艦隊これくしょん~鶴の慟哭~   作:エーデリカ

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すみません。リアルで色々あったもんで、ギャグとシリアスごちゃ混ぜになってます(苦笑

おまけに、私とかワタシとか連呼してるせいで、どっちがどっちか分からなくなってます。



サブタイトルはSPYAIRのMy Worldより。

”自分が自分である為”のアイデンティティって何なんでしょう?本当に。

ぜひ、歌詞を検索してみて下さい。

今みたいに、落ち込んだ時に聞くと励まされます。



作者は今こんな感じですが、とりあえずどうぞ。


二章-8 My World

「へぇー……。提督って、こういうのが趣味なんですか?」

 

執務机の上には、隠していたが明石に発掘された――うん。まぁそういう本が何冊か。

グラマーよりもスレンダー派なんですね……ちょっとそこ。他人の趣味暴露しないの。

もしかして、私よりВерныйちゃんや瑞鶴さんを狙っているのってまさか……それ以上はいけない!

 

「いや、何で君は“書庫に書類を避難させてくれ”って言うと、何事もなかったように本棚を漁る訳さ!?」

 

いや、男は一つや二つの秘密は隠しておいた方がミステリアスで良いじゃないか。

ジトー。やっぱり白い目で見ている明石に、早く運んでおいてくれ――と言う。

 

「……結局、捨てはしないんですね」

 

まぁ良いですけど――と、ようやく執務室の整理が完了する。

 

 

 

 

 

「でも何で、書類系を全部地下倉庫まで運んだんですか?」

「一応ね。近々、敵の空襲がある可能性も考えてた」

 

現状を整理しよう。まず、ありえない。東郷は先日の戦果を確認しながら、執務室で呟く。

 

戦艦ル級2隻

空母ヲ級2隻

重巡リ級1隻

雷巡チ級2隻

駆逐ロ級4隻

潜水カ級9隻

 

これ程の大艦隊が、なぜチュークの哨戒線に引っかからなかった?潜水艦を除いても水上艦11隻。目視はともかくレーダーにもかからないはずがない。

 

そして高峰の事だ。チャットルームで済むだけの会話であったにも関わらず、わざわざ青葉をトラック泊地に寄越してきた。索敵の神様“幻視”とまで言われた彼。敵艦隊の接近を察知出来ずに、青葉が交戦するなど彼らしくない。

 

ドックに放り込まれた青葉に尋ねると、ただの監査なのにフル装備で行けと言われたらしい。彼自身が最悪の可能性を考えて、送ってきた助っ人とでも言うべきか。

 

そして、先程からの電波障害。まだ、戦術リンクに影響するまでではないが、明らかに妨害されているとみるべきだ。現在本土や他泊地に対して、長距離通信が行えなくなっている。

 

「制海権はあるけど、トラック泊地は完全に孤立しているといった状態ですか?」

 

明石の問いに対して。うん、まぁそういう事――と答える。

 

溜息をついた所で、敵機の接近を知らせる警報が泊地に鳴り響く。ここでも先程の不安が的中する。

 

通信機に飛びつき、館内の有線放送を使う。

 

「皆聞いてくれ、スクランブルだ。敵さんがどうやったか分からないけど、また哨戒線を突破されてる」

 

ここまで来ると、超広範囲のジャミングかあるいは、超高速度の敵の接近を許している事になる。

 

「第一艦隊の旗艦は摩耶が担当。足柄、北上、五十鈴、由良、朝雲を随伴艦として編成。第二艦隊。秋月、龍驤は磯風旗艦にて航空支援を」

 

やはり、航空戦力の充実は急務だった。そして、話し合う必要がある二人を呼び出す。

 

「ヴェルと瑞鶴は執務室へ、話がある。明石は工廠で待機。各員の奮闘に期待する」

 

では、私は工廠へ――そう言い残して去っていく、明石に問う。

 

「ねぇ明石。後は任せて良いかな?」

「らしくないですね、提督。指揮官は貴方ですよ?」

「それでもだよ。もし僕に何かあったら、皆が生き残る方法をとってくれ」

 

