地図にもない場所で   作:TAoT

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深夜のテンションシリーズ第三弾。今夜は素面だ(笑)
白い濃霧に迷ってましたが、ようやく新しい不死院に辿り着けました。


第三夜:リターン

意識の飛躍。これはいつまでたっても馴れない。覚醒しかけのミミックに第2村人を蹴り飛ばした地点を境に俺は、今となっては定位置となってしまった牢屋へとワープしていた。

 

そして、この世界のスタート地点でいつもの作業を開始する。メニューバーを脳裏に思い浮かべアイテムアイコンの全ての項目をチェックするだけの簡単なお仕事(作業)だ。

期待感は疾うに失せ、半ば事務的に目を通すだけなので時間もかからない。

 

前回・前々回・前(以下略)と変化がないことを確認し、いつものように、血痕を回収するため小走りでミミック部屋に入ろうとし、

 

(……俺、何してんだろう)

 

いつもとは違う考えを抱ける自分にふと気付く。

そして自分の血痕と開いたままの扉、その先にある宝箱に数度目線をさ迷わせた後、溜め息混じりで踵を返す。

そのまま、最初の牢屋前に腰を降ろし、聞こえる足音や息遣いを極力遮断して自分の中に意識を巡らす。

 

 ――あの後。

突然の衝動に意識をもっていかれた俺は、繰り返しミミックのアイテムを強奪するために、あらゆる手段を用いて挑むも、その悉くを蹴散らされ――何言ってんのか分からんかもしれんが、実際マジで蹴り殺されたこともあった――殺された。殺されまくった。

以下は、実際の経験と回収した血痕を元に編集したハイライトだ。

まず最初にとったのは電撃作戦。ミミックを殴り戦闘状態に移行する前にブツを掠めとる作戦だ。

 

これは、相手をアクティブ状態にして、半開きの汚い口の中に手を突っ込もうとするも、敵の超反応を掻い潜ることができずに捕獲され捕食された。

前後左右、色々な角度から揺さぶってみるも、駄目。

先っちょ。先っちょだけだから。と、心の中で赦しを乞うても無慈悲な締め付からの捕食に果ててしまった。あひぃ。

 

次に考えたのが脳筋作戦。実際は順番が前後してしまった殺してでも奪い取る作戦だ。

 

これは、アリハンを出たばかりのレベル1(6)の主人公(?)がひといばこやミミック(体感的にはやはりコッチが妥当だ)とガチバトルを繰り広げることを想像してもらえれば分かると思う。先制からの松明ブンブン丸による(攻撃力は桶=石≧素手>松明)攻撃が敵HPゲージの1割ももっていけず、相手の攻撃は1〜3回くらえば即あぼん。

しかもこのミミック、腕だけじゃなく脚つきで――やっぱり自分でも何言ってるのか分かんねぇや――蹴り技主体で攻めてきて、恐ろしくリーチが長い。

当たらなければどうともないと思うかもしれないが、回避しながらの中途半端な攻撃なんて1ダメもはいらんし、攻撃と回避で緑のスタミナバー(HPバーは赤色だ)が0になればちょっとの間(でも致命的だ)だが、移動位しかできず、後はターン制のコマンドバトルに移行してしまっていた。

そもそも、行動パターンが大体分かっても、回避自体も完璧にこなせるわけじゃないので尚更無理ゲー。

宝箱脇から伸びている鎖を縫い付け、ずっと俺のターン!作戦も、ズボッ・ベキッ・ドガシャーンとアメコミばりのパワフルな登場シーンを前になすすべもなく。

 

 

藁を寄り合わせて作った一本釣り作戦も全く意味をなさず。

理力を信じて魔力を練り上げ身体強化をしようとしたり、ひらめきにより技を覚えようとしたりするもてんで駄目。

第2村人を蹴飛ばす前にはミミックの脚を舐めていた。

 

結局、この衝動に任せた行動で何の成果も挙げられなかった――訳ではない。

 

1つ。後に繋がるかもしれないミミックの行動パターンは大分覚えたこと(でもやつのことだ。変身の一つや二つ位残してても不思議じゃないし、HPが半分以下になったら新たなパターンが生まれそう……)。

 

1つ。死亡時のデメリットが今のところ数秒間の記憶位しかなさそうなこと(結局、最初の相棒が消えてしまった原因は分からず終い……)。

 

 

1つ。攻撃時や回避時や全力ダッシュ時にはスタミナゲージを消費し、その際型にはまった行動――例えば、松明初撃は右上方から袈裟に振り下ろすであったり、回避方法はバックステップやローリングであったり――を直感に従い選択した方がダメージ効率が良かったり、スタミナゲージの消費が抑えられたりすること(これが一番の収穫。はぁ……)。

 

全く意味不明なのは、白い靄を見た時感じたヤバい衝動と、それが何故今になって解けたのか位だ。

 

(さて、と)

 

考えてばかりだった俺は、いつまでもこうしちゃいられないと重い腰を上げる。いくら疲れや痛みとは無縁の身体だとしてもこんな薄暗く汚いジメッとした牢屋での長期滞在には気が滅入る。

――チラ、チラリ

 

血痕と宝箱。

……いい加減前に進もう。んで、強くなったらまた戻ろう。

俺は、今度こそ未練を断ちきった。

 

ドシン……ドシン……

 

松明の灯りだけが揺らめく通路を前に進む度、この世界で意識が覚醒した時から聞こえ続けていた足音が強くなる。

 

分かる。

いる。

右前方の鉄の柵の奧に何かがいる。

 

シルエットが見えた訳じゃない。でも、その存在感が半端ねぇ。

(おいおい。ミミックのお次は巨人でも出んのか?勘弁してくれよ……)

 

鉄柵手前のゲームでの攻撃方法(やはりSNYか……)が書かれた橙色の落書きから、やはりチュートリアルか、と溜め息を吐いた刹那――

 

(帰りたい)

 

――俺は帰りついていた。いつもの場所に。

 




エタりたくなったらきっといつでもエタっていいのよ('A`)
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