艦隊これくしょん~みらいの未来~   作:エラー猫

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リアル知り合いから「話が動かなすぎ」とヤジが飛んできたので加速します。

というわけで3話になります。ようやくみらいちゃんの身バレ回となります。
加速したにも関わらず、話の展開が遅い…気長に待って貰えると助かります。


3話:その艦娘、21世紀の力を持つ者

「すみません、お騒がせしてしまって」

 

「いいやいいよ。私としても電や雷が褒められるのは嬉しい事だからね」

 

 

 

そう言って朗らかな笑みを浮かべる司令官さん。

 

でもわたしは見てしまいました。

 

電ちゃんと司令官さんのアイコンタクトでお茶を持って来るようにって感じのしぐさ、二人の左手薬指に光る指輪!

 

 

・・・え、両者同意の上ですか?どういう反応を取ればいいのかわかりかねます。

 

 

 

―――実はケッコンカッコカリという艦娘の更なる強化が出来るアイテムである事と、マジで司令官さん、手を出してたという事実を知り本当にどうすればいいのか分からなくなるのはもう少し後の話です。

 

 

 

 

 

「コホン・・・それで本題に入ろう・・・みらい。私たちに力を貸してくれないだろうか」

 

「力、ですか」

 

「ああ」

 

 

 

 

そう言って彼は席を立ち、窓へと歩み寄りました。

 

 

 

「今この国・・・いや、世界は深海棲艦によって未だ恐怖に陥れられている」

 

「制海を抑えられているから・・・ですね?」

 

「ああ。安心して航海ができず、交流すらできず・・・彼らは航空機すら使う。制海だけでなく制空も抑えられた地域すらある」

 

 

 

そう言われてわたしは更に今、とても危機的状況にあるという事に気が付きました。

 

 

「・・・通常兵器は通じない、と言う事ですか?」

 

「いや。確かに通じる・・・だが彼らもまた人型、そうでなくてもかなりの小型・・・にもかかわらず実際の艦船と同等の防御力、火力を有している」

 

 

そういうことか。

確かに戦闘機、いや護衛艦をはじめとした艦船だったとして、何百と迫りくる人型に対して、また小さな攻撃機に対して攻撃を当てれるかと問われれば難しいを通り越して不可能と言っても過言ではないですね。

 

 

 

「特に日本は海に囲まれた土地なのです」

 

「今でこそ私たちがいるから大丈夫だけど、昔は本当にきつかったって話を街のおばあちゃんから聞いたわ」

 

 

 

横からお話に加わってくる電ちゃんと雷ちゃん。

 

・・・確かに、日本から制海を取られてしまえば、あっという間に干からびてしまうでしょう。

 

 

 

「・・・わたし、あんまり戦いとかって好きじゃないんですけどね」

 

「・・・理解はする。けれども、どうだろうか・・・我々と共に・・・日本の為に戦ってもらえないだろうか?」

 

 

 

 

 

そう言われて、わたしは目をつむる。

 

思い出すのはあの二人。思い描いた『未来』が同じはずなのに違う道を行ってしまった私の大切な上官。

 

 

 

そして、今。その二人が思い描いた最上の未来が。

 

きっと、あの世界とは違うこの世界の日本だけれども。

 

危機にある?どうして?

 

 

 

―――ふざけるな。

 

 

 

わたしの中に、怒りが生まれた瞬間でした。

 

あの戦い。タイムスリップなんてSF映画さながらの出来事に巻き込まれて、色々とやってきて。最後には沈んで。

 

わたしは見てきた。誰もがただ、『明日』を望んで戦って、『未来』を見れずに散っていったあの戦いを。

 

戦った。わたしも、草加少佐も、角松二佐も。乗員全員が戦ったんだ。たとえそれが・・・私が沈むことになったとしても。

 

そこからどうなったかは、わたしにはわからなくても。

 

 

確かにつながったはずの明日を・・・亡霊が、ただのお化けさんがぶち壊す?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そんな事が、許されるわけがない」

 

「え・・・みらい?」

「みらいさん・・・?」

 

 

電は見てしまいました。

みらいさんのその表情を。

 

ぐっと握りしめた、その暖かな手のひらを。

 

 

