ソードアート・ポケットモンスター・オンライン   作:RYUNA

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カツン!カツン!

 

薄暗い洞窟で響き渡るのは私が振っているピッケルの硬い音。

私がいま居るのはおつきみ山の洞窟内。装備の調整なんかに必要な鉱石類を採掘しにきていた。

大体出てくるのはただの鉱石や何の役に立つかも定かではない石ころだったりするけど、ピッケルを振るのは普通に楽しい。

そして私の側ではワニノコやチョボマキも素材集めの手伝いをしてくれていた。

 

「チョキ~。」

 

「ん?何か見つけた?」

 

「チョキー!」

 

突然チョボマキが私の装備の裾を引っ張ってきた。チョボマキが向ける視線の先には何かをまじまじと見つめるワニノコの後ろ姿。

いったい何を見つけたのだろうと思い、私はピッケルを振るのを一度中断してワニノコに近づいた。

そしてその何かを見て私は目を見張った。

 

「え・・・これって・・・もしかしなくても化石?」

 

「わにゃーわにゃー!」

 

ワニノコの足元に置いてあったのは私の両手の平よりも大きい石。

それはなんだか赤みを帯びて透けていて、他の石に比べて異常な存在感を放っていた。

私の中で出た結論は化石。それもポケモンの化石だ。そういえばポケモンにも化石ポケモンとかいたなぁ・・・。

というかまだここ14層なんだけどこんなに早い内から化石とかゲットできちゃうんだ。

 

「これ、ワニノコとチョボマキが見つけたの?」

 

「わにゃ!」 「チョキ!」

 

私の問いかけにワニノコとチョボマキはコクリと頷く。この2匹、とんでもなく強運なのかな。

とりあえず私はその化石を持ち上げる。すると化石はすぐにストレージに納入された。

 

【ひみつのコハクを入手しました】

 

「ひみつのコハクって・・・何のポケモンの化石だっけ?」

 

その7文字を見て私はウーンと考え込む。本当になんでしたっけ、この化石のポケモン。

私は前世でポケモンをだいぶやり込んだとは言ったけど、化石については復元したことがあまりないのだ。

ていうか化石って全部最後に「カセキ」って付いてたような気がするんだけど。

 

「・・・よく分かんないから今は保留でいいや。ワニノコ、チョボマキ、ありがとね。」

 

そうお礼を言うと2匹は嬉しそうに返事を返してまた素材の採取に戻ってくれた。

私も抱えていたピッケルを持ち直して採掘ポイントに戻る。

このまま完全に外が真っ暗になるまで採掘を続けた後、私はどうしても向かいたい場所があった。

そう、おつきみ山の夜と言えばもちろんあのイベント。

ワニノコ達と一緒に私が向かったのはこのおつきみ山の隠しエリアにある広場だった。

月曜日の夜にここの広場に行くとピッピの踊りが見られたはずなのだ。

 

「おぉ~!月が綺麗~!」

 

洞窟から抜けると空にはまんまると大きな満月が輝いていて思わず口から感嘆の言葉が漏れた。

このSAOの世界に来てから満月は何回も見ているけど、おつきみ山で見る満月はまた何か違って見える。

こう、いつもより近くに満月があるように感じられるのだ。本当にうっとりする。

 

「ピィ~ピッピ!」

 

「あ!ピッピだ!!」

 

広場の方からやってきたのは予想通りピッピだった。そのまま私の手を引いて広場の方まで連れて行ってくれる。どうやら歓迎してくれているみたい。

広場にはすでに6匹ほどのピッピが真ん中にある大きな石を囲んで配列していた。

 

「ピィ~ッピ!」

 

私の手を引いてくれたピッピが合図すると同時に、ピッピ達は踊り始めた。

踊りといってもただ石の周りをみんなでグルグル回っているだけなんだけど、それでも不思議と私の心も踊り出す。

ワニノコなんかもう踊りたくて仕方ないようでさっきからウズウズしている。

そんなワニノコの様子を見たピッピ達はワニノコに手招きをし出した。もちろんワニノコはすぐに踊りの輪に交ざっていく。

 

「チョボマキは踊らなくていいの?」

 

「チョキ~。」

 

そう聞くとチョボマキは遠慮しておくと言いたげに頷いた。

なんとなくチョボマキを抱っこして、そして15分ほど私はピッピ達の踊りを楽しんだ。

踊りが終わるとピッピ達は私達に手を振りながらどんどんおつきみ山の中へと帰って行く。

最後の一匹が私達の方へと近寄ってきた。そのピッピの手に握られていたのはきれいな石だった。

 

