ソードアート・ポケットモンスター・オンライン 作:RYUNA
「あ、キリトさん。」
「ん、なんだ?」
ベアーとの戦闘が終わった後の帰り道。
さすがにヘトヘトになってしまったから夜のレベル上げはしないことにした。
キリトさんも今日はこのままねぐらに帰るということで、ポケモンもみんな出して夜の空を眺めつつゆったりと歩みを進めていた。
その途中で私はキリトさんを呼び止める。
「あの・・・さっきの戦闘で、武器壊れちゃいましたよね?」
「え、あ、あぁ。そうだったな。」
少しだけ目を泳がせながら答えるキリトさん。
その後すぐに「気にしなくていいよ。」と言ってくれたけど、冷や汗をかいているのが分かる。
たぶん、持っていた武器の中で一番良い武器を失ってしまったんではないだろうか。
だから私はキリトさんにあるモノを渡したかった。
「キリトさん!これ、受け取ってください!!」
私が差し出したのは赤の炎の模様が装飾された藍色の剣だった。
武器名『狂舞剣』
そう、あのクレイジーベアーからドロップした片手剣用の武器だ。
「これ、もしかしてさっきの・・・。」
「ドロップアイテムです。」
そう言うとキリトさんはそっと私の手から剣を受け取る。
少し私達から離れて1つ、2つ、剣を大きく振った。重々しい空気を切る音がはっきりと届いた。
振り回したその腕を静かに下ろした後、キリトさんはこちらを振り向いた。
「本当に、いいのか。」
「はい。」
「後悔、しないな?」
「借りは作りたくないんです。それとその剣には普段のお礼も込めてるんですから。」
「・・・そうか。」
少しだけキリトさんは笑った。でもその中には少々の困惑も混じっている。
もう一度彼は剣を振った。そして「良い重さだ。」と噛みしめるように呟く。
最後にキリトさんはピシッと剣を空に向けた。
その先を辿るとひときわ強く輝く星があった。
あの後街に帰った次の日の朝、私とキリトさんはすぐに情報屋のアルゴさんを呼び出した。
アルゴさんはいつも私がお世話になっている情報屋さんだ。と言っても情報屋ってすごく数が少ないから私は彼女以外の情報屋さんにあったことは無いんだけれど。
そしてどうしてキリトさんがここでも一緒なのかというと、私がアルゴさんにメッセージを飛ばせないからだ。
情報という商品で長い間つながりはあるけど、フレンド登録はしてなかっのだ。
私達は街の噴水の前で待ち合わせをした後、すぐ近くの無難なNPCレストランに入った。
私とキリトさんが並んで座り、向かいにはアルゴさんが座る。
並んだ私達を見てアルゴさんは珍しそうに言った。
「しっかし、キー坊とりぃたんが知り合いとは驚いたな。」
「まぁ、圏内じゃあまり顔合わせないからな。」
「そういえばいつも会うのフィールドですよね。」
改めて思い出してみれば、こうやってキリトさんと圏内で行動するのは初めてな気がする。
会うのはいつも狩りをしている時かばったりフィールドで会って「よう。」「こんにちわ。」みたいな感じだ。
まぁ、その話は置いておいて私達は本題に入ることにする。
私は昨日あった出来事をアルゴさんに話した。
安全圏に認定されていたエリアにボスクラスのモンスターが出現したことと、そのモンスターの情報を。
「なるほど。そこの情報を提供したヤツにはこっちから話しておく。」
「お願いします。でも、どうしてこんなことが・・・。」
「俺の推測だけど、たぶんそこはクレイジーベアーの縄張りだったんじゃないか?」
「縄張り・・・?」
キリトさんの意見を聞いて最初は?を浮かべていたがすぐにハッと気づいた。
モンスターが攻撃対象として見ているのはプレイヤーだけではない。
モンスター同士で火花を散らしあうこともある。私も何回かそういう所を見たことがあった。
もし、あそこがクレイジーベアーの縄張りだったとしたら他のモンスターだって迂闊には近づけないだろう。なにせボスクラスだし。
専門のプレイヤーさんが調べているときはたまたま出てこなかっただけなのだろうか。
それともあそこは元々クレイジーベアー専用のエリアで、運悪く私がリポップに出くわしてしまったのか。
「どちらにせよ、このせいで攻略の勢いは落ちそうだな。」
「ですね。」
アルゴさんが溜息混じりに吐いた言葉に私は頷いた。
