ソードアート・ポケットモンスター・オンライン 作:RYUNA
アルゴさんに情報を頂いたその日の午後7時頃。
街の南側にある広場の方で第14層ボス攻略会議が行われようとしていた。
「おい、なんだあのちびっ子。」
「さぁ。見かけたことねぇや。」
「会議に参加するのか?大丈夫かな。」
私に向けられる数々の奇異の視線。そう、私はこの攻略会議に参加することを決めたのだ。でも予想していたとおりの結果になった。
まだ何だ何だ?くらいなら良いけれど「弱そう。」とか「冗談じゃねぇぜ。」そういうことを言われるとちょっと心が傷つく。
腰に付けているボールがカタカタと音を立てていた。きっとワニノコ達が心配してくれているんだろう。
でもやっぱりもう帰ろうかなと思ったときだった。
「リオじゃないか!」
「あ、キリトさん・・・。」
顔を上げた先には驚いた顔をしているキリトさんがいた。その隣には栗色の長い髪の女の人が居る。
とりあえず2人のすぐ傍まで近づいた。キリトさんの隣にいる女の人は不思議そうな視線をこちらに向けている。
「あなたの知り合い?」
「あ、あぁ。フレンドなんだ。」
「・・・!?。へー・・・。」
キリトさんのフレンドという言葉に心底驚いたような顔をした後、こちらをジーッと見つめてくる。
この人すごく美人だからあまり見つめられるとめちゃくちゃ恥ずかしい。
それでもあまりにも美人すぎるから私もついついその女の人をボーッと見つめてしまうのだけど。
決してにらみ合っている訳ではないけれど、不穏な空気を感じたらしいキリトさんが咳払いをした後に話を切り出した。
「紹介するよアスナ。彼女はリオだ。」
「よ、よろしくお願いします!」
「ふふ・・・アスナです。よろしくね。」
私は勢いよく頭を下げて挨拶をした。その時にブォン!と風を切るような音が聞こえて勢い余りすぎたと思った。
そして顔を上げればそのアスナさんは驚いたような顔をした後にちょっと笑いながら挨拶をしてくれた。
フードで隠れているけど私の顔はただ今恥ずかしさで真っ赤っかだ。見られなくて本当に良かった。
「あぁ!リオじゃねぇか!!」
「ファッ!?」
いきなり聞こえてきた大声に思いっきりビックリして変な声が出てしまった。
バクバクとうるさい心臓を落ち着かせながら振り返ると、そこにはクラインさんがいた。
装備をカシャカシャ言わせながらこちらに駆け寄ってくる。
しかしその視線が途中で私から私のすぐ傍にいるキリトさんに移り、そして呆然と呟いた。
「キリト・・・?」
「よ、よう。久しぶり・・・。」
「おメェ、リオと知り合いなのか?」
「知り合いというか、フレンドだよ。」
「ふ、フフフフレンドオオオォォ!?」
クラインさんの大声と大げさなリアクションのせいで周りの人達はいっせいにこちらを振り返る。
私達は急いで「なんでもありません。」という風にジェスチャーをし、それを見た周りの人は?を浮かべながらも視線を外してくれた。
それにしてもアスナさんの反応といいクラインさんの反応といい、キリトさんはいったい周りからどんな風に思われているんだろう。
私がジーッとキリトさんを呆れ半分で見つめているとクラインさんが急に私の腕を引っ張ってちょっと離れた所に連れて行った。
あまりにもいきなりだったから私は少し反応が遅れて転けそうになったけど、クラインさんはしっかり支えてくれた。
そしてひそひそ声で聞かれた。
「リオ、お前キリトといつフレンド登録したんだよ。」
「いつって・・・第2層の時ですけど・・・。」
「2層・・・!そっか・・・キリトのヤツ、独りじゃなかったんだな・・・。」
「クラインさん・・・。」
そうやって何かを噛みしめるように呟くクラインさんを見てすぐに分かった。この人はキリトさんのこと大事に思ってるんだろうなって。
この2人がどういった関係かなんて分からないけれど、クラインさんのまるで弟を思う兄のような表情を見てしまえば自然とこちらの顔も綻んでしまう。
ただ「独りじゃない。」っていうクラインさんの言葉。それを聞いてあの時キリトさんに話しかけて良かったと心の底から思った。
