艦隊これくしょん~鶴の慟哭~   作:エーデリカ

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空挺降下しないといったな、アレは嘘だ。

作中で月刀大佐は「空中」なんて言葉は使わずに「作戦海域までは」と言ってました。
天龍達の早とちりですね。

深海棲艦同士の呼称ってどうなんだろう?
追記:りょうかみ型護衛艦様の深海棲艦語録より姫・鬼クラスの呼称をお借りしました。
軽巡棲鬼:ケスガピア
空母棲鬼:ダマスカロン
空母棲姫:アルスカン
戦艦棲姫:ゼグルート
環礁棲鬼:バレラスルア
戦艦水鬼:ガルデロール
深海棲艦が仲間内でどう呼ばれてているか、慟哭中の一例を引用させて頂きます。

軽巡棲鬼の個体名フェルツ、ワジールは阿賀野と那珂、両方が出てきてます。

それではどうぞ。


二章-11 The Twins

人間や艦娘とは、面白い生き物だ。

和服を纏い、帯剣し、岩場に腰掛けている――人間から環礁棲鬼。深海棲艦からはバレラスルアと呼ばれる彼女は、自分がそこそこの知能を持っていると自負していた。

 

動物とは異なる文化を形成し、鳴き声ではなく言葉や文字で交流する。情報化されてしまっている今でも、莫大な情報を収集・加工・処理する能力を持っている彼女は、人間という生き物に非常に興味があった。インターネットと呼ばれた情報の海に飛び込み、自分の欲しい情報を手に入れては学び、吸収する。そんなうちに他の深海棲艦とは、認識が異なってきている事は自覚していた。

 

彼女には見境もなく、船を破壊し海を統べるというキングの命令が理解出来なかった。

深海棲艦は知能を持つ生命体(生きているのかは別として)であり、負の感情に身を任せ、獣の様に蹂躙し続けるモノであっては決してならない――そう考えていた。

 

先日からガルデロールの行方が、不明のままだ。配下である”戦艦の姫ゼグルート”や”空母の鬼ダマスカロン”もいないとなると、西方の島に攻勢に出たに違いない。

 

あの怨霊が昇華された塊のような奴を、人間に近づけさせてはならない。そう思って情報加工の範囲を広げたが、それが裏目に出たのだろう。人間達にとって、私の反逆行為は迷惑に映ったらしい。

 

偵察機とやらが飛んできた時に、周波数帯を変えて呼びかけてみたが反応はなし。なぜか海面に衝突したのには、いまだに疑問を覚える。さすがに使い捨てのつもりじゃなかったろうに。

 

彼女の膨大な索敵範囲ならば、人間達が自分を恐れて撤退していったのが分かった。違う、そうじゃない。本当に恐れるべきはガルデロール達の方だ――そう伝えようにも、話が通じないのではどうにもならない。

 

さっきから周りをウロウロしている、ケスガピア=軽巡の鬼を示す名を持つ姉妹の呼びかけで我に返る。

 

『マタ クダラナイ事ヲ 考エテイル』

『バレラスルアハ イツモソウ』

『あぁ、フェルツとワジールか。お前達はガルデロールと一緒じゃなかったのか?』

『ガルデロールカラノ 命令』

『邪魔者ハ 止メロ ソウ言ワレタ』

 

邪魔者って私の事か。味方に理解者がいないと、非常に動きにくい。人間の言葉を借りるなら“孤独戦鬼”とか名前を付けて欲しかった――と自嘲する。

 

面倒だな。この軽巡姉妹をどうしたものかと頭を抱えると、レーダーに反応がある。島の北側と南側からの航空隊による挟撃。

 

『ヤハリ 来タネ』

『愚カナ 艦娘共メ』

 

会って話せば通じるのかなぁ。お互い武器を持たずにというのは、相手の性格次第だが。

 

ふと目の前の島に視線を向けると、こちらの対空砲火をすり抜けて接近する輸送機。

あっ、なんか落とした。爆弾じゃないなアレは。いち、にの4つ。パラシュートで島に降りて何するつもりだ?折角ならこっちに来れば良いのに。といっても、撃ち落とされるのは目に見えているが。

 

分からない事が、あればある程面白い。さて、どんな戦いを見せてくれる?艦娘達よ。

 

 

 

 

 

輸送機がミクロネシア本島中央にさしかかる。だが、これ以上海に近づくと撃墜される。そんな中で月刀大佐が出した命令は単純明快だった。

 

