東方黒麗伝   作:すどうりな

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 息抜きで書いていたら何時の間にか一話が出来たので投稿.......。


楽園の素敵な巫女

 だらりと畳の上に手足を投げ出し寝転がる。

 

 季節は春、ぽかぽか陽気に春告精が「春ですよ~」っと幻想郷を飛び回る時期だ。

 人間も妖精も妖怪も神様も.......例外はあるだろうが心が浮かれ端から見ると意味もなくずいぶんと楽しそうにしているふうに見える。

 私も勿論寒くて凍えそうな冬や、肌を焼く様な悪意すら感じる夏、掃いても掃いても掃除が終わらない秋なんかよりもよっぽど春は好きだ。 桜は綺麗だし、冬はあんなに高かった野菜も安くなり始める.......なにより凍え死ぬ心配がない。

 

 .......さて、そろそろ妖精やら妖怪やら何を言っているんだお前は的な視線を何処かから感じ始めてきた私。 その視線が自分の勝手な妄想によるものだと理解してはいるが加速した妄想は今更止まってはくれず勝手な妄想は勝手に状況説明を始める。

 

 ここは『幻想郷』現代から隔離された『忘れ去られた者達』の理想郷。 

 科学という世界的宗教を前に現代社会では忘れ去られた.......否定されたと言っても良い。 妖怪や妖精や神様、そういった不思議生物達の理想郷だ。

 此処では昼間妖精達が空を飛び回り、夜は妖怪達が我が物顔で徘徊する。 人間は心の底から神様に祈りを捧げるし、神様は人間を外では有り得ない程気にかける。

 

 .......とまぁ簡単に言えば日本ファンタジー万歳なカオス極まりない場所、それが『幻想郷』。

 

 じゃあ現代社会から隔離されている筈の幻想郷で現代社会をよく知っているお前は何なのか。 

 

 現代社会から逃げてきた神か? 妖怪か? はたまた別の何かか? .......難しい話じゃあ、ありません。

 

 何時と知れず死に朽ち果て、輪廻を巡ってこの身体.......神さえ信じぬこの魂、なんの因果か巫女になる。

 

 「楽園の素敵な巫女、博麗霊夢たぁ.......私の事よぉ.......」

 

 どうせ誰も居ないし格好つけて宣言しようとするが今の自分の姿を想像してばからしくなる。 初めは大きかった声が徐々に小さくなっていくのにそういった心境の変化が表れていた。

 

 難しい話じゃない、本当に簡単な話だ。 現代社会で暮らしていた男性A君はファンタジー世界で暮らす美少女霊夢ちゃんに生まれ変わりましたよーって話。

 

 深刻な問題に直面した元A君、現霊夢ちゃんは気をまぎらわせる為に自身の生い立ちを物語風に思い出していただけなのだ。

 

 「.......あっちだったら両手を挙げて喜んでいる様な状態なんだけどねぇ」

 

 私が直面した深刻な問題.......それは時間である。

 日々の日課、掃除に洗濯あとは洗い物? あちら側では煩わしいそれらが退屈しのぎの筆頭に上がる程に変化の無いここ最近、私は時間をもて余していたのであった。

 .......少くともうら若き乙女が畳の上で寝転がってブツブツと恥ずかしい黒歴史を量産し始める位には私にとって深刻な問題である。

 

 もうすでに十日は経っている、寝たり、修業したり、寝たり、草履を作ってみたり、先程のように黒歴史を量産していたり、寝たり.......暇を潰す方法はあらかた試してしまいどれもこれも飽きてしまった。

 

 「神社に誰か来れば話は別なんだけど.......はぁ.......」

 

 私のだらけている場所『博麗神社』は私の家であり仕事場だ。 年期のある.......言い換えれば少々ぼろっちい我が神社は見た目と同様に人が来ない。

 人外魔境、幻想郷にたてられた神社である『博麗神社』の巫女さんの祈祷や作った御守りはそれなりに効果がある筈の物だ.......神社に祭られている神の姿どころか存在すら感じた事はないが。

 

 人が沢山来てさえくれれば暇をすることも無いんだけどなぁ.......と再び口に出すが無い物ねだり、客は来ないし暇は潰れない。

 

 現代社会を生きていた私にとって時間を無意味に消費する事はどんなに金を使った高級な料理よりも贅沢極まりない事だと言うことは理解している.......だが、どんなに高い高級料理でも毎日食べれば飽きが来ると言う物だ。 事実、私は飽きた。

 

 「.......あいつも何時もなら呼んで無いのに来る癖に」

 

 親友の顔を思い浮かべてハッとした、暇なら自分から向かえば良いのだ。 

 私は藁で出来たお手製の草履を履くと意気揚々と親友の家へと飛んでいった。

 

 

 

 

