艦隊これくしょん~鶴の慟哭~   作:エーデリカ

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皆さん、夏イベントお疲れさまでした。

うちは燃料と弾薬が1桁になった時に、風雲が出てくれました。
大和武蔵フル出勤。道中、決戦支援まで惜しみなく投入しての堀りだったので大分資源がやられました。

横須賀夏祭り編。あと2話?続くかな。

それでは、Are you partying YOKOSUKA FESTA?


三章-13 Are you partying YOKOSUKA FESTA?

「まったく……なんでこんな日は、警察沙汰が増えるのよ?」

 

 デミトスのチャンネルを切り替えながら、溜息をつく。トラブルの連続で水分補給どころか、お手洗いにすら行く暇すらない。

 

 さすがに海軍の敷地内とはいえ、日本は日本である。鎮守府自体が独立国家のような体裁であるが、しかるべき手続きを踏んで犯人の引き渡しを行わねばならないのが面倒だ。

 

 こんな機会だからこそ地道にパトロールを繰り返し、あれやこれやと解決しようと既に13時を回っていた。持ち場に縛られない遊撃隊だが、なおのこと休憩を思うように摂れないのが嘆かわしい。

 

「お腹減ったなぁ……」

 

 景鶴は訪れた来客の接待も兼ねていたため、いつもの弓道着ではなく第2種軍装で走り回っていた。こんな恰好で買い食いなどしていたら、大目玉である。

 

 おまけに暑いし、慣れないズボンがとても重く感じる。全身から汗が吹き出し、ベタリと衣服に張り付き気持ちが悪い。

 普段こんな恰好の提督さんたちは、よほど我慢強いのだろうか?

 何食わぬ顔で執務室にいるから、通気性が良いものだとばっかり思っていた。

 

 さて、お仕事お仕事。視界に入った、車椅子を押す来場者に声をかける。

 

「こんにちは、お手伝い出来ることはありますか?」

「そーね。腕章つけてるスタッフさん。第六工廠に行きたいんだけど、方向はあってる?」

「あっ、いえ。ご案内しますが、どちら様でしょうか。解放区域には含まれていないので、事前に入講許可が必要になりますが」

 

 話しかけたのは女性二人組。座っている朱色髪の女性が、作業服を着て大荷物を抱えている。何かの準備で来ているのだろうか。

 

「肩の階級章……三本線に桜がふたつ。任務お疲れ様です、特務官殿」

「桃夏……あんた、初対面に対する一声がそれ?」

 

 同伴していた桃色髪の女性。なぜ、この女性は肩章の意味を知っているのだろうか――――艦娘が特務官と呼ばれ、中尉相当の権限を持つ事を知っている一般人は少ない。

 キャリアを積んだ20代後半の女性ではない、少女に似つかわしい年齢の中尉なら艦娘と思われても仕方がない。

 

 景鶴にとって、危険信号が点滅し始める。事情をよく知る、疑わしい者へは関わらない。何者かは分からないが、身の振りを慎重にしなければ。

 しかめ面をしていただろう景鶴を見て、それとは対照的にツインテールの少女が笑う。

 

「そう警戒しなくても良いんじゃないの?艦娘さん。私たちだって本音を言えば、遊びに来たいと思ってるんだし」

「……申し訳ありませんが、そのカバンの中身を確認させて頂いて宜しいでしょうか?工廠の中でも厳重に管理されている区域なので、手荷物検査にご協力ください」

 

 対応、要注意人物。下手をするとトラブルになりかねないが、危険物の持ち込みはテロ防止のため何としてでも防がねばならない。

 問いに対してのあちらの表情は、完全にからかっている。まるで、こちらの反応を愉しんでいるみたいな。

 

 両者の睨み合い(といっても、景鶴が一方的に警戒しているだけなのだが)が続く。

 しかし、こんな状況であっても空気を読めない無線。思考に浸る時間すらない――――ということか。

 

『――――こちら総合案内。12分前に、中央広場にてひったくり事件が発生。現場に居合わせたスタッフによると、犯人の特徴は身長170cm程度。水色の衣服を着用。紺色の野球帽を目深に被っていたため、人相は確認できていない。逃走先の北側ゲート周辺にて不審な人物がいたら、各自で接触するように。逃走した場合には、実力行使でもご同行願え。以下、この件はチャンネル16で対応する』

