私が菊月(偽)だ。   作:ディム

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菊月のッッッッッッッッッ!!!!!!
夏ボイスッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!

スイカ割りッッッッッッッ!!!!!!
これはスイカ割り水着話をッッッッ!!!!!!
書かねばッッッッッッッッ!!!!!!

そしてッッッッッッッッッッ!!!!!!
新睦月型ッッッッッッッッッッ!!!!!!
多分水無月の実装ッッッッッッッッッッ!!!!!!
水無月邂逅編もッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
書かねばッッッッッッッッ!!!!!!

とりあえず最新話ッッッッッッッッ!!!!!!
どうぞッッッッッッッッ!!!!!!


超番外・戦慄の亡霊編!純白の呪船、中編その二

ゆっくりと浮上する感覚。覚醒する意識。朦朧としたまま呻き声を上げれば、何処からか聞こえたのは覚えのない声。その冷たく研ぎ澄まされた声に、私――『U-511』は引き摺られるように目蓋を開ければ、

 

「あ、え――夜、ですか?」

 

視界一杯に広がったのは満天の星空と大きなお月さま。そして、その月の横に並んで座っている、白い髪をした『誰か』だった。その『誰か』の顔は暖かい火の色に照らされ、陰に揺らめいている。『誰か』の足元にある焚き火が、その明かりの源らしい。

状況を理解できないままに起き上がろうとすれば、横になっていた私に毛布のように掛けられていた布がばさりと地面に落ちた。

 

「……そうだな、少なくとも昼ではない。意識はしっかりとしているか? 身体に痛みはあるか? 気持ち悪さは無いか?」

 

「えっと、その――はい、大丈夫、です」

 

起きたばかりの私へ向けて、矢継ぎ早に質問を浴びせ掛ける『誰か』。それは此方の安否を気にしている、と言うよりは単に状況を確認しているだけのような気がして、無機質な印象を与えるもの。何だか少し怖いな――と感じ、その『誰か』の顔をまじまじと見つめてしまう。見つめて、初めてその『誰か』が少女――それも私と同い年くらいの少女であることに気が付いた。

 

「異常は無いようだな」

 

「はい、ちょっと、全身は痛みますけど。うう、中破ぐらいかも、です。えっと、あなた、は――」

 

誰ですか、と繋げようとした私の眼の前で、どさり、と音がする。見れば、其処には黒く薄い布のような物に包まれた何かが置かれて――否、落ちている。どうやら眼の前の少女から投げ渡されたものらしい。

恐る恐る手に取り、その包みをゆっくりと開き中を確かめ、

 

「お魚、さん?」

 

「魚を焼いただけのものだ。食え」

 

「あの、私は――」

 

「食え」

 

まるで昔プレイした日本のゲームのキャラクターのように、同じ言葉を繰り返し続ける彼女。そこからもやはり此方を労わる意図などは伝わって来ず、何も読み取れない。

読み取れないのだが、尻込みしていても仕方はあるまい。私は意を決し、焚き火をぼんやりと眺めている彼女へ声をかけた。

 

「あ、あの! すいませんが、現状を――ここが何処で、今は何時で、どうして、私がここに居るのかを、教えて頂けませんか」

 

「ここは島で、今は夜で、お前がここに居るのは私が拾ったからだ。……先に言っておくが、これ以上は私も知らん。地図的観点からここが何処かと聞いたのならば私も知らない、ただ放浪していたら辿り着いただけのことだし、日付を知りたいが故に今は何時かと聞いたならば、私はそもそも暦を持っていないから答えられない。三つ目については、ただ単純にそれ以上の回答は無い」

 

――無駄だった。決意がへなへなと萎えてゆくのが分かる。彼女の冷徹さというか、無機質さは不変のものらしい。半ば機械じみた返答を頭に入れつつ、そう言えば彼女は一体誰なのかという質問を忘れていたと思い返した時、

 

「……ア、アア、アアアァァァァア……ッ!!」

 

海面下からぞぶりと、深海棲艦がその醜悪な姿を表す。だらりと垂れ下がった黒い髪に光る目、丸い甲羅のような艤装――潜水ヨ級。この辺りではあまり見かけない、強力な個体。

 

「――ッ。深海、棲艦っ!! まずいです、戦闘を――って、艤装っ、無いっ……!?」

 

なんでこんな、一人の時に――。歯嚙みしても現状は変わらない。ともかく戦わなければ、と艤装を探すも、私の身体の近くには存在しない。気を失っている間に喪失したか、あるいはまた別の要因か。たとえそれが何方だったとしても、

 

「アアア、アア、アアアア……!!」

 

この場で、私が、その異形に対抗する手段が無い、と言うことだけは明白だった。

 

「っ、あなた、逃げてください! ここは、ゆーが――」

 

叫ぶ。誰だか分からないが、私を介抱してくれた――恐らく、多分きっとそうに違いない――彼女を危険に晒す訳にはいかない。戦う術を持たない非力な艦娘だとしても、守るべき人間(ヒト)は守らなければ艦娘じゃない。

しかし、そんな私の決意は――

 

「――え?」

 

――またしても、裏切られる。

 

「明かりに誘われたか……図らずも誘蛾灯になったようだな、やはりもう消すか」

 

「ア、アア、ア――アガギィッ」

 

いつの間にか――()()()()()()、本当に一瞬の瞬きの間に。彼女は寸前まで焚き火の暖かい光に照らされていた白髪を靡かせ、さっきまで私に被せていた白い布を外套のように纏い、海面の、少し遠い潜水ヨ級の真ん前に立っていて――無造作に、しかし目にも留まらぬ速さで、何より容易く、その細腕で深海棲艦の首を()()()()()

 

「済まんな、もう眠る貴様に無用のものは頂いてゆくぞ。貴様はもう、こんな光に煩わされることなく眠るが良い」

 

そのまま、彼女は深海棲艦の身体から幾つかのパーツを引き抜いてゆく。青黒い粘液に濡れたそれは、海水で洗われることによってその姿を明らかにする――それらは口径の違う幾つかの魚雷発射管だった。

 

「海上に、立って――まさか、あの子も艦娘? いえ、でもあんな動き、それにあなたのような人の事なんて聞いたこと――」

 

「……済まんな、ここには花もない。せめて水底で安らかに」

 

遠すぎて私の声が聞こえないのか、少女は自らの手で沈めた深海棲艦に黙祷を捧げる。形式も何も無いであろうその挙動は、しかし長年し慣れているかのように滑らかなものだった。

片手に深海棲艦から引き剥がした艤装を持ち、もう片手は胸に当て。アンバランスと言わざるを得ないその少女は、黙祷を捧げ終わると目を開け、踵を返しマントを翻し――

 

「――な、速いっ」

 

少なからずその姿が小さく見える海の上から、一瞬で、私の眼の前まで。海面に大きな波紋を残し、瞬間移動にしか思えないような速さで私の直ぐそばまで舞い戻り、

 

「……上等なものではないが、早く食え。それとも、魚はキライだったか」

 

首を傾げ、無機質に、しかし不思議そうにそう告げる。

 

これが私と彼女――名前も知らない、私と同じ白髪の少女との出会いだった。




ゆーちゃん視点です。

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