二次の方も溜まりすぎでヤバイです。
来週はちゃんと更新できるといいな(願望
ある程度の混雑がなくなり、父が迎えに来たので私は受付業務を終える。ブーイングが聞こえても無視だ。彼らも本気で言っていない。私が受付業務をやらなくなるのは避けたいからな。
ミレーヌに声をかけようかと思ったが、父が一緒にいるので止めた。近くにいるだけで挙動不審になってるからな。これ以上、仕事に悪影響を与えるのは良くない。それにしても、新人を副ギルドマスターが直々に怒るレベルのミスの内容が気になる。誰も話そうとしないのでかなりヤバイ内容なのだろう。
「サクラ、大丈夫だった?」
廊下を歩いてると父が聞いてきた。これは副ギルドマスターとして聞いているのだろうか。父は仕事場でもサクラと呼ぶので判断が難しい。
人目がないところで聞いているので、父として聞いている可能性が高いな。
「大丈夫。……お父さんは?」
「今日はギルドマスターの部屋へ寄るよ」
思わず眉間に皺がよってしまった。予想はしていたが、無茶振りをされるこっちの身にもなってほしい。
チラッと見れば、眉間を揉んでいる父と目が合った。
「はぁ」
溜息が揃う。会話しなくても考えてることが同じとわかった。
ギルドマスターの部屋の前につくと、父が扉をノックした。普段は遠慮せず入っていくので来客がいるということだろう。
これは珍しい。私はギルド職員だが、子どもなので来客中に呼び出されることは少ない。
「失礼します」
返事があったので、父の後ろについていく。部屋に入ると綺麗な女性が居た。ミレーヌよりも美人なので、ちょっと驚く。その彼女の横には精霊が居るので、更に驚いた。
「こんにちは」
彼女が私の顔を見て言った。勝手に答えてもいいのだろうか。チラっと父の顔を見るが、何も言わないのでいいのだろう。問題は転生しているのにも関わらず、私にはそういう知識があまりないということだ。
「……初めまして。冒険者ギルド・フェルト支部のサクラ・デュボアと申します。Aランクのソフィア・テーラーさんと上級精霊のクロードにお会いできるとは光栄です」
大丈夫でありますようにと願って頭を下げると静粛が訪れた。
これはまずい。失敗したようだ。しかし勝手に頭をあげることは出来ない。ちょっと泣きそうだ。
何を失敗したのだろうか。精霊に「さん」付けや「様」付けはしない。付けても間違いではないのだが、彼らはあまり好きじゃないらしい。だからこれのせいではないはずだ。ちなみに、私は心の中では全て呼び捨てである。
「ガハハハ!! やっぱりやりやがった!!」
人の失敗を笑うなと思うが、彼のおかげで空気が良くなった。
「……ギルドマスター」
「すまんすまん。サクラ、顔をあげろぉ!」
父の冷えきった声を適当にあしらえるのは彼ぐらいだと思いながら、顔をあげる。すると、ソフィアと目が合った。見た感じ怒ってはなさそうでホッとする。
「サクラ、よく彼女の名前がわかったね」
父の言葉に首をひねりながら答える。
「ギルドの雰囲気から見て、王都からの使者ではないと判断しました。更にこの部屋に案内され、子どもの私が同席することが許されるのは冒険者ぐらいでしょう。精霊使いの冒険者は少なく、彼女と精霊の容姿で簡単に絞ることが出来ました」
いろいろ前置きをしたが、すぐにわかったのは彼女の精霊が特徴的だったからだ。確認されている中で、紳士服を着た精霊なんてクロードしかいない。
でもまぁ兄を探していなければ、わからなかっただろう。もしこの世界に兄が居れば、かなり目立つようなことをしていると考えたのだ。なので、Aランクの冒険者や精霊使いのことは頭に入ってる。
「……そうか。本当に僕の自慢の娘だね」
父に頭を撫でられた。ちょっと嬉しい。
「オレからも褒めてやろう」
「お断りします。首を痛めます」
サッと父の後ろに隠れる。ギルドマスターの馬鹿力で頭を撫でられたくはない。
「うん、この子気に入った!!」
気付けば、後ろから抱きしめられていた。ちょっと胸が当たってる。ということは、これはソフィアの仕業だろう。
完全に存在を忘れていた。それにしても、いつの間に移動したのだ。
……これはどうすればいいのだろうか。
彼女は来客なので機嫌を損ねないほうがいいだろう。だが、私は会ったばかりの人に抱きしめられるのは嫌だ。
「お父さん、助けて」
悩んだ結果、副ギルドマスターとしてではなく、父に助けを求めることにした。
いろいろあって、ソフィアの膝の上で大人しく過ごすことになった。なぜだ。
これは諦めたとしても、目の前にギルドマスターが居るのが嫌だ。誰が好き好んで、筋肉ムキムキのハゲたオッサンを見たいのだ。そのツルツル頭の後ろに隠れるように可愛い精霊がいるのも、解せない。可愛い精霊を見ようとすれば、まぶしいのだ。