そして―――さっきまで、電や雷ちゃんを優しく撫でてくれた、優しいお姉さんとは違う・・・

 

 

 

 

「わたし、そこまで戦績あるわけじゃないんで強くはないです。けど―――想いで、願いで誰かに負けるつもりはありません」

 

 

 

その顔に。その瞳に宿った、激情を。

 

 

 

「人間には・・・いいえ。生きとし生けるものには血が流れてる。あたりまえのことです。

―――でも、その血に、流れ出てしまった血に白も、黄も関係ない・・・すべてが赤色だ・・・私の艦長だった方の言葉です」

 

 

 

それは、どういう意味なのかはちょっと電にはわかりませんでした。

司令官さんにはわかったようですが・・・?

 

 

 

「みんな平等に生きる権利があるんです・・・それなのに、みんなの『明日』を・・・たかだか亡霊が『未来』を妨げる?―――いいでしょう」

 

 

 

そう言って、彼女は・・・みらいさんは、電たちのする敬礼とはちょっとだけ違う――後で聞いたら、海上自衛隊の敬礼だそうです――最敬礼で司令官へと向き直った。

 

 

 

「神様の企てか、悪魔の意思か・・・それはわかりません。わかりたくもありません。けれどここに誓います。

『ゆきなみ型3番艦ヘリコプター搭載型イージス護衛艦:みらい』・・・貴方方の築く『未来』の先駆けとなるのならば。喜んで貴艦隊に推参致しましょう!!」

 

 

 

そう言った彼女の表情は、どこまでも澄んでいて闘志をたぎらせていて・・・

 

でも、とっても綺麗だったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ピシリ、ときれいに最敬礼まで済んだのです。

横でなんだか目を輝かせてる姉妹も、まあ、いいんです・・・

 

でも、あの、司令官さん?すっごい驚いた表情でこちらを見てるんでしょうかね?

 

 

 

 

「あ、ああ・・・ありがとう。感謝する・・・と、ところで、もう一度・・・君の艦種を聞いても良かったかな?」

 

 

 

 

・・・?あれ、どっか間違っちゃったかな?

 

 

「コホン。では改めまして。わたしはゆきなみ型3番艦ヘリコプター搭載型イージス護衛艦:みらいでs『それだぁっ!!』ひゃわぁっ!?」

 

 

 

 

び、びっくりしたぁ・・・いきなり司令官さん、声を荒げるんですもん。

すぐにすまない、って謝ってくれたあたりやっぱりいい人ですけど。

 

・・・でも、どうしたんですかね本当に。

 

 

 

「・・・最終確認をさせてくれ。君は護衛艦・・・『海上自衛隊』所属のイージス艦・・・と言う事でいいんだね?」

 

「ふぇ?ええ・・・ってあれ?ここって昭和じゃないんですか?てっきり司令官の服装が海軍の物だったので昭和かと思ってたんですが」

 

「・・・?なぜ君がそこまで冷静なのかは分からないが・・・今、この日本の年号は平成だよ・・・そうか、イージス艦か・・・これまで確認されたことがないぞ・・・どういう事だ・・・?」

 

 

 

・・・え?今って平成?いやあ、まあそんな深海棲艦なんてモノが存在する世界ですからわたしの元の世界とは違うとは思ってましたけど・・・

 

って、ちょっと待って下さい。

 

 

 

「え?え?イージス艦が確認されてないってどういうことです?なぜ平成なのに海軍が存在するんです?!」

 

「落ちついてくれ、みらい・・・そうだな。お互いの齟齬をなくすために事情を説明しよう。いいな?」

 

「・・・はい」

 

 

 

そう言われて聞いた真実は、なかなかに驚きでした。

 

どうやらこの世界、過去の戦いでイージス艦のほとんどが撃沈されてしまってるらしいんですよね。

しかもその後、艦娘が登場したことによってイージス艦を造るより艦娘に頼った方が効率がいいってことになり、今では片手で足りるほどしか存在してないとか。

 

 

・・・いや、聞けばわかるんですけどね。そっか・・・ほとんど私の仲間っていないのか。

 

 

で、さらに。現状確認された艦娘は私をのぞいて全てが第二次世界大戦で活躍した艦隊の船であるということです。

だからこそ、海上自衛隊を解散し、昔の日本海軍を復活させたのだそうで・・・よくアメリカさんとかが黙ってましたね、それ。

 

