遅れた?いや待て、私が寝てない以上次の日になったと断言するには早いのではないか?(錯乱)
海を越えて、その一
その日は、朝から嫌な予感がしていた。
空からは変わらず雨が降り続き、分厚い雲が空を隠すせいで昇る朝日を見ることも出来ない。逆巻く風が海を揺らしている。
中間棲姫に敗北を喫し、基地地下で隠れ始めてからおよそ一週間。偵察部隊であった望月と文月から『深海棲艦の数が減っているかも知れない』という報告がもたらされたのが、ちょうど一昨日。そこから、生き延びる為に必要な食物を得ようと出撃を再開したのが昨日で、『
そして今日。島の反対側で食物を取っている残りの面子の陽動として皐月・熊野と共に出撃したが――
「くっそ、ちょこまかしやがって!――ぐっ!?」
「皐月さんっ!?無理せずに、下がって下さいまし!」
――我々は、大幅な苦戦を強いられていた。あれだけ居た筈の深海棲艦はその姿を海中へ隠し、付近には哨戒するように泳ぎ回るハ級の姿しか見えない。敵はそれらと、交戦を始めてから不意に姿を見せた中間棲姫だけだ。駆逐ハ級を筆頭とした駆逐艦隊が相手だというのは変わっていない。
しかし奴らの中に潜む『硬いの』、そして最奥に控える中間棲姫。奴らが全てを狂わせてしまっていた。
「……く、これで三つめ。……熊野、皐月っ!面倒だが、残り三体全てが『硬い奴』だ……!」
「くっそ、ちょっと硬いだけのくせにっ!っつあぁぁぁあっ!」
砲弾を浴び傷を負っているのは
「……フフフ、馬鹿ネ……」
しかし、奴等の硬い
また、硬くなり厄介になったこいつらは、皐月の攻撃をいとも容易く回避さえする。背後の中間棲姫が腕を一振りすれば、意思なき獣である筈のハ級共は揃って身を捩り、躱し、返す砲撃を此方へ浴びせ掛ける。
――中間棲姫。攻撃さえ仕掛けて来ないたった一匹の姫に、
「……くうっ、下がれ皐月……!」
「何言ってるんだよ、下がるって言うんなら菊月だけ下がりなよっ!」
少し前から気になっていたが、この頃焦りのような感情が見え出した皐月が大きく吼える。危ういその姿をカバーするように並走し、中間棲姫を討つべく海面を駆ける。
中間棲姫は変わらず、余裕の表情で手を掲げる。同時に此方へ向かいくるハ級は皐月へと殺到し、
ちらりと後ろを見れば、囲まれた皐月はハ級の体当たりで徐々に追い詰められていた。こうなれば、この硬いハ級など気にしていられる状況ではない。
「……喰らえ……っ!」
「オシカッタ、ワネ……」
大上段に振りかぶった護月を真っ直ぐに振り下ろす。対する奴は平然と錆び付いた滑走路を盾として防ぎ、更にハ級二体を海中から呼び出した。
「……邪魔だ……!」
襲い来るハ級へ向けて、横一文字に護月を振り抜く。いつも通りの冴えを見せた筈のその一閃は、しかしハ級の薄皮だけを斬り裂くに留まった。
「……くそっ、こいつらもかっ!?……っ、しまっ」
戦場のど真ん中で、敵の目の前で見せた一瞬の隙。それは致命的な事実となり俺に襲い掛かった。
ごすっ、と鈍い音が
「菊月っ、大丈夫ですの!?」
「……ぐうっ、なんとか、熊野のお陰でな……」
支えられながらよろよろと立ち上がれば、先程の
「フフ、フフフ……。ドウシタノカシラ、随分ト元気ガ無イヨウネ……?」
此方を嘲り笑う中間棲姫に言い返すことができず、その顔をせめてと睨み付ける。本当ならば今すぐ、あの憎らしい顔を吹き飛ばしてやりたいと『俺』も『菊月』も思っている。しかしそれは、自ら死にに行くことと同義だ。
「……ワタシハ、ヨワイ貴女タチニ構ッテイラレナイノ。今度マタ可愛ガッテアゲルカラ、隅ノホウデ震エテナサイ?ウフフフフ……!」
そう言い放ったあと、中間棲姫は此方を一瞥すらせずに海中へと潜って行く。ご丁寧にハ級全てを引き連れて、俺達を捨て置くという傲慢さまで見せつけて来るがそれのお陰で命を繋いでいる現状何も言うことが出来ない。ただただ、悔しかった。
見逃された……否、端から相手にされていなかった。その恥辱が身を焦がし、自然と握り締める手に力が篭る。
「……帰投する」
「そう、ですわね」
皐月を二人で担ぎ、奥歯を噛み締めて歩き出す。
口の中は、苦味でいっぱいだった。
Q:なんで(ry
A:こんなボコボコにやられる展開で良いのか悩んでた。
追記、ついった始めました。
良かったら探してみてね!(投げ槍)