艦隊これくしょん~鶴の慟哭~   作:エーデリカ

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どうも、バレンタインなんて……と思っているエーデリカです。

オーバードライヴ様の『艦隊これくしょん―啓開の鏑矢―』あちらの提督方と東郷中佐の出会いがどんなものだったか。
今回は、それがネジの吹っ飛んだようなものだった―という話です。
(最初は瑞鶴のバレンタイン回にするつもりが……)

二章でもこれから登場して頂く予定なので、ご紹介するのに良い機会かと。
一度検閲をかけて頂いた所「いいぞ、もっとやれ!」と返信して頂きました。
彼らの名誉の為と思う方は『艦隊これくしょん―啓開の鏑矢―』の方にお進み下さい。

軽快な鏑矢のようなギャグでも構わない、という方はスクロールして下さい。

それでも構いませんか?では本文をどうぞ。


2078/02/14 Their bloody valentine

うーん、と改大鳳型1番艦。瑞鶴は首を捻る。

 

おかしいなー。これであってるはずなんだけど。

 

提督さんの執務室から拝借した『失敗しないデザート作り!』という本を片手に、調理場で一人唸る。

 

切っ掛けは、小説が多く取り揃えられている本棚に、一つだけ料理本があった事。

 

暇つぶしにパラパラと捲っていると、そういえばバレンタインだっけ?と思いたった。

 

まぁ、日頃お世話になってるし―と調理場で悪戦苦闘を繰り返して今に至る。

 

そういえば、何でこんな本があるんだろう?

 

ちょっと気分転換しなきゃ。片づけを終え、とりあえず執務室に向かう事にする。

 

 

 

 

 

「ヴェルさん、お久しぶりなのです」

 

ウェーク島に所属する電が、ヴェルに声を掛ける。

 

「そうか、そろそろ定期連絡の時期か。そっちの様子はどうだい」

「新しい司令官さんが着任されて。ようやく戦えるようになったのです。ヴェルさんの元相棒の響も、元気にしていますよ」

 

そうか、何よりだ―と返す。

 

「それで、うちの司令官さんからヴェルさんの司令官さんに、預かりものがあるのですが……」

 

実は中身は知らないのです―という電に対して、とりあえずヴェルは開けてみようかと答える。

 

箱を開けてびっくり、二人揃って声がハモる。

 

「「何なの(です)?これ?」」

 

 

 

 

 

「遠路遥々ウェークからようこそ、駆逐艦電。今回は提督が代わった事の報告かい?」

「はいなのです。こちらも忙しくて、なかなかお会い出来なくてすみませんなのです。それと、うちの司令官さんから、書状と品を預かっているのですが……」

 

その品は?という問いに対して電はヴェルを指す。

 

「……鍋?」

「鍋なのです」

 

見間違いじゃない。確かにヴェルの頭に乗っかっているのは鍋である。こら、調理器具で遊ばないの。

 

着任の挨拶で鍋?……ナベ!? ナベナンデ!?

 

着任の書状を見ると見知った名前が……月刀だと!?今ウェーク島にいるのか?

待て。あの鍋どこかで見た事がある気が……。

 

注意されても鍋を被ったまま、執務机の周りをグルグル回るヴェルを捕まえて、手元に持ってみる。

この焦げ跡・・・間違いない。これはあの時の……

 

冷や汗が止まらない東郷に対して、ヴェルと電ははてなマークを浮かべている。

 

「ねぇ、提督さん。何してるの?お客さん?」

 

換気の為に開けていた窓からヒョコッと、瑞鶴が窓の外から顔を出す。

 

そう、そのタイミングと場所が悪かった・・・。

 

――――『ハッピーかい?マイフレンズ。どうせ男世帯でつまんないだろうから、義理チョコ持ってきたわよー(笑』

 

フラッシュバックする悪夢。忘れようと思っていた、素敵な思い出(トラウマ)。

 

ふっと、体の力が抜けたのが分かる。意識が暗転する。

 

はわわ、東郷さんが倒れちゃったのです。

 

そんな電の声を最後に、記憶はあの時の惨状を呼び起こす。

 

 

 

 

 

悩んだ末にやっぱり日替わりが一番だな―と券売機のボタンを押していると声を掛けられた。

 

「――――なぁ、委員長。今日も夕定食の大盛りか?」

 

「……うん、まぁそうだけど?」

 

元々宿舎の定食は、辛い訓練でも胃腸に支障がないよう、普通より少なめに盛られる。大食いな訳ではないが、人並みには食べるので確かに今日も―という表現は正しい。

 

声の主に反応して、振り向いてその人物に驚く。滅多に話す事はないが、俺は彼を知っている。今期で学年一位を争う技術を持つ高峰春斗だった。

 

「この後予定は、空いてるか?」

 

という問いに対して、まぁ消灯まではね――と返す。

 

「じゃあ決まりだな、別腹は残しておけ」

 

大盛り券を押そうとした僕の指を阻み、どう、どうとカウンターへ並ばせる。

 

いや。一体何が起こるんですか!?腹パン?吐くから食うなって事!?僕気に障るような事なんかしましたっけ!?

