次は演習かな。
ビスマルクに連れられて、鎮守府の内部を歩く。およそ俺達の鎮守府と同じぐらいの広さの此処だが、その佇まいも内装も至る所に違いが見える。
「……ふむ。これは凄いな……」
小綺麗に整えられた内装、柔らかな絨毯。廊下の所々に備えられた窓の枠すらもお洒落に整えられている。こんな小さなところを取っても、我々の鎮守府とは大違いだ。華美であることが良いことでも無いし、個人的にはやはり俺達の鎮守府の方が好みではあるが、偶にはこんなのも良いだろう。そうやってホテルのような廊下を歩いていると、廊下の終点の両開きの扉へと辿り着いた。この造りだけは、我々の鎮守府でも見たことがある。即ち――提督の執務室だ。
「よし、着いたわよ。ちょっと待っててね――Admiral!『お客さん』を連れてきたわよ!」
『おお、そうか。良し、彼女達を通してくれたまえ』
ビスマルクの発した声に対して、上品な扉の向こうから聞こえてきたのはよく通る男性の声。ビスマルクが扉を開く。軋みながら開いてゆく扉の向こう側には、
「やあ、遠いところをよく来てくれた。私がこの基地の指揮を執っている提督だ。君達の訪問に、此処に在籍する全ての艦娘に代わり礼と歓迎の意を表そう」
「歓迎をありがとう、異国の提督よ。私が今回の艦隊の指揮を兼任する旗艦、戦艦『武蔵』だ。詳しい編成や情報・装備は資料に記載されているだろうが、此処でも仲間を紹介させて貰う。私の隣、左から加賀、熊野、菊月、そして伊8だ」
武蔵に名を呼ばれる者から、順に軽く頭を下げて礼をする。それが一通り終わると眼前の提督は少し頷き、自分の斜め前に並んだ艦娘たちをちらりと見て口を開いた。
「ふむ。誰も彼も、一度は名を聞いたことのある艦娘だ。君達と、そして君達を送り出してくれた日本の提督にも改めて礼を。そして、君達だけに名乗らせたままだと言うのもいけないな。ビスマルクは名乗り終わっているだろうから――Prinz、君から順に挨拶を」
「了解、
「ボクだね。ボクの名前は『レーベレヒト・マース』。レーベで良いよ、日本の仲間たち」
「――私は、『マックス・シュルツ』。レーベもだけれど、駆逐艦よ。よろしくお願いするわ」
プリンツ・オイゲンに続いて自己紹介をしたのは、
「私は、U-511です。ユー、って呼んでくだされば、嬉しいです。よろしくお願いします」
そして、最後に頭を下げたのは
「ここに並ぶ五人が、我が基地の誇る第一艦隊と言うわけだ。如何に君達が数多くの戦いを潜り抜けてきた猛者揃いだとしても、そう簡単には君達にも劣らぬ者揃いだと思っているよ」
提督の言葉に、艦娘達が揃って胸を張る。その光景に、武蔵はぐっと笑みを深めた。その笑顔のまま、楽しげに口を開く。
「そうか、それは頼もしいな。今は我々も、深海棲艦に対して肩を並べ戦う者同士。彼女達が強く、そしてその者達と演習を重ねられるというのであれば何よりだ」
武蔵と提督が一歩ずつ歩み寄り、そして握手を交わす。数瞬ののちに離れると、提督は口元にだけ笑顔を浮かべて話し出した。
「良し、これで一通りの顔合わせも済んだな。君達については、明日の朝にもう一度全艦の前で紹介させて貰うぞ。あと必要なことは――書類の処理だけか。なら、その役目は私に任せてもらおう。その代わり、君達には早速任務に就いて貰おうと思うのだが、構わないか?」
提督の言葉に、思わず隣のハチと顔を見合わせる。熊野も加賀と視線を交わしているあたり、いきなり任務というのは良くある話では無いらしい。だが、それも直ぐに収まる。眼前の提督と周囲の艦娘達、それらの放つ雰囲気が一変したからだ。それも、好戦的なものに。先程から浮かべたままの笑みをさらに深めた武蔵が、
「――ふむ。まあ、今は貴官の指揮下に入っている身だ。命令とあれば我ら艦隊は断るつもりは無いが、何分急な話だ。我々に何をさせたいのかは話してくれよ、提督?」
「大したことではないさ。君達には明日から演習の任務に就いて貰うのだが、その前に実力を見ておきたいというのは当たり前のことだろう?君達さえ良ければ、是非一戦お願いしたいと考えてな」
四方から向けられる闘志。
「よく言った、異国の提督とその艦娘達よ。だが、我々を過小評価し過ぎていやしないか?その勘違いを、まずは知らしめてやることにしよう」
武蔵の言葉に、一斉に闘志を漲らせる遠征艦隊の面々。来て早々の運動にはなってしまうが、まあ準備体操には丁度いいだろう。そう考えながら、
あ、オリジナルは出ません。
「見たこと無い艦娘と演習した」ぐらいの軽い描写ぐらいはあるかも知れませんが、未実装の艦娘について詳細に触れることは無いです。