「っ!すいません。ここでお待ちください。後ほどご案内します」

 

 水色の衣服、紺色の野球帽。インプットした情報を元に、周辺を見渡す。

 

 駆け込んだ人ごみの中で、情報通りの不審な人物を発見する。しかし幸か不幸か、軍装をしている景鶴の恰好を見れば、一般人とは思われない。こちらの様子に気付いた男が、明後日の方向に逃げて行く。

 

 99%クロ。こんな時に、覆面警備だったのなら、追手とバレないのにっ!過ぎた事を言っても仕様がないが、舌打ちせずにはいられない。

 

 左の袖を振り、彩雲を飛ばす。来場者から奇異の視線を向けられるが『わぁ、艦娘さんだー』という、少年少女の声は聞かなかったことにしようと思う。

 

 路地裏を回り込んで撒くつもりか――――生憎であるが彩雲が追っかけているし、艦娘の身体能力を舐めるな。

 

 近場の宿舎の外階段を駆け上り、手すりを乗り越えて向かいの屋根に跳躍。そのまま人ごみの上を通過し屋根伝いに飛び移る。

 

 何かのイベントでもやっているのか? 下からは、そんな声も聞こえ始めている。これだけの大捕物を始めれば、注目が集まるのも仕方がない。

 

 様子を見ようと振り返った男は、その光景に目を見開いている。距離を一気に詰められ、先程よりも全力で走る。出口に向かうと言うよりも、道と言う道を曲がり続ける。

 

「邪魔だっ、どけぇ!」

「危ないっ、避けてくださいっ!」

 

 しかし、逃げ込んだ場所が悪かった。男性の声に視線を先に向けると、目の前には車椅子でスペースをとっていた来場者。件の二人の女性である。

 

「……桃夏、フォロー宜しく」

「お任せを、朱夏(あやか)。加減しないと、半殺しになってしまいますので」

 

 事態に気付いているのか、いないのか。言葉の矛先の二人――――車いすに座っていた女性が立ち上がる。

 

 桃夏と呼ばれた女性が、転がせた車椅子。男が避けようと身を捻り、壁へ向けて逃げる。

 

 次の瞬間には死角に入った、朱色髪の少女の拳が男を掠っていた。咄嗟に蹲ったところに、すかさず男の上衣に手をかけ後ろへ向けて引き倒す。

 

 衣服の動きにつられて、両腕の自由を一瞬で奪う。なおも抵抗しようとした男には、最後は桃色髪の女性が手刀を極めて大人しくしていた。

 

「この歳で腰をやられているのは痛いわねぇ。まぁ早く来て正解だったでしょ、桃夏。久しぶりの横須賀なんだし、一仕事終わったから模擬店で腹ごしらえしない?」

「そういって朱夏(あやか)は、いつもサボりではないですか」

 

 女性二人が、衣服の埃を払う。そして、呆然としている私に向かって一言。

 

「伊達に艦娘やってた訳じゃないのよ、現役さん?」

 

 自分の役職に詳しく、取り押さえた護身術について――――その疑問は、すぐに氷解した。

 

 

 

 

 

「東郷中佐ぁー。遅いですよー」

 

 こんな非日常であっても、平常運転な技術屋には頭が下がる。

 

 横須賀軍港第六工廠には祭りの期間中であっても開放されない事があってか、来場者の喧騒とは切り離されている気分になる。

 

 開放中の工廠であってもさすがに機密クラスの武装などは奥の工廠に詰めているが、それでもマニアにとって係留中の輸送船だったり――――といった代物は、輝いて見えるのだろうか?

 

 作業場で道具を振るうのは夕張と明石。二人とも貫徹だというのに、意識がはっきりしているようだ――――それとも、テンションがハイになっての空元気かもしれないが。

 

「……まったく。廃棄間際の46cm砲を花火の発射筒に改造するとか、正気の沙汰じゃねぇな」

「どうしても外注にしたくない、技術職としてのプライドがあったんだろ?あと金銭的問題もあったしな。廃棄物を再利用したいって気持ちは、分からなくもない」

 

 ――――それでとばっちりを受けるのは、俺らだけどなぁ

 

