艦隊これくしょん~鶴の慟哭~   作:エーデリカ

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瑞鶴改二ぃ!!!!!やばいよ、まだ二隻目の瑞鶴を育て終ってないのに……。
コンバート改装のおかげで、何も躊躇することなく嫁の量産を始めるエーデリカです。

皆さんは秋刀魚漁を頑張ってますか?私は卒研で大忙しです(ん?なんで今更新してるのさ)

それでは、第二次SN作戦編(SN作戦から始まるとは言ってない)開始します!


三章-15 翼はなくとも、水鳥は跳ねる

 こういう日は、屋外で警備任務に限る。夜の帳が落ちた横須賀基地では、浴衣姿で思い思いに巡る人々の姿があった。

 

 その中で篠華・リーナ・ローレンベルグ中佐は、いく人を見送り。また来る人への対応をしながらも、ちゃっかり夏祭りを楽しんでいた。

 

「いやー眼福、眼福。可愛い子どもたちが一杯だねっ」

「……なんで、うちの司令はこんな変人なんだ。まったくよぉ」

 

 あっ、おいしそう――とか意味不明な発言をする上司の背中に蹴りを飛ばすのは、528駆逐隊旗艦の朝霜だった。

 

「少しは女性らしい振る舞いとか、覚えた方が良いんじゃないかぁ?ローレンベルグ中佐」

「私はいつだって真面目だよ?その本能に身を任せて、この前も合田少佐にスキンシップしたら、憎き金髪フレンチクルーラーに殴られたけど」

「私が阿武隈の立場でも殴ってるよっ!」

 

 なんでこんな指揮官と、4年もバディ(秘書艦)を組んでるんだか。毒と溜息を吐く 朝霜を横目に、篠華は端末のディスプレイに構内の地図を投影する。

 

 ポイントされた全スタッフの位置。トラブルが集中している区域が赤く塗りつぶされ、閉場2時間前になっても勢いは未だに衰えていないようだ。

 

「アタイらも、中央広場の援護にまわるかぃ。中佐」

「……待って、景鶴ちゃんが沖に出てる。あの子、沿岸警備の担当じゃないでしょ」

「でも警報すら出てないぜ。何か届け物でもあったんじゃないの?」

「……たった一人で海域に直行して。おまけに、艦載機が展開されてる状況で平常って言うのかな?」

 

 もちろんこの三笠公園にだって、警備のために旋回を続ける彩雲や零式艦上観測機だっている。モニターの端々を、今なお黄色いマーカーが縦横無尽に駆け巡っている。

 

 しかし艦娘が一人沖にでて、なおかつ艦載機を展開している状況には説明がつかない。敵の襲来を告げる警報も鳴らず、警戒態勢にも移行していない。

 

 それでもこの状況は、明らかにイレギュラーだ。

 

「朝霜。シフトから外れてる528のメンツを緊急招集。ヒトキュー・ヨンマルまでに、第一種警戒体勢で現場に急行する」

「司令はどうすんのさ?」

「本部を少しつ突いてくる。あとは手伝ってくれそうな同期に声をかけてくるよ」

「了解っ。まったく、東郷大尉も世話が焼けるんだよなぁ。あの人全部背負い込むタイプだし」

 

 問題は、こんな状況に東郷が一枚噛んでいるかどうか――だ。篠華は逡巡し、足を宿舎へ向けた。

 

 

 

 

 

――――誘い込まれた?

 

 敵艦載機の砲火から、海面へ身を躍らせて回避する。

 

 イチ、ニの、サン。事前に指示を出していた艦爆隊が、海面に熱量を叩き込む。

 

「これで潜水艦を三隻目っ、キリがない!」

 

 そもそも回避を続けながら、各艦載機を誘導し続けるのには無理がある。本来であればリンク中の指揮官に、操舵か艦載機のコントロールを渡すべきなのだ。そして艦娘単独の戦闘であっても、部隊であればヘイトが他艦に向いている間に体勢を立て直す時間は稼げる。

 

 問題なのは、今現在この海域で戦闘をしているのが景鶴ただ一人という状況だ。

 

