魔法少年ロジックなお   作:SIERU空の友人

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はじめまして。SIERUという者です。
以前はSS投稿掲示板Arcadiaで活動していたのですが、このたび活動場所をこのハーメルンに移動しました。
主な作品は、この「魔法少年ロジックなお」になります。
これからよろしくお願いします。



第1話

 いつまでも変わることないと思っていた日常があって

 

 物語に迷い込んだ人たちに紛れて、二人の物語は始まろうとしてる

 

 だから、私はあなたに伝えるために空を翔ける

 

 この広い空の下には、幾千、幾万の人たちがいて

 

 いろんなひとが願いや想いを抱いて暮らしていて

 

 その思いは時に触れ合って、ぶつかり合って

 

 だけどそのなかのいくつかは、きっとつながっていける。つたえあっていける

 

 これからはじまるのは、そんな出会いと触れ合いのお話。

 

 魔法少年ロジカルなお、始まります。

 

 

 

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 私のとなりに、いてくれますか?

 

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 よく知っている風景。数年前の自分。そして自分と向き合う、少しばかり若い自分の技術のお師匠様ことシエルお姉ちゃん。見慣れた「時空管理局 第一開発室」の風景。

 そんなを光景まるで傍観者のように、自分の視線も姿勢も、どんな角度ともつかぬ夢見心地で見ていた。

 

「やっぱり、だめだった・・・?」

そう問いかけるまだ幼い少年「風原 直」の言葉に、ブロンドの髪の10代半ばの少女「シエル・リーン」は肯定の頷きを返す。

 

「ええ。この事件は“AR-00事件”という名前で処理されるそうよ」

「シエルお姉ちゃん、ウィンドは・・・・・・?」

シエルは暗い表情で頷く。当たり前だ、自らが手がけたデバイスが封印処理されたのだから。廃棄されるよりはマシだが・・・マシなだけだ。

 

「あの子、オールレンジデバイス試作機1号機AR-00、つまりウィンド・フォルティトゥードは本局に厳重に封印されるそうよ。数年は会話すら許されないでしょうね。そしてARタイプの開発プロジェクトは凍結。 私の次の仕事はどうなるのかなぁ?」

 困り果てた仕草で、シエルは肩をすくめた。自分の将来より、手塩にかけた娘同然のデバイスがいわれのない罪で、政治的意味しかない封印処理を受けるというのは、全く納得出来ないからだろう。というような意味の思考を少年は幼いながら感じていた。

 

「でも、直君のデバイスは用意しなくちゃならないでしょ? ウィンドの予備ボディに手を加えて用意するわ。凍結前に確保した予算もかなり余ってるし。あと2、3機は製造可能よ。それも事故を起こさないように演算を平均レベルの数倍に強化して。ヘソクリもあるし、ね?」

 

「でも、ウィンドは・・・・・・。ぼくが扱いきれなかったから・・・」

少年―直<ナオ>―は深く視線を落とす。

・・・なぜ、あのデバイスが封印されなければいけないのか分からない。とても良い子で、素直で柔軟な性格なのになんで暴走事故の罪を全て擦り付けられたのか納得出来ない。

 でも仕方ないのかもしれない。テスターが暴走事故の結果起きた魔力爆発によって亡くなったのだ。これ以上、正式なプロジェクトチームを編成しての開発を続けるのは無理だろう。

 

「直君・・・。いい? これから完成させる子には、ウィンドの完成した時の名前、“ウェントス・フォルティトゥード”の名前をつけようと思うの。ものは相談なんだけど。今回使った、古代ベルカ時代の初期型等身大ユニゾンデバイスの設計図があるでしょ。それを、安全に運用できるように設計しなおしたら、ナオ君、使ってくれる?」

 腰を下ろし、しっかりと直と同じ高さで瞳を見据え、問いかけるシエルの表情は、心の奥深くを覗いてくるようで、直は固まってしまった。

 

