超特急で駆け抜けた二章ですが就活に本腰を入れる為に、三章は更新が停滞します。
暫くは、一章の書き直しがメインとなるかもしれません。
作品を手放す気はありませんので、楽しみにして下さる方は、お待ち頂ければと思います。
それでは……
Let's throw a party!
いつもは、朝日が差し込まない部屋のはずなのだが……明るい。
寝ぼけ眼をこすり、壁掛け時計の時刻を見て再び布団に戻る――まだ起床ラッパは鳴らないから、あと少し寝れる。
針が5時過ぎを指し示す時――――その不自然さに瑞鶴は気付く。太陽がいつもより赤いのだ。
慌てて携帯端末に飛びつき、時刻の確認をする――――17:17、無慈悲に端末は真実を告げる。わぁ綺麗に数字が並んでるー……マズイ。
「えっ、嘘……寝過ごした!?」
慌てて飛び起き、寝間着のまま廊下に飛び出す。角を曲がった所で出会い頭にゴッツンと。
尻もちをついた瑞鶴に対して、冷ややかな目で見降ろす先輩がいた。
「痛ったぁ……。加賀さん!一緒の部屋に寝てたんだから、起こしてくれたって良いじゃない!?」
「……まず、ぶつかった事に対する謝罪がないのは何故ですか?私はそんな教育をした覚えはありませんが」
どうやらお仕置きが必要みたいですね――マズイ……これ絶対に怒ってる。冷や汗が止まらない瑞鶴の首根っこを掴み、持ち上げて引きずって行く加賀。
「ちょっと、瑞鶴ー!?傷だらけデース!何があったんデスカー」
とりあえず浴槽に放り込まれたらしい。あー、傷口に沁みる。
「幾ら艦娘でも、銃創とかは簡単に治りませんよ。金剛さん」
うー。戦艦水鬼め……例え擦過傷でも、跡が残る事も多い。傷が塞がるだけマシだと考えている瑞鶴には、さした問題ではないのだが。瑞鶴は美人なのだから、淑女の自覚を持って欲しいネ――とは金剛談である。
話を聞くと損傷が激しかったチューク組の代わりに、吹雪達が哨戒任務についてくれたらしい。第5遊撃部隊の面々だけが揃ったのは、久しぶりである。
ようやく羽を伸ばせマース――と金剛が伸びをする。
「こうやって、皆が揃うのも久しぶりだよねー」
「相変わらず育ってないようね。何処がとは言わないけど」
大井。それ以上言ったら爆撃するわよ。
「吹雪は二次改装にはもう慣れたの?おかげで助かったわ」
「はい、新しい泊地でもバッチリ活躍してますよ!」
元気そうで何よりだと思う。
「そういえば金剛さん。あの航空戦仕切っていた月刀大佐……の知り合いなの?」
「カズキはワタシのフィアンセネー。他の誰にも譲る気はないデース!」
でもアレが提督さんが言ってた“人間を辞めてる航空管制官”かぁ。空母としては、ちょっと憧れたりもする。
最近、敵が増えてきてる気がしマース――――という呪詛を含んだ金剛の言葉は、聞かなかった事にしようと思う。
「そういう瑞鶴は、アドミラルトーゴーとどんな感じなんですカー?」
「どう……って。命の恩人とか、上司と部下とか?うーん、あと読書がお互い好きな事とか?」
時々軽い人生相談みたいなのは、やって貰ってるわね――――その反応を見て、肩を落とす面々。まったく、この子は……。
さすがの吹雪も――瑞鶴さんには、加賀さんや川内さんがいますものねーと苦笑いである。
ガールズトークはまだまだ続く。誰が先に、瑞鶴に気付かせるか……そんな勝負に発展するのは、別の話である。
「ようやくお目覚めか?」
「ちょっと待て……どうなってんだこれ?」
報告書にまとめようと、瑞鶴らが帰投した後に職務を再開しようとした時。月刀から外的要因による強制就寝(手刀)を喰らった結果、とっくにお昼は過ぎていた。
地下室の床は冷たい。こんな所で寝かせられて、風邪をひいたらどうするつもりだ。
「業務はヴェル嬢が終わらせたぞ。少しは部下を頼る事を覚えろ――委員長」
「……とか言って、お前らも手伝ったんだろ?」
「やっぱり、嘘は通らねぇか」
司令と司令補が指揮不能な状態になったのだから、仕方がないと言えば仕方ない。
「じゃあ、デブリーフィングと行くか」
東郷がいつも指定するのは南国風のテラス。ヘッドセットを身に着け意識がそこに飛ぶ。
東郷と5期の黒烏が対面する。こんなのって防衛大を去った時以来じゃないだろうか?
