バレンタイン回、意外と好評で驚きました(笑
さてワンクッション挟みましたが、連合艦隊の為に提督達が動き出します。
なお、東郷さんは今回は出ません(エ?
今回のプロット原案はオーバードライヴ様より頂いています。
響を活躍させようとしたら、アンツ環礁への二正面作戦になったでござる。
追記:スターダストの描写を更新致します。
出張先、啓開の鏑矢も是非合わせてご覧下さい!
『助かった。まだカズには繋がるみたいだ』
高峰のチャットルームに見知った顔が終結する。深夜の急な呼び出しに対して、その緊急性が窺えた。
集まったのは521戦隊で武蔵の専属オペレータを務める杉田中佐。呉の潜水隊指揮官の渡井中佐。特設調査部の高峰中佐。そして即応打撃群司令部の長官を務める事になる月刀大佐。互いに海大時代に馬鹿をやった問題児組である。
『それで要件は?このメンバーで集まる時は碌でもないんでしょ』
笹原がいないがまずは、現状報告する―と高峰。
『カズ。今ウェークに戻ってるんだよな?通信状況はどうだ?』
「ノイズは気にならない程度だが?」
月刀の答えに対して、高峰はやはりか―と呟く。
『・・・青葉との通信が途絶した。おまけにチューク諸島周辺に強いジャミングが掛けられている可能性がある』
青葉を送りまでしたのに不甲斐ないと―高峰は苦虫を噛み砕いた顔をする。
『諸用で青葉を、東郷の所に向かわせたらこの様だ。昨日のヒトロク・マルマルからトラック泊地と連絡がつかない。また同様のジャミングをエニウェトクでも観測した。戦艦レ級の件で、既に壊滅してるクェゼリンはともかくとして、ウェークを含めた他泊地に異常はない。中央コンピュータがクラックされた可能性は低いとみて、調査を開始した。それで、周辺へのジャミングの影響半径を700kmで逆算して検証した結果がこれだ』
中部海域の周辺地図が表示され、各泊地がポイント。円弧が次々に描かれ、検索にヒットした場所が示される。ポイントされた場所はアンツ環礁。
『旧ミクロネシア連邦の西側アンツ環礁で、エニウェトクの539航空偵察隊が撮影した映像だ』
荒い映像だが、和服のような外装に白い肌。少なくとも深海棲艦なのは疑いようがない。こちらの偵察機に気づき口角を上げる様は、こちらを嘲笑っている様だ。コントロールを失ったのか画面が傾き、最後には海面に衝突した所で映像は終わっている。
『こいつを極東方面隊総司令部は“環礁棲鬼”と命名。ジャミングを発生させる陸上タイプだが、上層部はこいつを非常に重く見ている』
情報通信を敵に抑えられてしまえば、まったく手が出せなくなる。艦娘に限らず、戦いに対するアドバンテージをとられたといっても過言ではない。
『かろうじて通信圏内だったエニウェトクは、マーカスまで後退。トラックもグアムまで撤退しろと命令が出た訳だが・・・』
『つまり委員長はこれを知らずに、いつのまにか孤立しちゃった訳だ』
渡井の回答に対し、当たっても欲しくないがな―と高峰。
『あいつの事だ。資源と戦力と兵糧さえあれば、一ヶ月は粘れるだろ?』
海大時代の防衛戦・撤退戦のシミュレーションで歴代最高位をマークしたのは委員長だったよな―よ杉田が口に出す。
『でもそれって、戦艦・空母クラスが潤沢な場合でしょ?おまけにこっちの疲労を無視した状態でね。それで、今のトラック泊地の戦力はどんな感じ?』
『ウェークのカズの所とほとんど変わらない。536戦隊に摩耶、足柄、北上。537水雷戦隊にВерный、五十鈴、由良、磯風、秋月、朝雲―ってなっているな書類上は。あとは泊地防衛航空隊として龍驤、瑞鶴。そして工作艦の明石だな。後は青葉がまだ残っていれば追加で1隻』
航空母艦2隻、巡洋艦6隻、駆逐艦4隻とはなかなかの規模である。
せめて、戦艦クラスがいれば安泰だったかと月刀も評する。
『おいおい。五航戦っていったら、今俺がいる横須賀にいるんじゃないのか?』
『あれ、杉田知らない?元瑞鶴の艦娘がトラック泊地の工廠で、改大鳳型の艤装定着に成功したらしいよ』
一枚噛んでるんでしょ?という渡井の問いに対して、まぁなと高峰は頭を抱える。
暫く場に沈黙が落ちた後、最初に口を開いたのは月刀だった。
「・・・つまり俺達にMI撤退戦の再現をしろって事か」
『そういう事みたいだね』
と渡井が同意する。
『まぁ、撤退命令が出てる海域に飛び込むんだ。相当の処分が上からくるな。これは』
委員長には色々と借りがあるからな―杉田も付き合うしかないなと頷く。
といっても僕等が勝手に巻き込んでた気もするけど―と渡井。
