(もう、高校生か…)
俺、
今日から、俺は家から20分ほどのところにある、公立の高校、
ここまでならば、俺はいたって普通の高校生だ。
だが、俺には普通の高校生とは、いや…たぶん世界中のほとんどの人とは、明らかに違っているところが、1つだけある。
それは…俺には前世の記憶、つまり生まれてくる前の記憶があるということだ。
俺が前世の記憶があるということを自覚したのは、忘れもしない、3年前の今日のことだ。
その日俺はある1曲の歌が頭のなかで鳴り響いた。
刹那、俺のなかに膨大な記憶がながれこんできた。
それは、報われない人生を送って死んだ、子供たちの死後の世界ことだった。
俺はその死後の世界で、どこか不思議で、だがとても楽しく騒がしい人達に出会った。
運命にあらがうために戦線を作り、そしてその戦線を率いてきた活発な少女。
少しホモっ気があるが、いつも一緒にいた、大親友の野球少年。
どこか神秘的で、しかし実は天然ボケで、学食の激辛麻婆豆腐が大好きで、俺が愛しずっと一緒にいたいと思った美しい少女。
他にも、笑い合ったり、野球したり、運動会をしたりした大勢の仲間たち。
そんなみんなと一緒に、俺は本当は存在しなかったはずの青春を送り、死後の世界から消えた。
記憶が流れ込んできた直後は、なにかの幻想かと思った。
だが、その鮮明な記憶は、それが本当のことであるというのを物語っていた。
その後、俺は学校のことなんて忘れてみんなを探した。
自分がこうして前世の記憶をもっているのだから、もしかしたら…と思っていた。
だが現実はそんなにあまくはなかった。
よくよく考えれば、そんなにうまい話があるはずがなかったのだ。
まず1つ目に、みんなが俺と同じ時代に、生まれてくる保障がない。もしかしたらみんなはもっと後に生まれてくるかもしれないのだ。
2つ目に、もし一緒な時代に生まれてきていたとしていても、みんながあの死後の世界の記憶をもっているとは限らない。ただ単に俺が特別だっただけなのかもしれない。
3つ目に、もし1つ目と2つ目の条件をクリアーしていても、みんながあの世界にいたときと同じ、容姿や性格をしているとはかぎらない。高校生となった俺は、なぜかあの世界と同じ容姿や性格をしているが、これも俺が特別だっただけなのかもしれない。
そして、最後の4つ目に、もし奇跡が起きて今までにあげた3つの条件をクリアーしていると仮定しよう。だがこの世界は広い。西暦2036年の今の世界の総人口は約80億人、日本でも、減少すると25年ほど前は予想されていたが、その予想を軽く覆して、今の日本の総人口は約2億人にもなる。そのなかで俺が知っている20人ほどの仲間に、会える確率は限りなく低い。それにここは福井県。47都道府県のなかで、2番目に覚えられていない県だ。だから人口も少なく約80万人ほどしかいない。
だから今の俺はもう、みんなに会うことは諦めている。
せめて俺が愛した少女だけでも会いたいとは思っているが、それも叶わないだろう。
そしてみんなと会えないと、悟ってしまったその日から___この世界は俺にとって空虚な世界になってしまった・・・
紅葉学園に着いた俺は、新入生の自転車置き場に自転車を停め学校に入った。
クラスは既に分かっていて俺はBクラスだ。
同じ中学校を卒業したやつで、この学校に進学したやつは一人もいない。
なので俺は一人として知り合いがいないはずの教室に一人寂しく入っていった