 

自覚がないが、顔色が悪くなったであろう俺を見て、高峰はニヤリと笑う。普段は真面目そうな堅物だと思ってた。そんな表情するんだ。

 

 

 

 

 

「一名様ご案なーい」

 

……何これ。一体何が始まるの。

 

連れて来られたのは高峰の部屋である。そこには既に先客がいた。少し大きめの丸テーブルのコタツを挟んで2人。

 

「どこ行ってたんだっ……て。委員長か!?なんでまた?」

 

そう驚くのは同期の杉田勝也。遠距離からのスナイプにかけては並ぶ者がいないと評されている。

 

「まぁ確かに。万が一の保険には最適だよね」

 

こう答えるのは渡井慧。潜水艦の運用に関してのエキスパートである。

 

「……で、呼ばれたのは良いが。何を始める気だ……お前ら」

 

後ろからの声に、東郷の肩がビクッと跳ねる。

 

振り返るとそこにいたのは月刀航暉、つい先日の演習でコテンパンにされた相手である。

 

航空戦においての実力は、変態飛行(褒め言葉)とされる実力を持つ空戦の鬼。

この4人が仲が良い事は知っていたが。なんでまた俺が頭数に入ってるのか!?

 

「今日は2月14日だろ。明日は教官らの会議で訓練と講義は休み。ならやる事は一つだろ」

 

今の高峰の表情は、まさに悪の権化かもしれない。

 

――――ブラック・バレンタインデーだよ。

 

 

 

 

 

さて、状況の把握に努めようかと思う。

 

狭い部屋に男が5人。そのうち4人は成績上位の優秀組で、後は凡人の俺。

 

部屋の照明は常夜灯のみ、丸コタツを挟んでの向かい合い。

視線の先には、どこからか持ち込んだのか不明だが、ホットプレートと鍋……。

 

そう、鍋である。

 

「とりあえず、粉末カカオ入れるねー」

「ってか苦っ!銀蝿してきた砂糖入れれば良いか?」

「……まぁ、なんかそれっぽくなった気がするな」

 

煮えたぎるのは、溶かした粉末カカオを溶かした黒い何か。

 

食堂から拝借してきたであろう、お玉でかき混ぜている。

 

これはそう……チョコレートのような何かである。

 

「今時、加工食品は貴重だからな。原材料や果物はまだ手に入りやすいが」

 

と、高峰はボールに入ったイチゴやバナナ等のぶつ切りを持ってくる。

 

「これを串に刺して食べれば“チョコレート・フォンデュ”?っていうのになるんだよね?」

 

「らしな、このご時世じゃこんな事をやってるのは、俺らぐらいだろうさ」

 

スタンバイ・オーケーと言わんばかりの問題児達。

 

そして月刀の号令で幕が落とされる。

 

「……よし。オペレーション・ブラック・バレンタイン。開始する!」

 

そしてこの月刀、ノリノリである。こんなキャラなの皆!?

俺の預かり知らぬ所で、なんかヤバい事始めました。この人達。

 

とりあえずこの騒ぎを、廊下の外へ広げないようにするしかない……。

 

後で思えば、ここで逃げれば良かったのかなぁ。

 

委員長と呼ばれる所以である、その面倒見の良さ。これが裏目に出た訳である。

 

 

 

 

 

感想を言おう。非常に不味い……。

 

「いやー。なかなか再現出来ないね」

「いや、むしろ当然だろ」

 

鋭い月刀のツッコミ。

違う、そういう意味じゃない。

 

唸る4人を見て、僕は席を立つ。ちょっとお手洗いに……。

 

 

 

 

 

帰って来た僕を見ての4人の反応は、皆一緒だった。

 

「「「「何持って来たんだ!?委員長!?」」」」

 

僕の両手には一杯の調味料達。ちょっと拝借してきた。

 

食材を無駄にすると怒られるからね。そういって鍋に手を出す。

 

まず牛乳を目分量で投入。とりあえずあったバターも放り投げる。

 