――――海上でも、戦場への空挺降下でも、陸路でもない。それでも艦娘になら出来る事がある。

 

「空中から降下はしないって、言ったじゃないっ!」

「おらチンチクリン。後ろつっかえてるから、早く行け」

 

天龍に蹴り飛ばされ、輸送機から落下する暁。

 

「はりゃあーっ?!」

「また、こういうのやってみたかったのよね!」

 

雷と電が後に続いて、輸送機から飛び降りる。

 

大鳳と龍鳳の航空隊が南北から挟み撃ちにして、敵部隊を分断する。環礁棲鬼の護衛が手薄くなった所を、速やかに強襲する。発想は間違っていないが、戦場への空挺降下は危険だ。そうだとすれば、単純に降りる場所を変えれば良いだけの話だ。

 

電達がパラシュートを開き減速する。そもそも艤装の重量ではほとんど役に立たないが、降下速度を減らす事は出来ている。目指した先は――――川。

 

ミクロネシア中央部から南西に向けて流れるレメシ川。月刀が提案したのは、この自然の水路に乗り、アンツ環礁へ向けて進撃するという物だった。

 

「浮力力場、出力最大!」

 

脚部ユニットが唸りをあげる。水面への反発力が限界まで引き上げられ、落下のエネルギーを相殺しようとする。パラシュートを切り離し、勢いをそのままに主機をフル稼働させて川を滑り降りる。

 

「絶対にレディは、こんな荒っぽい出撃なんてしないんだからっ」

 

涙目の暁をよそに、加速する。ここからは時間勝負。龍田と睦月や如月が護衛に回っているとはいえ、稼げる時間は限られている。敵が不利を察して増援を呼ばれて、こちらの戦力で突破出来なくなったら詰みだ。

 

川の長さはおよそ10キロ弱。全速力で駆け抜けて15分から20分程度だ。電撃作戦にはちょうど良い立地条件。

 

「おまちかねだぁ、環礁棲鬼!」

 

視界に和服姿の深海棲艦が映る。しかし、刀片手に飛び込んだ天龍を阻んだ影があった。

艦娘と同じような、闇色のセーラーを着る深海棲艦。

 

計器が故障していなければ、この反応は鬼クラスだ。兵装を見ると、おそらく軽巡――司令部が名づけるなら、軽巡棲鬼とでも言った所だろうか。

 

『ニドトフジョウデキナイ・・・シンカイヘ・・・シズメッ!』

 

砲口をこちらに向けるに対して、天龍が距離を詰める。

 

「大将の護衛がたった一人たぁ、随分空母が嫌いみたいだなっ」

 

横薙ぎに振るった刀を避けて、交代する敵。魚雷の一斉発射に対して、回り込むように海面を滑り、砲撃戦に切り替える。スイッチして鬼に飛び込むのは暁。警棒を片手に肉薄する。

 

「私だって、突撃するんだから!」

「逃げるなら今のうちだよ?」

「電の本気を見るのですっ!」

 

電から投擲されたのはWG42=対地対艦攻撃用のロケットランチャー。加えて天龍と雷による魚雷一斉発射。本来の目的とは違えど、WG42はもともと当てるつもりはない。ロケットランチャーによる弾幕と、暁が近接戦闘をしながら鬼の逃げ道は封じている。そこに縛るように鬼がいれば、後はありったけの魚雷を叩き込むだけだ。

 

「貰った!」

 

雷跡が鬼に迫る。寸前で暁が飛び退き、炸裂する。やったか!?

 

しかし晴れた煙の中から爛々と双眸を光らせ、影が二つ飛び出してくる。

 

「ちょっと!?分離するなんて聞いてない!」

 

呆気にとられて片方に衝突されて突き飛ばされる雷。天龍も刀を構え直し、白兵戦に移る。

 

「暁、雷のフォローに入れ!団子頭は俺らでやる」

 

好戦的だった先程の髪を留めていないタイプと違い、目の前の団子頭は笑みを浮かべている。だが友好的――という訳ではなさそうだ。何かの雄たけびをあげた後、砲撃してくる。

 

「電。ロケランの残弾は!?」

「あと2つなのですっ」

 

上等だ。本来なら環礁棲鬼に使うつもりだったが、仕方がない。

 

天龍の合図のもと、飛翔するミサイル。海面に着弾して、派手な水柱を立てて水のカーテンが作られる。鬼の視界を一瞬でも遮られれば、それで十分だ。

 

