艦隊これくしょん~鶴の慟哭~   作:エーデリカ

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こんな終わり方で良かったのだろうか。自分が書きたかったのはコレなのか?
……そんな感じです。
というか戦艦水鬼があっさり沈み過ぎて、困惑してるのは作者なんだが……。
後で、書き直すかもしれません。

サブタイトルは某ゲームの台詞より。
そうですね……僕らの夜間飛行も終わったようです。

それでは、行きましょう。


二章-18 This is our final attack.

「Верныйが仕留めたなら、私に出来ないはずがないわっ!」

 

既に満身創痍のチューク艦隊だが、足柄が視線を向けた先には黒煙を上げる戦艦棲姫がいる。

 

ようやくここまで来た。随伴艦を減らし切りながら、どれくらい時間が経っただろう。空が明からみ始める頃合い。夜の時間に倒さねば、またあちらのペースになる。その前に決める。

 

「行こうか、足柄。私らに、出来ないはずがなかろう」

「そうね。生き残った後で、次の食事当番が磯風じゃないだけやる気は出るわね」

「磯風さんの料理は……私もアレはどうかと思いましたが。提督さんに何か作って貰いましょうか?」

「それ賛成。残業代が出ない職場だもの。冷凍庫に保管してあった間宮アイス、全部食べちゃいましょ!」

 

じゃあ、本丸を誰が落とせるかって勝負で良いかしら?足柄の声に、応じる僚艦達。

 

馬鹿にされていると思ったのだろうか。戦艦棲姫の砲撃は熾烈さを増してきている。

 

「今までの威勢はどうしたのっ!?もっと私を愉しませなさい!」

 

足柄の主砲が装甲を抉る。間髪入れずに磯風が接近し、剥きだしになった内部に銃口を突きつける。

 

「火力の差が、艦娘の優劣を決める要素ではないっ!」

 

叩きこまれた銃弾に、悲鳴を上げる戦艦棲姫。

 

ダメナノネ……

 

庇うように出てきた重巡ネ級と、砲火を交わす五十鈴と由良。

その雷撃がネ級の足を止め、主砲による斉射でハチの巣になる。

 

「ちょっと!?姫の方を寄越しなさいよっ!」

「露払いは終わりました。後は決めて下さい」

 

待たせたわね――足柄の目は、闘志で炎の様に燃えあがる。

 

最後の足掻きとばかりに撃ってくる戦艦棲姫に距離を詰める足柄。その主砲が、魚雷が撃ち込まれ、炎上する。

 

――――だが、あと一撃が足りなかった。

 

堪えた戦艦棲姫の砲口が、目の前の足柄に向く。

 

「足柄!?」

「様がないわねっ」

 

最後を覚悟し、吐き捨てた言葉。しかし敵の砲弾が放たれる前に、戦艦棲姫が体勢を崩す。

 

「ウチを忘れたとは、言わせないでぇ!」

 

龍驤の航空隊による絨毯爆撃。ここにきて最後のチャンスを作る。

 

続いて雷跡が数本迫る。この攻撃は甲標的?

 

「海の藻屑にっ!」

「なりなよー」

 

イツカ……シズカナ……ソンナ……ウミデ……ワタシモ……

 

雷巡2隻による酸素魚雷の連打。撃ち込まれた戦艦棲姫は、今度こそ沈むのだった。

 

「やったわね!北上さんっ!」

「そーだね。美味しい所持ってっちゃったねー」

「北上ぃ!?貴方今までどこで油売ってたのよ!?」

 

地団駄を踏む足柄。あと一歩間違えれば、自分が沈んだ事を棚に上げ北上に詰め寄る。

 

「え?大井っちと、ル級の強化個体を何隻も沈めてきた所だけど。あーもー疲れた」

「そーよ。私の北上さんが一番なんだから!」

「……何というか、お疲れ様です」

 

そんな漫才を他所に、残る四人はやれやれ――と首を振るのだった。

 

 

 

 

 

回避行動をとり、その場を吹き抜けた砲弾が、二人がいた海面を抉る。

 

