誰トクだっ!?   作:ちびっこ

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友達。そして契約。

 天気が良い。今日はお出かけ日和である。

 

 魔法が使えないことをちゃんと理解したと両親に信じてもらえた私は1人で外に出てもいいことになった。ということで、私は外へ出かけた。

 

 が、たった5分で家に帰ってくるはめになった。冒険者らしき人と一緒に。

 

「すみませんー」

「はぁい」

 

 冒険者らしき人が玄関で叫ぶと母がやってきた。そして私の姿を見て驚いたような反応をしたが、すぐに視線を合わせて声をかけてきた。

 

「お家に用事がある人を案内してくれたの?」

「え!?」

 

 冒険者らしき人が驚いていた。まさか母がそんな反応をするとは思わなかったのだろう。今度こそ納得してもらえそうだ。ちゃんと私は家族から許可を貰って外に出たんだぞ。

 

 2人が大人の話をしている間に私は靴を脱ぐことにしよう。この人が納得してもまた誰かに捕まって家に帰されるだけだ。この世界は子どもの行動に目を光らせている。

 

 でもそれは当然なのかもしれない。この世界はイメージで魔法が使える。危なすぎる。

 

 父からさらに聞いた話では、精霊の種類は火・水・地・風。といっても、あまり関係がないんだとか。精霊同士は仲が良く、協力して魔法を作るらしい。複雑なものであればあるほど、魔力が奪われていくようだ。複雑すぎて魔力が足らない場合は魔法が出ない。

 

 ちなみにこれは精霊と契約している、所謂『精霊使い』の場合も一緒。たとえ火の精霊と契約してても、水の魔法も普通に使える。

 

 では、契約していると何が違うかというと、前に父が言った通り『才能』がなくても魔法が使えるようになり、さらに少ない魔力で魔法が使えるようになる。契約した精霊があまり取らないことと、その精霊が他の精霊の仲介役をしているかららしい。つまり『才能』があっても発動しない複雑なイメージでも問題がなくなる。ちなみに勇者を召喚する魔法は特殊で、私達一般人には知らされていない。まぁ他にも『精霊使い』には優れてるものがあるらしいので、その内の1つなのかもしれない。

 

 才能が無かった私が魔法を使うためには『精霊使い』になるしかない。

 

 しかし『精霊使い』の人数はもの凄く少ない。理由は契約すると大好きな魔力をもらえる量が減ってしまうから。つまり損をするとわかってるのに契約する精霊は変わっているということだ。

 

 ……父が私なら契約できると言ったのは、私が変わり者だからなのだろうか。類は友を呼ぶという日本の諺が思い出してしまった。

 

 そ、そんなことはない。『精霊使い』に多い共通点の方だと信じたい。

 

 なんと『精霊使い』は美男美女が多い!

 

 ……ちくしょう。自身の限界点を知ってる私には夢も希望もない話だ。悪くはない方だが、上には上がいる。

 

「はぁ」

 

 また溜息が出てしまった。思ったより大きな音になったらしく、2人とも私を見た。

 

「あら? サクラちゃん、お出かけしないの?」

「多分また同じことがおきる」

 

 冒険者らしき人がすまなさそうな顔をしていたが、彼は悪くないだろう。この歳だと理解していると思えず家から抜け出したと勘違いするのが普通だ。

 

 私がこの世界の常識からズレているのが問題なのだ。

 

「そうね~。明日お母さんと一緒にお出かけする?」

 

 母と同じなら大丈夫だろう。

 

「もし良ければ、オレの家へ遊びに来ないか?」

 

 頷こうとすれば、冒険者らしき人が声をかけてきた。だが、彼の家には興味が無いんだが。私はこの世界の街中に興味があるから歩き回りたいのだ。まぁ武器とかは見たいが、子どもには見せてくれないだろう。

 

「オレの息子が君と同じぐらいの歳なんだ。息子はまだ魔法のことはわかってないけど、オレが一緒についている。同じ歳ぐらいの子に興味はないか?」

 

 興味はない。が、ある。どっちだよと自身でもツッコミしたくなるが、正直な私の気持ちだ。子どもには興味はないが、未来のことを考えるなら興味がある。

 

 今から遊んでいれば、友達になるのは簡単だと思ったのだ。

 

