私が菊月(偽)だ。   作:ディム

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感想と評価が嬉しくて筆が乗り。
教えて頂いた「睦月型の日々」に感涙し。
出来あがった第四話です。

※第四話にして、初めて本文で他の艦に言及しました。




はじめての菊月、その四――【挿絵有り】

……結論から言えば、ドラム缶を艤装に見立てることで水上に立つことには成功した。艦これのように妖精さんが付いて(憑いて?)いない上に錆び切っているため心配だったのだが、どうやら賭けには勝ったようだ。

また、同じく収得した鉄の棒とタイヤも艤装に見立てて見た……が、此方で水上に立つことは不可能であった。タイヤはともかく、鉄の棒なら武器になると思うんだけれどな。ほら、KAD●KAWAとFR●Mが一緒になって艦COREなんて言葉も出来たくらいだし。物理ブレードとか柱とかあるなら菊月が鉄の棒を装備しても良いと思う。

 

「しかしまあ、海に出られるというのは幸運だった……。このドラム缶が邪魔だというのには、目を瞑らなければならないがな」

 

問題があるとすれば、この菊月の身体にはドラム缶が大き過ぎるということだろう。長門や陸奥といった戦艦なら―――彼女らがドラム缶を積載するかは置いておいて―――未だしも、このドラム缶は駆逐艦である菊月には両手で抱えてなお抱え切れない大きさなのだ。流石にこのまま海へ出たとしても、今度は航行とは別の問題が生まれるだろう。……一生懸命大きな荷物を抱える菊月はとても可愛いだけに残念だが。

ともかく、そういう理由で俺はこのドラム缶を改装している。植物の蔓を束ねて結びつけ、リュックのように背負えないか試行錯誤し続けている。この分だと、今日いっぱいはこの作業に明け暮れるだろう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「―――三箇所結んで……通して、引っ張って。……ふむ、外れないな」

 

鮮やかなオレンジ色の陽が水平線に沈むころ、漸く『ドラム缶改』が完成した。それなりに時間をかけてしまったが……完成度としては低く、とりあえずマシという程度だろう。それよりも、これを菊月()が背負うとどうやってもランドセルにしか見えない、という方が問題だ。個人的には「俺、いい仕事したな」という感慨に満ち溢れているのだが、海に映った菊月()を見るたびに悶絶しないかどうか……。

ともかく、これで準備は完了した。このドラム缶に鉄の棒を差し入れて一つの艤装という訳だ。単体では艤装と認識出来なかった鉄の棒が深海棲艦に通用するかは半々だが、無理にでも艤装に落とし込んでしまえば使える可能性は無くはないと思う。仮に通用しなくとも目潰しか防御くらいになら役に立つだろう、どちらにせよ持っておいたほうが良い。

 

……さて、こうして粗末ながら戦えるようになったのだ。ならば、こういう時に言うべき台詞は決まっている。

 

「……また、強くなってしまった……!!」

 

――――――――――――――――――――――――

 

「暁の水平線に勝利を刻む、か……。確かに、夜戦という区切りなら我々駆逐艦の出番だがな」

 

月が完全に昇ったころ、暗闇の中で独り呟く。今宵の月は少しオレンジがかっていて、菊月の瞳の色のようだ。……そんな感傷もそこそこに、俺は思考を巡らせる。勝利。深海棲艦に対して、俺たち艦娘が存在する理由。

 

……まだ陽が高い時分。初めてこの目で深海棲艦を見た。水面に遠く点のようにではあったが、艦娘たる菊月の身体が見間違える筈はない。どうやら少し破損しているらしく、船体に傷が見えた。僚艦もなしにこの海域を彷徨っているようで、どこかの艦隊に置いて行かれたのかも知れないそれ。黒い船体、幽鬼のような目、鈍く光る不揃いな牙―――。

 

―――そう、駆逐イ級である。

 

「駆逐イ級……。強い深海棲艦ではない、むしろ弱い。……しかし、今の私にとっては、な……」

 

弱い深海棲艦、それは俺が『俺』だからそう言えるだけだろう。『ゲームに於いて』データ上のスペックが最も低い敵、1-1-1で出てくる雑魚……。こうして艦娘となった今では、冗談でも侮れない。ゲームでさえ直撃(クリティカル)が存在するのに、今の俺には12cm単装砲すらもない。ドラム缶で打撃?笑えない冗談だろう。

 

だから、俺は万全を期す。イ級一隻であろうと、同じ駆逐艦同士なのだ。此処では「一撃轟沈など無い」なんて悠長なことは言っていられないのだから。

 

奴がどの程度動けてどこを庇っているのか。旋回速度、巡航速度。奴の砲塔が何処に積まれているのかも知っておかなければならないし、顎と牙がどれだけ動くのかも重要だ。

 

「―――だが、どれだけ不利だろうと。この菊月、負ける訳にはいかぬ……!」

 

 

 

……さて。気合を入れたのは良いが、夜はまだまだ長いんだ。眠くなるまで「恋●2-4-11/ver.菊月」でも堪能しよう……!!




初めて本文で他の艦に言及したと言ったな?あれはイ級だ。

Q:なんで俺、短編のつもりが連日投稿してんの?

A:それもこれも菊月が可愛いから。

あ、望月ちゃんバレンタインボイスおめでとう!
……で、菊月のは?

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