あ、番外の時系列は本編とは関係ないです。
――跳躍。眼前で大きく跳ねた超弩級戦艦が、片手を振り被る。伸び上がる、豊満かつ魅力的な肢体が太陽を覆い隠し、その姿は逆光で真っ黒に染まった。その中で、たったふたつ爛々と光る視線が射抜いたのは――長月。
「……長月!其方に――」
「ふ、分かってはいるがこればかりはな!」
咄嗟に叫び、姉妹へと眼光をくれる大和へ視線を移す。その跳躍はあまりに高い、そんな高さへ持ち上がる球など無い筈だ。一瞬だけ過ぎったそんな楽観をぶち壊すように、大和の胸の高さにまでビーチボールが打ち上げられる。最高のアシスト、成したのは大和の妹である武蔵。そのまま、視線を長月に固定し腕を振り下ろし――
「遅いですっ!爆ぜ――なさいっ!!」
――一瞬だけ、ビーチボールが静止したように見えた。その一瞬のうちに、静止したビーチボールが徐々に歪み変形してゆくのが艦娘の目では視認できてしまう。
そして、その一瞬が過ぎた後、ぐにゃりと大きくひしゃげたビーチボールが爆音と共に打ち下ろされる。雷光……いや、もはや隕石かと見紛うほどの一撃。バチバチと音を立てるそれが長月へと一直線に落下し、直撃し、炸裂し爆裂する。
「ぐぅおおおあ!!」
舞い上がる砂と小石、長月のビキニ、そして長月。胸を覆い隠しながら、綺麗に空中を舞った長月がそのまま地面へと突き刺さる。
追い掛け、介抱したい気持ちをぐっと抑える。何故なら、同時に空中へと舞い上がったものがまた一つあるからだ。そう、ボール。長月がその身を挺して守り抜いたチャンスが、生きている。それを逃してはならない、一矢報いようと足に力を込めた。
その瞬間、
「っ、どうしたっぴょん!?」
「全艦隊に通達!深海棲艦が出現しました!繰り返します、深海棲艦が出現しました!直ちに集合、整列の後点呼を!!」
黄緑と白のグラデーションの鮮やかな、ホルターネックビキニを纏った明石が声を張り上げる。それに応じ、散っていた艦娘たちは続々と集まってくるのだった。
―――――――――――――――――――――――
「――全艦隊、揃いましたね?では、今回は提督に代わり私が作戦説明を行わせて頂きます」
即席の壇上で、こほんと咳をして話し出す明石。マイクの代わりに使っている拡声器から、割れた声が響く。
「先程、ほど近くの警戒網から深海棲艦の存在を探知したとの連絡を受けました。数は多くなく、最大でも一艦隊――六隻前後。発見後すぐに沖の方へ撤退した為居場所は定かでなく、各艦隊がばらばらに広がって警戒しつつ敵艦隊を撃滅する任務となります。ここまでは宜しいですか?」
炎天下の中、直立不動の体勢を保ち続ける艦娘達を見回し一つ頷けば明石は続ける。心なしか、語りを続けようとする顔が暗くなったように感じた。
「はい、では続けます。編成は後で発表するとして、告げておかなければならない非常に重要なとある事項について話させて頂きます。戦闘の際ですが、艤装はいつも通り使えます。装甲に関しても問題はありません。ただ一つあるとすれば――みなさんの、服のことです」
明石の言葉が全体に伝わると、俄かに艦娘たちがざわめき出す。それが自然に収まるのを待って、明石は再度口を開いた。
「何時もなら、私が手ずからコーティングした制服を着てもらっていますが、今日は違います。みなさん、鎮守府から水着を着て、トラックに乗って来ましたね?ですから、水着に艤装で出撃して頂くことになります。しかし、あなた達の着ていらっしゃる水着は、特製繊維を使ったものでもなければ防弾コーティングをしたものでもありません。つまり――」
ごくり、と生唾を飲み込む明石。それを見つめる艦娘達の視線は真剣そのもの。目を見開き、深刻に、厳かに告げる声が海岸に響く。
「被弾すると、消し飛びます。装甲に守られたあなた達の身体を残して、水着だけが消し飛んでしまいます。私が何を言っているのかは理解出来ますね、皆さん?――ご想像通り、これは由々しき事態です。どの艦娘が敵艦隊と会敵するかはまだ不明ですが、その子達はほぼ確実に、衣類を全て剥かれるものと覚悟しておいて下さい。私からは、以上です」
しんと静まり返った――おそらく、それは話に集中しているからだけではない――艦娘達の前、壇上から姿を消した明石の代わりに秘書艦である金剛が艦隊編成を読み上げる。それを聞きながらも、
そう。服が剥かれるからなんだと言うのだ。『俺』はそもそも抵抗がないし、『菊月』も可愛い服や恥ずかしい服を着るよりは余程マシだと思っている。つまり、問題ない。裸になろうがどうなろうが、
――剥きたいのなら、剥かせてやる。
肉を切らせて骨を断つ、じみた考え方を胸に、
菊月を剥きたい。