「……分かりました。でも何があっても、私は提督を助けますよ」

 

鉢巻を締め自分の戦場に向かう彼女は、銃を持たなくても艦娘なのだろう。

 

 

 

 

 

「提督さんっ。なんで私達だけ待機なのっ!?」

「分かってる。そもそも、何事もなかったように哨戒線が突破されてるんだ。いつもとは何かが違う」

「新型の敵って事?」

「その可能性も十分にある。さて、ここで君たちに聞きたい。意見が欲しいんだ」

 

僕の指揮下で一番の古株であるヴェルと、一番新人の瑞鶴。彼女達の判断なら平等だろう。

 

「僕達には、大きく分けて2つ手段がある。一つはこのまま籠城する事。幸い五十鈴たちの遠征のおかげで、資源は何とかなる。といっても、さすがに一ヶ月は持たないけどね。他泊地から応援が来るまで粘るっていうのが一つ」

 

「もう一つは、グアムかパラオに撤退すること。けれど、司令部からの撤退命令が受けられない以上、泊地を放棄するのは敵前逃亡になるだろうね」

 

東郷の問いに対して、ヴェルが進言する。

 

「司令官。トラック泊地を放棄すべきだ。極論かもしれないけど、ここが孤立したと考えた前提で動くべきだ」

 

まぁ、君ならそうするよね。援軍が得られない以上、籠城するリスクははるかに高い。そして、瑞鶴は?と問いかける。

 

「私は残るべきだと思う。例え撤退が成功したとしても、敵の数は減らせない。その艦隊が他の泊地に進撃する可能性もあるわ」

 

この場から逃げても結局は、問題を先延ばしにするだけなのだろう。強襲されるのが、トラックか他の泊地になるだけなのだ。東郷は俯き、両者を天秤にかける。

 

「ヴェル、瑞鶴。龍驤たちと合流してくれ。泊地を守りきる。ここが落とされたら、本土から南方海域への補給ルートを断つ事になる。それこそ戦線を後退させる、最悪の事態になる」

 

だから力を貸してくれ――そう言った所で、戦闘機の風切り音。執務室の窓が震える。

 

沖に出た龍驤が、ここまで艦載機を飛ばしているはずはない。ならば……

 

「二人ともっ、伏せろ!」

 

 

 

 

 

全てがスローモーションの様に感じた。提督さんは、私達を廊下側へ突き飛ばす。

 

あれ?私はこの光景を見た事がある。

何時の事なのだろう。覚えている?覚えていない?

真紅に映える部屋の壁。誰かの体に庇われ、閃光が奔る。

 

――――お前だけでも、逃げろ

 

再び目を開けた時に、辺りには人であった何か。私に覆いかぶさった何かは崩れ落ちる。

人であったものとは別に、私の目の前に人が沢山いる。

そう、額に銃を突きつけられて、その人が言った言葉は……

 

――――悪く思うなよ、お嬢さん。これも人類の為の礎なんだ

 

銃声が木霊する。

 

 

 

場面が変わる。壁と天井の全てが真っ白い部屋。

 

白衣の研究者達の言葉は、私には聞こえない。

 

薬物やら実験やら、時間が経つごとにワタシと言う器は壊れていく。

 

私はワタシが消える事を拒んだ。ワタシは助けてと、ずっと私に叫んでいた。それでも私が伸ばした手は、ワタシには届かない。掴もうとして空を切った手から、ワタシは崩れ落ちていく。

 

研究者達の反応が歓喜から失望に変わった時。私はあの部屋から逃げ出した。どうして逃げれたかも覚えていない。

 

 

 

私があの町、雨の降り止まない漁港に辿り着いたのはそれからだった。

 

私が喪ったものは……もう覚えていない家族と、思い出の記憶。そしてワタシという存在。

 

ワタシがいなくなった後、私であった瑞鶴はもういない。翔鶴姉の妹としての私はいない。

 

――――そう、私は何者だ?そして一人だけ立ち止まって、何をしている?