身構えた鬼に対して、急加速して迫る天龍の刺突。のけぞって躱そうとするが、その動きが大きな隙となる。

 

「命中させちゃいます!」

 

側面から回り込んできた電による打撃攻撃。空になったミサイル発射管を両手に持って――そのまま敵の顔面を殴りつける。

 

派手に吹き飛び、海面に鬼が叩きつけられた。水泡と共に浮かんでくる気配はない。

 

「おい電!なんでお前は毎回、何かで殴りつけるんだよっ」

「はっ……ついやってしまったのです」

 

電のミサイル発射管に、ぶつかった相手が悪いのです――そう言わんばかりの総旗艦様には、もう何も言えないわ。

 

WG42を積むのにあたって、空挺降下する際に余分な兵装は置いてきた。残る電の兵装は護身用の警棒のみ。いや、だったらそれ使って、殴れば良かったじゃん……。ピカピカの新装備であったはずのWG42は、ウェークに届けられて数日でおしゃかになってしまった。

 

これ絶対に後で怒られる。駆逐艦の引率は任せろ――と言い切ってしまっただけに、あとの処分が怖い天龍だった。

 

ポチャン――――水音に気づき、電と天龍は慌てて舵を切る。水面からこちらを向いているのは敵の砲口。

 

『ヨクモ顔ヲ 私ノ顔ヲ殴ッタナ』

「まさか簡単に沈んむとは思っちゃいなかったが、しぶといねぇ」

「さっきよりも、鬼さんが怒っているのですっ」

 

いや、殴ったの電だろ。電は水中から飛び出した鬼の拳を、警棒で受け流す。

 

直後、電と天龍がいた場所を、砲弾の雨が降り注ぐ。現れたのは重巡リ級や軽巡ツ級らの敵部隊だ。さっきの雄たけびは、こいつらを呼び寄せたって訳か。

 

「電、構えろ!大鳳達が来るまで持ちこたえろ」

 

砲撃は致命傷にならない、魚雷もミサイルも尽きた。残ったのは、己の拳と得物のみ。それでも戦い続けなければならない。

 

 

 

 

 

「鬼さんこちら――と」

「追ってきてる鬼が、本当に鬼の形相で睨んでるのは気のせいかしら?」

 

一方、環礁棲鬼からどんどん離れていく暁達。追ってくる鬼に対し発砲するが、装甲に弾かれてしまう。

 

「雷は魚雷を使い切っちゃったし、私がどうにかするしかないじゃない」

 

暁が狙撃するのは、相手の顔。どうしても腕で庇う為に自分で視界を遮るか、回避する為に回り込ませるかの二択を迫らせる。

 

焦れた鬼の雷撃。余裕を持って躱しつつ、二人は引き付け続ける。

 

やがて怒り狂った鬼が考えなしに、突進してくるようになった。その分攻撃のパターンも読みやすい。

 

「レディはいつもクールでいなくちゃ」

 

素早く、そして正確に。彼女の視覚情報が鬼の軌道を捉え、魚雷の一斉発射。

 

慌てて進路を変えようとする鬼。だが、その転進を阻むものがあった。彼女の足に巻き付いてるのは鎖。伸びきったその先にいるのは、錨を必死に引く雷。

 

「やっぱりこういう扱い方が出来るから、手放せないのよねっ」

 

暁の魚雷が着弾する。先程とは違い、鬼の呻き声。

 

『ソノ程度カ……』

 

だが、まだ倒れてない。ニヤリと口角を上げる鬼。

 

「ちょっと、嘘でしょっ。もう魚雷は残ってないのに!」

「逃げるわよ!雷!」

 

慌てて後退する暁と雷。相手が自分を沈める手段がないと踏んだのだろう。鬼が急迫し、二人を射程に捉える。

 

「「……なぁんて、言うと思った?」」

 

振り向いて笑い返す二人。

 

呆気にとられ、鬼が気付いた時には既に遅かった。上空にいるのは、囮のはずの航空隊。まんまと罠に引っかかっていた。

 

艦爆隊の爆撃と、攻撃隊の魚雷。戦闘機の機銃の掃射を受けて、鬼は炎に包まれた。




>>その大規模改装によって防空巡洋艦として生まれ変わったある重巡娘。春の季節に再就役した彼女の改二改装を実装予定です。

こっこれは……。摩耶様に改二が来るのか!?
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