俺氏「某先生が青葉成分に飢えてる」
先方「(書けって言われるかと思ったw)」
俺氏「いやぁ、”書いて”って言うより、書いた方が早いじゃない?」
先方「じゃあエーデリカ氏が書くってことで!」
俺氏「!?」
言い出しっぺの法則なので、青葉の出番が少し多めです(伴って高峰さんの出番も)
啓開の鏑矢でもうちの子(主に篠華)がクリスマスに大暴れしておりますので、ぜひぜひhttp://novel.syosetu.org/27457/145.html
それでは、どうぞ
――――2083年12月22日08:19
事態は数時間前に遡る。
少し早目の帰省に合わせて、12月末日期限の書類を片づけたところで東郷は一息つく。あとは自分が不在でも対処できる案件のみであるし、遠方からでも指示出しで済みそうだ。クァアと大きく欠伸。書類をファイルにストック、あるいは封筒や机の中に押し込み作業を終える。
始業前の喧騒は、徹夜明けの頭にはかなり響く。眠気を振り払おうとコーヒーを淹れようとして、机上のマグカップを払い落としてしまった後ではもう遅い。執務室とはいえ中佐そこらの部屋の内装はたかが知れているし、絨毯など敷かれてはいない。マグカップが盛大な音を立てて砕け、意識は現実に引き戻された。
「……ここんところ、碌に休めてないからな」
折角終わった成果が、コーヒーで塗り潰されなかったのだけがマシだろうか。掃除用ロッカーにあった箒で破片を払い、雑巾で一帯を拭う。
さて寝るか。ひとまずドアのプレートを外出中に捻り、皺にならないよう羽織っていた上衣だけハンガーに放り投げソファに身を沈める。このままなら熟睡できそうだと船を漕ぎ出したところで窓際にぶら下がった影があることに気付く。
「何やってんだ青葉?」
『いやー、助かりました。帰省されるって聞いてたんで慌てましたよ? 第50艦隊の決算書類をお持ちしたんですけど』
いくら執務室に鍵をかけたからって、裏から回り込む発想には脱帽モノである。というか本当に時間ギリギリに間に合わせてきたのか。寒空の下で吊るしておく訳にもいかないので、窓を開けて室内へ放り込む。紫髪の少女が猫よろしく、床で一回転。見事な着地で起き上がる。
「いやー、これで青葉もお休み取れますよ」
「そうかい。こっちは追加作業が増えて微妙な気分だよ」
「東郷中佐って、真面目な割に子供っぽいところありますよね?」
膨れっ面をしているのが分かったのだろう。茶化すように青葉が笑う。
「今日から一週間非番だっていうのに、余計な仕事持ち込んだからだろう? 本来なら今ごろ経理課行きの案件だ」
「そう言わずに、よしみで何とかしてくれませんかぁ?」
わざとらしく涙を含んだ瞳でお願いポーズをしてくる青葉には、溜息を一つ。
「……分かった。高峰に免じて、どうにか終わらせるから」
やっぱり持つべきものは、コネのある優秀な上司ですよね――――計画通りであろうその発言に、東郷は眉間に皺が寄ったのだった。
――――閑話休題。そして、思考が現在に戻って来る。
結局午後まで資料作りに追われ、遅い昼食がてらに外出したのが運の尽きだ。いつのまにか主導権を握られて、荷物持ちを任されている。
「しかし、こんなご時世でも世間は賑やかですねー」
色とりどりの装飾と電灯。街を歩く人々は何処か浮足立ち、あるいは更に悲壮な顔で往来する。普段の自分はどちらだろうなと思い起こしつつも、先を歩く少女を見失わないよう歩きに揺れる紫髪を追う。
世間はクリスマスシーズンだというのだ。こう妙齢の男女が一緒に出歩いていれば、それこそカップルに見えることだろう。
「それで……なんで仮眠を摂ろうと思ったら、俺はいつのまにかお前に引きつられてるんだ?」
「やだなぁ、連行なんてしてないですよぅ。中佐がただマグガップを買いに来ただけでしょう?」
「それはそうだが……というか、なぜお前の買い物に付き合ってるんだよ」
折角こんな美少女とデート出来るんですよ?――――ハートか星マークが出そうなその仕草に、こっちがむしろ頭を抱える。フリにのってこない東郷を見てつまらなくなったのだろうか、青葉が唇を尖らせる。
「中佐はクリスマスに過ごしたい人はいるんですか?」
「時期的に仙台にいるだろうから、実家に世話になってると思う」
「ということは、例の本妻とご一緒なんですね?」
「どっからそんな個人の友好関係洗うんだか……まぁ、茜さんもいるはずだけどな」
故郷にいる幼馴染を思い浮かべつつ、横須賀に残していく艦娘たちには埋め合わせで何か買わなきゃなぁ――と逡巡する。そしてクリスマス・艦娘・プレゼントというキーワードに、頭が酷く痛むのは気付かなかったことにしよう。
「そういやぁ、571もいるんだったなぁ」
「571水雷戦隊……漣ちゃんたちですか。中佐と話す光景は見かけますけど、何かあったんですか?」
話すべきか、話さざるべきか。脳内で台詞を整理して、とりあえず煙に巻く程度に情報は開示する。
「防衛大江田島校で教導駆逐艦が彼女達だったんだよ。曙には何度罵倒されたことか」
「そういえば途中編入でしたっけ? 東郷中佐は」
「そ。同期が活躍してる中、一人だけ補習詰めになってな。捻くれてるけど真面目な曙と、朧に根性を気に入られたのか、二人がよく付き合ってくれたよ」
「でも、それだけじゃあないんでしょう?