「出来上がるまで1年かかるかもしれない、5年、10年かもしれない。それでも直君は使ってくれる?」

 

ナオはそれに頷き、返答を返そうとする。

 

 

 

――風景が闇に囚われ、何も見えなくなる。

 光が差し込んだと思えば、今度は場面が一転した。

 

 暗い夜、ブロンドの髪を短く切りそろえた、緑色の瞳と魔力光を持った男の子が、黒い靄のような怪物と戦っている。

 夢だからなのか、夜だとわかる。だけど空は血のように赤黒くて、並び立つ草木は闇のように暗い。それはとても不思議な光景。

 

「ジュエルシード、封印っ!」

 封印の声が響く、それでも黒い化け物には意味なく力尽きてしまった。

 

 

『マスタ、起きてくださいマスタ』

 深い眠りの中、相棒の声が響く。布団が身を包む眠気を誘うような暖かさが心地良いが、いましばらく布団とはお別れだった。

 

 目を開く。そこにはいつもどおりの天井と照明。少し青みがかった白い壁紙はとても気に入っている。この内装を選んだ人―詳しくは興味もなく聞いたこともない―はとても良いセンスをしていると思える。

「・・・んしょっと」

 布団を、丁寧に半分に折りながら、上半身を起こす。朝の冷たい空気が彼には肌に刺さるようでいながら心地良かった。

――ウィンドの事故を思い出したのかぁ・・・。でもなにかそのあとに別のものを見たような・・・だめだ。

 夢の記憶は儚くバラバラで思い出せない。

 

『おはようございます、マスタ』

「うん、おはようウェントス。ありがと」

 毎朝のように起こしてくれた、朗らかな相棒の声に応えるかのように、彼もまた和やかな表情と声色で返す。

 ナイトテーブルに置いた、彼の相棒であるデバイス、「ウェントス・フォルティトゥード」に、朝の挨拶と礼を言う。

 

『いえ、これも私の仕事の内ですから。早く着替えてキッチンいきましょう? お母さんたちは昨日遅くまで仕事でしたから。トレーニングして、朝食を用意しないと』

 響く声の言葉に頷き、彼はベッドから降りて着替えを始める。

 彼の専用機の、ウェントス・フォルティトゥードのシステムボイスは、少女の声をしている。その澄んだ声は、聞いていてとても心地が良かった。彼のお気に入りなのだ。

 

 着替えが終わり、ウェントスを手のひらに載せ、目を合わせて会話をする。

 いや、彼女は全方向を視認してるため。目線をあわすというのは少々勝手が違ってくる。

「ウェントス、昨日の夜の調整はどう?」

『今の所、問題はありません。気分としては絶好調ですが、オーバーホールがそろそろ必要なのは変わりません』

 デバイスにしては彼女、ウェントスは饒舌だ。直という少年には会話相手が居てくれてありがたい。直もウェントスも寂しがり屋だ。

 

 ちなみに、ウェントスは彼自身が基礎設計を担当したデバイスであり、そのためか彼や製作に関わった人間以外からの整備を嫌がる。

 とはいっても、ウェントスはコアを保護するカウルこそ頑丈なものの中身はデリケートであり、このタイプに詳しくない他人には、そう簡単に整備を任せられないのもあるというのも理由の一つである。

 

 着替えを済ませ、深緑色で矢印型のクリスタル状の待機状態のウェントスを持った後、自室を出て、階段を降りてキッチンに向かう。

 

 

 彼は、風原直<カゼハラナオ>。

 私立聖祥大付属小学校の三年生。そしてこの物語の主人公である

 AA-ランクの魔導師資格を保有している。第97番管理外世界の日本という国の海鳴市に住んでいるが、立派な魔導師である。

 3、4歳の頃に書いた落書きを見た両親の知人である技術者が目をつけ、落書きからインスパイアされた“少々特殊な”システムを積んだウェントス・フォルティトゥードというデバイスが開発された。