「くれるの?」

 

「ピィ!」

 

「ありがとう。」

 

そして今度こそ本当にピッピ達はみんな帰ってしまった。

私はピッピに渡されたその綺麗な石を満月の光にかざした。キラキラと光ってそれはもう宝石のようだ。

そのお土産【月の石】をストレージに入れ、私はおつきみ山を後にした。

 

 

おつきみ山を下った後、すぐふもとでレベル上げに励んだ後14層の街ハナダに戻った。

私が戻る頃にはもう朝日は登っていて街からどんどん攻略に向かうプレイヤーがフィールドに駆けだしている。

そんな人の流れを思いっきり逆らいながら歩いている私はなんだか色んな人に見られていた。フードを被っていても視線は気になる。

もっと早い内に切り上げて帰ってくるべきだったなぁと溜息を吐いた時だった。

 

「あれ、もしかしてリオ?」

 

「え・・・あ、クラインさん!」

 

不意に声を掛けられて顔を上げてみればいつかの武士みたいな人、クラインさんが風林火山のメンバーさんと一緒にいた。

たぶんこれから攻略に出かけるんだろう。しっかり装備も整えていて表情もやる気に満ちている。

 

「フード被ってたからもしかしてと思ったんだが、人違いじゃなくて良かったよ。」

 

「分からずに声かけたんですか・・・。」

 

「おう!」

 

そうやってニッコリ答えたクラインさんに呆れを通り越して笑いがこみ上げてきた。

他の風林火山のメンバーさんも口々に「ホントにもうリーダーは・・・。」なんて言って彼を軽くど突き回している。

でも実際それは仕方のないことと言えば仕方ない。SAOの顔を隠すためのフードは完全に相手の表情が伺えないような仕組みになっているからだ。

そして何よりこのフードの凄いところはどんなに強い風が吹いても取れないこと。さすがゲームの世界は一味も二味も違う。

 

「で、クラインさん達はこれから攻略ですか?」

 

「あぁ、これからボスの部屋の下見に行くんだ。」

 

「見つかったんですか?」

 

「あぁ、つい昨日のことらしいけどな。で、今夜7時からボスの攻略会議もあるみたいだぜ。リオは来るのか?」

 

「うーんと・・・たぶん・・・。」

 

「とか言いつつ今まで一度も来てないじゃねぇか。まぁまだリオは子供だしムリに行けとも言わないけど。」

 

「うぅ・・・。」

 

クラインさんが私の頭を優しくポンポンと叩いてくれる。対する私はクラインさんの言葉に胸が痛くなる。ごめんなさい本当は三十路なんですなんてもちろん言えなかった。

そう、私はこの14層までボス戦に参加したことはおろか攻略会議に顔を出したことも一度もない。

今までもクラインさんやキリトさんに何回か誘われたことはあったけど、どれも直前で逃げ出して結局今に至っている。

2人は優しいから私が逃げ出しても咎めたりはしないけれど、私は私で罪悪感がかなり溜まっていた。

だってボス戦に挑んでいる人のほとんどは私よりもレベルが低い人ばかりで、そんな人達が命を張って戦っているのに私がそれに協力しないのは普通に考えて筋が通ってない。

そろそろ私もここで一度大きく一歩前進するべきなのだろうか。

 

「リオが来てくれりゃ百人力なんだがなぁ。」

 

「それはいくらなんでも買いかぶりすぎでは・・・。」

 

「いやいや、そんなこたぁ無いぜ?今でも覚えてるさーリオとデュエルしたこと。」

 

「・・・。」

 

「リーダーあっという間にやられてましたもんね。」

 

噛みしめるように呟くクラインさんに他のメンバーがからかうようにそう言った。

私としてはあまり良い思い出でもないのでとりあえず押し黙る。あの時は本当にクラインさんに申し訳ないことをした。

どれくらい良い思い出ではないかというと、もう一生クラインさんとお喋りできなくなるんじゃないかって不安を抱えたくらいである。

でもそれでも私と仲良くしてくれてるクラインさんは本当にいい人だ。こんな人に巡り会えた私はきっと運が良いんだろう。

 

「じゃあ引き留めちまって悪かったな。よし、お前ら行くぞ!」

 

クラインさんの言葉に他のメンバーは気合満々に答えて彼らはフィールドに続くハナダの橋を渡っていった。

それを見届けて私は宿まで戻ろうと足を進めようとした所でメッセージが1つ飛んできた。

アルゴさんからだった。

 

「あれ・・・私なんかアルゴさんに情報頼んでたっけ・・・?」

 

