戦闘メインですね。菊月達の練度の高さが上がってます。
全艦隊に継続的な警戒命令が発されても、主要艦隊に編入されていない時にすることは変わらない。第三艦隊での進軍任務が命じられるのはローテーション制、
今回の遠征の目的は、資源確保と中心となる鉄底海峡以前、または付近の偵察及び雑魚の掃討。雑魚の掃討よりも、被害を抑え情報を無事に持ち帰るよう言われている。
「……しかし、余裕が無いのは分かるがな……」
ぼそりと溢しながら前後を見る。先行して遠征隊を率いるのは、
「なんだ、菊月。何時になく不安そうじゃないか。私達が付いているんだ、心配するんじゃない」
「そうよ、菊月ちゃん。不安なら、私がそばにいてあげるから。ね?」
そして、姉妹達のこれでもかと言わんばかりの気遣いも気になるところではある。如月も長月も、此方を励ましながらも何処か自分達も不安そうなのが微笑ましい。
「ま、お前らにはこの天龍様が付いてるんだ。いつ深海棲艦が来るとも限らねぇ、あんまり気を―――おっと、言ったそばからお客さんだぜ!」
天龍に言われるまでもなく、水平線の彼方に補足する黒い影。目算だが、駆逐クラスが四に軽空母、軽巡が一ずつだろう。この海域は未だ鉄底海峡の中心よりも離れているが、戦闘海域であることには変わらない。楽に乗り切れる敵だと油断せずに臨もう。
「よっし、全艦突撃ぃっ!まずは艦載機からだ、お前ら当たんなよ!」
天龍の言葉通りに、敵軽空母ヌ級から発進する艦載機へ向けて砲撃を集中させる。
「……羽虫が……っ!!」
動きながらも落ち着いて狙いを定め、砲撃。戦闘距離まで近付いたのだ、流石に外さずに一機を爆散させる。そのまま滑り続け上半身を捻り、更にもう一機。
「……ふん、この菊月に通用するものか……!」
艦載機に集中している隙を突こうとしたのだろう、未だ遠い駆逐イ級が矢鱈に砲撃を加えてくる。危なげなく回避し、偶に『護月』を抜いて砲弾を斬り落とす。これだけ距離が開いているのならば、
「……此方、菊月。私の分の艦載機は撃滅した、これより砲雷撃戦へ突入する……!」
部隊内に通じる無線に言い捨てて、敵艦隊に再度突撃をかけようとする。不意に周囲を見回せば、ある程度近い距離で戦っている如月と艦載機。如月の真後ろに回り込んだそれは、爆撃をかけようとしている。
「……油断するな、如月。お前は危なっかしいのだからな」
直ぐさま如月の背へ張り付き、放たれた爆撃も『護月』で両断する。同時に、如月が俺の肩越しに砲を放ち艦載機を撃ち落とした。
「あら〜、菊月ちゃんも心配し過ぎよぉ。私だって、ちゃんと成長してるんですから」
「……済まない、そのようだな。だがまあ、危なっかしいというのは撤回せんぞ……」
「もう!菊月ちゃんはヒドいんだから。……しょうがないわね、一緒に砲雷撃戦してあげたら分かってくれるかしら?」
如月の発した言葉にニヤリと笑み浮かべ、反転し肩を並べる。『菊月』も不敵に笑っていて、なおかつ高揚しているようだ。
「……そうだな。是非とも姉の威厳を見せて欲しいものだ……」
「ふふ、了解よ。さ、深海棲艦さん?太っとい魚雷、行くわよ♪」
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退却しようと背を向けていた軽母ヌ級の脳天に、『護月』を突き立てる。そのまま斬り上げるように引き抜けば、ヌ級は声も上げずに沈んでいった。
「……ふむ、意外とどうにかなるのだな……」
『護月』に付着した
「ご苦労さん。本来ならこのまま遠征を継続する筈なんだが―――予定変更。このまま撤退して鎮守府へ帰投する」
「途中帰還なんて珍しいですね。何があったのです?」
如月の言葉に、天龍は頭を振る。その後に出た言葉は、確かに俺達へ撤退を納得させ得るだけのものであった。
「第六遠征隊から、鎮守府へ連絡があった。『確認されていたものとは別の、姫級と思わしき深海棲艦を発見した』―――だそうだ」
はい、姫級一丁追加。
ところで。
『いつからアイドル編がアレで終わりだと錯覚していた?』
おかわり、番外編。
アイドル3話目の次に投稿しておきました。