『まぁとりあえず、お疲れ様――という事で良いのか?』
『良いんじゃないの?犠牲はなし。トラック泊地も守り切って、水鬼クラスの存在との接触。ヒメちゃん以外にも意志疎通可能な深海棲艦がいたって事で』
『封鎖した海域でドンパチやって、お咎めなしって言うのは可笑しな話だがな』
「ちょっと待て。今回の戦闘……何で俺が知らない所で、色々と起こってるんだよ!?」
高峰らの会話で環礁棲鬼の話題に上り、何だそれは?寝耳に水な東郷。
『だが俺らの独断で動いた結果、上層部にとっても必要な情報ばかりが得られた。溜飲は下げられただろうな』
『そもそも戦線を後退させる事が世間にバレたら、批判どころかじゃ済まないしね』
『……でカケル君には、当事者として横須賀から呼び出しがかかった訳』
『あースマン。これだけは庇えなかった』
さいですか。晴れて、本土行きの片道切符が手に入った訳だ。
『結局。司令部が判断したのは、トラック泊地の放棄。陥落しなかったとは言え、基地機能は完全に麻痺してる現状じゃ運営は困難だ』
『修理に回す資源もないし、拠点からの格下げも検討中って話ね』
ウインドウにポップされた情報を見て溜息をつく。
辞令を簡単にまとめるとこう言う事か?
チューク諸島海域及びトラック泊地で行われた迎撃戦において、被害報告から基地機能の大半を喪失と判断。極東方面隊総司令部は2月末日をもって、以下の部隊を一時的に解体・再編成を行う。
・チューク
536戦隊
537水雷戦隊
なお現所属艦娘の配属予定先は、以下の通りである。
・横須賀528駆逐隊
駆逐艦Верный
駆逐艦朝雲
・エニウェトク539航空偵察隊
航空母艦龍驤
・グアム533戦隊
重巡洋艦摩耶
重巡洋艦足柄
重雷装巡洋艦北上
・ウェーク537水雷戦隊
軽巡洋艦五十鈴
軽巡洋艦由良
駆逐艦秋月
駆逐艦磯風
トラック基地の海上護衛任務代行は、各泊地に追って通達する。
東郷駈司令は極東方面隊総司令部へ出頭し、本戦闘における戦闘記録の提出及び報告を命ずる。また、その間トラック基地の提督業務を伏宮扇司令補が代行するものとする。
工作艦明石及び航空母艦瑞鶴はトラック基地にて、別名があるまで待機とする。
以上。
そんな内容だった。まぁ仕方ないな。
「部隊は解体か……ここも寂しくなるな」
『死ななかっただけ僥倖だ。精々頑張れや』
杉田のゲラゲラと笑う声。生きてりゃ何とかなるって言われてもな……。
『んじゃ。戻るとしますか、委員長』
『料理の腕前は期待して良いんだよな?』
月刀と杉田、お前ら一体何考えてるんだ!?電脳世界から戻って来ると、厨房まで引っ張られる。
「食糧庫は無事だったから安心しろ。うちの電たちもこっちへ来てる。37人分の夕食、期待しているぞ」
「命と首を懸けて、こっちまで救援に来たんだ。おまけに哨戒任務も代行したから、これぐらい構わねぇだろ?」
「……あぁ分かった。やってやろうじゃねぇか」
東郷はその前にと、ロッカーから三角巾とエプロン、マスク、ビニール手袋を二人へ放る。
キャッチしたものの、キョトンとしている提督勢二人。
「言い出しっぺの法則という物があってだな。撃って良いのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ……違うか?」
今さら逃げるなんて言わないよな?飛燕と千里とあろう者が?じりじりと後退する二人を逃がすか――という東郷。白鴉もやられてばかりではない。
幸い先日の補給で、食材は大量にある。どうせ放棄する泊地なのだ。
別に、食材を全部使ってしまっても構わんのだろう?