記憶を掘り返しても思い当たる節はない。私は?を浮かべながらそのメッセージを開いた。

そこに書いてあったのはこの14層のボスの情報についてのようだった。

 

【14層のボスはポケモンらしい。もしもっと詳しい情報が知りたかったら何か新しい情報をよこせ。】

 

ここで大声を出さなかった私を誰か褒めて欲しい。私は急いで宿まで戻り、部屋に入ってもう一度どのメッセージを開いた。

今までのSAOの階層ボスはどれもこのゲームオリジナルのモンスターだったはず。

その情報の真偽は分からないけれど、私は是非知りたかった。それにアルゴさんは信用しても大丈夫な情報屋さんだ。

「月曜日の夜におつきみ山の隠しルートにある広場に行ったらピッピというポケモンから月の石がもらえた」という情報で教えてもらえるだろうか・・・。

不安になりつつもその返信メッセージを送信した。

緊張しながら返事を待っているとアルゴさんから返事が。

 

【ハナダの橋の前で待ってる】

 

どうやら条件は無事にクリアできた様子。

私は急いでハナダの橋の前まで走っていった。到着するとすでにそこにはアルゴさんが居た。早すぎです。

 

「アルゴさん・・・!」

 

「やぁ。本題に入る前にちょっとその月の石とやらいうアイテムを見せてくれないか。」

 

「え、あぁ、はい。かまいませんけど。」

 

私はストレージから月の石を取り出してアルゴさんに差し出した。

アルゴさんはそれを手にとってまじまじと見つめて、しばらくしたら「サンキュ。」と短く感謝を述べて返してくれた。

 

「結構重要そうなアイテムだ。良い情報がゲットできたよ。」

 

「それはどうもです。で、ボ、ボスの情報なんですケド・・・。」

 

「あぁ。とりあえず場所を変えようか。」

 

「じゃあ宿の私の部屋で。」

 

私の提案にアルゴさんは頷いてくれたので、私はアルゴさんと一緒に宿の方に戻った。

部屋に置いてあるイスにアルゴさんを座らせて私は向かいにあるベッドに腰をかける。

 

「ボスの部屋が昨日発見されたことは知ってるか?」

 

「はい、さっき知り合いの男の人に聞きました。」

 

「ん。で、その部屋を見つけたパーティは最後にボスの確認だけして帰ろうとしたらしいんだ。ボスは滞在してる部屋から出られないからな。

 そしてそのパーティが扉を開けて部屋に入った時だ。奥の方からいきなり強力な攻撃が飛んできた。もちろんそいつらは死にものぐるいで逃げたそうだよ。」

 

「こ、怖いですね・・・。」

 

「その時に1人だけ好奇心に負けてチラリとボス部屋を振り返った。その時に見たボスのカーソルが青色だったらしい。」

 

「青色・・・ですか。」

 

このSAOの世界ではポケモンもモンスターと一括りにされているが、他のモンスターとの区別がついていてそれがカーソルの色。

SAOオリジナルのモンスターは赤色、そしてポケモンが青色。つまりそのボスはカーソルが青色なのでポケモンということに。

 

「でも見間違いっていう可能性は・・・。」

 

「ボスの名前ならまだしもカーソル色を見間違えることはさすがにないだろう。赤と青だったら一目で見分けが付く。」

 

そう言われて私はやっと納得した。

そして今まではボスの攻略に参加しなかったけれど、今回のボス戦は参加しようかななんて思っていた。

ポケモンという存在に釣られているということは自分でも自覚している。本当に情けない。

 

「あ、最後に1つ。そのボスのシルエットは大きな鳥だったらしいぞ。」

 

「大きな鳥・・・。」

 

大鳥型のポケモンは結構たくさんいたはず。たったこれだけの情報ではどのポケモンか当てることは不可能だ。

どんなポケモンで一体どんな戦いになるんだろうと思考を巡らせている私にアルゴさんから「ちょっといいか。」と言われ下された一言。

 

「思ったよりたくさん喋っちまったから追加料金。」

 

「えぇー・・・。」

 

もちろんちゃんと払いました。

 

 





「何のカセキ?」って言っているリオにもどかしさを感じている人はすいません。
ポケモンで起こるちょっとしたイベントなんかは私が覚えていればどんどん入れていきたいなと思っています。
あとクラインとの良くない思い出は簡単に言うとリオがデュエルでクラインをボコボコにしてしまったからです。
クラインはその時にリオのことを大変気に入ったそうです。
リオもなんだかんだで面倒見の良いクラインのことを気に入っています。

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