『・・・憶測で済まないが、一件だけ伝えておく。委員長は踏み越えちゃいけない線まで、踏み出しちまった。俺らと同じ黒い所までドップリとだ。環礁棲鬼についてはともかく上層部は、戦艦ル級クラスがトラック泊地に向けて西側から移動している所までは確認済みな上での判断だ。援護もなし、無理も承知の上でトラックに籠城するか、敵艦隊のド真ん中を突っ切ってグアムに向かうかの二択を迫ってやがる』
「あいつらに死ねってか、上層部の大義名分のために。そんな事が許される訳はないだろう」
じゃあ決まりだな。俺らは揃って本当の馬鹿だよな―軽口を皆で叩きつつ。
月刀が同意を示した所で、ブリーフィングが始まる。
『まずやらなきゃいけないのが、環礁棲鬼だな。コイツをどうにかしなきゃ“鷹の目”も使えん』
杉田お得意の超長距離狙撃。大和型と組ませた実力は折り紙つきである。
しかし通信が遮断されている環境では、その技量を十二分には発揮できないだろう。
『潜水艦ならトラックが包囲されてても突っ切れるよね?呉から潜水隊は出せるけど。燃料はともかく、乗り込んで行って魚雷の残弾があるかどうか次第だね』
強襲されている泊地に乗りこんで、満足な補給が出来るとは思えない。
ならば別ルートで仕入れるしかない。
『なぁカズ、横須賀の艤研から試製魚雷を預かってるだろ?あれ渡井に渡せそうか?』
「Fat魚雷か?まだ実験してないが、積めなくはないだろうさ」
今、月刀が艤装研究開発実験団から預かっている装備は3種類ある。
その内2つは試製FaT仕様九五式酸素魚雷改とWG42(Wurfgerät 42)である。
どちらも満を持しての開発だが、実用性は使ってみなければとは思う。
『電ちゃん達が環礁棲鬼を叩いて、僕は月刀の部隊から試製魚雷を受け取る。通信が回復したら、杉田が大和、武蔵で狙撃すると―こんな感じでOK?』
『二正面作戦か。当事者のお前はどうなんだカズ』
高峰の問いに対して、月刀は首を横に振る。
「トラックには俺一人で運ぶ。小型で機動力のある輸送機が今あるんでな」
『正気かお前!?いくら変態飛行野郎のお前でも、制空権がない海域を強行突破なんて無理がある!』
「じゃあ水雷戦隊でも同伴させるか?輸送船なんかじゃ間に合わないだろうが」
ジャミング中にアウトレンジでの航空援護は不可能に近い。直掩レベルにしろ、そもそも艦娘の速度では輸送機に追いつけない。ならば例え単騎でも向かうしかない。
『なぁカズ。スターダストは使えないのか?』
スターダスト=STrategic sea ARea Domination Unit SysTem(海域掌握用戦略システム)は艦娘の機動力と、司令官との戦術リンク同調を支援する為の、試作品である。
本来水上スケートの様に滑る為のブーツを、スラスターと一体化した推進システムを搭載。
また、艦娘自身やリンクしている同調者を保護をする為の、機動防盾(シールドピット)を6基運用出来る。
操る司令官と戦う艦娘、両者の同調が完璧に近づく程、このシステムの真価が発揮されるそうだ。
しかし艤研から預かっただけで試運転も済んでいない状態だ。とてもではないが不確定要素を作戦に持ち込む訳にはいかない。
「無理だな。電達に使わせる訳にはいかない。アンツ環礁攻略戦は明朝マルロク・マルマルに開始する。これで良いな」
『呉の潜水隊は、もうグレイハウンドで出撃させたよ。横須賀で杉田と大和ズも拾うそうだ』
5319航空輸送団のティルトローターがたまたま呉にいたらしい。
高峰がスクランブルをかけると気兼ねなく乗ってくれた。
―――さて、助けを求めてる委員長の所に向かうとしますか
5期の黒烏による、チューク諸島海域強行突破作戦が始まる。
そして、高峰は誰もいなくなったチャットルームで呟く。
―――あの時の貸し、返してもらうぞ委員長
以下オーバードライヴ様と相談していた時に、頂いた嘘予告です。
チューク諸島周辺に戦艦棲姫を複数含む巨大な敵包囲網が形成された。チューク基地の資材も残りわずか。この包囲網を一気に突破し、チューク艦隊と合流、深海棲艦を撃破せよ。
高峰「それでは、“委員長”のお手並み拝見といきますか」
月刀「響、航空支援を出す――――――突破しろ」
響「――――――私は、沈まんさ」
東郷「どこの馬鹿だあんな極低空で連絡機持ってくる奴!」
高峰「あの時の貸し、返してもらうぞ委員長」
東郷「もう返しただろ?……まあいい。で? 誰を脱出させればいい?」
戦え。戦わずして未来を語るな。
↑いやぁ、恰好良いです。設定を生かせるように私も頑張ります!