艦隊これくしょん~鶴の慟哭~   作:エーデリカ

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とりあえず今回が30話目ですが、34話までストックが出来たので、安心してOB訪問に挑めるエーデリカです。

終わった後同期が乗って、実家に戻る予定。
明日も地元で企業説明会があるから仕方がないが……。
でも端から見れば、軽自動車1台にスーツ3人って結構シュールじゃない?

今回はVS環礁棲鬼編の最後です。
電の言葉は届くのか……。

それではどうぞ。


二章-15 saver

「貴方は。貴方達は一体何者なのですか?」

 

炎上した軽巡型の鬼。その片割れが水底に沈んだのを見て、電は上がった息を整える。

 

暁と雷。大鳳と龍鳳の航空隊が合流した所で、戦況は傾いた。

残存勢力を落とし、残りは目の前にいる環礁棲鬼のみ。

 

航空母艦2隻、巡洋艦2隻、駆逐艦5隻を前にしても、環礁棲鬼は余裕の笑みを崩さない。

 

『ふむ。もう少し粘ると思ったが……。案外対した事もないな、ケスガピア達も』

 

こちらの問いに対して、反応した環礁棲鬼。人語を介する事、それに驚き電の回避が一瞬遅れる。

 

環礁棲鬼が振るった軍刀、その煌めく尖刃の切っ先が電に迫る。

 

「ぼさっとしてるな!電!」

 

刀を一閃し、二人の間に割って入る天龍。

幾度か切り結び、両者は後退する。

 

「お前、どの艦の亡霊だ?大戦じゃ、ここで沈んだ船なんていないはずだ」

 

勿論、アンツ環礁には基地があったという話もない。なら環礁棲鬼である、お前は一体何者だ?

 

『名を聞くなら、まず自分から名乗るのが普通じゃないか?天龍型1番艦の天龍よ』

「てめぇ、何で俺の名前を!?」

『逆に聞こうじゃないか。なぜお前達は、我々が何も知らないと思い込んでいる?』

 

龍田の刺突を躱しつつ、環礁棲鬼が天龍と切り結ぶ。

 

『世の中は情報の塊だ。それに目を逸らすか、向き合うかは個人の意思に基づく。ただひたすらに、貪欲に知識を求めた結果――私と言う器が成り立っている』

 

警棒を片手に突撃した暁を振り払い、軍刀を片手に振り下ろす。咄嗟に反応し、電は警棒で受け流す。

 

『お前達はどうなんだ?艦娘という人間と艦艇の記憶との狭間に押し込まれて、なぜ今まで銃をとり足掻き続けた?』

「そんな事決まってる。お前ら深海棲艦から、自分達を守りたいからだっ」

 

錨を投擲し、環礁棲鬼の左腕に鎖を巻き付ける雷。足が止まった所で、大鳳と龍鳳の航空隊による一斉掃射。

 

その攻撃を阻んだのは、深海棲艦が持つはずない防護機能。虹色の壁が、環礁棲鬼の左手から展開され防がれる。

 

ハチの巣になり崩壊するが、壁の向こうの環礁棲鬼は無傷である。

 

「先程のお前は何者だ――という問いに答えようか?バレラスルア――それが、私の名だ」

 

――――それとも、君らの言語である日本語なら伝わるかな?私はかつてオオヨドと言われた、ただの亡霊。その残滓だよ。解体された大淀が地に足をつけた鬼として生まれ変わったのには、私自身も理解出来ていないが……

 

「誰が始めたのかは分からない。だが、もう誰にも止められはしない。あの大戦が始まった時点で、我々とお前達艦娘の戦いは定められている」

 

既に日は落ち始めている。水雷戦隊の本領を発揮できる夜。その時間になれば、多対一の戦況はより熾烈を極める。

 

時間がないな――そう呟くバレラスルア。

彼女に応えたように突如、多方向から雷跡が迫る。

 

「ソナーに感あり!一体どこから!?」

 

察知した睦月は事なきを得るが、水中から飛び出した護衛要塞が歯を剥き出しにして雷と如月に喰らいつく。

 

本命の魚雷は外れたものの、確実にこちらの戦力を削るに来ている。

 

「如月ちゃん!」

「ちょっと!?離しなさいってばっ」

「鬼が他の深海棲艦を操れるなんて、聞いてないわっ」

 

『まず2匹』

 

笑みを浮かべたバレラスルアがカウントする。

 

