相変わらず啓開からキャラを借りると、食糧の話になる件について(苦笑
キャラ設定を提供して頂いたオーバードライヴ様には、この場を借りてお礼申し上げます。
Q:というか何これ。A:艦これ?
そんな訳あるか。艦娘が最近出てきてない(白目
東郷過去編も、そろそろ終わらせたい所。
それでは、どうぞ。
左肩と右腕に一発ずつ貰ってしまったが、まだ意識は保てる。血が流れない分ぬるいと言われればそれまでだが。だが、模擬弾に仕込まれた蛍光塗料は闇夜に映える。敵に視認される要因となるので、ナイフで割きつつ破って上着を羽織り直す。
煤と泥で汚れた戦場を、生き残る為に走る。飛び交う砲火を抜け、草叢に転がり込む。
かれこれそんな生活が、ついに3日目に突入した。
――――野戦特別訓練。3人1組での屋外演習は佳境を迎えている。
卒業前に行われる、
ここで行われるバトルロイヤルが、最終的な成績に影響するとか何とかで躍起になる仕官も多い。
途中に足を引っ掛けて崩した態勢を、立て直そうとした所に枝が直撃する。
打った頭をさすっていると、少し離れた所から通信で飛ばしてきたのだろう。ケラケラとした笑い声が脳内に響く。
『――――何とまぁ、“今日も”災難だな。へばってるなよ、委員長』
『――――こちとら、死ぬ気でやってるんだ。もともと文化部の俺にはキツイんだよ。最終日だから勘弁してくれ』
艦娘を指揮するのに、なぜ銃器を背負って走らねばならないのか――――曰く、基礎体力が物を言うなどと理由付けはされている。しかし実戦で人間を撃つという行為があるとすれば、それは深海棲艦との戦闘と関わりはない事だと。
上がった息を整えながら、模擬弾のカートリッジが装填されている事を確認する。愚痴を言ってもこの演習は終わらない。
瀬戸内海に浮かぶ、どこかの無人島で行われているこの訓練。食糧は支給品以外にも、狩りをしても良し。だが、そう上手くいく訳ではない。ならばどうするか……
――――リタイアした、他のチームからの強奪である。
だからこそ、この強制参加の演習。文字通り死にもの狂いで他チームを潰しに行くのである。生き残る為に……
頭部に被っている、光学デバイスによる着弾判定。四肢の神経と直結している為に、模擬光弾を一撃でも食らえば激痛を引き起こす。痛みに気を取られ判断が遅れれば、疑似的な死が待っている。
暗視ゴーグルをつけた、戦闘服が似合っている男――――同期の杉田勝也が大柄な体を竦める。獲物を食らわんとスコープを覗いていたが、あまり芳しくはないようだ。
「おう、おう。さすがに逃げられたか……まぁ欲張ってミスしたら元も子もない。こっちの狙撃で2、3人で戦果としては十分だよな。よく逃げ回ってくれた、委員長。食糧の回収は済んだか?」
「あっちでドンパチやってた所のも拾ってきた。乾パン4つと、干し肉パックの3つ。今日の夜食は豪華になりそうだ」
篠華は戻らねぇのか?問いに対して、東郷は首を横に振る。
うちのチームの作戦は、いたって単純明快である。水場を確保した上での籠城戦。杉田のロングレンジ狙撃と、篠華曰く野生のカンで察知して遊撃したり。侵入可能経路に、俺が仕掛けたセキュリティトラップ。そう簡単に近接戦闘には、持ち込ませていない。
これまでは露払いをしつつ相手の食糧を奪う事で、食い繋いできた。
しかし、明朝の夜明けと共にゲームセット。戦果を稼ごうと、躍起になるチームも多い。
まだ、油断する事は命取りになる。
「さすがはスティンガーキラーだな。噂には聞いていたが、ヘッドショットとは相当の腕してるじゃないか……所で、なんで俺は囮役ばっかり引き受けているんだろうな?」
「適材適所って事だよ。戦闘スキルが皆無の新人でも、根性さえあれば役に立つ。ずいぶん相手陣営をかき回してきたらしいじゃないか」
乾パンを砕きつつ、咀嚼する。身じろぎした際に、戦闘服で隠していた気味悪い蛍光色が見えたのだろう。向かい合っていた杉田の顔色が変わる。
『――――どこで被弾した?石橋を叩いて壊す、慎重派のお前らしくもない』
杉田の問われても、死角からの狙撃だったとしか言い返せない。
電脳通信に切り替えてきた所を見ると、杉田も警戒し始めたらしい。
『――――まさか……篠華が戻らない原因はそれか!?俺のセキュリティトラップや、お前の監視に気づかれずに?』
『――――おい、撤収するぞ委員長。水場を失うには惜しいが、狙撃兵は場所を相手に知られちゃあ役割すら遂行できん……電撃作戦で、篠華まで攻め落としたなら尚更だ。相手は相当の手練れだぞ』
相手が意識していないアウトレンジから、急所への狙撃。彼のスタイルもそう変わらないはずだ。
振り向いた先、そこに感じたのは違和感。目を凝らすと自分がこっちに戻って来た時に折ったはずの枝が残っている。草叢を掻き分けるように、進んでくる足音も。
周囲に溶け込もうと、展開する画像を加工し続けるタイプの光学迷彩か。それならば、景色がおかしい事には納得がいく。
