散々遊び、日も暮れた頃に集合時間は定められていた。全員で遊園地と提携しているホテルまで歩き、各自の部屋番号を通達される。
「……ここか」
自分達に割り当てられた、ホテルの部屋へと入る。二人部屋だがそこそこ大きく、特に駆逐艦達ならば十分な広さの部屋であると言える。大きなベッドの上に置かれた荷物から見るに、
「しかし、良い部屋だな……。否が応でも、旅行に来たという感覚だ。なあ、三日月?」
「ふふ、お姉ちゃんったら口元が緩んでますよ。そんなに楽しみだったんですか?」
「当たり前だろう……。みんなで旅行なんて、
「そうですね。うん、私もお姉ちゃん達とこうして旅行出来るなんて、夢みたいです」
くじ引きで部屋割りをした結果、
「このあとは何があるのだったか……?」
「うーん、しおりを見る限りでは、もう少ししたらご飯みたいです。それまでは、まだ少し時間があるみたいです。どうします?」
「……そうだな。楽しかったとはいえ、少し疲れたのも確かだろう?時間まで、ゆっくりしようと思うのだが……」
「はい、分かりました。私もそんなことを思ってたところです」
部屋に備え付けられてある柔らかいソファに腰掛ける。大人用に造られているそれは、
「……久しぶりに、よく遊んだな」
「はい。急流滑りもコーヒーカップも楽しかったですし、メリーゴーラウンドなんて特に。ジェットコースターは――怖かったですけど」
「……あれは別だ。ノーカウントだ。あとは、お化け屋敷もな……」
「はい、勿論です。あとは、菊月お姉ちゃんと神通さんが、ゴーカートでレースをしているのも見ていて面白かったですよ?」
「……あれは、久しぶりに神通と張り合ったからだ。まあ、あれだけ盛大に叫んだのだ。私よりも神通の方が、今頃恥ずかしい気持ちをしているだろう」
今日の内容を頭からゆっくりと反芻し、三日月と二人で笑いあう。昼のような騒がしい時間も嫌いではないが、やはり『菊月』としてはこんな穏やかな時間が好みのようだ。その証拠に、いつも以上に口がすらすらと回る。
「……三日月」
「え?あ、もう時間なんですね。それじゃあ行きましょう、菊月お姉ちゃん。晩御飯はバイキング形式らしいですよ、楽しみですね!」
「ああ……」
三日月と連れ立って部屋を出ると、ちょうど如月達と鉢合わせする。わいわいと騒ぐ姉妹達を眺め、今日の食事も退屈しないだろうと密かに苦笑しながら
―――――――――――――――――――――――
「……ふう」
がちゃん、と扉を閉めれば自動的に鍵がかかる。時刻は二十三時過ぎ、遊びまわって疲労の溜まった身体には眠気がのし掛かって来ている。
「……ほら、三日月。ベッドまで、寝るのは辛抱しろ……」
「うぅ、ふぁい、おねえひゃん」
先程までは、如月達の部屋でトランプに興じていた。卯月のセンスと
「……着いたぞ、三日月」
「ありがとうございまひゅ、菊月おねえひゃん」
既にろれつの回っていない三日月を、ゆっくりとベッドに寝かせて布団を掛ける。疲れていたのだろう、三日月は直ぐに夢の中へと旅立った。
「ふわ……ぁ、っ。私も、寝るとするか……」
明日も遊ばなければならない、『菊月』はまだまだ満足していないのだから。自分のベッドへと向かおうと踵を返し、歩き出す――瞬間、後ろへ軽く引かれる。振り向くと、三日月が
「三日月……」
「う、ん。おねえ、ちゃん。ふふ、うふふ」
寝言と共に、服を引く力が強まる。幸せそうな寝顔からは、見ているであろう夢がどれだけ彼女にとって楽しいものであるかが伝わってくる。
「……寝言でまで呼ばれては、振り払う訳にもいくまい。……まったく、三日月は甘えん坊だな……?」
小さく頭を横に振り、三日月を起こさないように同じベッドに潜り込む。心なしか、三日月の寝顔の笑顔も深まったような気がする。同時に、力を掛けてきていた眠気が更に強くなる。
「……ふぅ、何なのさ、いったい……」
横向けに寝る三日月と向かい合うようにして、
あ、活動報告の浴衣の件はまだまだ意見を募ってますので。