 深海棲艦の襲来には大本営だって気付いているはず。だからこそ、自分に対して迎撃命令が出たのだ。なのに、後続部隊が来ない。

 

 三時の方向から、雷跡を確認。主機を最大限まで稼働させ、推力によって無理矢理旋回する。酷使してきて悲鳴を上げかけている艤装を宥めながら、敵艦隊に向き直る。

 

 

 闇夜に爛々と目を光らせる敵駆逐艦。その数が十を越える辺りで、数えるのをやめる。温存していて勝てる相手ではない。

 

「第二次攻撃隊、発艦っ!」

 

 トリガーを引いて、艦載機をカタパルトから射出するつもりだった。だが、反応がない。

 

弾切れか……舌打ちしてマガジンを入れ替えたときに、景鶴の視界に展開された文章に目を見開く。

 

――――警告。CV-THX01の交戦能力の喪失を確認。以降はリモート接続に切り替える

 

「クラッキング!?どうしてこの状況でっ!」

 

 心あたりはある。夏祭りを名目に武装の交換を行ったこと。攻勢に出る必要がなかったから、全ての空母艦娘は装備のオーバーホールをしている。景鶴もまたいつも使っている六〇一航空隊ではなく、横須賀の備品の零戦たちを使用していたのだ。

 

セキュリティを突破し、クラッカーが侵入できるようにする仕込むのには絶好の機会だったのだろう。犯人は工廠に出入り出来る人間か……一体何のために?

 

 空母艦娘の艦載機を利用した、横須賀へのテロ活動か?それなら自分が警備中にだって、艦載機のコントロールを奪えばいい。

 

 そうしなかった理由は何だ?

 

 自分の直属である指揮官以外のアクセスは、正規のラインでは繋がらないはずだ。中央コンピュータ(CSC)の許可が下りれば、ギニョールシステムをはじめとした対処法はある。しかしそれらの手段を使わずに、軍部の回線を通して艦載機のコントロールを乗っ取られた。

 

 右手に握ったバヨネットから艦載機が勝手に発艦され、弧を描いて自分に向かって機銃を掃射する。

 

 滞空中の艦載機で迎撃しようとするが、こちらもコントロールを受け付けない。むしろ翼端灯を光らせ、翻し魚雷を投下してくる。

 

 これ以上航空隊を上げない為に、バヨネットに自壊用プログラムを奔らせる。今回も反応はない。乗っ取ったクラッカーも、その事態を想定済みだったのだろう。既に対策されている。

 

そんな状況でも景鶴は冷静だった。逆に艤装からエネルギーを限界まで供給する。水を得た魚の様に、銃口から艦載機が打ち上げられていくが構わない。

 

 十分と判断したところで、右手の得物を敵艦隊に向けて放り捨てる。背部から副砲を展開。タイミングを合わせて発砲し、臨海寸前のバヨネットを破壊する。

 

 発艦用のエネルギーが、過剰に充填されている状態の火薬庫だ。軽巡二隻を巻き込んで、大爆発を起こす。

 

「副砲はまだ動くっ。残弾38発、凌げるか!?」

 

 明らかに自分に対して仕向けられた戦闘だ。工廠で故意的な事故で接触するのではなく、あえて深海棲艦との戦闘と言う舞台を整えている。

 

 相手の目的は、私が戦場で違和感なく轟沈することか。逡巡したところで、再び警告音。

 

――――警告。艦載機のリモートコントロールに不正なアクセスを検知。安全のためCV-THX01のアクセスを隔離する。

 

 ついにはCSCからのバックアップまで絶たれた。クラッカーはあえて検知されることで、合法的に自分の武装を奪いに来ている。

 

 そもそも砲撃は空母の得意分野ではないし、いくら夜目が利くからといっても目視での戦闘は難しい。レーダーやソナーも使用不可。照準補正をかけるものは、一切奪われてしまった。

 

 取り舵、10メートル稼いだところで面舵。即時反転、急旋回。海面を蹴り飛ばし、追いつこうとしてきた駆逐艦に肉薄する。至近距離で発砲。振り向きざまに、もう一隻にも直撃させる。

 