原材料ってこれであってるっけ?と思いつつ、グルグル掻き混ぜる。

 

チョコレートというよりはココアな気もするが、背に腹は代えられない。

 

即席のデザートに無理矢理完成させる。

 

「「「「おぉー」」」」と主催者側。オイ

 

締めは、朝食用の物を拝借してきたコーンフレーク。

 

あぁ美味ぇー、食べられるって幸せだ―と皆で一息ついた。

 

 

 

 

 

うわっ。この部屋甘ったるい匂いで一杯だ。

 

そういって、窓を開け始めたのは誰だっただろうか。冬の寒空の中、冷気が流れ込む。

 

もう十分じゃね?と思う頃、窓の外からひょっこりと顔が飛び出す。

 

「ハッピーかい?マイフレンズ。どうせ男世帯でつまんないだろうから、義理チョコ持ってきたわよー(笑」

 

5期の黒鳥のその一人、笹原ゆうである。

 

門限過ぎてるだろ!?何で男子寮に!?という問いに対しては、意に介せず。

 

あれっ?何やってるの?と窓から入ってくる。

 

「うわっ。男5人で闇鍋?委員長、あんたも災難だねー。こんな奴らと組むと碌な事がないでしょ」

 

うん激しく同意する。今日で多分一生分の驚きを使い切ったと思う。

 

ねぇ食べて良い?と輪に混ざる。そして鍋に残っていた、もはや雑炊状態のコーンフレークを口に流し込む。

 

「なかなか行けるんじゃないの?んじゃまぁ。ハッピー・バレンタイン同期の皆さん」

 

そういって、ラッピングされたチョコレートを渡してくる。

 

「いやー私的に買っておいて助かったわね。まさか、委員長もいるかとは思わなかった。結構高かったんだから、3倍で返しなさいよ(笑」

 

まぁどうせ、問題児どもを落ち着かせたの委員長でしょ?うんまぁ―と苦笑いで返すしかない。

 

「「「「いや。お前も十分問題児だろ」」」」

 

4人のツッコミに対して、何か言った?と返す笹原。いえ、何でもありません。

 

そんな事をやっていて、声のボリュームを落とす事を忘れていたのだろう。

 

――――お前ら何やってる!消灯時間はとっくに過ぎてるんだぞ!

 

不味い、廊下から見回りの教官の声がする。

 

「ちょっと!?鍋焦げてるよ!」

「笹原お前!このまま持ってけ!」

「えっ!?何で私が!?」

 

今日も変わらず夜が更ける。

 

結局場を上手く収める羽目になった僕に対して、渡井が一言。

 

「ね。万が一の保険は掛けておいて正解でしょ」

 

とりあえず一言だけ言いたい。君達と関わると碌な事がないっ!そう断言出来た。

 

 

 

 

 

――――気が付いたかい司令官?

 

看病に付き合ってくれたであろうヴェルの声で、意識が現実に引き戻される。

 

「過労かい。最近碌な休みはとれていないんだろう?」

 

自分の部屋だろうか、ベットに寝かされていたらしい。

 

まぁ、色々な事が立て続けにあったからね。ずいぶん応えたこともあったね。

 

ふと視線を動かすと何故か、ヴェルの頭には僕のトラウマ=例の鍋が鎮座している。

 

いや、だから。調理器具で遊ぶのは、やめなさいって。

 

咎めていると、ふとヴェルが視線を廊下へ向ける。

 

もう入ってきて良いよ――と現われたのは、瑞鶴だった。

 

「提督さん。いつもありがとう。これ気持ちですがどうぞ」

 

可愛くラッピングされたシフォンケーキとマフィン。

 

あぁ、良かったチョコじゃない。ふと胸を撫で下ろす。

 

「そういえば、何であのタイミングで気を失ったの?私なんか悪い事をした!?」

 

心配そうな顔で覗き込む彼女に対して、ただ一言笑って返す。

 

そうだね。皆との素敵な思い出を、思い出しただけだよ――と。

 

 

 

 

 

「提督さん。この本だけ周りから浮いていたけど、どうして執務室にあったの?」

 

手に握られているのは『失敗しないデザート作り!』というタイトル。

 

質問に対しては苦笑で返す。

 

『情報は何よりの武器』というのを、自分に思い起こす為にある戒めだよ――とはとてもではないが言えなかった。




コラボ先の方々の、多分なキャラ崩壊を含んでおります。

いや……軽快の方のぶっ飛び方もおかしいと言えば違和感が(おや、誰か来たようだ
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