「リオ、キリトのことこれからもよろしくな。」
「任せてください。」
クラインさんにそう言われた私は笑顔で答えた。
と、見てみれば待ちかねたらしいキリトさんとアスナさんがこちらに向かってきている。
私達も話を切り上げて2人の所へ向かった。
「なんの話をしていたんだ?」
「いや、オメェには関係ない話だ。な、リオ?」
「そうですね。」
「な、なんなんだよ・・・。」
クラインさんと「ねー!」とでもいう風に顔を見合わせれば、キリトさんはちょっとだけ眉間にしわを寄せた。
それはなんだかまるで仲間はずれにされてショックを受けている子供のような表情で、それをアスナさんも感じ取ったのかちょっとだけ笑っている。
この3人と話していたおかげかさっきまで痛んでいた心が嘘のように痛くなかった。
カタカタと揺れる腰のボールもさっきとは違って「良かったね。」っていう風に私にメッセージを送っている。
と、広場全体に誰かの手拍子が鳴り響いた。パチパチパチとテンポ良く刻まれるそれは攻略会議開始の合図。
「それじゃあ、攻略会議を始めます。」
スラッとした黒髪の男の人がみんなの前に立って話し始めた。今回の14層ボス攻略でみんなの手綱を引くのはこの男の人のようだ。
私はその人を見て、ふとディアベルさんを思い出した。その男の人とディアベルさんは全く似てないけど、ディアベルさんもこんな風に攻略会議で話をしていたんだろうか。
まず最初に話されたのは14層のボスがどうやらポケモンらしいということ。
それに対するみんなの反応は様々だったけど大体の人が今回のボスを倒せるかどうか不安に思っているみたいだった。
私は前世での事情ゆえにそんなに恐怖心は感じないけど、私以外の人はそうでもないだろう。いまポケモンを持っている人なら尚更だ。
「今回のボス戦はただボスを倒すんじゃなくて、ポケモンならばそいつを仲間にしてこれからの攻略に役立てたいと俺は思っているがみんなはどうだ?」
この一言にはみんな息を呑み、かくいう私も「おぉ!」と少しビックリしてしまった。
そうだ、ポケモンならボールさえあれば仲間にすることが可能だしもし仲間にできたならそれほど心強い仲間も早々にはいないだろう。
その男の人の意見にはみんな賛成の意思を示したようでうんうんと深く頷いている。私も反対はしない。
「じゃあ今回はボスをゲットすることを最終目的とする。誰がゲットできるかは分からないが、誰がゲットしたとしても文句は言わないこと。ゲットする前にみんなの体力や気力が持たないと俺が判断した場合はゲットは諦めてボスを倒すことに集中すること。決行は明日の午前10時。以上だ。」
男の人のその最後の一言で攻略会議はお開きとなった。プレイヤー達はみんな口々に明日への意気込みなどを話しながら広場を出て行く。
私はこの後、またいつものようにレベル上げと素材集めに励む予定だったので、もうキリトさん達に挨拶をしてハナダの橋まで向かおうとした時。
急に誰かから声を掛けられた。
「ちょっとええか?」
どこかで聞いたことあるような関西弁。
振り向けばいつだったかキリトさんへ憎々しげに罵倒を吐いていたキバオウという男の人が睨み付けるようにこちらを見ている。。
キバオウさんが声を掛けたのはどうやら私のようだったので、私は体をキバオウさんの方に向けて彼を見上げた。
「何か?」
「お前さん攻略会議に参加するんお初やったやろ?今までの会議で見たことなかったからなぁ。」
「は、はぁ。」
「・・・ホンマに大丈夫なんか?えらいちっこいし、ここに足手まといはいらんのやで。」
「・・・。」
その「足手まとい」という単語に私は眉間に思いっきりしわを寄せた。
たとえ中身が三十路だろうと、たとえレベルがどれほど高くても所詮私の見た目はただの12歳の女の子なわけで。
みんなより頭1つ分くらい背は低いし、どっちかというと痩せ形のほっそりした体はどう見ても強さとイコールにはならない。
「ほれにずっとフードで顔隠しおって・・・顔も出せんようなヤツにボスの攻略できるやなんてワイは思わんな。」