 

 

 

「・・・だから、正直君のようなフネが・・・いいや。イージス艦が今登場したのがなぜなのかが気になってしまってな・・・済まない、大きな声で驚かせてしまった」

 

「いいえ気にしてないです・・・そっか、第二次世界大戦・・・ねぇ」

 

 

 

思い当たることがびしびしあります。

 

・・・というより、ソレしかないでしょう。

 

 

 

「もしもこれ以降もイージス艦が出るのなら、この国だけでなく世界が有利に傾くぞ・・・!これは朗報だ・・・!」

 

「あー・・・すみません、司令官さん――――たぶん、後にも先にも、イージス艦はわたしだけだと思います」

 

「「「・・・え?」」」

 

 

 

うーん、これ言ってもいいんでしょうか・・・てか、信じてもらえるかなぁ?

 

 

 

 

「ど、どういう事だみらい。なぜそうだと言い切れるんだ?」

 

「そうですね・・・わたしが、もしも『第二次世界大戦を経験したイージス艦』だって言ったら・・・どうします?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事だ・・・?」

 

 

全面的に司令官に同意。

 

だって、イージス艦よ?雷たちだって知ってる、戦後の日本を守っていた艦艇達だもの。

 

すっごい強くて、どうにかして艦娘化できないかって議論が起きたって言うくらい・・・って司令官が言ってた。

 

 

でも、どうしてもできなかったって。

 

 

理由はわかんないけど・・・それよりも、みらいがあの戦いに参加したってどういうこと?

 

 

 

「わたしが就航したのは、平成14年。そこからしばらくは平凡に護衛艦やってたんですけどね・・・あの日。私達は不思議な現象に出会いました」

 

 

「不思議な現象・・・なのです?」

 

 

雷や司令官の疑問を思わず電が口に出した。

 

 

 

「そう。あの時、私達は突然暗くなった空に・・・オーロラを見たんです」

 

「オーロラ・・・って、あの空にキラキラってなるカーテンみたいなの?」

 

 

それって凄いじゃない!普通すっごい寒い北極とかじゃないと見れないって聞いたよ?

 

 

 

「ええ。そのオーロラです。でも、アレは、ただのオーロラじゃなかった・・・まるでわたしのすべてが閉じられたように感じた・・・

今でも分からない。いきなり、何も見えなくなって・・・何も聞こえなくなって・・・!」

 

 

「お、落ちつけ・・・大丈夫か?」

 

 

突然ぎゅっと肩を抱き寄せたみらい・・・きっと何か怖い事を思い出したんだろう。

思わず司令官がなだめたおかげで何とかなったみたいだけど・・・ちょっとだけみらいがうらやましく思っちゃった。

 

 

 

「・・・ありがとうございます、続けますね。計器は狂いっぱなしだし、嵐は起きるし・・・最後には落雷ですよ?本当に洒落にならなかったです―――でも」

 

 

 

そう言って、みらいは少しだけ顔を外へと向けた。

 

・・・なんか、みらいって美人だから凄い絵になるのよね。

 

 

 

「洒落になってなかったのはそのあとです。皆さん、タイムスリップって言葉、ご存じですか?」

 

「「たいむすりっぷ?」」

 

「未来から過去へと飛んだり過去から未来へと飛んだりする、SF・・・空想科学の話だよな・・・って、まさか!?」

 

 

雷と電はわかんなかったけど、司令官は分かったみたい。さっすが司令官!

 

・・・でも、今のお話・・・もしかして。

 

 

 

 

「はい。わたしとともにいた僚艦はどっか消えて途方にくれていた時、目の前に・・・そう、本当に突然艦隊が現れたんです。

わたしなんて小さなフネにしか見えないほどの大きな船影・・・その名前は、戦艦大和。そして、一緒に現れたのは大日本帝国海軍連合艦隊。

・・・わたし達は、気が付きました。今、わたし達がどこにいるのか。戦争が終わり、平穏を享受している平成から、どこへ来たのか―――――――

 

そこは、1942年、6月4日・・・太平洋上。ミッドウェー海戦直前という、最悪のタイミングでした」

 

 

 

ごくり、誰かが息をのんだ音が聞こえた気がした。

ミッドウェー・・・日本の多くの艦が沈んだ決戦の地。

 

そんな所にみらいってば飛んじゃったの?!