やっと攻略も軌道に乗り始めて前線で戦う人達も最初に比べれば随分増えてきた。
そういうときに舞い込んできたこの問題はどう考えてもこれから悪い方向にしか向かっていかない。
でも、これをきっかけに更に安全圏の検証がもっと慎重にされるのなら、これに関しては少し良い方向に向かっただろう。
「じゃあ話はこれだけです。今日はわざわざ来てくれてありがとうございます。」
「別に構わないよ。それに君はウチで一番のお得意様だしね。」
「へぇ、そうなのか。」
アルゴさんの発言にキリトさんが目を丸くする。
対する私はアルゴさんの「お得意様」という言葉に素直に嬉しいと感じ、「へへ。」と少しだけ笑った。
時は過ぎて夕方頃。
あの後、宿屋でもう一度ぐっすり眠った後、さっそくフィールドに駆けだした。
昨日はあんなアクシデントがあったけどレベル上げをサボるわけにもいかない。
この世界で生き抜いて行くには、レベルを上げて自分自身を、ポケモン達を強くしていくのが一番良い方法なのだ。
「さてと、出てきてチョボマキ!ワニノコ!」
腰に付けた2つのモンスターボールを投げると仲間が出てきた。
ワニノコがチョボマキに手を挙げて挨拶をし、チョボマキもワニノコに頷いて返事をしている。
ニコニコと楽しそうな2匹を一瞥した後、私はチョボマキのステータスを確認した。
「チョボマキ、性格はおくびょう、レベルは10、技はまもる、めざめるパワー、メガドレイン、むしのていこう。ふーん、結構豊富なレパートリーだね。」
他にもさらっと能力値などを流し見て私はフムフムと頷く。
このチョボマキ、レベル10にしては良い技を持っていると思う。
特にメガドレインなんかちょっとポーションの節約にもなるんではないだろうか。
「じゃあ早速実戦といこうか。」
「チョキ!?」
「そんなに怖がることないよ。私もワニノコも傍についてるから大丈夫!」
「わにゃ!」
あからさまに怖がっているチョボマキに私とワニノコがそう声をかけてもチョボマキはまだ怖がっていた。
戦闘しなきゃ経験値は入らない。経験値が入らなきゃレベルは上がらない。
でもムリに前線に立たせるのもなんだか可哀想な気がする。
私はしばらくうーんと頭をひねって考えた。
「・・・そういえばゲームでは一度戦闘に顔を出せば経験値が貰えてたような・・・。」
前世でプレイしていたゲーム画面を脳内で再生する。
そうだ、ゲームでは攻撃なんてしなくても一度戦闘に出れば経験値のお裾分けを貰えたはずだ。
確か「がくしゅうそうち」なんて便利なアイテムもあったはずだけど、この世界に来てからはまだ一度も見かけてない。
ただその場に居るだけで経験値が入るかどうかは分からないがとにかくやってみるしかないだろう。
「じゃあチョボマキ、今はまだムリに戦わなくていいから私の側を離れないで。」
「チョキ。」
そう言って腕を差し伸べればチョボマキはちょこんと私の肩に乗っかった。
するとタイミング良くモンスターがすぐ傍にリポップする音が聞こえ、見ればこの辺りではまぁまぁ強い部類のウルフだった。
レベル差的に負けることはまずありえないと思うので、早速私は真正面から斬りかかっていった。
私がウルフに斬りかかる直前に肩のチョボマキが殻を閉じるのが視界の端で見えた。
「目を瞑っちゃダメ。ちゃんと前を見て。」
なるべく柔らかい声音でそう言ってやればチョボマキは少しだけ殻を開く。
とりあえずチョボマキには戦闘の状況に慣れて貰うのが先決である。
あっという間にウルフも倒してしまい、私は早速チョボマキのステータスを開いてみた。
「あ、良かった。少しだけどちゃんと経験値は入ってる。」
運の良いことに私の予想は当たっていたようだ。小さくガッツポーズをとる。
もちろんチョボマキが仲間になった分、それだけ個々に配分されていた経験値も少なくはなっていたけど悪い気分では無かった。
その後も休憩も取りつつ、夜明けが近づくまで私達はずっとレベル上げを続けた。
チョボマキのレベルも3ほど上がり、最後の方には【まもる】で攻撃を防いでくれたりとすごく善戦してくれていて、これからのチョボマキの活躍に私は期待を抱いた。
春休みに入って調子も戻りつつあります。
長い間更新できてませんでしたがお気に入りから外さなかった皆さんに感謝です。