「でりゃぁーー!」
ギュァァァー!!!
モンスターの叫び声の後に響く硝子が割れるかのような音が中1人の小さな男の子が次々にモンスターを駆逐して行く。
何対のモンスターを倒したかはもう数えていない、何対倒したらいいんだっけ?とジロウ自身が考えた時にクエストを行っているフィールド内に二つの足音が響いてきたのだ。
「オイ!ジロウ無事か!?」
「某は無事でござります。見ていてくだされ今にクエストをクリアするのでござりますから」
オイちょっと待て…こいつ!!俺の話をちゃんと聞いてなかったのか?クソ!!と慌ててフィールド内に入ろうとした瞬間に見えない障壁に阻まれ、セツナもアカネもフィールド内に入れなかったのだ
「オイ!ジロウ!退け!このクエストのボスはお前1人でどうにかできる様な相手じゃあらへん!」
「そうよ!あたしも知り合いが死ぬとか見たくないんだから!早く転移結晶を使いなさい!」
この二人はまた某の実力を疑っておるのか…
ここは問題無くクエストボスを倒して二人に某の実力を認めてもらうしかあるまいな。
「問題はござりません!そこで見ていてください!もとより転移結晶なる物は持ってはござらん!」
なっ!とセツナ・アカネは一瞬言葉に詰ってしまいもうどうにもならない状態になってしまっている事にきずいたのだ
「この馬鹿!あんた分かってるの!」
ん?と思ったジロウだったがそこでフィールド内に変化が起こった。
雑魚モンスターのPOPが止まりクエストボスが出現したのだ。
「主はそこで某の戦いを見ていてくだされ!」
ボスのHPバーは2段しか無いうえに、ボスの姿はスネークマンっと言っていいだろう姿は蛇に手足があり片手に剣を持っており腰にもう一本剣が鞘に納まっている。体を鋼鉄製の鎧をまっとっている
姿からはとても手こずるような相手ではないと言う印象をジロウは受けていた。
このボスなら問題無く某1人で大丈夫であろう。回復ポーションもまだあるでござるしな。
楽観的に考えていたジロウの思考を途切れさせるに充分な出来事がすぐに起こったのである。今から
どう攻めようかと刀を構えた瞬間の出来事であった。
このクエストボスの特徴は初撃のみかなりの速度で攻撃してくるのである、そしてその攻撃をかわせれば良いのだが、受けてしまったらほぼ部位欠損ダメージを受けてしまうのだ。クエスト前にセツナはちゃんと説明をしていたのだが、それを聞いていなかったジロウはボスの初撃をまったく反応できない状態で自分の利き腕を切り落とされる瞬間を目でおうことしかできなかったのだ。
ザン!!
パリーン……
自分の腕が消えてしまった音だけがフィールドにこだまする。
一瞬の出来事で理解する事が出来ずに頭が付いていかない、何だこれ?何で腕が無くなっている?
何でモンスターがいる?何だ?何で?どうなってんの?
「ジロウ!!交わせ!!早くそこから動け!!」
はっ!と我に返ったジロウがすぐ様に振り落とされた剣を返すように切り上げてきたボスの斬撃をギリギリの所で交わし大きく距離をとるように下がるが、その移動に合わせてボスも追い討ちをかけるかのように追撃してくる。
セツナの声により硬直状態からは脱したのだか、まだボスとまともに戦えていない状態が続いていた
何せいきなり利き腕を切り落とされたのだ、片腕状態に慣れているはずも無くバランスを取りずらい状態で碌なソードスキルを発動できるはずも無く闇雲に剣を振り回すしかできないのだ。そんな攻撃が仮にもボスと言うモンスターに決定打を与える事ができるはずが無くジロウのHPが徐々に減っていくのであった。
もともと三人で倒す予定だったスネークマンをジロウ1人で倒せるハズも無くジロウのHPが0に成るのも時間の問題といわんばかりにレッドゾーンに終に入ったのだ。
ク!こんな所で死ぬ訳にいかぬでござる。せっかく主に会えたのだ、これからなのだ、これから主と共にこのゲームをクリアするのに、こんな所で……こんな所で……
「死んでたまるかーー!!」
ジロウの渾身の一撃、刀中級スキル《弾空》による切上げ切下げの三連撃がスネークマンを切り裂いたのだ!やった!と油断をしてしまった隙を突いてスネークマンの片手剣が金色の光をまとい上段から剣を振り下ろす。
ジロウはソードスキル後の硬直の為まだ動く事ができず、スネークマンの片手剣が自分に向かって振り下ろされるのを見る事しかできなかった。
ザン!!
辺りに音が響いた……
ジロウのレッドゾーンだったHPがみるみる内に無くなって行く。
止まれ、止まれ、止まれと見る事しかできなかったセツナは呟いていた。しかしその願いは虚しく現実は厳しい物だった。
ジロウのHPは止まる事無く全て無くなってしまったのだ。そして硝子の破片のように消えてしまう前にセツナとアカネの方を向き口を動かした
死・に・た・く・な・い
…パリーン…
「ジロウ…」
「ジロウー!」
アカネはこの状況が信じられないといった表情でそこに立ちすくしている。
セツナはゴン!っと地面に拳を突きたてその横に涙がポタポタとほほを伝い落ちている。
クソ!俺がもっとちゃんと説明していれば、ジロウが走っていった時に急いで止めていれば、ボスが出てくるまでに間に合っていればこんな事には成らなかったはず。俺が…俺が悪かった!!
……ジロウ……
お前の敵は俺が取ってやる。それが、それが俺ができる唯一の主の務めだ!!
シュラン…っと静かに背中に担いである両手剣を抜きさり剣を構えとなりで同じ用に自分の得物を構えるアカネの姿があった。
「アカネ、ここは俺がメインでやる。お前はサポートに回ってくれ。」
「え?…あっ…うん」
セツナの何時もとは違う口調・雰囲気に一瞬アカネは戸惑ったがサポートに回るようにしたのだ。
「行くぞ!」
「うん!」
そしてジロウの弔い合戦が始まったのだった。