「・・・。」
「ちょっと・・・いくら何でも言い過ぎなんじゃないか?」
私がずっと黙っていると横からキリトさんが私とキバオウさんの間に入ってきた。
視界がキリトさんの真っ黒い服で埋め尽くされて、後ろではクラインさんが私の肩に手を置いてくれて、アスナさんが右手をキュッと繋いでくれてた。
だけどキバオウさんの言うことは一理あるかもしれない。人間信用が第一。なのに顔を、表情すら見せないのに信用しろなんて普通に考えて筋が通ってない。
このデスゲームの中でなら特に。
「この子は恐怖心を押さえ込んで今日ここに来てくれたんだぞ。攻略に協力しに来てくれたことに感謝すべきじゃないのか?」
「せやから言うたやろ。足手まといはいらんのや。感謝なんかするわけない。」
「誰がいつこの子を足手まといって決めた?」
「ほの餓鬼を見て分からんかいな。ひょろっこいしどう見ても強いとは思えん。ほれに相手に表情見せんようなヤツは信用でけへんな。」
「お前・・・!」
「ちょっといいか?」
キリトさんが今にもキバオウさんにつかみかかろうとした時、外から声が入ってきた。
みんながいっせいに振り返った先にいたのは、今回のボス攻略におけるリーダーであるさっきの男の人だった。
その人はキリトさんとキバオウさんの間に入って2人をトンと押して引き離す。
「話はしばらく聞かせてもらった。キバオウ、君は大人げないな。」
「なっ・・・!せやけどシュウはん!」
「シュウ」と呼ばれたその人はキバオウさんの声を無視してスッと私を見据えた。だけど視界の半分はキリトさんの背中で私にはシュウさんの表情はあまり伺えない。
シュウさんの視線がキリトさんに移る。しばらくしてからキリトさんはゆっくりと私の前を退いてアスナさんの横に並んだ。
私の目の前までシュウさんは歩み寄ってくる。彼はとても背が高いから私は首を精一杯伸ばして彼を見上げた。首が痛い。
それを察してくれたのかシュウさんはしゃがみこんで私と目線を合わせてくれた。直感的にこの人はいい人だと思った。
「この攻略会議に参加してくれて感謝するよ。名前は?」
「リオです。」
「リオちゃんか。俺はこの攻略に参加する仲間の顔をずっと覚えていたい。だからもし君がよければ顔を見せて欲しいんだが・・・。」
「・・・。」
決して軽い気持ちでないことは私にも分かった。この人は攻略のリーダーで、それに伴う責任もある。
なにより自分の仲間の顔を覚えておきたいというのはごく自然な気持ちだ。だから私は素直にそのフードを取った。
こやって誰かの前でフードを取るのは3回目。1回目はキリトさん、2回目はクラインさん達風林火山の前だったかな。
キリトさんとクラインさん以外のみんなが少しだけ息を呑む声が聞こえる。やっぱりこの容姿は目を引いてしまうのか。
「明日はよろしく。」
「はい。」
私の目を見て少し笑った後、銀髪のこの頭をさらりと一撫でしてシュウさんは広場を出て行った。
それに続いてキバオウさんも驚きの表情のまま、広場を後にする。
久しぶりに脱いだフードによって現された髪を風がなびかせる。その風はなんだか生ぬるくて私は眉間にまたしわを寄せた。
答え合わせはまだです!次のお話で・・・出来るでしょうか・・・。
書いてから今回ポケモン成分がほとんどないことに気づきました。すいません。
そして今回のお話の後味悪っ!!キバオウさん好きな人がいたらごめんなさい。
リオとSAOの登場人物との交流も大事にしていきたいので、これからもどんどん絡ませていきたいと思います。
それでお話が中々進まなかったら元も子もありませんけどね(白目)
春休みが日曜で終わりなので春休み更新はこれで最後です。
次からはまた不定期がちになってしまうと思いますがよろしくお願いします。
あと、いきなり言うのはちょっとマズイかなと思うのでここでちょっとした予告です。
第20層あたりでオリジナルキャラをもう1人投下します。
この作品のオリキャラは主人公のリオといずれ投下するこの1人の2人だけです。
3人目はいません。以上です。