気配を探っていた杉田も気づいたらしい。ライフルを背負い直し、彼もまた模擬拳銃を構える。
「穏やかな登場の仕方じゃないな……誰だ?」
左手だけで打つ拳銃の精度なんて、初心者の俺には無理な話だ。威嚇射撃にすらならないだろう。それでもないよりはマシだ、防刃グローブの中では手に汗を握っている状態になる。
木々の間をすり抜けてきた人影。揺らいだ空間に対しての杉田の一発が、戦闘開始のゴングとなった。手前の男が衝撃で拳銃を取り落した所で、戦果は上々と言える。
あちら側も、纏ったホロを剥がして突入してくる。数は2人、手数では押し込まれる。かたや戦闘ド素人が利き手を負傷しているし、ガンナーが接近戦を迫られているのは劣勢である。
銃を落とした男が、手持ちをナイフに持ち替えてきて振り下ろしてくる。切っ先が東郷の頬を掠めて、鮮血が飛ぶ。
体を捻って躱した為に。勢いで踏鞴を踏んだ、相手の顔面を殴りつける。庇った相手がお返しとばかりに足を払い、東郷は転倒する。
首筋に当てがわれた冷たい刃を肌で感じつつ、倒した相手の顔を見上げる。
「……よく初撃を避けたな。おまけに反撃する余裕があるとは思わなかった」
「本当に殺す気だったら、死んでたんだろ?お前は陸軍からの出向組だ。一般ピープルと一緒にすんな馬鹿野郎。おまけに迷彩ホロの持ち込みが可だとか、聞いてねぇぞ月刀」
見覚えのある鳶色の瞳が、冷酷な視線を投げる。どうやら仕掛けてきたのは、今期のトップ5=通称“5期の黒烏”で組んだチームらしい。
チーム選出はランダムでやったらしいが、こいつらの場合は介入して操作するなど朝飯前だろう。
片腕を失っているこちらが抑え込まれれば。ましてや彼らに対してなら、出来る事はない。
「降参してくれれば、痛い目は見ないだろうしさ。賢明な判断をしない?委員長?」
大男を引っ繰り返した笹原が問うてくる。というか、あの体重差を引っ繰り返したっていうのだから、この女性も大概イレギュラーである。お前はどこぞのアマゾネスだ。
「いつもだったらそうするがな……“俺如きに”月刀が20秒も時間を割いた時点で、こっちの勝ちだよ。笹原」
一瞬だけ、葉が散る音が聞こえた。最寄りの木から、チームメンバーの篠華が飛び移ったのを視界の端で捉える。あと10秒連絡が遅かったら、会話で時間稼ぎする暇もなく詰んでいただろう。
だが、篠華は間に合った。
自分に出来るのは、得物を役者に渡す事だ。模擬戦用のナイフで首に擦過傷が出来ただろうが、お構いなくロックした模擬拳銃を杉田に向かって滑らせる。
「リーナ=ローリンキィーク!」
高所から跳躍した人影が、勢いをそのままに笹原に飛び蹴りをかます。月夜に照らされ、白銀にも見える髪をなびかせた女性。どーよと言わんばかりに、笑みを浮かべている。
不意討ちで相手チームが動揺した瞬間を、杉田は見逃さなかった。こちらのパスを受け取り、模擬弾が装填された拳銃を手に体を起こす。
「うーん、形勢は五分になったかな……ちょっとは手加減してくれたら良いんじゃないの。リーナちゃん?」
「無理無理。ゆうちゃんにそんな事したら、私が死んじゃうからっ」
強襲に受け身をとり、ダメージは最小限に抑えたようだ。笹原と篠華の取っ組み合いが続く。
自チームの不利を察したのだろう。伏せていたであろう高峰が止めを刺そうと、拳銃を片手に杉田へ肉薄する。
交差したのは一瞬だった。身を起こした杉田の模擬弾が高峰の胴に当たり、高峰の模擬弾は杉田の右腕に着弾していた。
本来であれば動けなくなるような激痛が走っているはずだが、気にした様子もなく立ち上がった高峰。そのまま杉田のこめかみに銃口を突きつける。
「なんでだ……心臓撃ち抜いた判定あっただろうが!?」
「光学着弾判定による、疑似神経切断だろ?そんなものはホストに潜入して、中身弄って遮断すれば意味なくなるだろ?」
高峰の当然だろ?と言わんばかりの態度には、こっちも苦笑するしかない。
「戦略とか言いながら略奪しかしてなかったのか、今まで?参謀として大雑把過ぎるだろ……高峰」
「いかにこの演習を生き残るかを、最優先で考えた結果だ。そういう委員長だって同じ考えだろう?」
そう言われれば、言い返せない。現に何チームも蹴落としてきた訳だ。
「……ところで、止めを刺すなら早くしてくれないか?評価が下がるとはいえ、そろそろ仮宿舎の堅い布団でも良いから安眠したくてな」
「“だから、敵じゃないんだってば”。せっかく最終日まで生き残ったんだから、お互い祝杯を上げましょ?」
笹原の笑み。相変わらず不幸を呼び寄せるネタとなる――と言うのを思い出すのに、間が空いた。
月刀がザリガニやらを網に入れて、背負ってくる光景は中々にシュールである。おまけにタヌキだかアナグマだかに似た動物までいるとは……お前ら、この無人島に狩りでもしに来たのかよ!?
