ソードアート・ポケットモンスター・オンライン 作:RYUNA
第14層のボス捕獲作戦は見事成功を収めた。
中にはボスだけでなく取り巻きであったコイルをちゃっかりゲットしていた人もいた。
私はフロアの真ん中でエアームドが収められているボールをジッと見ているアスナさんに駆け寄る。
私の後を追ってキリトさんとクラインさんもやってきた。
「アスナさん!おめでとうございます!!」
「ビックリしたよ。まさかイーブイにボールを持たせてたなんてな。」
「相手は空を飛んでたし、その上ボールは中々当たらないでしょ?だから直接ボールを当てるしかないと思って…。この子に持たせたのよ。」
説明しているとき肩へよじ登ってきたイーブイにアスナさんは頬を寄せた。
小さな声で「頑張ったね。」と呟き、褒められた彼女のイーブイはとても嬉しそうに一声小さく鳴いた。
その時、この戦いで指揮をとっていたシュウさんがこちらへと向かってきた。
シュウさんはアスナさんに笑顔で「よくやってくれた。ありがとう。」と手を差し伸べる。
アスナさんも「ありがとうございます。」とその手をしっかりと握り返した。
私はキリトさんとクラインさんと目を合わせて、そして笑う。
周りではアスナさんを称えるようにたくさんの拍手がわき起こった。
ただ1つ、嫉妬と憎悪にまみれた瞳のあの人だけはなにもしなかった。
そんな激戦を終えて私達は第15層へとその足を進めた。
その日、私はいつものように夜中のレベル上げという名の修行をしていた。
ソードスキルで動きの補正は付いていても、どうやって技を繰り出すかは本人次第である。
どんな状況でも即座に対応できるように私はある特訓をしていた。
それは。
「さぁ、どこからでもかかってきて!!」
「ホーホー!!」
月の明かりに照らされて浮かぶその小さなシルエットはふくろうポケモンのホーホー。
そう、その特訓というのは前後左右様々な方向から飛びかかってくる野生のホーホー達の攻撃を受け流すというもの。
もちろん私が一方的にけしかけたのではなく、ちゃんとホーホー達の了承だって得ている。
15層にやってきて早くも1週間。ここ数日で自分でも格段に反射神経?が良くなってきている気がする。
いやはや野生のポケモンと仲良くなると結構いいことあるなぁ。
「よしっ!じゃあこの特訓はこれで終了!」
「ホー!」
「今日も付き合ってくれてありがとう。また明日ね。」
そうお礼を言うとホーホー達は散り散りに飛び去っていった。
私は月明かりに照らされどんどん遠ざかっていく影達をいつまでも見つめた。
「ホーホーの足は~左右~どーっちー…。」
「わにゃ?」「チョキ?」
足元で2匹が首をかしげる。なんでもないとだけ答えて次の狩場へと足を進めた。
〔side アスナ〕
第14層のボス戦で私は新しいポケモンを手に入れた。
攻略会議で今回の作戦が「ボスをゲットして今後の攻略に役立てる」というのは早い段階で決まっていた。
あの時はまさか自分が彼をゲットすることになるなんて思ってもみなかった。
そしてここまで苦労することになることも思ってもみなかった。
「ェゥー…。」
「はぁ…どうしよう…。」
思わず口から漏れたのは溜息と少しの弱音。
それを聞いていたイーブイが心配するように私の肩まで登ってその柔らかな毛を頬に擦りつけてくる。
私はそこに顔を押しつける。本当に気持ちよくて何よりひどく安心できる。
その時目の前からまた小さなうなり声とも取れる声が聞こえてきた。
視線を戻してみれば感情が掴めない…何を思っているのかよくわからない表情をしたエアームドがそこにいた。
そう、私の目の前で少し姿勢を低くして唸っているこの大きな鳥が第14層でボスの座に君臨していたポケモン。
捕まえたまでは良かった。これで戦闘の際にまた負担が減るだろうと思ったから。
だけどいざボールから出して対峙してみれば、向こうは警戒しているのだろうか、彼との距離が中々掴めない。
警戒されているとはいっても攻撃をしかけられることはこの1週間全くなかった。
それでもエアームドの周辺に漂うピリッとした空気に私は中々近寄ることができないでいた。
今日もまたこのまま終わるのか、そう思ったとき。
「はれ、アスナさん?」
ふと記憶によく残っている声が私の名前を呼んだ。
振り返って目に焼き付くのはまるで精錬されたかのように艶やかな銀。そしてなにより宝石のような碧。
最近になって自分の髪の色や目の色を変えるプレイヤーはそこそこ出てきだした。
けれど彼女の色はそんな色彩設定をいじって再現できるような色ではない。それは私が最初に思ったことだった。
肩にパートナーであるワニノコを連れた少女、リオちゃんはこちらに向かって歩いてきている。
