私が菊月(偽)だ。   作:ディム

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クライマックス、何度目か。


激戦海域、その九

俺の直ぐ側で炎が爆ぜる。巻き上がる紅蓮に頬を舐められ、ひりっとした感覚を覚える。正面にも、左右にも、何処からも迫り来る艦載機。正面から特攻してくるそれらだけを我武者羅に斬り払い、残りは真後ろに控える神通に任せる。

 

「……おおぉぉぉおおおっ!!」

 

前進、前進。一層激しくなる爆撃を回避し、あるいは撃墜して進む。これで三度目の突貫だが、今回も艦載機に阻まれ後一歩のところで後退する羽目になるだろう。

 

「ぐっ、やはり数が……!」

 

「菊月っ、島の横を抜けますよ!」

 

「くそ、仕方が無いか……!」

 

突貫するルートを大きく逸らし、島から離れる。奴もあまり艦載機を飛ばしすぎると俺達を止められないと分かっているのか、先程までと比べればこの距離での被害はだいぶ少なくなった。最も、それでも並みの空母の倍以上飛ばしてくるのにはふざけるなと言いたいところだ。

 

「面倒ですね。ですが、菊月。そろそろ――」

 

「……ああ、私達の時間だ……!」

 

相変わらずの厚い雲と嵐だが、今回に限ってメリットがある。この雲が光を遮るお陰で、辺りはもう暗い。あと数分で陽が完全に沈めば、その瞬間に真夜中のように真っ暗になるだろう。そうなれば、明かりはあの炎上している島の一角しかない。

 

「そうですね、その通りです。なら菊月、陽が沈むまでの数分を逃げ回りますか?」

 

「……冗談を。そんなことが出来る相手なら、私達はとうの昔に逃げ果せているだろう……」

 

言いつつ体勢を低くする。単装砲はともかく、連装砲には弾が殆ど無い。加えて、俺達も徐々に疲弊しつつある。血を流すというのは流石に堪えるが、心だけは益々燃え盛っている。奴への怒りと神通への信頼、そして喜びを胸に抱えてぐっ、と水面を踏み締める。

 

「……征くぞ、神通っ!!」

 

思い切り吼えると、今度は斬り払うことすらせずに只管突っ込む。両腕を身体の前で交差させ、菊月()の軽い身体に追突してくる艦載機の暴威に耐えながら、さっきよりも増したスピードを出す。

 

「シズメ……シズメ、ウットウシイ艦娘メ……!!」

 

業を煮やした飛行場姫が、一息に俺を擦り潰そうと艦載機の一団を俺に差し向ける。先行して迫り来る機体に腕を裂かれ、流れる血が後ろへ吹き飛んで行く。眼前の、あれだけ密集している群体に呑まれれば流石の菊月()と言えど助かる道は無い。呑まれれば、だが。

 

「……この菊月に、その程度の攻撃でっ!!私の怒りを止められるものかぁぁぁあっ!!」

 

『俺』と『菊月』の絶叫。交差した手をそのまま降ろし、両足首の魚雷発射管から二本の魚雷を引き抜き前方の一団へ向けて投擲する。これで、足首に付けている魚雷は残弾も含めて空っぽだ。

 

「神通っ!!」

 

「分かっていますっ!!」

 

そこへ、真後ろの神通も魚雷を投擲し、俺が投げたものと衝突させる。暗闇に大きな爆炎を咲かせる魚雷、それが三つ。密集させていたのが仇となった形だ、行く手を阻む艦載機の殆どを焼き尽くす。

 

「オノレ……オノレ、チョコマカト……!!」

 

そのまま、俺達はその炎の中へ突撃する。熱い、痛い、辛い。けれど、足だけは止めない。ちりちりと服が焦げる。永遠のような一瞬の先、炎を抜けた先にはふんぞり返った彼奴の島があった。

 

「接敵成功……!」

 

