艦隊これくしょん~鶴の慟哭~   作:エーデリカ

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就活の時期になりました……タスケテ。

入渠シーンを書ける訳ないだろ(泣

艤装=艦娘の相棒という概念な、慟哭の設定。
武器に名前を付けるのって、実にカッコいいと思いませんか?
シュベルト○ベールとかエ○スカリバーとかア○ンダイトとか。
(全部SEEDの対艦刀の名前じゃねーか。天龍の刀って良いよね)
今回は設定だけで、今まで登場させていなかった工廠係の出番です。

りょうかみ型護衛艦様より深海棲艦語の使用をご提案頂きました。
該当箇所を随時差し替えたいと思います。

それではどうぞ。


二章-12 Blaze of shipyard

風呂は命の洗濯ね――とは良く言ったものだ。

 

この義手と義足は水に漬けても傷まないのが不思議。そんな事を思いながら瑞鶴は湯船で伸びをする。

 

よくよく考えると、私って生傷が絶えないわね。なんか被害担当艦って言われてた、翔鶴姉よりも酷い気がする。

 

まぁ南方棲戦鬼相手に大立ち周りをしたり、そのせいで大火傷や四肢を持っていかれたりしている訳だが……。

 

「なんか歴戦の勇者って感じだね。瑞鶴は」

 

湯船をスイーと平泳ぎで進むВерный。

 

「その甲板胸だと、実は瑞鶴は男なんじゃないのかい?」

「……良い度胸ね、ヴェル。次の出撃で航空隊の爆撃には気をつける事ね」

 

ヴェルもたいして変わんないじゃない――そう負け惜しみを言うと、龍驤さんが悲しそうな目でこっちをみている。

 

いや、本当にすいませんでした。

 

話題がなくなって暇になったので、タオルのウサギを作り始める。

 

「なんか、面白い事やっとるなぁ」

「龍驤さんもやってみます?」

 

加賀さん直伝のタオルウサギ。

コミュニティツールに使えるとはさすがに思っていなかったが……。

 

吹雪とか金剛さん達も元気にしてるかなぁ。

 

 

 

 

 

「あれっ?秋月はもう上がり?」

 

タオルウサギが、風呂場に大量発生し終わった頃。

入渠を終え涼んでいると、一人で茜色の空を睨む秋月が目に入る。

 

「へっ!?瑞鶴さんですか。空母の方は時間が長いと思ってました」

「伊達に幸運艦って言われてないわよ。さっきは小破どまりだったし」

 

今は敵の侵攻が止まっているとはいえ、いつ攻撃が再開するか分からない。休息も時には必要だと言うのに、万が一に備えて臨戦態勢なのは秋月らしいと言った所か。

そんな彼女が身に着けていたロケットを撫でていたのを見て、聞いてみる。

 

「そのロケット、随分古いけどどうしたの?」

「これですか?司令のお守りだそうです」

 

私だって、新人の時もありましたし――と秋月。

 

「最初の出撃の時、私すごく緊張しちゃってて。“必ず帰って来い。それを僕に返すまでは沈むな”って渡してくれたんです。それで、返しそびれて未だに持ちっぱなしなんですけどね……」

「他人に踏み込むのは良くないけど、中身が気になるわね」

「まぁ開けるなとは言われてないんで、良いと思いますけど」

 

ロケットを開けると出てきたのは写真の一部。写っていたのは兄弟と思われる男性が2人と、ポニーテールの女の子が1人。

これ、若いですけど司令官ですかね?と秋月。

 

「そういえば提督さん、お兄さんがいたって言ってた」

「こちらの方は彼女さんかな?」

 

えっ。提督さん彼女いたの?ギョッとする瑞鶴。そんな彼女を横目に秋月が話を切り出す。

 

「丁度良かった、瑞鶴さん。提督さんにそのロケットを返してきてくれません?」

「別に良いけど……。秋月の方が良いんじゃないの?」

「……すみません。それでも司令には“戻ってくる気がない”なんて言えません」

 