「そんな……航空隊が押されてるの!?」

「お願い、妖精さん。持ち堪えて!」

 

加勢した猫型の艦載機によって、制空が押し戻される。烈風隊が突破され、敵機の爆撃で被弾する大鳳と龍鳳。夜が訪れたのは勿論、この損害では艦載機を繰り出せなくなった。

 

『これで4匹』

「よくも、やってくれたわねっ」

 

暁のヘッドショットを躱したのち、冷静に短刀を投擲するバレラスルア。狙撃に集中するあまり、回避に気を払っていなかった暁の連装砲に直撃する。被弾した砲塔を、放り捨てる事になる。

 

その一瞬の隙を突こうと左右から挟撃しにきた天龍と龍田。紙一重で躱し、あるいは軍刀で受け流し、二人の得物を弾き飛ばす。

野郎、こっちの兵装がもう残ってねぇのによ!――舌打ちする天龍。

 

『これで7匹か。さぁどうする?駆逐艦電よ』

 

影響範囲にいる深海棲艦を操り、宵闇を背景に君臨する鬼の姿。彼女は生まれ変わっても、旗艦でありつづけた因果を持つ個体だった。

 

残った猫型艦載機に、睦月が機銃を向けて備える。

状況はこちらが継戦可能な二人と、鬼とその指揮下の随伴艦。さっきまでの優位が嘘のようだ。

 

「……私たちは、本当に闘う事しか出来ないのですか?」

『……さぁな。少なくとも憎しみに囚われている連中は、人間を殲滅しようと躍起になっているだろうさ』

 

貴方は違うのですか?電の問いに対して、バレラスルアは答える。まぁ私はそんな風に思わないが、ガルデロールなんかその典型だ――と。

 

「ガルデロール?何なのですか、それは?」

『今、チュークに向けて進軍している連中の総旗艦だよ。そうさなぁ。アレも私と同じように、艦艇であった記憶を持つ深海棲艦だ。だが私達は良い記憶だけを持ってこの世に誕生する訳じゃない。沈んだ無念や敵への怒りや憎しみ。そんなものが私達を雁字搦めにして、人間への復讐へ突き動かされるのさ。ガルデロールは特にその負の感情が強い個体だ。だからこそ、私が奴の艦隊の情報封鎖をしても邁進し続けている』

 

やれやれ……本当に困った総旗艦様だよ。後始末にまわるこっちの分も考えて欲しい物だ――と呟くバレラスルア。

 

『鬼を超えた姫。それすら上回る水鬼とはまさに、深海棲艦にとってのカリスマなんだよ』

「……お互い銃を下ろして話し合えませんか?バレラスルアさん。こうしてお話ししてくれるなら、まだ私達は分かりあえるのではないですか?」

 

警棒を放り捨て、敵意がない事を示す電。

 

『こっちが呆れる位、お前は馬鹿正直だなぁ。良いだろう』

 

噛まれていた雷と如月が解放される。件の護衛要塞はそのままバレラスルアを庇うように対空する。

 

「髪の束が引き千切られてない!?」

「絶対これ、歯形が残ってるわね……」

 

私は……ほら。他の船がどうやって戦うかを知っているから、部下を簡単に操れるのさ。彼を知り己を知れば百戦殆うからず――敵だけでなく味方についても知らないとな。まぁ、落ち着いた所で話そうか――とバレラスルア。

 

「私達は仲間を助ける為に、貴方のジャミングを止めに来ました」

『……なるほどね。別に解除する分には全然構わんさ。元々人間が滅んじまったら、私ら深海棲艦も憎しみの矛先が何処に向かうかも分からん。この戦争をしている――お互いが敵であり続けているという現状維持が、一番両者にとって幸福なんじゃないか?』

 

両者が敵と言う物を持ち、身内同士で殺し合っている余裕がないという状態は、団結されていて平和そのものだと思うがね?だから私はその均衡を保つためのバランサー=調停者とでも自称しようか――そうバレラスルアは自嘲する。

 

『だが気をつけろ。“今ガルデロールの侵攻が止まっているのは、私が妨害している結果だ”。目的地が捕捉出来ずに虱潰しに攻略しているから、あの島はまだ陥落していない。まぁ、時間の問題である事は否定しないが……。それでも、私に妨害を止めろ――と言うのか?電よ』

 

最悪、お前の判断が仲間を殺す事になるぞ――バレラスルアの瞳が電を射抜く。

 