「本当に戦艦棲姫?……じゃないわよね」

「アレの上位個体……と言った所かしら」

 

獰猛そうな双頭の巨人を従えた、黒き鬼はこちらに砲口を向ける。

瑞鶴と加賀も艦載機を全機展開させ、砲火を交わす。

 

「ダメっ。敵の装甲が堅すぎて、爆撃も雷撃も通らないっ」

 

確かに効いてはいるのだ。しかし、所詮空母による夜戦攻撃だ。昼間のようにはいかないし、何より精細を欠いていて致命傷には至らない。

 

艦載機の数が削られていき、歯噛みする膠着状態で通信が入る。

 

『――――伏せろっ、空母のお二人さん!』

 

一式徹甲弾。その軌跡の先にいる敵戦艦に襲い掛かる。

 

同時に複数の雷跡を確認する。潜水艦による援護攻撃だろうか。

 

背後に控えていたのは、大和と武蔵そして金剛。突如、回線に割り込む声がする。

 

『――――おい、杉田ぁ!?何が“武蔵に弾一発でも掠らせたら、半殺し”だ!?人に散々発破をかけといて外すんじゃねぇ!』

『――――うるせぇ!試製51cm砲なんて、試運転もまともに済んでない新兵器を引っ張ってきたんだ。ちったぁ甘く見ろ。度量が大きくねぇから、お前に女はなびかねぇんだろうが委員長!』

『――――武蔵を使ってる委員長も、同条件だろうが……久しぶりに3人で組んだら、これか……』

 

珍しく(というか聞いたこともない)声を荒げた、東郷の声。知らない声がそれぞれ、月刀大佐と杉田中佐だろうか。

 

『――――瑞鶴。無事かい?』

「かっ……加賀さんのおかげで何とか」

 

突然口調を戻され、話を振られて困惑する瑞鶴。

 

「カズキー。私の出番は、まーだデスカー?」

『――――試製36cm砲の射程に入ったな。金剛、敵の位置は大体割れてる。杉田と大和のタイミングに、追従して撃て』

「了解ネー!」

 

Fire!――第五遊撃部隊として、瑞鶴と共に戦った事もある金剛。今日はいつもに増して上機嫌である。

 

『――――ったく。”俺の”武蔵を貸してるんだ、しっかり当てろよ委員長!大和、夾叉だから判断任せる』

「了解しました。全砲門、一斉射!」

『――――艦砲射撃が下手だった俺に期待すんなよ……武蔵さん、第二主砲右へ2.84、仰角下げで0.46』

「お前の同期も、合わせてくるだけ中々だぞ。“千里の杉田”がおかしいだけだろうに。少しは褒めてやったらどうだ?」

『――――出来なかったら、淘汰されていくのが戦場だ。射撃の練度でペア組ませたからって、納得いかねぇ……。うちのノーコン馬鹿の分をフォローしてやってくれ武蔵。次、行くぞ』

 

砲弾の雨霰が、敵戦艦に襲い掛かる。

 

ヤクニタタヌ……イマイマシイ……ガラクタドモメッ!!

 

黒鬼の咆哮に合わせて、双頭の巨人の火器が一斉掃射される。同時に迫る、護衛要塞の群れ。

 

しかし身構える瑞鶴達に到達する前に、どこからか放たれた三式弾が炸裂する。

 

「さぁて。生まれ変わった摩耶様の本当の力、思い知れ!!」

 

威勢と共に青緑の服をなびかせ、突撃したのは摩耶。

 

「摩耶さん、今までと艤装が変わってない!?」

「伏宮司令補と明石の突貫作業だ。吹雪達が持ち込んできた高射装置と主機の予備。秋月の対空戦データの集大成だぜ」

 

怖いなら、あたしの後ろに隠れてな!――彼女の艤装に搭載された機銃が一斉に火を噴く。たちまちに撃墜される護衛要塞。

 

撃ち漏らした所で、カバーに入るのは同じく高射装置を搭載した吹雪。

 

「私が皆を護るんだから!」

 