「これってビーバーか、カピバラか?ここら辺に棲んでるものなのか……」
「似てるけど、ヌートリアだね。私はあっちで、ビーバーなら調理した事があるよ?尻尾が美味しんだよねー」
「さすがロシア生まれ……やってる事が違うな……」
というか、何で例の鍋を持ち込んでるんだよ!?嬉々として取り出すんじゃあない、笹原。
そこっ、割と真面目に“えっ、どうして?”って顔をするな。こっちが傷つくわ。
「アメリカザリガニは臭みを抜かないと、酷い目に逢うから気をつけろよ?」
月刀――――さすがに“喰える物は喰う”人間は違う。サバイバルなら陸軍出身者に任せれば安泰である。
そんな中に淡々とした手つきで、下準備を終えて行く人が若干2名。
「何か、高峰手馴れてないか?」
「……まぁウェイターをやってた事があるからな。調理なら、一通りを覚える機会はあったが」
「まぁ右腕が使えない杉田が、色々と五月蝿いのはともかく。じゃあ、何でお前らがいて“あの時はあぁなったんだよ”まったく」
「「「「あれは全部、渡井のせいだ!!!!」」」」
飯の事になると、妙に団結力があるのよな……お前ら黒烏は。
「♪ん、フフフフフフフ、フフフフフ……上手に焼けましたぁー!」
「こっちも鍋が煮立ったぞ。これを放り込めば良いのか?」
右手を高々と上げる篠華。その枝の先には丸焼きになったヌートリアが刺さっている。
「それ……皮剥いだよな!?」
「当然っ、ヌートリアの毛皮は売れるからね♪」
その商売精神には呆れつつ……というか、ソレ持って帰るのかよ。まぁ、水場が近くにあるから良いけどさ。
調味料など無いが、肉の焼ける香ばしい匂いがしてくる。
このまま無事に、夜が明けますように――と心の中で思った事が、完全なフラグであった。
何やら、周りが騒がしい。トラップから侵入者が通過した事を示すアラートが、先程から鳴りっぱなしである。戦闘狂の集団である、彼らもとっくに気付いているだろう。各々が武器をとり、警戒する。
まぁ呑気に火を起こしていれば、敵に発見される可能性が高いのは事実である。
「それじゃあ。夕食の前に、素敵なパーティを始めましょうか?」
味方にすれば、これ程頼もしい存在はいないだろう。というか妙に殺気立ってないか、お前ら!?
飯の恨みは怖い……という事か――邪魔をするなと。周りを見渡すと、まさに飢えた獣の様に目を爛々と輝かせている。
「半期転入組っていうのは、在学生から洗礼を受けるんだよ。“たるんだ根性を叩き直そう”って、他人を見下さなきゃやっていけない神経してる奴らは一杯いるからな」
「今年は委員長がそれでしょ?だから狙われてるって訳」
「ホントに、余計なお世話だよな!?」
それだけではない気がする……。
黒烏お覚悟――とでも言わんばかりの侵入者達。そりゃあ上位組が固まってれば、倒せればそれなりの評価が付くだろう――――生き残れればの話だが。
好機とばかりに駆け昇ってくる彼らに対して、カラスも爪を研ぐ。
そういえば。この面子で欠けているのは誰か――で思い出す。
「なぁ、高峰……もしかして、お互いのチームに渡井がいない理由って……」
「もしかしなくとも、その通りだ。アイツがいたら、この食材が全部反物質に変わるぞ?」
渡井と同じ班だったらしい伏宮には、同情だけはしてやろう。もちろん立場を替わってやるつもりは、毛頭ないが。
『――――敵の数は……反応を見る限り20人は越えてない?』
『――――最終日の夜の、どこにこんな人数が残ってやがった!?』
『――――おそらく、餌を用意して扇動した奴がいるんだろう。
「上等だ。晩餐を邪魔した奴らには、お灸を据えないとな」
――――奴らから奪った食糧は、俺らで山分けだろ?
高峰の視線に対しては、こちらも苦笑で返す他はない。
「なぁ知ってるか?カラスって、食用として食えるだぜ?」
「焼き鳥だけは、お互い勘弁したいもんだな」
帳が下りる頃合いに、マズルフラッシュの明滅が山中を奔る。
彼らの夜は、まだ終わらない。
次回は、現在に戻って来れるはず。
第二次日本海海戦後に行われた後の横須賀演習を最後に、一応過去編は完結しそうです。その話は、三章の最後に挟むと思います。
明日から、また地元に帰って就活であるorz