ソードアート・ポケットモンスター・オンライン 作:RYUNA
「ついに・・・この時が来た・・・。」
ムダに広い自分の部屋の一室で私はナーヴギアと呼ばれる機械を頭に装着した。
スイッチを押すと頭のギアが立てる「ヴーン」という音が静かな部屋に響き渡る。
高鳴る鼓動を感じつつ、私は呟いた。
「リンクスタート。」
私の名前は槻間璃緒(つきまりお)。今年中学を入学したばかりの30歳。
いま私が言った言葉をおかしいと思った人はたぶん全員でしょう。
説明がめんどくさいので率直に言うと、私は前世の記憶がある。
前世の私は今の私ほどお金持ちの家ではなかったけれど、普通になんの苦労もなく楽しく毎日を生活していた女子高生だった。
でも、高校の卒業式の日、私は学校最寄りの駅のホームでいきなり後ろから突き飛ばされた。その後、通過してきた特急列車にぶっ飛ばされたのだ。
そして次に意識が目覚めると私はこの槻間家の長女として生を受けていたのだ。
年収が何億とある大らかな父さん、宝くじをほいほい当ててしまう今だに子供っぽい母さん、何かと過保護な6つ年上の兄さん。
そんな個性豊かな家族に囲まれて私はすくすくと成長を続けた。
そして、そんな12歳の私に最大の出来事が訪れる。
とんでもなく広い街にとんでもない人数のプレイヤーが押し込められたこの場所で、たった今、最悪の事態が起きた。
この世界はゲームの中の世界。【ソードアート・オンライン】と呼ばれるVRMMOだ。
前世からかなりのゲーム好きな私は、このゲームのことを知ったとき必ず買ってやると意気込んだものだ。
ゲームの中に入り、プレイヤーならびにそのゲームの1キャラクターとしてプレイすることは前世で私が夢見たものだったから。
そんな私を含めてここにいる全てのプレイヤーがきっとこの仮想世界に1つの夢を見て、ここにやってきただろうというのに。
たった今、このゲームは素晴らしいゲームから最悪のゲームに生まれ変わった。
いま目の前で尚も言葉を紡ぎ続ける茅場晶彦を私はスッと睨み付けた。
「では最後に、諸君らのアイテムストレージに私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ。」
言われるがままに右手の指を2本揃えて真下に引き、アイテム欄を開いた。他のプレイヤーも同じように開いてゆく。
中にはアイテムが2つあった。鏡となにかの卵だった。
私はどちらのアイテムを出せばいいのか迷い周りを見渡してみると、みんな鏡を出していた。
あえて卵はスルーなのかと思いつつみんなと同じように鏡を取り出す。肩までの銀髪、そして碧眼。目の前にはリアルと全く同じに作り上げた自分のアバター『リオ』が映る。
嘘だと思うかもしれないが、これが本当にリアルの姿だ。母さんが外国の人なのだ。
すると急に自分の体が白く光り始める。すぐに光が収まりもう一度鏡に目を向けてもそこにはさっきと同じ自分の姿があるだけだ。が・・・。
「な、なんだぁ!?お、俺が映ってる!!」
「お、おい!お前男だったのかよ!?」
「そういうお前こそ、イケメンじゃなくてデブじゃねぇか!!」
あちこちから驚きの声が飛び上がっていた。
最初私は何が起こったのかさっぱり分からなかったが、よく見ると周りの人のアバターの容姿が変わっていることに気がついた。
おそらくはみんな現実の自分の姿に変わってしまったのだろう。それなら私のアバターが変わらなかったのもうなずける。
「さて、私はこの中でランダムに100人にだけある物を渡した。もう気づいたかな?」
こんな大勢、1万人近くはいる中でたったの100人にだけ抽選で渡した物。
それはまぎれもなく私のアイテム欄の中に鏡と一緒に入っていた卵のことだろう。
「それはポケットモンスター、略してポケモンと呼ばれるモンスターの卵だ。これからの攻略の中で時には敵として時には仲間として君たちと運命を共にしていくモンスター達だ。」
私は茅場晶彦の言葉に思いっきり目を見開いた。
【ポケットモンスター】
それはまぎれもなく、私が前世で一番やり込んでいた超人気のゲーム【ポケットモンスター】のことだった。
この世界に生まれて以来、初めて聞いたその懐かしい言葉の並びに思わず心が跳ね上がってしまう。
周りの人達は茅場晶彦の言った言葉に?を浮かべていた。きっとみんなこの【ポケットモンスター】のことを知らないのだろう。
当たり前だ。私だってこの世界では初めて耳にしたのだから。
「では改めて、ソードアート・オンラインならびにポケットモンスターの世界へようこそ。諸君らの健闘を祈る。」
そう言った後、目の前にたたずんでいた大きな人は消えた。
ある人はへなへなと崩れ落ち、ある人は怒りに声を荒げ、また遠くから女の人の甲高い悲鳴が聞こえてきた。
私は押し寄せる人の波をかきわけ、はじまりの街を飛び出した。
目を閉じればたくさんの人達の顔が思い浮かぶ。
父さん、母さん、兄さん、それに学校の同級生や先輩達。いま私はこの人達から完全に切り離された世界に閉じこめられた。
前からモンスターである小さな猪が突っ込んでくる。私は背中の鞘から銀色に輝く剣を引き抜くとソードスキルを発動させすれ違いざまに剣を一閃させ猪を引き裂いた。
あのチュートリアルが起こる寸前までフィールドに出てレベル上げをしていた私のレベルは7。その辺の猪なら苦労せずに倒せるほどになっていた。
「必ず・・・帰ってみせる・・・!」
ひたすらに目の前の道を駆け抜けながら私は小さく決意を呟いた。
両方の作品が好きなので書いてみました。
更新はまったりやっていきたいです。
登場人物
槻間璃緒(つきまりお)
前世は女子高生だった。今は中学1年生。
髪は母親ゆずりの銀髪、瞳は碧眼。髪の長さは肩につくくらい。
性格は冷静。大人な対応を取るが、年相応にはしゃぐこともよくある。
前世ではポケモンが大好きだった。