A:リアル晩酌に付き合わされた。完成はさせてあったが投稿する隙が無かった。罰ゲーム案件だコラァ!
ミッドウェー基地へ帰還し待機していた皐月と熊野へ作戦報告を終えた
「……ふむ。毎回思うが、これで此処が太平洋のど真ん中でなければただの温泉旅館なのだがな……」
「ふふ、私もそう思います。このお風呂をみんなと完成させた時は、すごく嬉しかったんですから」
鏡が無いのが有難い、身体を見下ろさないようにしながら目を瞑り身体をタオルで擦る。タオルや石鹸といった風呂用品は、元々備え付けてあった風呂の方から拝借したらしい。祥鳳も少し離れたところで身体を洗っているようだ。
「菊月、頭を洗ってあげましょうか?」
「……いや、構わぬ……」
「そう、残念ね。文月や弥生なんかは、よく洗ってあげるのだけど」
「……弥生も、か。そうだな、納得出来ぬ事もない……」
ぽつぽつと会話をしながら、身体の泡を流し湯船に浸かる。
「――ねえ、菊月」
そのままじっと疲れを癒していると、不意に祥鳳が口を開く。
「……どうした、祥鳳?」
「私達は、このままで大丈夫なのでしょうか」
その口から出たのは、存外に弱気な言葉だった。祥鳳らしからぬ『このままで大丈夫か』という曖昧な物言いで、思わず俺も面食らってしまう。さっきのタ級……というより、このところの深海棲艦について全てを案じているのだろう。
「……私は、長くここにいるわけではない。それに、深海棲艦がどうであろうとこの島を出て鎮守府へ戻るつもりだ。……だが、それを差し引いて考えても無理だろう……」
「やはり、そうですか。此処以外に行く場所が無いことも分かっています、儘ならないものですね。それにしても、随分はっきりと言うのですね?」
「……済まない、性分でな……。しかし、行く場所がないと言うのは言い過ぎだろう……?」
「言い過ぎでは無いですよ。鎮守府から逃げ出し、そのまま音沙汰無く隠れ続けていたのですから。逃げた理由、無残に扱き使われていたなど意味はありません、事実として、逃げ出してしまったのですから」
「……だが、ミッドウェー付近の深海棲艦は沈めていただろう、それも毎日哨戒に出て。生き延びる為だけなら、無駄に戦うことは命取りだと言うのにだ。……何か、したかったのではないか」
俺の言葉に、俯き顔を伏せる祥鳳。そのまま暫くの間、風呂に響く音は屋根と壁を雨粒が叩く音だけになった。湯船の熱が全身にまわり、少し頭が火照ってくる。それが祥鳳の口も柔らかくしたのか、彼女はまた少しずつ話し始めた。
「ええ。私は――いえ、きっとみんなも、私達の居た鎮守府で戦い続けているみんなの為に、何かしたかったんだと思います。私達の中で一番、此処に残りたいと思っているでしょう皐月でさえも、きっと」
面と向かって問われて初めて自分でも分かったんですけど、と照れながら頭を掻き、祥鳳は続ける。
「怖気付いて、無為に沈められるのが嫌で逃げ出したとしても、それだけは――艦娘としての最後の誇り、仲間の為に戦うことからだけは逃げたくなかったのだと、そう思います。まあ、どれだけ偉そうに言っても、鎮守府から逃げてしまった以上は意味無いんですけどね」
真剣な表情で告げ、直後諦めたような顔を覗かせる祥鳳。彼女自身が言ったように、これは此処にいるみんなの共通意思だろう。仲間の為に戦うという気概と、逃げてしまったという諦めの両方が。
扱き使われて、捨て駒として無謀に突撃させられ、身体にも心にも軽くない傷を負った。鎮守府を、提督を憎み戦うことを放棄しようと責められない筈の彼女達は……それでも、仲間の為に戦うことだけは止めなかった。その事実に、心が震える。
「……それでも、行くところが無い訳ではないだろう」
「菊月、気持ちは有難いですが事実は――」
「あるさ、行くところは。……みんなで、うちの鎮守府に来い。如月だって、卯月だって、長月だって三日月だって、誰もお前たちのことは拒むまい……。提督に話をつけるのも手伝うさ。……神通も、あとは多分長門さんにも頼めるだろう。……『最後まで艦娘の誇りを失わず、孤軍奮闘し続けた精鋭部隊』。そんな艦娘を、邪険にする者はいないさ……」
「っ、有難いですが、それでも――」
「それでも納得出来ないなら、そうだな……。……私が、全員守ってやる。睦月も、姉妹達も、熊野もあんたもみんな。この菊月、助けられた礼を返さぬような艦娘ではない……」
だからだろうか、風呂の熱が伝播した頭で無茶を言った。彼女達に対してだけではない、
これは、自らの意思で彼女達の命を背負い込むということだ。自分独りをすら碌に守れもしない俺が、ただの非力な駆逐艦風情が背伸びをしているだけなのだろう。
だが、それでも。彼女達をこんなところで終わらせてはいけない、と『俺』が決意する。最後まで誇りを持ち続けた彼女達に報いずして、何が艦娘だと『菊月』が吼える。
「……だから、頼む。一度で良い、私を信じてくれ」
呆然としている祥鳳へ手を伸ばす。手を伸ばそうとし、その手を引っ込めようとする。そんな動作を彼女は繰り返し――
「――あなただけに、頼りはしません。私も、戦います」
祥鳳は、
なんと!なんと!
この小説の一場面を書いてくださった方がいらっしゃいますのです!!!
下記URL、『海鷹』さんの作品でございます!
菊月可愛い!
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=49645863
菊月可愛い!
どんどん広がる菊月の輪。もっともっと広がれ!!