とりあえずE5甲までは突破したので、小休止です。
葛城が可愛い過ぎて死ねる。瑞鶴の後輩キャラだと!?育てない訳には行かないじゃないか!
5/1追記関係:一章-8。一章-9の修正版を上げました。
三章-幕間-1にて葛城の出番を追加しました。いやだって本編で書くには、時間が掛かるのですもの……。
あの後、東郷が目覚めたのは知らない天井だった。軍の施設らしく、搬送と言うよりも収容に近かった。
話によるとファーヴニル生化の実験内容がリークされたらしく、事態の収拾を短期的に図ろうとした上層部が、身内である海上機動隊に出動命令。施設の差し押さえと研究内容の凍結を目指して突入したのが、ちょうど居合わせたタイミングだったらしい。
薄暗い病棟兼独房なこの場所で、俺はある男と顔を合わせる事になる。
「アンタが毎日遊びに来ていると、本当に独房入りかどうかが疑わしくなってくるな」
「うちの父親は海将補だから、色々と顔が効くのさ……あっ、また詰まされた」
最近は日課になりつつある、とある男との対局。盤上には将棋の駒が並べられて、1時間程度で東郷が詰ませた所であった。
「何で、俺にここまで関わろうとする?」
「東郷って苗字を聞いたらビンゴ。キミ、颯の弟君でしょ?言ってくれれば監禁生活だってすぐにオサラバできたのにさ」
「兄貴の知り合いかよ……また面倒な事になった」
互いに駒を並べ直してもう一局。相手の棒銀に対して、こちらも菊水矢倉を組む。日常会話を楽しむかのように、男は本題を切り出す。
「……ファーヴニル生化は存在しない企業になった。あそこはクラウドサービスやらも使わず、ネットワークを切り離してデータ管理をしていた感じだから、機動隊の突入が遅れたんだ。で、こっちの動きに気づいた上層部ごと雲隠れ、ハードコピーも含めたデータは再生不可能な位にバラバラだ。解析班も頑張ってはいるが、1割を復元出来れば良い方だ」
さぁて、どうしようかな?――――眼前の男、海上機動隊に所属しているという井矢崎莞爾の問いに対して。こちらとしても、言われてどうこう出来る問題ではないと東郷は肩を竦める。
「どうしようかと言うのは、取り調べの方ですか?それとも、この盤面をですか?」
駒の取り合いの後に、こちらは金矢倉へ。井矢崎も攻撃の手を緩めないが、この程度の早さなら凌ぎ切れる。
「それで、元社員の俺に対して尋問をしに来たと?」
「猫の手でも借りたいと言うか、藁でも掴みたいというかの感じでね。強行的に突入させたからには、海上機動隊としてもお土産が欲しいんだよ……って地下鉄飛車!?いつの間に!?」
「呆けてると、潰れますよ?こっちが単純に雀刺しみたいに時間が掛かる手の為に、飛車を下げるとお思いですか?」
「左玉寄りで棒銀始めたら、右側警戒するよ!右玉でも穴熊でもないのに地下鉄飛車を使ってくるとは、誰が予想できる!?」
会話をしながら対局する時は、いかに相手をビビらせるかが有効的だと思う。対策を怠った――――そう思わせるだけで、大きなプレッシャーを与える事が出来る。今回の反応は上々だ。
先の棒銀への取り合いから、持ち駒の数は十分。攻勢を続けていた井矢崎陣営には盤上の駒も薄くなっている。左方から飛び込んだ東郷の駒が、やがては井矢崎を追い詰めて行った。
取調室には、先程と同じく井矢崎と自分がいる。あくまで将棋はコミュニケーションがとりたかっただけなんだと言い訳をされても、こちらは苦笑するしかない。
会話の終着点はやはり、自分の古巣であるファーヴニルの研究所の話だった。
「どうして深海棲艦の力の一端――――人間の理解を超えた力を身に着けた彼女達が、ターナー博士に逆らわなかったと思う?」
「……だいたいの察しがつきますけどね。最後の実験に投入された時点で自我が崩壊しているか、抵抗しない事を刷り込まれていたか」
井矢崎の反応は、中当たりだといった感じだ。
「生き残った子達から聞いた話だ。従わなければ、担当――――駈クンを殺す……と脅されていたそうさ。彼女達と予想以上に親密になったおかげで、君は態の良い人質として扱われた訳だ」
独房から彼女達が消える際に、自分に伝えていた“ありがとう”という言葉の意味。それは俺の業に対する皮肉か、そこに戻って来る事がないと分かっていての離別の言葉か。
「君が関わる事で彼女達の心を救うと同時に、命としては殺していたんだよ」
「結局俺はあの子達の屍の上にしか、生きていられなかったんですかね」
今まで聞きそびれていた事を思い出す。トーラ――――彼女の生死は、科学者でない自分がどうこう出来る問題ではなかった。だが井矢崎が話題にしなかった事もあり、最悪の事態はイメージ出来ていた。
「あの時いた子は……被検体107と呼ばれていた子は、どうなりました?井矢崎さん」
「君が抱えていた子だね………………手遅れだった、息を引き取ったよ。彼女が安らかに逝けたのが、せめてもの救いだね」
泣き言は自分には許されない――――という事か。拳を握りしめたとて、彼女達が戻って来る訳ではないのに。
俺が殺したんだ、トーラも共にいた他の子達も。殺された事を知らなかったで、済む問題ではないのだ。
自分が他人を深海棲艦から守る道――それが、艦娘の技術の発展だと信じて取り組んできた。それがどうだ。俺がやったのは、みすみす彼女達が殺されていくのを見送っただけじゃないか。
