私が菊月(偽)だ。   作:ディム

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うふふ。うふふふ。ふふふふ!

睦月と如月に改二!追加ボイス!菊月にボイス!
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ショッピング・アゲイン、その三

姉妹達に引き摺られるままに、洋服屋へと入店する。背筋に走る嫌な予感は消える事は無く、せめてもの抵抗も数の暴力の前には無意味だ。ならばせめて、『菊月』の思うままに楽しんでやろうと決意する。

 

「……うむ、これならば私も好きだな……」

 

今着せられている服は落ち着いたデザインのサマーワンピース。海の青色によく映えそうな白色をしている。あとは麦わら帽子でもあれば完璧だろう。

 

「成る程、菊月の好きな服もだいぶ分かってきたな。好みとしては、私と似たようなものだろう?」

 

「ああ、恐らくな。……長月、良ければまた何か見繕ってくれ」

 

「勿論だ、菊月。そうだな、シンプルにTシャツとジーンズも揃えておくべきだろう。ちょっと出掛けるぐらいなら、それで済む筈だ」

 

「……ふむ」

 

「菊月に合わせるのならば……Tシャツの上にもう一枚シャツを合わせたらどうだ?その上にハンチング帽でも被ればいいだろう」

 

「分かった、それを買おう」

 

長月の選ぶ服をカゴに押し込み、着ているワンピースを脱ごうとする。その時、ちょうど計ったようなタイミングで残りの三人が帰ってきた。

 

「お待たせ〜、菊月ちゃん、長月ちゃん。あら、似合っているじゃない」

 

「うーちゃん的には、もっとピンク色が欲しいところぴょん。と言うわけで、次はこっちを着るぴょん!うーちゃんイチオシ、ノースリーブパンクだぴょん」

 

「小物と靴は私が選んだんですよ?お姉ちゃんに似合うように、ちゃんと色も合わせました!」

 

卯月と三日月が持ってきたのは、少しゴシック色の入ったパンクファッション。ダメージ仕様の黒色ノースリーブ、同じくシックな黒色のショートパンツ、そしてそのショートパンツとセットになった

レッグカバーだ。レッグカバーはショートパンツとくっ付けることで長いパンツにする事も可能なようだ。

 

「……ほう、良いじゃないか……!」

 

「でしょう?はい、私からはこれ」

 

如月から渡された、茶色いサングラスと共に試着室へ入る。着替えて姿見を眺めると、ルーズなゴシックパンクに身を包んだ可愛らしい菊月の姿が映っている。暫し見惚れ、その後徐に髪を掻き上げてポーズを取る。以前に撮影の際に指定されたポーズだ。

 

「……ぐうっ!?」

 

――思わず苦悶の声が漏れる。『俺』の意思が昂り、咆哮を上げ、歓喜の涙を流す。あまりの可憐さ美しさに『俺』の思考がショートする。危うく身体から漏れかけたキラキラをなんとか押し留め、それでも赤面は治らないままに試着室のカーテンを開いた。

 

「……ど、どうだ……」

 

「うわーっ、お姉ちゃん綺麗です!良いなぁ、私もそんな服が似合えば良いのに。卯月お姉ちゃんや長月お姉ちゃんが羨ましいです」

 

「三日月はその分ワンピースや清楚な服が似合うだろ、それは私には似合わない。しかし、このパンクは良いな。卯月、後で売り場に案内してくれないか?」

 

「ふふふ、勿論だぴょん!ついでにぃ、三日月に似合うのも探しちゃうぴょん!!」

 

三人の話を、熱に浮かされたようなぼーっとした心持ちで聞く。すると、妖しい微笑みを浮かべながら如月が話し掛けてくる。菊月()はその時、警戒も何もする余裕が無かった。

 

「うふふ、良いわね菊月ちゃん。その服着て、今日は過ごす?」

 

「……ぅん?ああ……」

 