 5歳の頃に完成したウェントスとはそれ以来の付き合いであり、まさしく阿吽の呼吸を見せる。

 特に母親の親友の、その娘であるシエル・リーンには尽力し尽くしてもらい、頭が上がらない。

 

 ウェントス・フォルティトゥード、型式番号「AR-01all」は、彼用に調整されたデバイスで、かなり特殊なデバイスだ。

 とはいえ特殊だからといって強いわけではない。あくまで発想と設計思想が特殊なだけで、普通のインテリジェントデバイスであり。

 システムとしては簡単に略すと『複数のコアを連動させて演算能力を強化する』というものである。現在、直の手元にある数は6基だが、数カ月おきにオーバーホールするべき時期が近づいてきていた

 直はよく「特殊だけど、大昔に封印された伝説のロスト・ロギアなデバイスとか、そういう特殊じゃ無いよ」と笑って言う。

 そして彼にとって、なによりも大事な心強い相棒だった。

 

 

 

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「防寒着よし、靴紐よし。いこう、ウェントス」

『はい』

 冗談めかした嬉しげな声で、ウェントスは直に言葉を返す。

 一般的な「魔導師とデバイス」という関係からすると、こんなに多く会話するのも珍しい。

 家を出て、30分のランニングをしてそのあとに基礎的な反復訓練というのが、直の毎朝のメニューだった。

 

 蹴りだす。接地。蹴りだす。接地。蹴りだす。

 海岸沿いのランニングコースを一定のテンポで走る。

 

 海鳴市は、海が近く風が気持ち良い。

 

 

 

 

 

 

「さてと・・・今日のメニューは?」

 直は冷蔵庫を覗き、必要な材料を取り出す。冷蔵庫にある材料から何を作るのか考えて、食材を取り出す。

 

 フライパンを構え、隣には鍋を用意しておく。

 卵が3つ、ホウレン草一束、ベーコン三枚、あとは味噌汁の具材。

 それを手に取り、同時思考技術であるマルチタスクでパッパと片付けていく。

 キッチンに、包丁がまな板を叩く音が響く。

 ちなみに、同時に自分の弁当を用意するほど直の料理スキルは高くない。ゆえに夜のうちに、サンドウィッチを作り置きしてある。

 

 彼の両親は、子育てを名目にデスクワークに引っ込んだが、それでもたまに前線に引っぱり出されたりするのでたまに直が朝食を作ったりする。

 昨夜も緊急の出動で援護要請に応じて出撃したが、それのせいで家に帰るのが夜遅くになってしまっていた。

 

 

 夜遅くなることを伝える電話も、ノイズがかかった上に、遠くで爆発音が聞こえて聞き取りづらいものだったため、

 

『だから、はやく御飯食べて先に寝てて!』と母は通信機に絶叫するのだが、至近距離で怒った爆発にかき消され

 もちろん「聞こえない」と叫び返す。

『だからさっさと飯食って子供は寝てなさいって言ってるのッ! あと朝飯の用意よろしくね!』と戦闘の厳しくなった母が通信を切るのはいつものことである。

 

 

 それぞれの調理が終わり、味噌汁以外は、盛り付けた。

 ご飯の入ったお茶碗3つ、焼きベーコンと目玉焼きが乗ったプレート3枚、ホウレン草のおひたしの入った小鉢3つ。

 

「ふふ、我ながら会心の出来だよね

『ええ、いい感じです』

 直が腰に手を当てて、一人自慢げに頬を綻ばせていると、リビングの扉が開く。 

 あでやかで、つややかな黒髪をポニーテールにまとめた女性が目をこすりながら入ってくる。

 そのあとを、直とよく似た顔つきだが左頬に小さめの十字の傷跡を持った男性が、女性の寝癖を直しながら面倒を見る。

 

「んん~。よく寝たー・・・」

「おいおい、寝癖付いてるぞ」

 

