私が菊月(偽)だ。   作:ディム

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ガンパレ換算なら朝六時まで前日扱いだからセーフ!

……いや、ようやっとリアル片付いたんでこれから頑張ります。


ゆ号作戦、その一

時刻はマルロクマルマル、現在地は鎮守府内大講堂。集められているのは鎮守府に所属する殆んど全ての艦娘で、我々のような駆逐艦に始まりなんと大和のような戦艦まで控えている。集まったのはとある大規模作戦の説明のため。だというのにどの艦娘も……そして、『菊月』に引っ張られた菊月()の目も輝いているだろう。

 

「静粛に。みな、朝早くから集まってくれてありがとう。何人かは――いや、この様子だと集まってくれた殆んどの艦娘が、凡その作戦概要は頭に入れているのだろうな。この作戦には、およそ我が鎮守府が持つ戦力全てを投入することになるだろう。戦力を真っ二つに分け、ローテーションで行う作戦だ。――金剛」

 

「OK、提督ゥ!」

 

いつもの三倍ぐらいテンションの高い金剛が、満面の笑みで壇上に登る。声の弾みようから、どれだけ『作戦』を楽しみにしていたのかが見て取れるようだ。

 

「Hey、皆サーン!おはようございマース!提督から先程軽く触れられマシタが、この鎮守府は大規模な作戦を控えていマース!Very greatな作戦ネー!ワタシは昂りすぎて、一睡もしてないネ!」

 

ばちん、とウィンクを飛ばす金剛。作戦前のブリーフィングとしては場違いな動作だが、それをどの艦娘も当然のように受け入れている。ちらほらと拍手をする者も居るぐらいだ。

 

「オッホン!作戦の具体的な説明に入るネー!作戦開始は再来週、月曜!そこから木曜までの四日間が作戦期間ネ!鎮守府に所属する艦娘を真っ二つにcutして、そのうち半分が前半、残りが後半に作戦に当たりマース!Everyone、ここまではOK?」

 

金剛の言葉に、半数の艦娘が大きく頷きもう半分は拍手を返す。満足げに頷けば、金剛は更に笑みを深めて話し出した。

 

「なら、作戦地点を伝達シマース!鎮守府から内陸にクルマで三時間、ちょうどその位置に攻略目標がありマス!さあ皆サーン、思い出して欲しいネ!そこにあるのは。ちょうど先月renewalしたばかりの――Yes!『遊園地』ネー!!」

 

ついに開示されたその言葉、『遊園地』。その魔力に、あらゆる艦娘が立ち上がり手を叩く。万雷の喝采は鳴り止むことなく金剛と提督へと降り注ぐ。それを十分に浴びてから、得意顔の金剛は口を開く。

 

「ふっふー、とっても気持ちよかったネー!さて、肝心の編成だけど、提督がもう決定してマース!できるだけ姉妹艦が一緒に行動できるように編成してマスので、安心して下さいネ!」

 

再び鳴り響く喝采に、ご満悦のまま壇上から降りようとする金剛。提督に呼び止められ、慌ててマイクの前まで駆け戻ってきた。

 

「Sorry、肝心なことを忘れていマシタ!作戦名は『ゆ号作戦』!ゆ号のゆは遊園地のゆ、デース!!」

 

――『ゆ号作戦実施戦局会議』。それは、他に類を見ない盛り上がりの中で終わりを迎えることとなったのだった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「……で?」

 

「いや、提督や金剛の言い出した遊園地がどうの、というのは大体卯月のせいだ、とな」

 

「今回は多分、うーちゃんファインプレーぴょん?」

 

卯月の語ることの顛末はこうだ。

俺達姉妹を纏めて遊園地に連れ出すため、提督の執務中に襲撃をかけた。あれこれと理屈を並べ立てるものの、睦月型だけを纏めて休ませる訳にはいかないと提督は首を縦には振らない。そこで卯月は秘書艦である金剛に掛け合い、『大型作戦成功の慰労』という名目で鎮守府を丸ごと休暇にするという提案をした。それが紆余曲折を経て、『ゆ号作戦』となった――らしい。

 

「ファインプレー、というかなんと言うかですね。ええと、でも一応みんなで遊園地には行けるんです、よね?」

 

「その辺は抜かりないぴょん。如月が散々使い倒したカードの領収書と一緒に司令官にお願いしたらイチコロだったぴょん」

 

山のような衣服に下着、幾つかのそこそこ上等な浴衣。それらを購入した領収書を片手に脅迫されれば屈服せざるを得ないだろう。哀れ提督、遊園地から土産は買って帰ってやろう。

 

「でも、結果としてみんなで遊園地に行けるじゃない。それも、私たちだけじゃなく。ね?だからやっぱりありがとう、卯月ちゃん」

 

「へへん、問題ないぴょん!それに、提督も一日だけ休みを取るらしいからぴょん。全員揃って息抜き、楽しみぴょんね!」

 

気楽に言い放つ卯月へ溜息を吐きながらも、内心の『菊月』はその高揚を抑えられていない。姉妹と娯楽施設など初めてなのだ、ならば『俺』に出来ることは精一杯その感情を表すことだけ。二日の猶予、恐らく泊まりでの旅行になるだろう。

 

「……今のうちから、しっかりと準備をしておかねばな」

 

菊月()はぼそりと、楽しそうに呟いた。




活動報告に着物の件をあげておきました。良ければ。

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