提督勢の戦いは、まだまだ続く。というか始まってしまった。
「良い匂いがしますねー」
吹雪に連れられて食堂に来ると、艦娘らがぞろぞろと。瑞鶴は20を超えたあたりで、数えるのを辞めた。何だ……この大所帯は!?
東郷と二人の提督が厨房に立ち、ある者は包丁を握る。またある者はフライパン……では収まらないので、大鍋で食材を炒めている。
第六駆逐隊の皆とВерныйが、身の丈クラスのお玉で大鍋をかき混ぜている。
今日はカレーか――と思いながら、席に着く。
「完成なのですっ!」
駆逐艦の子らが、パタパタと駆けて行き、各テーブルに色とりどりの料理を並べていく。
貴重な生鮮品をふんだんに使った手巻き寿司や、生地を練り伸ばして焼いたマルゲリータ。
鶏肉をオーブンにぶち込んで焼いたものや、ジャムやクリームでカラフルに染まったケーキ。
料理の組み合わせに合う合わないに関わらず、とりあえず作られた――という感じなのだが、“見た目は”豪勢な夕食になっている気がする。
調理の後片付けを済ませ、制帽を被り直す東郷。彼も空いている席に着こうとすると、青葉が扉の裏に引っ張っていく。何事かと、ざわざわしていた空気が一気に静まる。
そんな中、青葉の声が響く。
「えー、皆さん。本日はお日柄も良く……え!?日はとっくに沈んでる?さっさと食べさせろ?まぁ、置いておいときましょうね。トラック基地はこんな状態ですが、お疲れ様です!――と言う事で東郷中佐、開始の挨拶を一言お願いしますっ!」
「はっ?聞いてないんだが!?」
東郷が視線を向けると、さっきまでの仕返しか笑いを堪えている提督勢。図ったな貴様らッ!
軍隊と言う場の慣れなのかは分からないが、艦娘らが一斉に起立し床が打ち鳴らされる。敬礼までし始めた彼女らに――ちょっと待て!手を下ろせ!というか頼むから座ってくれ!と東郷。
「……ゴホン。あー、まずお礼を言わせて欲しい。ありがとう。こんな僻地にまで本土から救援が来たり、この海域以外でも戦闘があった事を聞いた。この場でこうして話せるのも、ここにいる皆のおかげだ。恩はいずれ返す事にしたいが、とりあえず今出来る事からしていきたい」
という訳で、夕食の席を設けた。間宮のアイスや伊良湖のモナカもあるからな――――言ったそばから歓声があがる。
「俺は、二度とこんな人数で戦いに挑むのは御免だ。あまりに重すぎるんだ。同じ事をやれと言われれば、間違いなく逃げるだろう。それでも今日生き残った事、皆が死力を尽くして戦ってくれた事を誇りと思う」
正直ホッとしているよ――と表情が崩れた東郷。
「一つの戦いが終わって、隣にいるのは部隊が違えど“生き残る”その目的の為に戦った戦友だ。敬礼なんて堅苦しい関係はいらない。違うか?」
見回してここにいるのは戦った場所や所属が違くても、同じ軍に身を置き戦う同志なのだ。
皆、グラスを持ったか?――――青葉?お前にはやらん。言わせるなら最初から言え!俺自身いきなりだから、何を考えて話してるか分からなくなったぞ!
「現時点を持って、トラック泊地迎撃作戦を終了とする。よく誰一人欠ける事無く、生き抜いてくれた。暁の水平線に勝利を刻んだのは、ここにいる全員だっ!乾杯!」
さぁ、宴を始めよう。少しくらい勝利の美酒に酔っても構わないだろう?
今日もいつもと変わらず、夜が更ける。
宴と言えば、作者はカクテルが200mlで轟沈レベルです。
飲むならお冷がピッチャーが必要なくらい弱い……。
この後の東郷ですか?多分Верныйあたりに、お持ち帰りされたんではないでしょうかね。