だって、そうでしょう?生きて返しに来いって言ってるのに、死ぬ気があるから返しますなんて――と苦笑する秋月。

 

「どういう事?秋月」

「……私、長10cm砲ちゃんの同時使用限界数を無視しようかなって」

 

普段は予備として複数残している秋月型の艤装、自律型長10cm砲。その同時運用数はプログラムコードの改良を重ねても二基が限界だと言われている。

 

その限界を超えようと開発されたのが、フリップナイト。主機の出力を無理矢理引き出して自律砲台が必要な出力を確保。情報処理をコンピュータとリンクさせ、代理演算させるシステムである。

 

しかし、ジャミングされたチュークの環境では、本土と通信する事は厳しい。だからこそ多少の無理を自分だけでカバーしなければならない。

 

「本土のコンピュータで演算が出来ないなら、私のスペックで処理しきるしか方法がありません」

 

空母である瑞鶴には、その行為がいかに危険なのかは分かっている。空母の艦載機搭載数は厳密に言えばない。しかし妖精達に操縦を任せるとはいえ、指示を出すのは母艦である艦娘自身である。だからこそ、瑞鶴は加賀に航空戦で勝てない。加賀の処理速度が自分を上回っていたから出来る運用数の差――練度や努力では抗えない限界があった。

 

その安全と判断される情報処理量を超えて、戦い続けた場合。脳に与えるダメージも相当なものだ。だからこそ秋月は沈みに行くと言っている。

 

「だから、私は帰ってくるつもりがありません。それでも皆を――司令を守れるなら、この命に代えてもお守り致します」

 

だから瑞鶴さん――司令の事、後を宜しくお願いしますね。そういって秋月は工廠へ去っていく。

 

「提督さんは、そんな事は認めないと思う」

 

その場に残された瑞鶴が握りしめたロケットは、何かを訴えるかのように夕日に照らされて輝いた。

 

 

 

 

 

「あー。ひでぇな、こりゃ」

 

トラック基地第一工廠。建造・開発用の第二工廠=明石の遊び場とは違い、第一工廠はドックと呼ばれるものだ。消耗した燃料・弾薬・魚雷の補給。破損した艤装の修理などが担当だ。

 

ツナギ姿でスパナを手の平で転がすような身なり、工廠を任されている伏宮扇少佐は頭を抱えていた。

 

目の前には艤装の山アンド山。先程の戦闘で艦娘達が使っていた艤装である。おそらくほとんどの修理をする事になるが、深海棲艦がいつ侵攻を再開するか分からない。だからこそ、技術者に求められるのは“一刻でも早く、出撃準備が出来る環境を作る事”なのである。

 

東郷の奴、俺が司令補だと分かってても押し付けてるだろ。本来、伏宮の本職は東郷がいない時の提督代理……のはずなのだが。機械好きが生じて、ここで工廠を任され続けている。

 

防衛大時代の腐れ縁でここまでやってきたが、工廠で働くのも悪くない。むしろ馬鹿騒ぎをしてきた頃に比べれば、寂しい気分になる――といえば、感覚が麻痺しているのだろうか。

 

もっとも、妖精達や艦娘に運営を任せている基地もあり、工廠に人間が必要――という訳ではないのだが……。

 

先程も東郷に言われて、聴音機の改良及び、海域への散布が終わった所だ。アイツのことだから無駄な事はしないのだろうが、修理で慌ただしいこのタイミングで頼まれるのは、どうかとは思う。

 

「足柄さんや磯風さんの駆動系とか、焼き切れてますね」

 

馬鹿の付くメカニックの明石と共に、艤装の破損状況を確認したが酷い有様だ。

 

「オーバーホールがそろそろ必要だと思っていたのに、何で泊地が襲撃されるかな」

「おい、摩耶の艤装はおしゃかじゃねぇか?主機が起動しない。一度組み直すか?」

「重雷装巡洋艦なんて、整備が面倒なカテゴリー作ったの誰!?(大本営です)」

「龍驤は、巻物ごと総とっかえでいけるな。はい次」

「造った自分で言うのもなんですが。瑞鶴さんの艤装は整備が大変ですね……」

「Верныйの艤装は元々ロシア製だろ。日本製の部品で代用して大丈夫か?」

「青葉型の艤装ストックなんて、トラック基地にはありませんよ!?妙高・高雄型からの流用で、どうにかなりますか?」

 