「分かったわぁ、それじゃ行きましょうか。店員さんにはお話ししてあるし――卯月ちゃん、お金は払っておいてね?」

 

「任せろぴょん、今日も司令官からカードを借りてきたからバッチリぴょん!」

 

卯月と如月のやり取りを聞き流しつつ、如月に手を引かれるままに店を出る。そうだ、せめて何処に行くのかだけは聞いておかなければならない。菊月()の手を引く、フェミニン系の服に身を包んだ如月へと声をかける。

 

「……なあ?私は何処へ連れて行かれるのだ……」

 

「うふふ、もう良いかしらね。今から、菊月ちゃんに可愛い下着を買いに行くのよ?」

 

「……そうか、下着か……。……っ!?」

 

如月の言葉を理解するのに数瞬を用し、理解しきると同時に感情が膨れ上がる。『菊月』の羞恥と『俺』の高揚、二つの相反する感情が鬩ぎ合い、高め合い、爆発し――『ぼふっ』と音を立てたかのように、顔が一気に赤面する。

 

「あらあら、そんな顔をしても駄目よ。ほら、もう着いちゃったもの」

 

はっ、として顔をあげれば、そこには異様なオーラを放つ一軒の店。淡いピンク色に彩られた戦域。そう、ここは戦場なのである。此処に来て、漸く『俺』の感情も恥ずかしさへ振り切れる。そもそも男であった『俺』には刺激が強すぎる。

 

「……い、嫌だっ!きさ、如月頼む、助けてくれ……!」

 

「何を言っているのかしら?お姉ちゃんからは逃げられないのよ」

 

「……っ!!」

 

逃げ出す間も無く、がっちりと腕を掴まれる。そのまま何も出来ないまま、菊月()はその魔窟へと連れ込まれるのだった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「うふふ、うふふふふ。さあ菊月ちゃん、次はこっちよ?」

 

「〜〜っ……!」

 

あれからどれぐらいの時間が経ったのだろうか、おそらく正午は回った筈だが一向に解放される気配が無い。既に精神は擦り切れ『菊月』からの反応はなく、『俺』もグロッキー寸前である。差し出されたものは黒いシルク製の下着、持っているだけで手がぷるぷると震えてきてしまう。

 

「うーん、菊月ちゃんは肌が白いしこんなのが似合うと思うのよねぇ。うん、これも買いましょう!」

 

「……っ、分かったから……」

 

「はーい、素直でよろしい。さっき選んでたこれも買って、と。じゃあ菊月ちゃん、どれが良い?」

 

「……何がどれ、だ。最早どうにでもしろ……」

 

「あら、そう?じゃあ、さっきの……は流石に置いておきましょうか。ならこのフリルのついたのにしちゃうけど良い?」

 

「好きにしろ……!」

 

思わずぶっきらぼうに返し、気恥ずかしさから顔を逸らす。そのうちに如月は店員と何かしらの話を付けて来たようで、にこにこと笑っている。

 

「うん、これにしたわよ菊月ちゃん。じゃあ、早く付けちゃいましょうか?」

 

「……は?」

 

間の抜けた菊月()の返答に笑顔を返すばかりの如月は、ふらつく菊月()を試着室へ引き摺り込む。この時に至って漸く俺は理解した。如月の先程の問いは、『今から選んだ下着を身につけさせる』というもの。ろくに返事もせず、結果として選ばれたのはフリルの可愛らしい、薄い灰色の上下下着セット(brassiere&pantie)。これを身に付けた菊月はさぞや天使のごとき様相だろうが、それに菊月(俺達)が耐えられるかといえばそうでは無いだろう。

 

「――さあ、菊月ちゃん。脱ぎ脱ぎしましょうね?」

 

「……っ、ぅぁぁぁあっ!!」

 

狭い試着室の中、入り口は如月に防がれている。逃げ場など、何処にも無い。菊月()のか細い身体へ、如月の魔手が迫る――




まだまだ行くぜぇーーーーっ!!!!

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