 男性は名を風原正也<カゼハラマサヤ>といい、彼の母親の一家に伝わる剣術「青河流」の使い手でかなりの使い手だである。

 直も少しだけ習ったがかなりハードで、そのうえあまり相性が良くないらしく基礎的な構えと振り方しか教われなかった。

 

 女性は風原ミドリ<カゼハラミドリ>。全盛期はかなり腕の立つガンマンとして管理局でも有名だった。

 剣術に比べて腕の角度や心持ちなど直人の相性が非常に良い教えが多く、直の未完成ながら確立され始めた戦闘スタイルのなかでその基礎になっている。

 

 両名とも今は引退同然で、定時に帰れる事務仕事をして子育て真っ最中だ。とはいえ、援護に駆り出されたりと忙しい毎日を送っている。

 

 

「うー。直、悪いわねぇ・・・」

「仕方ないよ。母さんたち忙しいんだし。ね?」

 まだ寝癖が付いてる母さんは、普段の凛々しい表情とはかけ離れていて、顔がほころぶ。

 

 

 

 

 

 

 

「行って来まーす!」

「いってらっしゃい!」

 両親の声を背中に受け、ドアを開ける。ウェントス6基すべてをしっかりと持っている。

 今は待機形態の緑色のクリスタルだった。ペンダントにして首に下げ、制服の下に隠している。

 

『マスタ、今夜からお父さんお母さん二人は出張でしたね?』

 ウェントスの言葉に直は頷いて、楽しげに言葉を返す。

 

「うん。一人分の夕飯は作るのめんどーくさいからコンビニで買おうと思ってる」

 直はウェントスとの会話を楽しみながら通学路を歩く。途中からは毎日、バスに乗る。

 

 直はバスでの通学をしている。もちろんバス停までは徒歩だが大した距離ではない。

 

 

 バス停までの道、他の同級生たちとも合流しつつ無事にたどり着く。ふと眼があったのは栗色の髪の毛を頭上で左右一つづつに結い上げた少女だった。名は高町なのは。直のクラスメイトだった。

 

 直の足音に気付いたらしく、バス停に並んでいたなのは以下、他のクラスメイトたちもおはよう、と声をかけてくる。

 

 バス停が見えてきた。幾人かの先客がいる。先輩後輩問わず顔なじみは多いが親しい友人は並んでは居ないようだ

「直くんおはよー」

「あ、直じゃないか、おはよう」

「風原、おはよー」

「おはよう、直君」

「うん、皆おはよ」

 クラスメイト同士のごく一般的な挨拶を交わす。そして数秒と待たずにバスが到着した。

 ドアが開く。バス通学をする学生は先にすでに乗っている友人を見つけ、その環の中に入っていく。当たり前の朝の光景だ。

 

「あ、おはよー!」「おはよう」「こっちこっち!」「こっちだよー!」

 誰も彼も友人を見つけ、あちらこちらへと小走りで行った。

 

 自分もその波にのるべく、直も視線を左右へ向けあたりを探るが普段はバス通のはずの親友は、たまにやらかす寝坊で乗っていないようだ

「ん~イサムは・・・」

『居ないね。いつもの遅刻だわ。仕方ない、一人で座りましょう』

 