神通と共に、島に上陸する。ここから飛行場姫と……『菊月』まではおよそ十五メートルと少し。先程までと比べれば、届かない距離では決してない。

 

「ふふ、まさか陸上で戦う羽目になるとは思ってもみませんでした」

 

「殆ど変わらんだろう。転けても沈む心配が無い分、楽だな……!」

 

飛行場姫からの爆撃を回避する。外れた攻撃は自分の島を焼いていると言うのに、そんなことにも気が付かぬ程に激昂しているのだろう。

 

砲口を、がちゃりと奴の眉間に定めた。

 

―――――――――――――――――――――――

 

空からは雨、大地の至る所には炎。こんなシチュエーション、見るだけにしておきたかったものだ。内心でそう零しながら、ちょこまかと動き回り両手の砲を飛行場姫へ撃ち込んで行く。

 

「貴様ラハ、ワタシガ……直々ニ沈メテクレル……!」

 

飛行場姫が激昂したまま、自らの艤装をどんと叩く。同時に島が揺れ、艦載機の出来損ないや尖った鋼材が次々に俺達を目掛け大地が突き出てくる。

 

「くっ、私としたことが――!」

 

隣の神通は肩や腕をやられたようだ。かく言う菊月()も、今さっき腹を貫かれそうになった。ここへ来てこれは不味い、このままでは爆撃を回避出来なくなってしまう。

 

「……神通っ!!私が突っ込む、援護してくれっ!!」

 

「置いて行かせなんてしませんよ、菊月。二水戦の誇り、舐めないで下さいっ!!」

 

手始めに、ありったけの対潜爆雷を飛行場姫へぶん投げる。そのどれもが艦載機によって阻まれるが、それでいい。

 

「っ!さあ行きなさい、菊月っ!!」

 

「……いい加減にっ!!『そこ』から退けよっ、深海棲艦がぁぁぁあっ!!」

 

大地から突き出す鋼材、それが右脇腹を掠った。噴き出る血に痛みを感じるが奥歯を噛み締め我慢する。側で炎を上げる爆撃、その爆風を追い風にして加速する。並び駆ける神通はそのまま加速し奴の足元へ、そして菊月()は斜めに突き出た鋼材をジャンプ台とし、一気に駆け上がり『護月』を抜き放つ。

 

「あぁぁぁぁぁぁあっ!!」

 

「読ンデイタワ、馬鹿ナ駆逐艦ガ……!!」

 

跳躍をつけた渾身の一閃、しかしそれすらも発艦した艦載機共に勢いを殺される。腐っても姫、艦載機だけしか載せていないだけはあるか。今の一撃で、『護月』も遠くへ飛ばされてしまった。

 

「……ぐうっ!!?」

 

「……ツカマエタゾ、羽虫ガ。コノママ捻リ潰シテクレル」

 

そうして、菊月()は奴の右腕で空中へ縫いとめられる。ギリギリと喉を締め付けられ、今にも千切れてしまいそうだ。見れば漸く溜飲を下げたのか、愉悦に口元を歪めている。

 

「……馬鹿ナ駆逐艦ゴトキガ、雷撃シカ能ノ無イ雑魚ガワタシニ楯突クカラダ!マズハイッピキ、コレデオワリ――」

 

「い、や……。違う、な!……げほっ、まだ、終わって、いない『っぽい』……!」

 

がしゃり、と腰に括り付けた『61cm四連装(酸素)魚雷(夕立の魚雷)』を奴の顔面へ向ける。今更気付いたようだがもう遅い。

 

「……馬鹿は貴様だ、ソロモンの悪夢の一撃、思い知れっ……!」

 

発射。四連装魚雷が火を噴き、奴の上半身へ爆発を叩き込む。

 

衝撃に吹き飛ばされ、菊月()は鋼材に叩きつけられる。

決着は、近い。




陸上で刀を抜いて血を流して戦闘。

艦これ(偽)ですね。
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