんですかね?」

「弟子!? ジャックさんが遂に弟子をとったか!」

彼はそういって笑うと自己紹介をしてくれた。

「僕はアール・ミュラー・イノセンツィ。ジャックさんにはいろいろお世話になってる」

「ミヤナガ・ユウです。よろしくお願いします」

「うん、よろしく!」

アールはそう言うと家へと入っていった。

 

「アールさんって三つ首龍の紋章の人ですか!?」

「さんはいらないって言ったでしょ。それに立ち上げるときに末席に加えてもらっただけだからあのテストもやってないよ。そんなことより君の話が聞きたいな、僕は」

僕とアールは向かい合ってソファに座り、お互いのことを話していた。

「ジャックさんの弟子ってことはユウはビルダーなんだ?」

「一応ですけどね。ビルダーモデルとか作れるだけの才能みたいなものがないらしくって」

「才能がないなら弟子入りなんかできるわけないでしょうに。ウチは専属のビルダーがつくから調整とかはやってもらうんだよ」

「専属なんですか! 確かにそれに越したことはないですけど……」

「ウチはね。消耗が激しいから、基地でパッとなんとかできないと追いつかないんだ」

「三つ首龍の紋章」がいるサンダーボルト宙域はミュータント発生エリアの中でも断トツの激戦区だとビリーさんに聞いたことがある。合計で30以上のクランが総力を挙げてぶつかっても、今の均衡状態を保つのに精いっぱいだそうだ。

「ユウはスイーパーではないの?」

「一応ついこの間まで魔女の箒ってクラン見習いをやっていたんですが……」

「え、じゃあ君ゲオルグさんと一緒に戦ってたんだ」

「ゲオルグさんと知り合いなんですか?」

「知り合いも何も、あの人は三つ首龍の紋章のメンバーの一人だよ。聞いてなかったのかい?」

ときどき飛び出す衝撃の事実に驚かされながらも、僕は時間を忘れアールとの会話に花を咲かせていた。

「そろそろジャックさんも帰ってこないかな」

「そういえばアールはどんな用件でジャックさんに?」

「ふっふっふ、聞きたいかね?」

その質問を待っていたと言わんばかりの調子でアールは人差し指を立てる。

「かねてからジャックさんと相談を重ねてきた僕のMSが完成してね、直接説明を受けに来たって訳だ!」

「ビルダーモデル! すごいじゃないですか!」

ビルダーモデルはビルダーギルドモデルとは違い、いわばオーダーメイドのモデルである。パイロットであるならば一度は手にしてみたい逸品である。二人で盛り上がっていると、ちょうよくジャックが帰ってきたのであった。

「お、アール来てたのか。そういや呼んだのは俺だったな」

「勝負はどうだったんです?」

アールが悪戯っぽく問いかける。どうやら帰ってきたジャックに勝負の結果を聞くのはお約束らしい。

「……トントンだ。負けてないぞ。-500なら誤差の範囲だ」

芳しくはなかったようだ。

「でだ、アールの件なんだが。ユウ! お前も一緒に見ろ。勉強だと思ってな」

ジャックさんは僕にそういうと壁にあった大きなモニターと床の端末から伸びているコードをつないだ。

「待たせたなアール。こいつが俺の力作、『ゲルググ・ヘンカー』だ」

 




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