「いつまでいるんだ?」
「そうねぇ。1ヶ月あれば、何とかなると思うのよね」
「……1ヶ月ですか」
ギルドマスターの後ろで立ってる父が渋い顔をしているが、さっぱり話が見えない。私にわかるのは、私が受付業務をしている中に彼女がこの建物に入ったことぐらいだ。ギルドでは魔法封じの魔道具があるので、魔法で姿を隠すことが出来なかったからだろう。
まぁこれで納得した。父が私に受付業務を頼んだのは、彼女のためだ。
文句はない。私に頼んだ時点で厄介ごとが起きているとわかっていたし、父は仕事をしただけだ。
そもそも父はギルド内では笑顔で仕事を振るイメージなので、全く違和感がなかった。……私がそう思ってると父が知れば、ショックを受けそうだな。
「うしっ、サクラ。お前は1ヶ月の間、彼女に付き添え。街の外のことも全部頭に入ってるだろ」
「……なぜ、子どもの私が?」
父が何も言わないのでもう覆すのが無理だと思いながらも反論する。
「お前が1番抜けても影響が出ない」
ぐうの音も出ないとはこのことだ。確かに私の仕事は他の者でも出来る。多少冒険者から文句はあるだろうが、それでも絶対に私が必要かと言われると、否だ。
ギルドマスターは面倒だといい、書類を父に押し付けるが、この街の防衛のほとんどを彼がしている。他にも突拍子もないことをいきなり言うが、理にかなってるのだ。
私をギルド職員に採用出来たのも彼の力が大きい。確か彼の提案で同じ依頼書を作成し、私が書いたほうが申し込み率が高いと証明したのだ。……まぁ私の場合は面白いから、何が何でも採用させようと思っただけらしいが。
「心配しなくても、お前を守るのも条件に入ってる」
「当然です。可愛い我が子を危険に晒さないと確信しているから、許可したのです。サクラに何かあれば、誰であろうと容赦しません」
私が若干遠い目をしていると、父がギルドマスターに睨みをきかせていた。それにしても仕事モードの父は出来る執事に見える。
「では、契約内容を確認させていただきます」
……ひいた。今まで私は父をなめていたのかもしれない。
確認と言ったので当事者の私に聞かせるために父は読み上げたのだろう。それは理解できるのだが、内容がおかしい。
まずギルドにではなく、指名依頼だった。そのため冒険者ギルドの給料の三倍だった。それだけではなく、本来の仕事を1ヶ月休ませることになるので別料金をもらっている。さらに1ヶ月の間にかかる私のための費用は全て彼女も持ち。もちろん私の安全を第一で、体力を考慮し野宿禁止。他にもいろいろ条件があったが、途中から聞くのをやめた。私の心の平穏のために。
「はぁ。サクラ、聞くフリぐらいはしなさい」
「大丈夫。副ギルドマスターの腕とお父さんの愛を全面的に信用している」
「ガハハハ、一本とられたな」
ギルドマスターがバシバシと父を叩く。父が飛んでいきそうで、見ていて怖い。
「私はそれでいいわ。サクラちゃんは?」
「……私以外に頼んだほうが良いと思いますが」
私にこれだけのお金を払うなら、ギルド職員が無理でも他の冒険者を個人的に雇えばいいだけの話だ。その方が断然安い。それに私が覚えていることは全て資料に残っている。彼女のメリットは私の家に住み込むので、晩ご飯と宿の心配がないぐらいだ。しかしそれもお金で解決できる。
「そうねぇ。まずあまり時間がないし、街の外のことをすぐにわかる人になると新人では無理ね。ある程度の実力がある冒険者が必要になる。その人たちを雇うならサクラちゃんの方が安いわ。それに私にはクロードがいるから、下手に実力がある者はいらないのよ。サクラちゃんなら、私が魔法で移動させたり守ってもプライドとか傷つかないでしょ」
おお、魔法で移動とかちょっと楽しみだ。……ではなくて、ソフィアの言い分は納得できるものだった。
「一番の理由は私がサクラちゃんを気に入ったからかな」
「……特に何かした覚えがありません」
これから1ヶ月も行動するのなら、私の中にある違和感を解消すべきだ。そう思って顔を覗いてみたのだが、彼女は笑っていた。
「今のも気に入る1つよ。……私が言ったら、決定になっちゃうの。私が声をかければ、誰も断らない。私と1ヶ月行動を共にすることを真剣に考え、他の人が良いと助言しようとするサクラちゃんは珍しいのよ?」
上級精霊使いになると、やはり周りの見る目が変わってしまうのかもしれない。
「それにね……」
途中で言葉が区切ったので、どうしたのだろうと首をひねっていれば、私に気に入られることよりも、あなたはお父さんに撫でられる方が嬉しかったんでしょ?と、彼女は私に耳打ちした。
気付かれているとは思わず、私は頬に熱を感じうつむく。
「サクラちゃん、可愛い~~」
ギュウギュウと抱きしめられ、遠い目になった。このノリについていくのは大変かもしれない。