ヤバい……この目は完全にからかっている。青葉が舌なめずりするように、こちらに迫ってくる。立ち寄った雑貨屋を見分しつつ追及を逃れようと距離をとるが、青葉は気にせず詰めてくる。圧力に屈するように、喉から声を絞り出す。
「それでな。クリスマスの日に同輩たちとお世話になったお礼にって、サンタクロース宜しく教導艦組にプレゼントを置きに行こうとしたら大乱闘になった」
「相変わらずアンタら、トラブル起こすのがお好きですね?」
「……褒め言葉として受け取っておくよ」
内容は端折っているが、大体の事情は察したのだろう。後で高峰にでも問い合わせるのだろうか、それ以降青葉は大人しくなった。
カーテン越しに朱色の夕日が差し込む。アンティークな電灯の淡い光に照らされる店内を見物して、何品かピックアップ。
朧にはボトルアクアリウム。砂浜をモチーフにした背景に、クリスマスツリーや軽装のサンタクロースの人形が配置され、南国風のインテリアとなっている。
曙にはカミツレを模した髪飾り。カミツレの花言葉は『逆境に耐え忍び、苦難に打ち勝つ力』。不屈の闘志を持っていた彼女に似合う花だと、個人的には思う。
漣にはウサギのヌイグルミ。よく分からんテンションで跳ねる彼女は、キャラは掴みにくいが可愛いモノ好きとの僚艦の情報である。
潮には紺色のポシェット。品目を悩んでいた時に青葉に後押しされたのもあるが、似合うもので取捨選択したら自然とイメージと合致していたので購入する。
会計を済ませたところで、青葉の端末へ着信音。メールの確認をしているのだろうが、腕時計と時間を照らし合わせて焦った表情を見せる。
「中佐、予定変更ですっ。ちょっと遠回りになりますが、何件か梯子しますねっ」
「別に構わんが、これ以上俺の腕は増えんぞ……」
結局門限ギリギリまで市中引き回しの刑にあって、荷物持ちの限界容量まで運ばされたのだが。
たまにはこんな日も悪くはないかな――――年末最後の大仕事ってことで。
「メリィークリスマァース!」
青葉に引きつられて、連れ込まれた会議室。クラッカーの紙吹雪が顔面に直撃する。
「それで……これは何の有様だよ?」
隊舎に戻ってきて、言われるがままに誘導された結果がコレである。記憶を遡って第五会議室の借用を頼まれたのは知っていたが、いざ呼び出されてみるとそこには予想外の光景が広がっていた。
528駆逐隊をはじめ面識のある艦娘ら。そして、その上司だったりが机の上に料理を並べていて東郷は目を丸くする。
「委員長、おっそーい」
「人に仕事押し付けて消えたら、こんなところで油売ってたのかお前」
ご丁寧に真っ赤に仮装して、白髭を生やした篠華にまずは拳骨一発。ただでさえ年末は忙しいのに何をやってるんだか。おかげさまでこっちは、寝る時間さえ惜しかったのだ。業務の増えた原因その1は、少なくとも
「年末と三が日が当直の
声のした方に視線を向けると、月刀准将をはじめ十桁ゼロ番……特設艦隊組も顔を揃えている。
「防衛大五期のメンツでクリスマスパーティとか、冗談でもやりたくねぇよ」
「主に男子組のトラウマを抉るだけだからな」
「亀甲縛りにされて、寒中引き回しの刑になったのは今でも忘れてぇよ!」
クツクツと笑う杉田の頭に、書類をメガホン状にした即席ハリセンで小突く。20cm近く背丈に差があると、低い側は本当に不便である。あのときを思い返すと、自分達の失態に頭を抱えたくもなるが……。
「ただ皆で笑って卓を囲むだけでも、このご時世は幸せ者なんだよ。まぁ付き合ってやれ」
「買い出しご苦労様。今ある分の食糧を腹に満たすだけでも有意義だろ?」
至極当然の建前を述べられては、こちらも楯突く訳にはいかない。溜息一回とともに廊下の収納スペースから、箒チリトリ掃除機あたりをかき集めてくる。
「そういう世話焼きな面は、いつまで経っても変わんないのな」
「……そういう性分だからな」
高峰の指摘に頬を膨らしつつ、顔がにやけようとするのを無理矢理矯正する。
なんだかんだで祭ごとは嫌いじゃない。問題は、会議室の借用理由に至極当然……というか当たり前の内容で借りてしまった分、後片付けに気を使わなければならない点だろうか。
壁際に展開したゴミ袋の群れに、可燃・不燃・ビンカン・ペットボトル・その他――と油性ペンで書いている様を見て、後ろで溜息が聞こえたような気もするが無視する。