黙ってしまう電。そんな沈黙を破ったのは、この会話を聞くに徹していた天龍だった。

 

「電ぁ。俺らの目的は何だ?ジャミングを解除する事だろ。何を迷う必要がある」

「でもっ。電の判断でトラック泊地の人たちが沈む事に……」

「でもじゃねぇ!トラック泊地がどうなるかが問題じゃねぇ。お前は司令官に何を頼まれた!?トラック泊地を助ける為に、俺らの司令官は向かったんだぞ。ジャミングを解除する事が、俺らに任された任務だ。その後は司令官や響、杉田中佐がやってくれる」

 

他人の命を、お前だけが預かってると錯覚するな。戦場に出る以上、全員覚悟は出来てるんだ――と天龍がぼやく。

 

『どうするかは、決まったかい?』

「はい……。ジャミングを解除して下さい、バレラスルアさん。貴方のお仲間の侵攻は、私の司令官さんがきっと止めて見せます」

 

やれやれ、ようやくリソースに余裕が出来る――バレラスルアがそう言った瞬間、キン――と空気が張り詰める。

 

その静寂が終わった後。ザザァ――というノイズと共に電脳通信が復帰する。

 

「司令官さん。旗艦電以下は健在。ジャミングの解除は終わったのです」

『――――良くやった電。これで反撃出来る。環礁棲鬼はどうなった』

「……はい。無事撃退したのです」

『――――……そうか。エニウェトク基地には、すぐ寄れるはずだ。弾薬と燃料の補給と入渠施設を使わせて貰え。退避しているあっちの提督には、俺から話をつける』

「了解したのです。司令官さんもご武運を」

 

それを最後に電は月刀との通信を切断する。

 

『さぁて、どうする。消化試合と行くかい?ジャミングをやってたリソースを、出力に回せるからな』

「ご遠慮させて頂くのです」

 

冗談に対して即答した電の反応に、バレラスルアも苦笑いである。

 

さすがに損耗したこの艦隊で、本気の彼女と戦って勝てる自信はない。

 

『帰り道には気をつけろよ。情報拡張範囲を解除したから、もう水雷戦隊を私は操れないからなー』

 

「……「へっ!?」……」

 

闇の中で幻想的に光る無数の軽巡や駆逐艦、そのeliteやflagshipの目、目、目。

 

おい……嘘だろ。流石の天龍もその光景に腰が引けている。

 

『んじゃ、頑張ってネ』

「……「ちょっと待てぇ!!!」……」

 

慌ててバレラスルアに詰め寄る、涙目の暁。

 

「戦う意志はないって言ったでしょっ!」

『いや……私はないけど、他の奴らはどうか知らないし……。情報拡張解除して――って言ったの電ちゃんだし』

「電ぁ!」

「はりゃあーっなのです!?」

 

責任転嫁をしてもしょうがない。否がおうにもエニウェトクまでの、文字通り命をかけた鬼ごっこが開幕する。

 

また遊びましょう♪――そう言って手を振り水底に消えたバレラスルアに対して、二度と会うか!という月刀艦隊。

 

彼女達の戦いは、まだ終わらない。

 

 

 

 

 

おまけ

 

「こっちは兵装が尽きてるのに!こんなやつを!こんなやつを!こんな深海棲艦の群れを! 突破する策が更にあるのか! 雷電!」

「「えぇ…あるわ(なのです)!」」

「なに! あるのか!?」

「「えぇ…たった一つだけ残った策があるわ(なのです)」」

「たった一つだけ!そ…それは一体?」

「「とっておきの策よ!敵を良く見て! 敵は率いてたバレラスルアさんがいなくなって浮足立っているわ(なのです)!そこがつけめよ(なのです)!」」

「そ…それで たったひとつの策とは?どうやって!」

「「逃げるのよォ!みんなーーーーーッ!!どくのよーっ深海棲艦どもーッ(なのです)!!」」

「わあ~~ッ!! なんだこの総旗艦様はーッ」




コラボ第二弾のお知らせです。りょうかみ型護衛艦様とのコラボが開始致しました!

『艦隊これくしょん -防人たちの異世界漂流日誌-』に、この世界線では故人な東郷の兄。東郷颯が参戦予定です。

慟哭でのあちらの井矢崎少将の活躍は、もう少し先になりますが。
3月末に三章『激震!横須賀動乱編(仮)』でお伝え出来ればと思います。
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