とてつもない量をこなしつつ、二人は妖精に指示を出し、時には自分で手を加えつつ淡々と作業をこなしていく。

 

 

 

 

 

そんな妖精たちが忙しく動く工廠に、来客があった。

 

「失礼します。秋月入ります」

「あれ、どうしたの秋月ちゃん?まだ、出撃が出来る所までは直せてないけど……」

 

あーいえ。そうじゃないんです――と俯く秋月。整備組はクエスチョンマークを浮かべる。

 

「長10cm砲ちゃんの同時運用制限の解除を具申しに来ました」

「……東郷は知ってるの?」

「……はい。瑞鶴さんに伝言を頼みました」

「……そっか。明石、作業の優先度変更。秋月ちゃんとのフィッティング始めるよ。奥の倉庫から控えの子達を持ってきてくれる?」

「えっ!そんな簡単にゴーサイン出して良いんですか!?伏宮司令補」

 

驚く明石を横目に伏宮は、むしろ何で迷う必要がある?という顔をする。

 

「東郷ならそうするさ。アイツは神様だとか、戦場における運とかは考えない奴だからな。人事を尽くすだけなのさ」

 

渋々と言った様子で明石が自律砲台達を連れてくる。

 

整列しているのは秋月の相棒達。普段全員を連れ歩く事はほとんどないが、この4基が秋月と戦ってきた戦友である。

 

「アルチャー。ソーズダンは久しぶり。元気にしてた?チュープとエッジアもお疲れ様」

 

感情を持っているかが何とも言えない自律砲台達は、砲塔や手足をバタバタさせ秋月に応える。

 

「なぁ秋月。ジャミングの状況からして、フリップナイトは使えそうにない。それでも4基の自律砲台の運用をやるって事は、自分の脳味噌を使い潰す可能性があるのは分かっているな?」

「大丈夫です。艦隊の皆が健在である限り、負ける事はありません!」

 

そういう意味じゃないんだけどな――と伏宮は頭をかく。お前のそういう所、東郷に似ちまったのな。

 

自分を勘定に入れない所は、本当にそっくりだと思う。

 

だが、技術者は使用者の要望に応えるのが職業である(俺の本職は司令補なんだが……)。そう簡単に、艦娘を沈める訳にはいかない。

 

「……明石、1時間くれ。自律砲台のプログラムコードを調整する。射撃精度や展開範囲が狭まるが、秋月ちゃんへの負担を最小限に出来るようにする」

「伏宮司令補。トラック基地の地下にあるメインコンピュータで、代理演算出来ませんかね?自律砲台を追加2基分ぐらいの処理なら追いつけると思いますけど」

「そうすると基地機能が完全に麻痺する可能性が高いな……。リソース喰わないよう調整はするが」

 

さて、支援部隊の意地を見せましょうか。戦場に出ない彼らの舞台は工廠なのだ。不可能が可能にする為に一歩でも近づける。1分1秒でも早く。戦いはまだ続いている。




フリップナイトシステムの引用は啓開の鏑矢より、オーバードライヴ様よりお借りしています(毎度毎度、お世話になっております)

二章のオリジナル要素って、Верныйのフリーダム具合とか環礁棲鬼、景鶴ぐらいしかない気が(汗
そろそろ、自分の風呂敷を広げたいと思います。伏宮少佐の登場もその一つですね。
メカニックで明石と意気投合してる提督。そういうのも良いと思うんだ。

コラボ先のオーバードライヴ様の作品。
『艦隊これくしょんー啓開の鏑矢ーPREQUEL 04 Die Walküre――馬鹿と鋏は使い様』
に東郷中佐が出張しております。大笑いさせて頂きました。是非ご覧頂ければと思います。
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