でも色んな菊月と睦月型が見れて私は幸せです。
アンケートにご協力いただいた皆様、ありがとうございました。
五人揃って食堂を出て、部屋へ戻る。あとは着替えて出掛けるだけなのだが、此処で問題が発生した。言わずもがな、
「菊月お姉ちゃん?なんで、お姉ちゃんは今からショッピングに行くのに
「……何故、と聞かれても答えようがないな。私は、これと寝間着以外持っておらぬ……」
心底意外そうに尋ねてきた三日月が、しまったとでも言いたげな顔になる。むしろ
如月は、意外にも落ち着いた服装をしている。純白のフリルをあしらったインナーに黒いコルセットジャンパースカート。未だ外は寒さを感じるからか、その上から薄手のコートと髪と同じ淡い茶色のストールを纏っている。
卯月は逆に、跳ねたイメージ通り。フリフリのミニスカートにパンク風ファッション、それを紺色とピンク色を基調としてまとめている。あと、やはり譲れないのかその上から薄い桃色のウサミミ付きの大きなパーカーを着ている。
長月は、この中で唯一のパンツルック。髪と同じ色の長袖のシャツにショートパンツ、更にニーハイソックス。その上から、普段の制服よりも更に黒いフード付きのパーカーを羽織っている。
そして、未だ唸り続けている三日月はこれまたイメージ通り。黒色のロングワンピースが同色の髪に良く映えているが、羽織った上着から子供らしい可愛さが見て取れる。掛けている伊達眼鏡は、せめてもの背伸びだろうか。
「……別に、私はこのままでも良いのだがな」
「駄目です、絶対っ!菊月お姉ちゃんにも、ちゃんとお洒落して貰うんですから!」
「しかし、ここで言い合っていても決まらんだろう。とりあえず菊月はこのまま出るしかない、我慢してくれ三日月。けれど、今日の買い物はまず菊月の服からだ。そして、菊月は三日月に服を選んでもらうこと。それでいいな、二人とも?」
仲裁に入る長月に、渋々ながら従う三日月。俺としても断る理由は無く、同じように了承する。
「よし、決まりだな。ならさっさと行こうじゃないか。菊月の服を選びたいのは三日月だけじゃないんだ、時間はいくらあっても良いだろう?」
不敵な笑みを浮かべながら、覚悟しておけよと言い添える長月。俺がその言葉の意味を理解するのは、実際に姉妹達の情熱を体験してからになるのだった。
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「よーっし、次はこっちの服ね!」
三日月から新しい服を渡される。今
「……む、くうっ……。や、やはり慣れんっ……!」
ワンピースを脱ぎ去り、綺麗に畳む。姿見には、スカートを持って恥じらう下着姿の菊月が映っており、『俺』としてはとても色々と滾る。しかし、『菊月』としてはやはりこんな服には順応し難いようだ。
「これを選んだのは……卯月、だろうな……。何にせよみな、色々な装いの引き出しを持っているものだ……」
彼女達は、俺の予想以上に様々な服を持っている。長月が迷彩のダメージジーンズやサーフブランドのシャツを持っているのは不思議ではないが、三日月がワークパンツを持っていたのには驚いた。如月のタンスに入っていたやたら扇情的な服や、卯月のバニースーツには触れない。
「菊月お姉ちゃんっ、まだなのですかーっ!?」
「……仕方ない、開けるか。そら三日月、やはり似合わんだろう……って、ぅあっ!?」
試着室のカーテンを開け、姿を皆に見せる。同時に、三日月が飛びついてきた。
「うーん、やっぱりお姉ちゃんはこんなクールな服が似合っています!」
「うーむ、クールでパンクに決められるとうーちゃんのアイデンティティーのピンチぴょん。菊月、今度はこのゴスロリドレスを着るぴょん!」
「ああん、駄目よ〜!菊月ちゃんには、こっちのワンピースを着て貰うんだから!」
やたらとフリフリしたゴスロリドレスと、胸元がざっくりと開いた扇情的なワンピースを手に二人が迫ってくる。三日月は
「……っ!な、長月……っ!頼む、助けてくれっ……!」
周囲を見渡し、長月に助けを求める。姿が見えないのが気になるが、長月ならばきっとこの窮地を救ってくれると『菊月』が叫んでいる。
「済まないが、それは無理だな」
―――しかし、そのささやかな願いも断たれる。隣の試着室のカーテンが勢いよく開けられる。中から現れたのは声の主、長月。
事もあろうに
「どうだ、菊月?お前も私と一緒にこの服を着ないか?」
『俺』としては大変に眼福、『菊月』としては望みが断たれたと言ったところ。熟考に熟考を重ね、
「う、ぅぅぅ……っ。……どうだ、みんな?………似合う、か?」
ゴスロリドレス。耳まで真っ赤にしながらお披露目をしたそれも勿論購入。
時刻はまだ、正午にも満たない。この騒がしい日はまだまだ続く。
いつも後書きに書こうと思っていることを忘れてしまいます。
仕方ないので菊月可愛いと書いておきます。