お久しぶりですっ、瑞鶴さん!――危なっかしかったあの時の旗艦も、練度を上げてすっかり一人前になっていた。

 

滞空していた瑞鶴と加賀の航空隊が、突如水を得た魚の様に軌道を描く。着実に吐き出された敵艦載機を落とす航空隊。その光景に驚嘆し、コントロール先の人物のリンク値を見て卒倒しそうになる瑞鶴。

 

『――――おい。人間やめてる系の航空指揮官は、少し自重しろ。うちの瑞鶴がついていけてない』

『――――金剛の射撃管制しながら、やってるんだ。俺の実力が十二分に発揮されてると思うか?』

『――――いい加減にしやがれ“飛燕”。まだ本気を出せるに大盛券5枚』

『――――委員長の言う通りだ、違いねぇ』

 

苦笑を含んだ提督勢の会話。それでも、邁進を止めない黒鬼に対して影が迫る。

 

「夜は良いよね~、夜はさ!」

 

マフラーを夜風でなびかせ、月を背景に川内が躍り出る。黒鬼の死角から放たれた酸素魚雷。その雷跡から逃れようと黒鬼は転進しようとするが、阻むものがあった。

 

「オリョクルから帰ってきたら運ばれて……そろそろ休暇が欲しいのでち」

「ふふー、逃がさないのね。今のイクの魚雷は追いかけるのね!」

「夜は私達の世界よ。佐世保の夜戦馬鹿には負けないんだからっ」

 

潜伏していた三隻の潜水艦から放たれた試製FaT仕様九五式酸素魚雷改が、黒鬼の回避行動に合わせて追従する。退路を阻まれ、雷撃の餌食となる。

 

「かわう……川内!何であんたもここに……所属は佐世保でしょ!?」

「あれっ?意外と元気そうじゃん、瑞鶴。うちの司令官が今、横須賀勤務だからついてきちゃった♪」

 

友人が困ってるなら、来るしかないじゃん――川内の言葉に、あんたと私って同室の腐れ縁なだけでしょ――とジト目の瑞鶴。

 

「中々に丈夫でち、あの戦艦」

「え……持てる魚雷、全部撃ち込んだんだけど」

「これで役目は終わりなのねー」

 

いまだ健在の黒鬼。攪乱しようと川内が前に出る。

 

ナカナカ……ヤルジャナイカ……

 

「お褒め預かりどうも♪……でも沈みなよ。瑞鶴に銃を向けたでしょ――後悔じゃ済まさない位にはボコボコにしてあげるよ」

 

衣装の姿に、負けぬ軌道をする川内。魚雷を撃ち込み、その主砲が火を噴く。

 

致命傷にはならない。しかし足が止まったならば、日本海軍の誇る大和型の独壇場である。

 

「私も負けてられないネー。Burning Love!」

「敵艦捕捉、全主砲薙ぎ払え!」

「この武蔵の主砲、伊達ではないぜ!」

 

3隻の戦艦による全砲から、徹甲弾が吐き出される。

 

ヒカリ……アフレル……ミナモニ……ワタシモ……そう……っ!?

 

黒鬼の上空には、六〇一空の名を冠する爆撃機。

 

「私だって、戦える!」

 

いっけぇー!!!瑞鶴の威勢と共に、急降下した彗星部隊。ありったけの爆薬を投下する。

 

この迎撃戦で最大規模の爆撃が、朝焼けの空を紅蓮に染め上げた。

 

 

 

 

 

――――東の空に明るみが……朝が来る

 

発砲音や爆撃の音、艦載機の風切り音が聞こえなくなった。

 

「私達の仕事も終わりですね……」

「……昼夜関係なく戦い続けたのは、俺の気のせいか?」

 

先程と打って変わって、静まりかえったトラック第二工廠。

整備担当の伏宮と明石は、ようやく一息つくのだった。

 

「一仕事終えた後に見たかったですねー。一番綺麗な朝焼け! 」

 

寝ぼけ眼をこすって、欠伸をする明石。

 

「朝は訪れ続けるんだよ。変わらぬ太陽がこれからも、な」

 