 この世界、子ども同士で遊ぶのは難しいだろう。何を仕出かすかわからない子どもが集まれば、見張る大人の数も増やさなければならなくなる。今から遊んでいれば、確実に友達のポジションをゲットできるはずだ。さらに幼馴染というポジションもゲットだ。父親は冒険者のようだが、子どもが小さければ引越しなどはしないだろう。実に子どもらしくない打算的な考えだ。

 

「いく」

 

 この人は大丈夫だろう。もし私に危害を加えるつもりなら、外で出会った時に何かしている。家までわざわざ送ろうとしない。

 

 私が返事をしたので大人の話し合いが始まった。少し長引くだろうと考え、私は荷物を取りに部屋へ向かった。

 

 

 

 

 カバンを背負い、玄関へ戻ると話し合いが終わったところだった。

 

「サクラちゃん、気をつけてね?」

「ん、行ってきます」

 

 母に手を振り、冒険者――ルイスと一緒に歩き出す。手を繋ごうとしてきたので首を振って断る。

 

「お母さんに言われるまで気付かなかったけど、よく似ている。オレは君のお父さんにお世話になってるんだよ」

 

 急に何を話し始めてるんだろう。でも父の名前が出たので気になる。

 

「初めて会ったのは10年ぐらい前かな。オレと同じくらいの歳なのに、君のお父さんは随分しっかりしていたのを今でも覚えてるよ」

 

 この人は昔からの父の知り合いだったのか。その割にはお母さんや私のことを知らなかったな。その疑問が顔に出てたのか彼は言葉を続けた。

 

「君のお父さんが結婚したのは知っていたんだよ。でもね、オレ達には見せなかったな。『もったいない』だってさ」

 

 ……予想外の言葉が出てきたぞ。まさか父が母にベタ惚れだったとは。もしや冒険者らしき人を見た時にニコリと笑っていたのは、手を出すなと牽制していたのかもしれない。

 

 父の印象がかなり変わってしまったな。仲がいいとはわかっていたが、まさかそこまで執着するタイプとは思っていなかった。

 

「だから街で偶然会えたら、オレ達はラッキーだと言ってるんだ」

 

 私が若干遠い目をしていると、彼は笑って言った。どうやらプラス方向に捉えているらしい。

 

「そして君と会えれば、もっとラッキーってね」

 

 おどけたように彼は言ったが、私はなんとも言えない気分になった。

 

 

 

 

 

 彼の子どもはとても可愛らしかった。クルクルの金髪で目は藍色で、前世の絵本で出てくるような顔立ちをしていた。将来が実に楽しみな子どもである。名前もルークといい、期待したくなる感じだ。

 

 まぁそんな子どもに出会ってすぐに嫌われたが。

 

 理由は単純で父親が取られたと思ったから。自身以外の子どもと遊んだことがないため起きたのだろう。一緒に会いに来たというのも悪かったと思う。

 

 何度か父親のルイスに謝られたが、それをするたびに機嫌が悪くなるため、ここで見ているから遊んで来いと言った。暇になってしまった私はカバンから道具を出し、字を書く練習中である。

 

 しばらくそうしていると隣に誰かが来た気配がして顔をあげる。そこにはお茶を持った女性が居た。ルークの母親だ。

 

 確か、名はアンナと言ったと思う。私の母と違い、しっかりしているタイプに見える。真っ直ぐな金色の髪でとても綺麗な人だ。彼女を見て、私は髪を伸ばそうと決めた。前世でも伸ばしていたので悩んでいたが、手入れが面倒なのも忘れてしまうぐらい、アンナの髪を見て羨ましくなった。

 

「綺麗に書けているわね」

「まだまだ」

「そう? 大人が書いたと言ってもいいぐらい綺麗よ?」

 

 自身が書いた文字をジッと見る。やはり甘い。世間一般的には綺麗かも知れないが、前世であの兄と違いがわからないというレベルまで書けた私はまだ納得できない。もっと練習するつもりだ。

 

 ちなみにいろんな字の練習本を見たが、あの絵本の字が私は1番好きだった。あれは国が出してる絵本なので印刷方法も特殊らしい。だから他の本より綺麗に見えるのかもしれないねと父が言っていた。

 

 この世界の文字は英語のように字の組み合わせで単語が出来ているので、練習するのは絵本でも問題ない。もっとも英語より一つ一つの字が複雑なため、私は苦戦している。

 

 まぁ今はアンナがお茶と一緒に持ってきたお菓子を食べようではないか。

 

「精霊、僕にチカラをー!」

 

 ルークの言葉に顔をあげる。が、何も起こらない。恐らくちゃんとイメージが出来ていないのだろう。もしくはイメージが複雑しすぎて発動していない。

 