各自が思い思いにオードブルを囲っている中で、景鶴が平然とターキーを制覇していて顔が引き攣る。
「七面鳥って、嫌うと思ったんだが……普通に食うんだな」
「何を今さら。食べ物を粗末にしたら、食材に失礼でしょ? 美味しく頂くに限るじゃない?」
至極ごもっともな理由を並べられては、こちらも頷くしかない。手持ち無沙汰になった紙コップに葡萄ジュースを注ぎつつ――と。ペットボトルでないことに違和感を感じつつ、口元に運ぶ。
僅かに苦みを感じたのは気のせいだったか? 疲れていたのもあるし、飲めるのであれば問題ない。頬が熱を持っているのは、暖房の効き過ぎか人の多さによるものだろう。しかし意識を割かなかったことを、東郷は後で後悔することになる。
「まったく、酒に弱いコイツに注いだのは誰なんだか」
「高峰さぁん。ヤバそうな子たちは先に介抱しときましたー」
「とりあえず夜風にでも当てるか。あいつの執務室よりは屋上の方が近い」
辺りを見渡してみて要看護な酔っ払いが他にいない事を確認した高峰が、完全に机に突っ伏していた東郷に肩を貸す。青葉も青葉で、部屋の片づけをある程度済ませた後に合流する。
煌々と月が照らす夜空と、周りを瞬く星たちで彩られた光景は自然のイルミネーションとでも言った所か。屋上のフェンスに背を預け、紫煙を吹かし始めた高峰を見て。青葉は今日のいきさつを語る。
「いや……すいません。確か、東郷中佐は二徹目だったらしいので判断鈍らせちゃったのかもしれないです」
「まぁ外出許可を簡単にとるには、コイツを連れてくのが手っ取り早いからな。買い出しで迂回させて、なんとかクリスマス会への時間稼ぎは出来たようだが」
それで……買いたいものがあったんだろう?――――意地悪く笑う高峰に、青葉も観念したように両手を上げる。懐から丁寧にラッピングされた箱を、高峰に手渡す。
「お世話になったお礼を少し。本当にたいした品じゃないんですが、話を聞いた東郷中佐が譲らなかったので大袈裟になっちゃいました」
「……タイピンか? これ」
闇夜でも、少ない光を照り返す意匠。鳥の羽を模し、目立たない程度に湾曲したタイピンを見て高峰は目を細める。
「中佐が懇意にしているお店に、色々と加工が好きな職人さんがいるらしくて……」
そこから尻すぼみになる青葉の声に苦笑しつつ、高峰はタイピンの一端に手を触れる。重厚な作りではないが、重みが明らかに違うのに違和感を覚える。
「それ、中にレコーダーとか仕込んであるそうです。規格も調整してくれたそうなので、すぐにでも使えるらしいですよ?」
自分の職柄で役立つものをと思ったのだろうか。彼女の思いと、すぐそこで寝てる友人の交友関係に感謝しつつネクタイに留める。
丁度良い頃合いで、屋上の入口を景鶴が覗きに来た。こちらの姿を捉えて、駆け寄ってくる。あらかた寝息を立てている東郷を、回収しにきたのだろう。
「うちの提督さんがご迷惑おかけしちゃったみたいで。体を冷やさないうちに連れて帰りますね」
「そっちもお疲れ様。あとで委員長に、青葉が世話になった――って礼でも言っておいてくれ。……あっ、すまん。ちょっと待っててくれ」
去り際の彼女に、高峰はメモ帳から破いた文字の羅列を書き残して渡す。怪訝な様子の彼女には、良い夜を――とだけ言い残す。
「高峰さん。今の……何を渡したんですか?」
「委員長が、今でも持っているファイルのアンロックキーと保管場所。作成者の渡井と交渉して譲って貰ったパスワードだから、改造でもしない限り開けると思う」
なんか嫌な予感しかしないんですけど――青葉の視線は、完全に冷ややかである。
「中身は……まぁ。委員長の趣味の具現化というか、何というか。中身見た景鶴が空気にあてられてアタックするかもなー」
「棒読みは止めて下さいよ、高峰さん」
日付は少し早いが、せいなる夜のクリスマスといったら雪にパーティに……あとは男女が距離を縮めるぐらいだろう。
「俺らも部屋に戻るか?」
「はい……って、
あっちが先に人の恋路に触れたのだから、その分の見返りを彼に与えても問題なかろう――――そういって青葉の肩を叩きつつ、高峰は笑う。
収集系イベントやめてクルシミマス。あと1日でお飾り制覇しないとヤバい()