どうもです。
初めての作品ですがどうかよろしくお願いします
薄暗い蔵の中がとてつもなく濃密な
蔵の中には人影が二つ。今にも崩れ落ちそうな白髪の男、それを見て口元に歪んだ笑みを浮かべた老人。
「ーーーーー告げる」
呪文を詠唱するごとに白髪の男の顔が皮膚の中で何かが蠢いているよう隆起する、所によっては皮膚が内側から破かれ蟲の足のようなものが見えている。老人はそれを見てさらに歪んだ笑みを浮かべる
「――――告げる。 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
それでも男は呪文を詠唱し続ける。まるで死ぬこともいとわぬかのように
「誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、 我は常世総ての悪を敷く者―ー―されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。
詠唱が進むにつれて魔方陣が光輝き蔵の中の魔力もより濃密になっていく。そして男は目や耳といった通常ではあり得ない部位から血を流す
汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
そして詠唱が終わると同時に魔方陣からこれまで以上の光が放たれ、蔵の中をまばゆい光が包み込む
光が収まると老人が感嘆したような声を漏らす。
魔方陣の中心に男が立っている
白いカッターシャツのような物を着たおよそ20代ほどの眼帯を着けた男。腰には二本のサーベルがついていることからサーヴァントと言うことはわかるが、格好があまりにも現代的過ぎる。そしてその身に纏う雰囲気。歴戦の戦士というのか、その場に立っているだけで感じられる圧倒的存在感。そして男は目の前に立つ男を見て口を開いた
「人間。おまえが私のマスターかね?」
Ⅰ雁夜サイドⅠ
俺の家は魔術の家系だ。魔術の世界では御三家と呼ばれ優秀な家柄らしい
だがそれも過去の話、魔術師としての才は代を重ねるごとに劣化し、俺は普通の魔術師並みの魔術回路しかもっていない。兄貴は魔術回路を持ってすらいない
そして俺は魔術を嫌悪している。理由はこの家の魔術と自分の父親である間桐臓硯が理由だ
父親といっても臓硯は400年以上を生きる妖怪。間桐の秘術によって肉体を蟲に変え、いまなお生き続けている。本当の両親は幼い頃に俺たちの目の前で蟲の餌にされた
俺はそんな家が嫌で嫌で逃げ出した。世界を見て回ると理由をつけたが本音はこの家から逃げたかっただけだ
逃げ出した後はルポライターとして生計をたてていた。それでも時々この冬木に戻っていた。理由は幼馴染みであり、愛している女性である葵さんに会いたかったからだ
今では彼女も結婚し二人の子供を持つ母親だ。相手は遠坂時臣。自分も知り合いの男で、御三家の1つである遠坂家の当主だ。結婚すると聞いた時、すぐには諦められなかったが自分の家よりは遥かにましだと思い、彼女の幸せを祝福することができた。……割りきることはできなかったが
何度目かの帰郷の時彼女から娘の一人である桜ちゃんが間桐の家の養子になったと聞いた。何でも臓硯からどちらかを養子にと言われ、これ幸いと養子に出したらしい。
確かに魔術を継承できるのは1人だけだ。魔術師としての娘の才能を生かしたいと思っての事だろう
それでも理解できない。確かに家は魔術師の家系かもしれない、だけど魔術師である前に人としておかしい。子供がいきなり養子に出され二度と家族と会えないと言われるのは、家族に捨てられたと同じだ
それよりも
なぜ間桐を選んだ。
例え知らなかったとしても、子供を思っての事だとしても、間桐だけはだめだ。あんなもの魔術でも何でもないただの拷問だ
その話を聞いた後、俺は11年帰っていなかった間桐に帰った。自分の愛した女性の娘を救うために
「ーーーーー告げる」
苦しい。痛い。このまま死んでしまうのではないかと思うほどの痛み、たった一年ではまともな魔術師にさえなれなかった。そして魔術師になるために受けた訓練と称した拷問、その影響か髪は根本から白くなり顔は半分が壊死仕掛けている。もともと端正な顔とは言えなかったが今ではゾンビのような顔になってしまっている。これじゃあもう凛ちゃんたちに会えないな、と自嘲気味に笑う
召喚には聖遺物を用意していない。手に入らなかったと言っていたが妖怪の事だ、どうせ初めから用意する気なんてなかったんだろう
「――――告げる。 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
腹が立つ
もともと魔術なんて興味なかった、俺はただ普通の幸せが欲しかっただけなのになんで聖杯戦争なんて殺しあいに参加しなくてはいけないのか。桜ちゃんも魔術なんてなければこんなめに合わなくてすんだ。なんで時臣は俺が望んでも手に入らない物を簡単に捨てるのか。俺が唯一望んだ小さな幸せを
「誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、 我は常世総ての悪を敷く者―ー―されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。
さらに体の中の刻印蟲が内から貪って行く
腹が立つ
なぜ魔術の家になんか生まれてしまったのか。別に別に裕福な家でなくてもいい、ただ普通に生きたかっただけなのに
憎い
こんな目に合わせる臓硯も
俺が望んでも手に入らない物を簡単に捨てる時臣も
魔術なんてものがある世界も
何より
嫌っていたはずの魔術を使ってしか救えない自分の弱さが
殺してしまいたいほどに
汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
魔方陣から光が放たれ、蔵の中が光に包まれた。
魔力を無理やり使った反動か、いたる所から血が流れる
光が収まると魔方陣の中心に人影が見えた
いまだぼんやりとしか見えないが召喚に成功したらしい
「ほう」
臓硯から声が上がった、あの妖怪が驚くなんてどんなのが召喚されたんだ?バーサーカーを召喚したはずだがあまり魔力を吸われている感じがしない。まさかとてつもなく雑魚なのか?