 するとバスの後ろから三番目の席。そこに座っている長い黒髪の少女が、友人を見つけられず落胆した直に対して軽く手を振り手招きする。

「直さん、こちらへどうぞ」

「あ、ありがとう茜」

 最高級の黒真珠にもまさるような黒髪がふわりと揺れる。その瞳は黒曜石の様に青黒く澄み渡り、人当たりのいい上品な笑顔を振りまく。

少女の名は、茜・リンクス。イギリス人と日本人のハーフである、人形のような整ったその顔立ちは誰であってもお持ち帰りしたくなる可愛らしさだ。

 前髪のうち、両目の間にある真ん中の一房がまるで、メッシュを入れたように紅に染まっていることがチャームポイントである。

 こういった、ハーフ、クォーターは海鳴市には多く在住している。

 タレ目で可愛らしい眉。やわらかな微笑みと、ゆったりとしていてもスマートなその物腰はクラスでマドンナの立場を築いた。

 それを鼻にかけないのがまた人気を呼び、席替えの際は彼女の近くの席となることが男子の間ではひとつのステータスとなっている。

 ちなみにお持ち帰りしたくなるのは自由だが、彼女は剣術を修めているので身のこなしに長けている。

 間違いなく、いやたとえ間違ったとしても鳩尾に数発の攻撃を受け確実にノックダウンすることになるので、絶対に実行しないようにするのがモストベターだった。

 

 

「今日は、体育の授業がありますね。それもドッジボールです。見物ですよ」

 それがどうしたの・・・。と直は思う。彼女の修める剣術は緩急をつけた体術で確実に一撃一撃を回避し、一閃必中での必殺の一撃を得意としたものだ。故に彼女はドッチボールではあらゆる軌道で襲来するボールを回避しまくる新人類であった。

 それに対して直はは必死で魔法を使わないで体術だけで攻撃と回避の両立する必要がある。大変なんだぞー、疲れるんだぞー!と心のなかで叫んでも無駄であろう。

 できれば思考加速と身体加速だけでも使いたいくらいであるというのは直の談である。まぁ思考加速はともかくとして、彼とて身体加速や身体強化など使ってしまえばあっという間に魔法の存在などバレるからむりなのはわかりきっているが。

 だからこそ、青河流剣術の使い手である正也から教わった基本的な体術だけを使って回避するしかないのだ。

 

 

 空気を肺に送り込む。そして吐き出す。溜息だった。

「たまには、茜もボールを投げてくれないんかい・・・」

 直は、半目でそう言った。朝っぱらから、コヤツはなぜこんなに人を疲れさせるのだろうか。

 

「そういわれましても・・・。私ボール投げは苦手で・・・」

 まぁ、射撃魔法ならべつなんだけどね。というふうに茜は内心で付け足したが、人間に心が読めるわけではないのだ、それに気づく者が居るはずがなかった

 

 

 

 校門へと入っていく生徒達。直も、また、他の生徒に挨拶をしながら、校門に入っていく。寝惚け眼を擦るものも居れば、友人と談笑しながら歩く者たちも居る。だが、総じて、皆まだ活発的ではない。

 だが、朝がもつ静けさを打ち破る喧騒が近づいていた。

 

「みんなスマン退いてくれ!」

 散切り頭の少年。それが、周囲の生徒を押し飛ばすような勢いで校門前の道路を駆け抜ける。

 周りは、そんなことはいつもの事なので、言われるまでも無く、道を開ける。でなければ自分達が文字通り「轢かれて」しまうからだ。

 しかし、あのスピードは身体強化魔法でも使っているかのようだ。と直は思う。

―でもまあ、そんなことありえないかな・・・。

 

 少年は、校門を通り過ぎ、そのまま行き過ぎてしまうところを、慌てて戻ってきて急ブレーキ、ドリフトからのスライディングを行うことで、直の目の前で停止した。

 

「イテテ、危うく大怪我するところだった」

 倒れた状態で頭を掻く少年に直は言葉をかける。彼こそ、先ほど述べた「寝坊をしてバスに乗りそこねた親友」である。

「おはよう、イサム。今日も図書館行くの?というか怪我してない?」

 直は、学校の時計塔を一瞥し、時間を確認した後、この騒がしい少年に当たり前のように、手を貸して立ち上がらせる。その一連の行動は手馴れたものであり、このような事態が日常茶飯事であることを表していた。

 少年もまた学校の時計塔を見る。

 イサムはずいぶんと急いでいたが、授業開始にはまだ余裕があった。恐らく理由は「図書館に行きたい」というものだろう。

 そのガサツな見た目に反して、イサムは非常に読書家である。

 