 下には一面の森.......ファンタジー様様な世界だ、人間だってこの身一つで空を飛べるさ。

 文字通り『飛んで』親友の家に向かう私ではあったが.......少々不味い事になっていた。

 通称魔法の森と呼ばれる此処は幻想郷の中でも中々の危険地帯だ、名前につく魔法の字は伊達ではないらしく一度森に入れば人間でさえ食べてしまう様な食人植物やら辺りに毒の胞子をばらまく人と同じくらいの大きさのキノコがうじゃうじゃしているらしい。

 

 まぁ、空を飛べる自分にはあまり関係の無い話ではあるので其処は問題ではない。

 問題は至極単純。

 

 「.......あいつの家ってこっちだったかしら?」

 

 私が迷子になっただけである。

 いや、違う、違うのだ。 別に私の記憶力が壊滅的な訳ではなく彼女の家に最後に行ったのが半年以上前なだけで私の所為ではない。

 

 もう今日は諦めて家に帰ろうか.......と考え始めるまで探して漸くあいつの家を見つけた。

 

 どうやら以前来た時よりも家の周りの木が成長してしまっていたようで葉により私の視界を遮っていただけのようだ。

 あちら側では有り得ない成長速度だがあまり考えないようにした、急成長の理由なんて此処が幻想郷の魔法の森だからで充分だ。

 

 迷った腹いせに霊力と呼ばれる不思議ぷぁわぁーであいつの家を隠していた葉や枝を消し飛ばす。 

 先程より断然すっきりとした光景に満足すると私は飛行を止めて地上に降り立った。

 

 ドアをノックしようとしてソレが目に入った、半年前には無かったドアの横に着いたソレが。

 

 「懐かしいわねぇ.......外ではもうコレが幻想入りする様な時代なのかしら?」

 

 ソレは所謂ドアチャイム。 押すことによって音が鳴り家に訪問者が来ていると教える道具だ.......コレが幻想入りしてきたという事は外ではインターホン、いやひょっとしたらそれ以上の何かが一般的に出回っているような時代なのかも知れない。

 

 記憶に埋もれかけたあちら側の懐かしい機器に少しばかりテンションが上がってしまう。

 ドアを叩くよりコッチの方が良いと考え勢いよくそのボタンを押した。

 

 ―――ピン.......ポン

 

 懐かしい音、知っていた通りの音を鳴らしたソレに気分は更に良くなる。 あいつが出てきたら似たような物を拾って無いか聞いてみるのも良いかも知れない、いや絶対に聞こう。

 

 ..............?

 

 .......反応が無い、留守なのかそれとも聞こえなかっただけなのか。

 私は一応コンコンとドアを叩いて見るがまるで反応が無かった。

 ドアに耳を当て中の音を聞いてみればグツグツと何かを煮込む様な音が聞こえるではないか。 中にいるのは間違いない、いくらあいつががさつだからと言って火にかけた物を放置して出かける程では無い.......とも言い切れないのが恐い。

 

 「魔理沙ぁー! いるなら返事しなさいよー!」

 

 暫く待って見るが返事は無し。 本当に聞こえていないだけなのだろうか.......? 

 

 まさか.......事故では?

 

 嫌な予想が頭を過る。 私のただの妄想ならそれで良いのだがもし事故だった場合を想像して背筋が冷たくなる。

 

 いやしかしまだ決まった訳じゃあない。 ただ出るのが面倒で居留守をしている可能性だってあるのだ.......それはそれで悲しいが。

 

 大きく息を吸う、頭の中では私を知っている人ならば思わず耳を疑うような、何らかのリアクションを起こしてしまうような言葉を考えついていた。

 

 これで駄目だったら鍵のついていない無用心なこのドアを開けて上がりこむつもりだ。

 

 「まぁぁぁぁりぃぃぃぃさぁぁぁああぁぁちゃーーーん!! あぁぁぁああぁぁそびぃぃぃいぃぃまーーーーしょ!!!」

 

 すぐにビックリしたかのような少女の声が家の中で聞こえた。

 

 ドアが勢いよく開き誰かが飛び出してくる。 箒と風呂敷に包んだ荷物を持って飛び出してきた誰かは私を突飛ばして私と一緒に仲良く地面に転がった。

 

 大きな爆発音。 まるで家の中で爆弾が爆発したような音に目を白黒させた私の目に飛び込んできたのは黒い煙をモクモクと立ち上らせる家と呆れたように此方を見つめる親友の姿だった。

 

 「.......なんの用だぜ、霊夢?」

 

 「あ.......あはは。 今日暇かなー.......なんて.......」

 

 ジト目で私を見つめた彼女は未だにモクモクと黒煙を吐き出す自身の家を指差して口を開く。 

 

 

 「あぁ.......今丁度暇になった所だぜ」

 

 

 彼女は何か諦めた様に肩を落とした。

 黒と白の服装、まるで男のような口調の少女.......この少女が私の親友。

 

 

 名前を『霧雨魔理沙』と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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