 

 

 

「だ、だが待ってくれ!公式記録には、そんなものはどこにも残っていない!」

 

「そりゃそうでしょう・・・またちょっとSFチックなお話になりますけど、並行世界って言葉は知ってます?」

 

「あ、それは知ってる。確か、似たような世界がたくさんあるって話でしょ?」

 

 

 

よく知ってるね、ってみらいになでられちゃった。

 

 

 

「そのとおり。並行世界論は、ちょっとした分岐で生まれるという話です。

例えば、今日の朝に何を食べたか。例えば、いつもと違う道を通るとか。例えば―――そう。第二次世界大戦に、イージス艦が現れる、とか」

 

「つまり・・・つまりだ。君は君自身が第二次世界大戦に飛んだ事によって、それまでの世界とは全く違う並行世界へと・・・その世界が変わった、と?」

 

 

「わたしがタイムスリップするくらいなんです。そのくらいの事があっても不思議じゃないことかと・・・

それに、わたしたちが元いた世界にも勿論そんなお話ありませんでしたし。ついでに言えば、わたしたちがいた世界には深海棲艦も艦娘もいませんでした」

 

 

「むう。信じがたい、が・・・前例がない以上ありえない話ではない、か・・・」

 

「はい。そして今司令官さんは『第二次世界大戦で活躍した艦船』とおっしゃいました。で、あれば一応私が現れた理由は説明がつくんですよ」

 

「並行世界とはいえ第二次世界大戦で戦ったから、か。なるほど、わかった・・・コレは後で元帥まで話を通さなくてはいけないかもな・・・」

 

 

 

最後に司令官ったら何かを呟いたけど、聞き逃しちゃった。

 

けど、それよりも今はみらいに聞きたい事があったんだ。

 

 

 

「ねえねえ、みらい!ミッドウェーに行ったってことは、ほかの艦船と一緒に戦ったってことよね!」

 

「・・・ええ」

 

「それじゃあ、やっぱり大和さんって強かったの!?」

 

 

 

そう。やっぱり日本の艦船としてはあの弩級戦艦の大和さんはきになるよねっ!

今も艦娘になっているらしいけど、元帥直属とかで、あったこと全然ないもん。せめて話くらいは聞いてもいいよね!

 

けど、それを聞いた時・・・何故か、みらいの顔には笑顔は浮かんでいなかった。

 

 

 

 

「ええ。大和は、強かった―――わたしが刺し違えてでも止めなきゃいけないくらいには・・・」

 

「・・・えっ?」

 

 

 

最後のところは、やっぱり聞こえなかった。

 

でも・・・なんだか、聞いちゃいけないことを、今呟いたような気がした。

 

 

 

「ねぇ、みら・・・?」

 

 

 

そのことを聞こうと思ってもう一度みらいの名前を呼ぼうとしたとき。

 

 

ばたぁん!と威勢良く執務室の扉が開いたんだ。

 

 

 

 

 

 




あとがき:


む、無駄に長くなった・・・

でも、どうしてもみらいちゃんの経歴を書くにはこうするしかなかったんですよね。

中には「それでもお前海上自衛隊かよww」とか思われる方いらっしゃるかも知れませんが、割とジパングにおけるみらいはこんな感じです。


いや、部下が暴走したせいでアスロック発射したりしますし(
気になる方はアスロック米倉で検索すると幸せになれます。

一応補足しておくと、なんだかんたで米倉もかっこいいとは思ってますよ?

あと、みらいちゃんは『未来』、という言葉に過剰に反応します。

これは自衛艦であると同時にタイムスリップをして、一時は海軍に編入されたりと色々あったせいだという設定。


そのへんの事については、そのうち全部まとめて設定集ってことで出そうかと思ってたりします。




あと実はこの話で艤装装備まで行くつもりだったのは秘密(



もっと纏める力が欲しいなぁ・・・


PS,またミスですはい。大和さんはミッドウェーで沈んでません。坊ノ岬沖でした。ジパングだとマリアナ諸島沖です。HOSキッズさん、ありがとうございました。

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