不安になりながらもはっきりとしてきた目で確認する
なんだ?眼帯つけた男?
じっと見ているとサーヴァントらしき青年と目が合った
「人間。君が私のマスターかね?」
Ⅰ雁夜サイドアウトⅠ
「あ、ああ俺がお前のマスターだ」
雁夜が戸惑いなが答えると男は雁夜を一瞥し、感心したような反応を見せた。
「なるほど………私はバーサーカーのクラスで現界した。それより名はなんと言う人間」
「やっぱりそうなのか……」
雁夜バーサーカーのクラスで現界したのにも関わらず狂っていないのをしり若干混乱したが、ランクが低いせいだと思い確認したところ、そこそこのランクだったためさらに混乱することになった
「答えろ人間、名をなんと言う」
「へっ?あっはいっ俺は間桐雁夜です」
有無を言わさぬ威圧感に自然に敬語になってしまった
マスターであるにも関わらず軽く主従逆転している。客観的に見たらどちらが上か言うまでもないが
そう答えるとバーサーカーはにこやかに笑いながら
「そうか、ではこれからよろしく頼むよ。雁夜くん」
あまりにもバーサーカーらしくない雰囲気で挨拶した。というか他のサーヴァントでもあり得ないだろう
「かっかっかっ。バーサーカーの癖に狂っておらんとは、なかなか面白いサーヴァントを引き当てたではないか」
臓硯を見たバーサーカーが露骨に不快感をあらわにする
「雁夜くん、何かね?この化け物は。これほど醜い化け物は初めて見るが」
「醜いとはいってくれるのう儂はお主のマスターの父親じゃ。つまりマスターのマスターと言ったところかの?」
「…………雁夜くん、これを殺してもいいかね?」
バーサーカーと臓硯の会話に入れなかった雁夜は耳を疑った。臓硯を殺す?こいつは不完全とはいえ不老不死だ、サーヴァントでも殺すことは難しい筈だ。けどこいつをここで殺せるなら………
「何をいっとるんじゃ、儂を殺せばマスターも死ぬぞ?」
「どうするかね?雁夜くん?」
バーサーカーは雁夜に意見を求める。臓硯はうつむいたまま反応しない雁夜を一瞥し、嘲るようにして笑い始めた
「かっかお主やはり狂っておるな、マスターが死を望むわけ「殺せ」なんじゃと?」
臓硯は驚き雁夜の方を向く。雁夜の目には1つの感情しか映っていなかった、それは
怒り
死を凌駕するほどの憎悪
雁夜は顔を上げ、臓硯を見据えてバーサーカーに命令を下す
「必ずここで殺せ!バーサーカー!!!」
バーサーカーが先ほどとは違う邪悪な笑みをうかべ浮かべる
「やはり君は私のマスターに相応しい」
言い終わると同時にバーサーカーは腰についている2本のサーベル内の一本を抜き。臓硯を横にまっぷたつにする。
「うがあぁ゛ぁ゛あ゛!!!」
絶叫が響く
ただしそれは臓硯からではなく雁夜から響いた声だった
まっぷたつにされた臓硯の肉体がが蟲になり、1つの山となるとそこから傷一つない臓硯が現れた。しかし臓硯はかなり焦りを声に混ぜながら雁夜に問いかける
「正気か?儂が不死身だと知っておるじゃろう。もし儂が死んだらお主の刻印蟲が体を食い殺す。桜を解放するのではなかったのか?」
臓硯に危害を加えたことによって既に雁夜の体内の刻印蟲が暴れ始めており、立っていることもできなくなっている
「はぁはぁ……おまぇを…殺せば間桐は……終わるグフッ…俺1人の命で桜ちゃんが…救えるなら……こんな命…くれてやる!」
雁夜はうつ伏せになりながらも殺すという意思を変えない。それを感じた臓硯は呆れたようにため息をついた
「はぁ……お主は少しは使えると思っていたが……どうやら思い違いじゃったようじゃのう」