 

世界の全ては、私を通り抜けていく。ワタシを喪ったとしても。

 

ワタシはずっと叫んでいたんだ。例え私が、ワタシでなくなったとしても。例えその声が枯れたとしても。そう、それは……私がワタシである事を、証明する為の慟哭なのだと。

 

――――ワタシが、私として生きたいという慟哭なのだと。

 

私はワタシの声が聞こえなかった。自分自身すら救えていないのだ。

 

 

 

今、何が起こっている?劫火が私の親しい人を奪おうとしている。

 

ナゼワタシナノカ。モウヤメテ。イヤダ。ミエナイ。キコエナイ。フレラレナイ。ワタシハココニハイナイ。ドウシテ。ゴメンナサイ。ワタシニハスクエナイ。

 

もう。もうこれ以上、私から大切なものを奪わないで――――

 

 

 

 

炎に包まれた執務室から、夜空が見えた。天井が抉られたこんな惨状でも、ヴェルは冷静だった。

 

気を失っているのか、目の前に倒れ伏す東郷。そして、何かトラウマのスイッチが入ったと思われる瑞鶴。

状況を打開する為に、まず廊下に東郷を放り投げる。ドガッ――という鈍い音。

 

そして瑞鶴か。昔、空爆で何かあったのか?彼女に駆け寄る。

 

「瑞鶴。大丈夫だ。私はここにいる。大丈夫だ」

「いやだ、いやだ、いやだ、いやだ。もうこれ以上喪うのは、見たくないっ」

「そうだよ。だから私達で司令官を助けるんだ」

 

結構酷い扱いをしたけど……と視線を向けると、叩きつけられ廊下の壁で止まった東郷が意識を取り戻す。

 

「……ヴェルいるかい?ごめん頭を打ったみたいだ。ちょっとくらくらする」

「大丈夫だ、司令官。傷は浅い」

 

自分が投げて容体を悪化させたであろう事を、棚に上げつつヴェルは答える。

 

「……起き上がると結構胸が痛いんだけど、肋骨もやられたのかな?」

「……大丈夫だ、大丈夫だよ、司令官。傷は浅いんだ」

 

うん、私のせいじゃない――――私のせいじゃない。きっと爆発のせいなんだ。

 

「ヴェル。それで瑞鶴は無事かな?」

「少し錯乱してるみたいだけど、傷一つしてないよ」

「……こっちに連れてきてくれないか」

 

 

 

 

 

譫言の様に、否定と謝罪の言葉を繰り返す瑞鶴。そんな彼女の頭を東郷は撫でる。

 

「……怖いのかい、瑞鶴?」

 

問いに対して、瑞鶴は首を東郷に埋める。

 

「ねぇ、提督さん。ワタシは私?」

 

活発だった彼女とは思えない、今にも消えてしまいそうな声だ。

 

「……そうだね、君は君だ。例え記憶という物が僕から喪われたとしても、君の事はきっと僕の魂が覚えているだろうね」

 

「艦娘の艤装だって、沈んだ艦艇の魂を持っている。それはきっと、乗ってた乗組員の記憶や思い出なんだ。彼らはここにいなくても、その魂に僕らは救われている」

 

「だから記憶だとかっていうのは、実はどうでも良いんじゃないかな。良くあるでしょ?あの人とは何処かであった事があるかもしれないって。それは前世の記憶と言うか、実は魂に刻み付けた大切な何か――なんじゃないかな」

 

「だから、僕らが僕らである為に、喪って良いモノがある訳じゃないんだ。勿論瑞鶴もだよ」




ある方の感想欄に、お邪魔した時にも書いたのですが、

”生きる”って何なんでしょう?



以前書きました、エリ・ヴィーゼルの引用。
「愛の反対は憎しみではなく、無関心である。(中略)そして、生の反対は死ではなく、生死に無頓着なことである。」

……どうやら、まだ私は死んでいないようです。



さて、明日からも頑張りましょうか!
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