やっている事は深海棲艦と何ら変わりはない――――戦争の為に人殺しをしたんだ、俺は
脳内で再生しようと思えば、彼女達の声や仕草などすぐに浮かぶのに手が届かない。
――――結局、俺はあの悪夢を繰り返させまいと、踏み出しても変われなかった。救いたいと願っても守れない。“すくった”滴は、両の掌から零れ落ちていくだけなのだ
「現代科学でも、人体実験は禁忌に近い。どうすれば、あそこまで人権を無視した研究が出来るか分からない程にね。軍の医療班・科学班でも、原因の究明までは出来なかった」
だから、こちらは君に協力を仰いでいる――――井矢崎の視線は、こちらの内面を見透かすように冷たい物だった。
「……俺の腕時計はありますか?あと、0.9くらいのマイナスドライバーを」
「あの、どこのメーカーでもない謎の腕時計?なんでまた。まぁ身柄確保の時のままにしてあるけど、持って来させるね」
渡された自分があの時に持ち込んでいた腕時計、その右下のラグ。その隙間にマイナスドライバーをあてがい叩く。軽い衝撃を受けた部品が外れ、分解された腕時計の中に僅かな空間が顔を出す。
microSDが収納されたある程度の隙間。元々は大学の友人が、卒業研究の一環で造った、時計風にデザインされた電子財布である。当人の遊び心で僅かな隠し物をするスペースを持っていたのは、俺とその友人しか知らない。
「退職させられた腹いせに、情報流出させれば仕返し出来るネタを仕入れといたんですよ。やられっぱなしは性にあわないんで」
「鑑識の奴ら、何が壊れているか電池切れの腕時計だよ……中身見たら針と文字盤しかないじゃないか。動くわけないだろうに」
自分に与えられたアクセス権はレベル4。さすがに最高位であるレベル7までは届かなかったが、潜り込んでレベル5程度のデータは手持ちにあった。
モニターに映った内容を流し読みした井矢崎が、悪魔の所業だな……この実験は――と呟いたのは聞き逃さなかった。
サンプルとして残されていた映像には、薬物を投入され狂っていく被検体。鎖に繋がれた彼女達は、己の爪で牙で目の前にいる研究員を殺そうともがく。深海棲艦として化け始めているからではない。本能で自分を害する敵を殺そうとしているだけだ。
しかし研究員が何かを語った後、目を見開いた後に動きが大人しくなる。ある者は涙を流し、ある者は先程以上に怒り狂う。荒い映像から読み取らなくても分かる。確かに彼女はこう言ったのだ……
――――
それは、目の前にいた研究員に向けられたものではないのだろう。その矛先はきっと俺だ。
彼女らの声に自分の耳を塞いだだけだ。救えもしないのに、中途半端に手を伸ばした結果がどうだ。俺がやったのは彼女らを余計に苦しませるだけだったのだろう。
「良い情報が揃っているね。これで、生き残った子達に対するケアもある程度はマシになるだろう」
一通り内容を確認しても顔色一つ変えない井矢崎は、東郷に対して向き直った。
「平菱とポセイドンの現行計画――――艦娘の装着する武装には、深海棲艦のメカニズムや細胞が使用されている事についてだが……あちらの方が、まだ良心的と言う感じだね。艦娘の素体を改造する考えにまで至ると。人を育てるのと、機械を生産するのとの境界が変わらなくなってくる」
――――だから君には、“まだ”良心的なこの方法を使った艦娘達を使って国防の盾となって貰いたい。
「国連海軍からの提案だ……こちらに来たまえ、駈クン。今回の結果は散々だったが君の様に、相手に自覚させない程度にコントロールする。指揮官として、部下を統率する能力を買っているんだ」
「……業を背負っても、彼女達を縛り続ける運命は変わらないという事ですね。Yesと言わなかった場合は?」
「このまま独房入りが続くわけだ。非公開だが、人体実験の重要参考人だぞ。君は」
「俺に軍の犬になれと」
「先程提供して貰ったファーヴニル生化の情報と、軍の駒として動く労働の対価として。良い落とし所だと思うけど……乗るかい?」
机上に置かれた契約書にサインして突き返す。自分の性格を鑑みると、王将ではなく歩であるのだろう。それが“と金”に化けるかは別として、歯車として動くだけで深海棲艦に対する力を得られるならば断る理由もない。
「俺の償いは、これ以上に艦娘達を死なせない事です。その為には、ここで燻っているよりかは数倍マシだ」
「ご協力、感謝するよ。」
ようこそ、クソッタレな職場へ――残業手当も出ないブラックな職場だけれど、共に戦う事が人類の礎となる事を信じよう。
「それで、俺が指揮官になるにはどうなるって言うんです?一昼夜の付け焼刃で、どうにかなるってものじゃないでしょうに」
「そこら辺も手は打ってある。これが、うちの父親からの推薦状。呉の国連海軍大へ、後期の基礎課程から編入して貰う事になる。数年学んで貰う事になるけれど、耐え抜けば晴れて指揮官の身だ」
手に入れた力は、存分に振える機会を得られるぞ?井矢崎の笑みは、こちらの奥底まで見透かしている様だった。
その後、俺は海軍大に道を進めた。艦娘(であった者)達に対する自責と後悔の念に駆られながら、俺は守る為の術を学ぶ事になる。
頭のネジが吹っ飛んだイカれた連中とつるむ事になるのは、これから少し先の話である。
いい加減に一章の修正を終わらせたい所。
ちなみに設定がガタガタになり始めているので、いずれは大きな修正を加える事になりそうです。