「ああ、なんとかなぁ。って新記録か・・・身体強化魔法使ってるんだから嬉しかないな」

 イサムの最後のつぶやきは誰にも聞こえてない。魔法の存在をばらす訳にはいかない。

 もしバレたら、親父曰く「ミッドチルダのアンダーグラウンドに連れて行かれて、一生動物の姿で暮らす魔法をかけられて島流しにされる」らしい。

 一体いつの時代の魔法少女アニメだ。子供扱いも大概にしろ、といつも思う。

 

 制服の裾から埃を払いながらそういった彼は、日取イサム<ヒトリイサム>という。

 威勢のいい性格だが、案外と思慮深い性格であり、以外と直情径行な直とはそれぞれを補うことが多い。

 レベルの高い私立校である私立聖祥大付属小学校に入れるだけあり、読書家で記憶力が良いので、国語と理科の成績が直より高い。

 

「イサムが行くなら、俺も図書館行こうかな」

「おう、エスコートするぞ」

 二人はいわゆる親友というものだ。両者ともに、全く同じ「魔導師」という秘密を抱えてることに気づいていないが。

 

 

 

 

 

 昼休み、直とイサムは屋上に居た。

 

「将来かぁ・・・」

 校舎の屋上のベンチで、青空を眺めながら呟くのは直だ。となりに座るイサムの左の頬には、体育の授業中に擦り剥いた傷を隠す絆創膏が張ってある。

 サンドウィッチを入れた弁当箱を抱えて黄昏る直の言葉には今ひとつ気合が入らない

「将来のことなんか分かんないよね・・・」

「だから、お前は無軌道なんだよ」

 呆けた状態で言われた言葉は、イサムにバッサリと切り捨てられた。

 日取イサムという少年は、数学の出来は酷いが、感受性と理解力があり、前述のとおり国語と理科が得意である。

 数学が苦手なのは「思い出すのは簡単だが、公式を覚えるのが苦手」と、本人は語っている。

 なんでも国語や理科は教科書読むのが面白いとか。数学も一度やった経験のある問題は忘れずに答える。驚異的な記憶力だと直は常日頃思っている。

 一方、風原直という少年は、ウェントス・フォルティトゥードというデバイスの基礎メンテナンス、拡張プログラム開発を行えるくらいには、

 そして、レベルの高い学校である私立聖祥大付属小学校に入れるだけ、数学と理科が大の得意である。

 優れた論理性と、いい意味での諦めのよさ―つまり駄目だったことを引きずらずに、新しい方法を模索することが出来る―を持った少年である。

 

「俺は父さん達の仕事を手伝うっていうのも良いと思うんだけどさぁ・・・うーん」

「オレはそういうことよくわからんが、好きなことをすればいいんじゃないか?」

「好きなことかぁ・・・」

 直の脳裏に浮かぶのは、ウェントスとの訓練、ウェントスを整備すること、ウェントスとの他愛も無い会話。

 

「それも、いいのかなぁ・・・」

 

 先ほどから考えているのは、つい半刻前の授業で先生に言われた“将来の道”についてだ。

 

 だが、直にはいまいちビジョンというものが構築しづらかった。

 

 

 なんでなんだろう・・・。と直はなんとなく、日常をすごしていた。この大地に大きな災厄が訪れることも露知らずに。

 

 

 

 深く鼓動する真紅の端末――不屈の心<レイジングハート>、それが目覚めるのは、もう少し先。しかしすぐそこまで来ていた。

 

 

 




 はじめまして、SIERUという者です。
 この物語の主な主人公は、今回登場したオリキャラ「直」「イサム」「茜」の三人です。
 今回の内容でおわかりかもしれませんが、メイン主人公は直で、そのパートナーであるウェントスがヒロインと言えるでしょう。
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