 艦載機に頼らない戦い方は、瑞鶴(’ ’)が教えてくれた。翼をもがれ、死に抗おうとするエンガノ岬の記憶。今は私の艤装ではないけれど、船霊が抱えていたあの戦闘への怒りは今でも鮮明に思い出せる。艦載機がなくたって、私は空母機動部隊の魂を受け継いでいる。

 

「こんなところで、私は死ねないのよ」

 

 至近弾。肝を冷やし離脱を試みるが、軽巡の砲撃が集中する。弾道予測を全リソースで再計算、直撃コースは四発。二発を防いだところで飛行甲板が吹き飛ぶ。防護フィールドを展開。右腕を撃ち抜かれ、弾丸が掠めた左側頭部に激痛が奔る。

 

「死にたくない。こんなところで」

 

 それは、死に対する恐怖からではない。こんな戦場で私は沈めないのだ。味方を逃がすためか?誇りのためか?違う。誰かのために戦って死ぬのが、空母瑞鶴としての本懐だ。

 

「今の私は、何も救えていないっ。自分の死に場所は、誰でもない。自分で決める!」

 

 爆炎が迫る。放たれる砲火。轟く銃声。双眸で敵を射抜け。反撃を手を休めるな。

 

 しかし次の瞬間。景鶴は予想と異なる光景に目を見開いた。

 

「なーに、恰好つけてるのさ?景鶴」

 

 目前にいた深海棲艦を一太刀で切り捨てたのは。闇夜にマフラーをなびかせる忍者のような風貌――――504水雷戦隊旗艦の川内だ。

 

『――――いやー。間に合った、間に合った。無事かな?景鶴ちゃん』

「ぜんぜん間に合ってないからな!?景鶴さんの今の顔、完全にホラーだからっ」

 

 朝霜を筆頭に528駆逐隊の面々がいる。見慣れない艦娘たちもいるが、おそらく夏祭りの関係でかき集めた部隊だろう。浴衣を着たまま参戦とは、なかなか豪胆な駆逐艦もいたものだ。

 

「せっかく祭を楽しんどったのに。来て見ればたいぎぃなことになっとるし。ちぃーと時間がかかるかのう」

「おかげで、射的屋やってた金剛さんが助かったって言ってたけどね」

 

 面識はないが、識別信号が二人の所属をはじき出す。DD-KG11浦風とDD-MT05皐月。いずれも横須賀では見かけなかったし、あらかた巻き込まれてきたのだろう。

 

「まぁ艦娘だから、駆り出されるのはどーなろーに」

「そうだね……けどさっさと片付けて、司令官と間宮に行くんだからっ!」

 

 戦場をかき回し、敵部隊を翻弄する二人。持ち手の12cm単装砲が、12.7cm連装広角砲が火を噴く。

 

 戦場を傍観していた艦載機たちが、意志を得たように川内たちに襲い掛かる。駆逐隊は対空兵装に切り替えて、蠅を払うように叩き落とす。景鶴に迫る艦戦隊には、満潮が立ちふさがった。

 

「味方の艦娘を討とうとしてるのは分かるけど、相手のクラッカーも御丁寧ね。本当ッしつこいのよ!山雲、バックアップ!」

「はーい……せーの、ドーン」

 

 間の抜けた声と共に、空中へ放り投げられた爆雷が炸裂する。爆風に煽られた艦載機がコントロールを取り戻す前に、一機一機撃ち落としていく。

 

 援軍がきたことは、喜ばしいことだ。しかし、頭の中で引っかかるものがあった。提督さんは今どこにいる?

 

「あの……ローレンベルグ中佐。提督さんは?」

『――――もうちょっと我慢しててね、景鶴ちゃん。今、委員長はホストの回線使って、CSCとのラインを復活させるから。手が離せないから、私が代わりに飛んできてるんだ』

 

 その声を聞いて、安堵する。そろそろ、痛覚が麻痺してくる頃合いだ。気を抜いた瞬間に自分の意識が崩れて行くのが分かる。

 

 それが怪我によるものか、電脳への侵入かは今の景鶴には判別できなかった。




大漁旗欲しいんだけどな……。艦これに張り付ける時間がない。
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