 自分と腐れ縁の伏宮少佐が(分解したから?)46cm単装砲を両手に抱えて、艤装装着用のブースに設置する。何でも『花火担当の大和と武蔵に撃たせるなら、46cm砲でしょう!』と521戦隊の中将に頼まれていたらしい。

 

 確かに強大な砲を構える様はカッコいいのだろうが……それ。見学席まで離れている来場者には見えないよな?おまけにパレットに載せた火薬の打ち上げシークエンスとかは、今時は電子制御だから大和と武蔵が構える必要はない――――というのは、中将殿には黙っておこうと思う。

 

 しかし頼まれたからには、やらない訳にはいかないので試行錯誤を繰り返している様だ。

 

「しかしいるのか?そんな都合よく、横須賀の勝手を知ってる花火屋なんて?」

「いるのよね、それが。ここに来るのも久しぶりねー」

 

 背後からの声かけに振り向くと、作業着を着た二人の女性。背丈は、自分と同じくらい。おそらく大学生程度の年齢だろうか?それぞれ朱色と桃色の髪を束ねて、こちらを窺っていた。

 

 実に4年ぶりだろうか。見舞いに行っていたときの駆逐艦の背丈が、今ではすっかり大人びた風貌になっている。

 

「………………どちら様でしたっけ?」

「アンタ……本気で忘れてるのかしら?東郷大尉(` `)

「俺には、こんな美人な知り合いはいないと思うのだが?」

「上等ね、その喧嘩買ったわ」

 

 勝気な女性が、東郷を見据えてガンを飛ばしていた――――あまりの急な出来事に放心してただけだ。

 

「横須賀に配属になったっていうから、折角会いに来たのにね」

「会いたいとは思わなかったし、今日来るとも聞いてない。おい、伏宮。よりによって何で彼女らなんだよ!?」

「二人に負い目があるのは知っているが、お前の責任って訳じゃないだろが。なら少しは仲良くしときな。それにすぐに呼べたのが彼女らくらいしかいない」

 

 招いた張本人である伏宮は、どこ吹く風である。

 

 連れてきた景鶴が困惑しているし、ある程度の事情説明は必要なのか……。

 

「えーと、提督さん。お二人と知り合いなの?」

「一応、知り合いか……。こうやって会う(` ` ` ` ` ` `)のは、初めてかもしれないが」

「つれないわね……。それでも構いませんが」

 

 工具箱や衣類がぎっしり詰まったバックから、何やら道具を取り出している女性が鋭い眼光を向けてくる。

 

「そっちの姦しいツインテールが八代朱夏(やしろあやか)。こっちの物調面のポニーテールが八代桃夏。二人とも、ここ横須賀で艦娘をやってた経緯がある」

「どーも、八代朱夏です。除籍後は後方支援隊への勤務で、電子工学の勉強をしたりしてまーす」

「同じく、妹の桃夏です。今回は伏宮少佐に呼ばれて、打上制御の担当をします。よろしくです」

 

 改めて景鶴の方を見て、ふーん、へぇ――――と頷く朱夏。桃夏に耳打ちをし、ニヤニヤしてこちらを見る。

 

「何?大尉。響ちゃんに飽き足らず、こんな女の子にまで手を出すなんてね……まぁ、大尉がロリコンじゃなくて安心したわ」

「これだから桃花はともかく、朱夏だけは呼びたくはなかったんだよ……」

 

 自分をからかってくるのが日常茶飯事だったのだから、年月が経っても苦手意識は変わらない。まぁ、自分が彼女らに対する“負い目”とは別の問題なのだが。

 

 しかし、猫の手も借りたい状態には変わらない。四の五は言っていられないのだ。

 

「仕方がない……後方支援隊、八代朱夏 技術士官。八代桃夏 技術士官。折角のお祭りだが、働いて貰いたい。よろしく頼む」

「まぁ、大尉の頼みなら断らないわよ。こっちこそよろしく」

「技官としての職務になりますが、ご指導ご鞭撻よろしくです。東郷大尉、伏宮少佐」

 

 そういえば、お前ら。何で未だに、俺の階級を大尉のままで呼称するんだよ――――と、ツッコミを入れるのは野暮というものだろうか?




秋イベまで二ヶ月しかないんですよ?

修復材のストックを回復させないと、乗り切れる気がしない。
夏は550使うのが通例らしい。
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