バーサーカーは雁夜の事などお構いなしに臓硯を切る。そのたびに雁夜の絶叫が響くが臓硯は何度切られても無傷で再生する
そんなことが何十回か続いたころ臓硯がバーサーカーに向けて声をかけた
「なんじゃ。お主切ることしかできんのか、これでは聖杯戦争も無理じゃったな」
それを聞いたバーサーカーは手を止めて臓硯と向き直る
「確かに、少しは体術もできるが私は切ることしかできんよ。だがな……」
バーサーカーはこれまで以上のスピードで臓硯の右胸辺りを突き刺した。同じように臓硯は直そうとするが、はしから蟲が崩れていく。それに気づいた臓硯は驚愕の表情を浮かべる
「傲るなよ人間が」
「なん……じゃと…」
バーサーカーはサーベルを引き抜き、一振りし鞘に納める
「なぜ儂の本体を!?」
そう叫ぶ間にも臓硯の体は崩れていく
「あれほど切っていれば本体を見つける事など容易いわ」
「そ、そんな……」
いくらサーヴァントといえど数多いる蟲の中で本体を見つけるのは不可能に近い。ましては見えていない蟲を探すなど絶対に不可能だ。それをこのバーサーカーは当たり前のようにやってのけた。その異常に気がつかぬまま臓硯はもがいている
「い嫌じゃ、儂は不死身に…」
「さらばだ。人間の分際で届かぬ夢を求めた者よ」
バーサーカーがそう言うと完全に崩れ落ちた。こうして400年以上生きた人間は人ならざる者の手によって滅びた。かつての理想を思い出せぬまま……
バーサーカーが雁夜の方を向くと、血の海に雁夜が横たわっていた。既に蟲は体のを食い破っており、十人に聞けば十人が死んでいると答えるほどの状態だったが、奇跡的に生きていた。それでも数分で死ぬことに変わりはないが
バーサーカーが近づこうとすると蔵の扉が開き、そこから紫の髪の少女が顔を覗かせた。
「おじさん!?」
雁夜の姿を見ると血相を変え雁夜に近づき、そのまま抱き抱えた
「おじさん!死なないでよ!」
「……さくら…ちゃん……か…?」
「そうだよ!?しっかりして!!!」
「……ごめんね……もう……めが…みえ……ないんだ……だけど…だい……じょうぶ……もう……おうち…に……かえ………れる…から」
「やだよぉ!さくらのおうちはここなの!だから1人にしないで!!」
バーサーカーがその様子を見守っていると、桜がバーサーカーの腕をつかむ
「お願い!!おじさんをたすけて!!?」
既に桜の顔は涙でぐちゃぐちゃになっている、バーサーカーは雁夜に近づいていき、問いかける
「生きたいかね?」
「……ああ……さくら…を……ひとりには………させら……れ…ない………から」
「そうか、ならばチャンスを与えよう」
そう言ってバーサーカーはポケットから小さな瓶を取り出した。中には血のように赤い液体が入っている
「…それ……は」
「これは賢者の石というものだ、今からこれを君の中に入れる、うまくいけば生き残れる」
「………そう……か……いれて……くれ」
「もし成功したとしても君は人間では無くなる。それでもいいかね?」
桜は顔をさらに青くさせる。おそらく臓硯のような人外が思い浮かんだのだろう、それでも止めない辺り本当に助かってほしいと思っているようだ
「……いま…さらだ……ろ」
「違いない」
バーサーカーは微笑むと雁夜の傷口に賢者の石である液体を流し込んだ
そして
先ほどの絶叫以上の絶叫が蔵の中で響き渡った
召喚されたのは対戦車爺でお馴染みのキング・ブラットレイですね。
召喚された時期を変更しました。よくよく考えたら経験を引き継いでるし原作の二倍の身体能力って最強ですね