 私が分析していると隣でホッと息を吐いたのがわかった。心配しているのだろう。本人は上機嫌で勇者ごっこをしているが、知っているものからすれば恐ろしいものだ。

 

 絵本ではなく、もっと大きくなってから教えればいいのに。と私は思うのだが、研究結果ではこの時期が最適らしい。なんでも大きくなってから教えると精霊使いの数が減ったとか。

 

 モグモグ食べていると勇者ごっこを終えたルークがやってきた。当然、隣にはその遊びに付き合っていたルイスがいる。

 

 キッと睨まれたが、アンナの膝の上に乗せられると上機嫌に戻る。ルークがお菓子に夢中になったときに、2人に謝られた。

 

「大丈夫」

 

 本心だった。面倒を見るつもりでいると、この小さな身体では難しい。何も考えずに一緒に遊ぶには、前世の記憶のせいで躊躇してしまう。それぐらい子どもの遊びは意味がわからない。ルークからすれば真剣なのだろうが。

 

 だから今の現状で私は満足している。ルークの両親と関係を持てたしな。……本当に打算的な考えである。

 

「……そうだ」

 

 僅かに残っていた良心?が反応し、カバンの中を探る。出かける前に入れていた物をすっかり忘れていた。

 

「あった。ん、あげる」

 

 そう言ってルークに渡した――押し付けたのは私のとっておきのお菓子である。

 

「わぁ」

 

 ルークの反応は悪くないようだ。綺麗な飴玉に目がキラキラしていた。

 

「……あ、ありがと」

 

 そして両親に言われ、ルークは私に向かってお礼を言った。初めて私に向ける笑顔は可愛くて、私もつられて笑う。

 

 いい感じだ。ほのぼのとした空気が流れている。ここでもう1度自己紹介すれば友達になれるかもしれない。

 

「!?」

 

 私が口を開こうとした時にそれは現れた。ルイスもアンナも驚いた顔をしている。それは当然だろう。私達の囲んでるテーブルの中央に絵本に載っていたような一匹の精霊が居たのだ。

 

「きれー」

 

 絵本に載っている精霊が特別なだけで、精霊は普段私達の前に現れない。何もわかっていないルークだけが単純に喜んでいた。

 

「キラキラ!」

 

 キャッキャッ、キャッキャッとルークは楽しそうだ。すると、魔方陣が現れ、精霊はルークの肩の上に乗った。

 

「すごい! すごい!」

『…………』

 

 ルークの喜ぶ声だけがする。ルークの両親は何も言わない。なので、私が口を開いた。

 

「……契約した?」

 

 ポツリと呟いた私の言葉をきっかけに2人はあたふたと動き出した。「ギルドに報告だ」など叫んでいる。2人の慌て具合はそれはもう凄まじかった。ルークと私を忘れて外に出て行くぐらいに。

 

 仕方ないので2人が戻ってくるまで私がルークの面倒を見る。飴玉効果か、精霊効果なのか、理由はわからないがルークはもう私に敵意を向けることはなかった。

 

「これから大変そう」

 

 私の言葉に反応し、不思議そうな顔をしているルークを誤魔化すように笑う。そして理解するのはゆっくりでいいという気持ちも込めて――。

 

 しばらく2人で精霊を見ていると私の父とルイスが駆け込んできた。額に浮かぶ汗からして、かなり急いで来たことがわかる。

 

「問題なかった」

 

 父の目を見て報告するとおんぶされた。横を見るとルークもルイスに抱きかかられていた。

 

「サクラ、助かったよ」

 

 偉いと褒められるより、嬉しかった。でも妙に恥ずかしくて父の首に手を回し顔を肩にうずめる。

 

 この後、すぐに母が迎えに来たので私は帰った。父はまだ何かすることがあるらしい。

 

 

 

 

 

「ルーク……バイバイ」

「バイバイー」

 

 手を振り合ってルークと別れる。ルークは初めて乗る馬車に楽しそうだ。

 

「はぁ」

 

 馬車が小さくなった途端、私はまた溜息を吐いた。

 

 ルーク達は環境が整った大きな街に引っ越して行ったのだ。あれから3日しかたっていないので、かなりのドタバタだったのだろう。私は当日になって知った。

 

 声を大にして言いたい。

 

 ……なぜだ。

 




これでプロローグっぽい五歳児編は終了。
もうちょっと伏線をはっても良かったかなと思った。
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