伏宮もようやくだと、床に仰向けになる。

前線に立つ艦娘や東郷とは異なり。修理や改造を行っていた二人は、まる二日戦い続けたのだった。

 

そんな彼らにも、安息が訪れる……他の皆が帰ってくるまでは。

 

少しくらい寝ていても、罰は当たりませんよね?苦笑する明石も、伏宮の横に並び瞼を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

「トラックの朝日は綺麗ね……横須賀の様に、遮るものがないからかしら?」

「どうしよう……提督さんのロケットなくしたんだった……」

 

トラック泊地に戻る道中。平常通りの加賀に対して、ブルーで落ち込んでいる瑞鶴。

 

「貴方の艤装……いえ、あなた自身の名前を決めるんでしょう?」

「それ言ったのは、もしかして摩耶さん!?あーそういえば忘れてた……」

 

更に頭を抱える瑞鶴。

 

――――“景鶴”それが貴方に似合うと思うけど。加賀が唐突に口を開く。

 

「“けいかく”って何よ?加賀さん?」

「瑞鶴という字は、めでたいという意味の瑞と鶴でしょう。景の意味は、眺め、光、明らか、めでたい。朝日を見て思いついただけ。そういえば……という事よ」

「そんな勝手に決められても……まぁ響きは良いけどね」

 

後でじっくり決めるから、良いわ――とあまり乗り気でないようだ。

 

「それに“日が昇る、東の国”を表すのに、持って来いじゃないかしら?ここは日本ではないけれど。貴方が冠するには、決して軽くはないけれど……背負えるでしょう?」

「……良いわ、その喧嘩買った。名乗ってやろうじゃないの、景鶴ってね!」

「瑞鶴って本っ当に扱いやすいよね……。直情な性格も、少しは直したらどうなのさ?これから先も損するよ」

 

あーやだ、朝だ――ツッコミを入れた川内の目は、既に死んでいる。

 

そんな横須賀では当たり前だった、くだらない加賀との会話を久しぶりにしつつ。母港が見えてきた。

 

桟橋で見覚えのある人影が見える。同じく制帽を被った二人組と会話していて、普段は見せないような表情の東郷。

 

こちらを認めた時の表情。その目が驚きに見開かれた後、慌てて視線が逸らされた。

 

えっ!?何で提督さん!?加賀に聞こうとするが、その加賀も頭を抱えていて溜息をついている――まったく、この子は……

 

「航空母艦瑞鶴。ただ今、帰投致しました!」

「……お帰り瑞鶴。でも頼むからその恰好を、少しは気にしてくれ……」

 

東郷から制服の上着を手渡され、彼はすぐに背を向け戻って行く。

 

「瑞鶴の世紀末のような服装を、どうにかしなさい――って、東郷中佐は仰ってるのよ……」

 

呆れ顔の川内に指摘され、自分の状態に気付いた瑞鶴は赤面する。

 

「おい、東郷……お前。気にかけてる女に、男としてすら認識されてねぇのか……?」

「……もういい、いっそ殺してくれ……」

「だとよ、月刀。委員長の脳天ぶち抜いてみろよ」

「……すまん。あまりに哀れ過ぎて、かける言葉を探していた」

 

今日も、いつもと変わらず日が昇る。

 

 

 

 

 

『我が連合艦隊は反撃を開始、トラック諸島海域において敵機動部隊主力を捕捉、これの撃滅に成功しました!トラック泊地、防衛成功です!』




一ヶ月半、思ったよりも長くなりました。
コラボを快諾して下さったオーバードライヴ様及び月刀大佐ら提督勢に感謝申し上げます!

二章の最後に相応しい言葉を、シナリオモチーフにした作品の某大統領の台詞より拝借します。
"And this path shall go on, as long as the Blaze of fire that shrines through the darkness is not extinguished."
“闇を照らす炎が消えぬ限り この道は続くだろう”

慟哭シリーズはまだまだ続きます。三章『激震!横須賀動乱編』でお会いしましょう!(二章も、もうちょい続きます)

それではっ。
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