模倣できない物語 作:帝都造営
結論から言います。
下 ネ タ が 言 い た か っ た
後悔している、反省もしている。もしあなたがこれを消せと言ったら、私は迷わずこれを消そう。
でも、でも・・・投稿してみたかった。
ではご覧下さい・・・飯田孝介とその妻、まだ結ばれて間もなく、深海棲艦により日常が破壊されるなんて思ってもいなかった時代。
買い物に行こう。出し抜けにそんなことを言われたのは、ちょうどテレビで何かの特集をやっている時だった。
祖父が建てたという実家は広い、そして高級住宅地と言われるようなところに建っているため、周りも随分と豪華な、というより広い家ばかり。おかげでドラマなど見ていると「あっここ知ってる」と思わされることがよくあった。最近はドラマなんて見ていないけど、どのようなドラマが最近流行りなのだろうか。聞いてみると、見ていないと返される。当たり前だ。彼女の日本語は完全じゃない、日常会話で精一杯。話の流れすら掴みづらいドラマを見るなんて無理な相談だろう。
車を使おうと提案したが、それは嫌だ、歩いていきたいとせがまれる。孝介としては久久の内地だったのでなるべく体に負担をかけたくない――――つまりダラダラしていたかった――――ので渋ろうかとも思ったが、考えてみれば新しい家族となった彼女と過ごせる数少ない機会だ。たまには我が儘も聞いてあげなくては――――と、妹に言われた。
他人のこと、いや家族のことにすら気が使えないとは、そんな自分がなんだか嫌になったりすることもある。
彼女はそんな飯田の考えも知らずに、やや嬉しそうに歩く。自分と過ごす機会が楽しみだったのだろうか?自分はそこまで価値のある人間だろうか。彼女は見た目も悪くないし、学歴もある。完全無欠とまではいかないが、少なくとも探せばある程度の男が捕まるだろう。
自分は彼女に愛してるなんて囁いたことはないし、僅かにでも迷いがあるならばその言葉は決して口にしてはならないと考えている。それなのにこうして浮かれている彼女を見ると、『なぜ』という疑問が浮かび上がってしょうがない。
しかしそれを口に出す勇気もない、正確には真実を知りたくない。誰も彼も考えているのは自分の利益だ。それはこれまでの経験でよく分かっている。どうして彼女が純粋に自分を愛してくれていると考えるだろうか。
その後もいろいろと話したはずだが、何を話したかは覚えていない。人間の短期記憶は短い、覚えていないということは、数分前の自分がいらない情報だと解釈したのだろう。目の前には恐らく一番近そうな販売店、これでも並みの散歩より歩いた気がするが・・・。
ともかく店内に入る、買い物かごとそれを載せるカートがある。一人ならさっさと必要なものを選んで買ってしまうところだが、そもそも彼女の買い物がどのくらいかかるか分からない。カートを転がし、買い物かごを入れた。店内の照明は明るく、何処産ともしれない食品たちを少しでも綺麗に見せようと努力している。彼女は誘導することをしなかったが、こんなところで別行動をとっても仕方がない。ゆっくりと遅れずついて行く。買い物には時間がかかると思ったが、そういった様子もない。考えてみれば当たり前だ。どんな食材でも見た目は世界共通。値段札も数字さえ読めれば問題なしだった。
料理を作ってあげる・・・か、たどたどしい様子で彼女が言った日本語を口には出さず反芻する。日本語が苦手なら、恥ずかしがらず英語で言えばいいものを。職務上、英語必須な自分にとって英語が聞き取れなければコミュニケーション以前に辞職をせねばならないレベルの問題となる。
そう言えば、誰かのためにカートを押すなんて初めてやることだ。カートは高齢者の方でも押せるように考えられているのだろう、自分の身長の半分ほどの高さしかなく、直立したままだと辛うじて手が届くぐらいだ。彼女が出かけたかったのはこういう『初めて』を求めていたからかもしれない。初めてが二人の距離を短くすると信じて。
ところが、唐突に彼女は歩を止めた。何事かと尋ねれば、あれは何かと逆に尋ねられる。
「あぁ・・・あれは・・・恵方巻きだな」
オウム返しが疑問形となって帰ってくる。節分と恵方巻きの知識をとりあえずひけらかすが、これで合っているかは分からない。彼女は今の適当な説明を聞いて日本文化は面白いというが、当の日本人である自分たちが詳しく知らない文化に価値はあるのだろうか。それとも、とりあえず豆を投げて恵方巻きを食べる。そんな習慣のような文化でいいのだろうか。
よく分からない。考えても意味がないとはこういうことをいうのだろうか。
行きに時間がかかったのだ。帰りも同じだけ時間がかかる。行きも同じように排気ガスをまき散らしながら進んでいた自動車たち、一応自分が道側に立ってはいるが、安全柵がある時点で意味がないような気もする。
そんな時、ふと自動車が通過する前に足元が明るくなっていることに気がついた。つまり自動車がライトを点けているということ空を見上げればもう陽も沈みかけている。やけに時間が経過するのが早すぎるのではないだろうか。そんなどうでもいい事を気まずい沈黙を打ち破る会話のネタにし、日が落ちる時間帯に出かけたから時間が早く経過したように感じるのだろう。と結論づけた。
今日は節分、春分の日とは別物だが、冬至からはずいぶん日数が経ったはずだ。こんなに早い時間で陽が沈むだろうか。そんな事を考えていると、彼女は勤務地の緯度の違いによるものだろうと言った。なるほど正論だ。
ところが、納得してから気づく、自分は今の考えを口に出しただろうか。そんな問に対する答えは、見ていれば分かるというものだった。
そんなに自分は分かりやすい人間だろうか。
やがて、自分の家がある区画に戻ってきた。ここらをわざわざ通ろうとする車は少なく、空気もなんとなく綺麗に感じる。もちろん、空気は拡散するので帝都の中ならどこでも一緒だろうが。
すると、彼女の気配が不意に遠ざかった。振り返ると立ち止まっている。何かを迷うように視線を逸らしては戻し、また明後日の方向に投げる。一体何があったのか、そう問いかけると彼女は一言。
「だ、ダーリンの、『えほうまき』、たべて、みたいデス・・・」
とりあえず自動車が通過した。珍しい、こんなこともあるものだ。
三秒経過した。かける言葉も見当たらない。おかしいとは思ってた、行きあんなに喋っていた彼女が何故帰り道黙りこくっていたのか。
まさか、まさかとは思うが
ついつい、声を上げて笑ってしまった。自分が真面目に考えている横で、彼女は何を考えていたというのだ。なんでもいいからネタを探していたのだ。恐らく自分が恵方巻きの食べ方の説明をした時に思いついたのだろう。それにしても彼女がこんなことを考えているのには理由があるに違いない。誰がこんな変な事を彼女に吹き込んだのやら、きっとあいつに違いない。後でひとこと言ってやらないと。そう思いながらも笑っていると彼女も釣られて笑い出した。
ようやく笑いも収まってきた頃、彼女はさっきまでと同じように自分の隣を歩きつつ、やっと表情を崩してくれたと言った。さっきまでの自分は考え事をしていたから、顔が固まっていたのだろう。今後はこいつの前でくらい顔を固めるのをやめようと思った。なんせ、家族なのだから。
二人の歩む静かな道を、一番星が照らしていた。
この自分の堅い文章に下ネタを突っ込むとどうなるのだろうか。そう思って上げた実験作です。
・・・感想、ご意見、というか『模倣の決号作戦』への何かだったらなんでもいいですよー
お待ちしております。