と言う感じで続きができちゃいました。感想有難うございます。とても嬉しいです。
※まだ他の艦娘は出ません。
「……~~~っ!!!?!??!ぐ、くふっ………!!!」
頭から水面に突っ込んだ俺が感じたものは、水の冷たさでも驚きでも無かった。広くも深くもない、何の変哲も無い小さな湖。俺だって泳ぎぐらい出来るし、水に潜ったことなんて何度もある。直ぐに上がろうと思えば上がれる筈だ。―――なのに、全身は強張るばかりで動こうとしない。
周囲の水を掻いて泳げば良いだけなのに、その纏わりつく水が目に、口に、服の中に入ってくる感覚がどうしようもなくおぞましい。
近づいてくる浅い湖底を蹴って水面に顔を出すだけなのに、その水底がぐんぐん迫ってくることが、恐ろしくて堪らない。
…………『沈んでいく』。そのことに俺は、この小さな艦娘の身体を引き裂いてしまいそうな程の恐怖を、それも明確な死の恐怖を感じさせられた。
「
それでもこの心は艦娘では無いからだろう、全身が張り裂けそうなほど恐怖に震えているというのに頭の片隅の『俺』はいやに冷静でいられた。菊月の手を、足を無理やり伸ばし、水底の土を掴む。震える手を懸命に動かし、湖底を蹴り………。
「ぷはぁっ!!?―――はぁっ、はぁっ、う、ぅぅう~~~っ!!!」
命からがら湖岸へ辿りつき、水から全身を引き抜く。池から一歩離れてぺたりと尻餅をつき、大きく二、三度ゆっくりと呼吸をする。今のこの身体は『全身ぐしょ濡れの菊月』というテンションMax必至の姿の筈だが……残念なことに、そんなことは気にも止まらないぐらい俺も辛い。中天にある日差しは俺を照らしてくれるが、それでもこの震えは止まらない。水を吸って重くなった髪を両手でわしゃわしゃとかき乱し、水分を跳ばす。それでも顔にへばりつく長い髪を払おうと顔に手を伸ばして、ぐしぐしと顔を擦る。
―――そこでふと、自分の眼から流れ落ちる熱い雫に気が付いた。
「……俺、もしかして、泣いているのか……?」
思わず呟いた一言が耳に入り、ふぅっと息を吐き出す。『菊月らしく話そう』という心がけも忘れていたぐらいには疲労しているらしい。……どうせ陸上、むしろ孤島。変な人どころか深海棲艦に襲われることもない。安心すると同時に沸き出した睡魔に導かれるように緩んだ頭で上下の服を脱ぎ去り、俺はあっという間に草の上で眠りに落ちた。
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………しかし。服を脱いだ以上、思った以上に寝た俺が翌朝目覚めた俺が最初に目にするのが水面に映った『下着姿の菊月』であるのは自明の理で。思わずその姿を凝視したり、ケッコン(ガチ)を大声で申し込んでしまったり、菊月ボイスの「ケッコンしてくださいっ!」に俺の心が大破轟沈し、そこから慌ててもう一回湖に転落しそうになったことも併記しておく。
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閑話休題。
翌日、改めて湖に向かいあった俺は一人思案していた。
「むう……やはり艤装が無ければ駄目か……?しかし、そうなると辛いな。海に出られぬというのは死活問題だ……。それに、このまま海岸で錆びつき朽ち果てると言うのも、『菊月』には到底受け入れられぬ」
―――菊月。艦娘でなく『睦月型九番艦の駆逐艦』としての最期は、轟沈では無い。右舷横腹、機関部に魚雷を受け、航行・戦闘能力を消失。曳航のち擱座、放棄された。米軍に引き上げられ、徹底的な調査を受け、そしてまた、そのまま海岸へ放置された筈だ。戦友である艦が多く数えられている「アイアンボトム・サウンド」にすら含まれず―――今なお、その骸は朽ち続けている。
だからだろう、「海へ出られない」と考えるたびに此の身を絶望が襲うのは。昨日沈みかけた際に感じた恐怖とはまた別のもの、あれが『艦娘』全般が感じる恐怖だとすればこちらは菊月だけが感じるもの。胸にぽっかりと空いた穴のような虚無感に、言いようのない寂しさ。文字通り『菊月』と一心同体になった身だからか、そんな感情まで身体から伝わってしまう。
俺は菊月が好きだ。こんなところで菊月を終わらせられない。だからこそ……
「……私は、必ずもう一度海へ出る……!」
そう言って、俺は昨日見つけた鋼材の一つ。錆びつき朽ちかけてはいるが、今の俺にとっては唯一と言ってもいい希望の象徴。装備スロットにすら載せられる、艤装。
そう、『ドラム缶』を手に取り――――――
「これは艤装、これは艤装これは艤装これは艤装………っ!菊月、出るっ!!」
大きなドラム缶を抱えたまま、もう一度俺は湖へ一歩踏み出した。
Q:この小説急にシリアスし出したけど何なの?シリアスなの?ギャグなの?
A:菊月愛です。