「レベル上げですか?」
「うん、今はちょっと。」
「ん?」
私がチラッとエアームドに視線を向けるとリオちゃんも同じ方向に目線を向けた。
その瞬間、エアームドが明らかなうなり声を上げる。
「あっ、こらっ!」
「いいですよ。気にしないでくださいアスナさん。」
彼女はニッコリと笑う。そして少し探るような目でエアームドを凝視しだした。
しばらくリオちゃんとエアームドのにらめっこのような見つめあいが続く。
するとクルッと彼女が私の方を振り向いた。そしていきなり私の腰に腕を回してギュッと抱き付いてきたのだ。
「り、リオちゃん!?」
「しっ。このままでいてください。できれば私に腕を回していただけるとありがたいのですが。」
リオちゃんの意図が全く分からないけど、私は言われたとおりに彼女の小さく細い体に腕を回した。
その時、エアームドがまた小さく唸りだした。でもさっきよりどこか弱弱しく感じる。
するとリオちゃんは私に回していた腕をパッとほどいてエアームドへと向き直った。
「素直じゃないね君は。アスナさんと仲良くしたいなら最初っから甘えればいいのに。」
「ッ!?エゥエアアアアアアア!!!!」
「へ?」
リオちゃんの放った言葉にエアームドは怒ったような、いや、恥ずかしそうな表情で叫び声をあげた。
ここまで感情を露わにした彼を見るのは初めてで私は彼から視線を離せなくなる。それに気付いた彼はプイッと顔を他所に向けてしまった。
その様子を見ていたリオちゃんはまた私に向き直って説明してくれた。
「つまり、エアームドはアスナさんへの接し方がわからなくて唸っていたというわけですね。私がアスナさんに抱き付いたときはそれが羨ましかったんでしょう。」
「じゃあ別に警戒されてたわけじゃなかったのね…。」
「アスナさんは警戒されていると思ってエアームドにあんまり近寄れなかった。エアームドはそんなアスナさんを見てどう接していけばいいか分からなくなったんでしょうね。」
すごい、と思った。あんな短時間でエアームドの気持ちを理解するなんて。
リオちゃんは色んな野生のポケモンと仲が良いという噂は聞いていた。相手の心を察するのが上手いんだろうか。
ポケモンは言葉を喋らない。犬や猫のように鳴き声や身振り手振りで気持ちを伝えてくる。
それをちゃんと察して理解するのが主人としての大切な努めだということ。今日それを痛いほど実感した。
「アスナさん、エアームドに触れてあげてください。」
リオちゃんは優しく私に微笑みかけてくれる。細められた碧色に溢れているのはたぶん愛おしさとかそういう感情なんだろう。
私は少しだけドキドキしながらエアームドに近づいた。彼はまっすぐ私を見つめていて今度は私が視線を逸らしてしまいそうだ。
それでも必死に自分を落ち着かせながらそっと彼へと手を伸ばす。彼は目を閉じて私の手を受け入れ擦り寄ってきた。
「ごめん、ごめんね。あなたの気持ちに気付いてあげられなくて。これからよろしくね。」
お互いの額と額をコツリと合わせて私たちはやっと心を通わせることができた。
肩に乗っていたイーブイもエアームドへ擦り寄る。エアームドの方もイーブイへと優しく擦り寄っていった。
こんな最悪のデスゲームの世界だけど、所詮彼らはただのゲームデータかもしれないけど、それでも彼らに出会えたことだけはほんの少し良かったと思った。
その時、いきなりエアームドが突然体制を低くして私を見上げた。私がよくわかってないことに気付いたのか彼は自分の顔をクイッと背中へ向ける。
「乗ってもいいの?」
そう聞けばエアームドはコクリと頷く。慎重に彼の首元に跨ってしっかりと掴んでおく。
エアームドの頭の上に乗っていたイーブイがぴょんと私の肩に乗り移ったのを合図にエアームドが大きく羽ばたいた。
どんどん高くなっていく視界に心が高鳴る。空から見下ろした景色は言葉できないくらい綺麗で美しかった。
それはもう本当にここがゲームの世界なのか分からなくなるくらい。
「すごい…。」
私から出てくる言葉といえばこれくらいしかなかった。
今回はアスナとエアームドのお話でした。
ポケモンと絡ませていったらキリトもアスナも序盤にしてはだいぶ性格が丸くなっているような気がしますが…もうそれでもいいかなと←
私がちんたらしている間に新しいポケモン発売されましたね。もちろん買いました。
でもこの小説ではBW2までのポケモンしか出さないことに決めました。そこのところご了承していただけるとありがたいです。小説情報も更新しておきます。
アスナのエアームド
性別:♂
性格:しんちょう
第14層のボスの座に君臨していたポケモン。普通のエアームドよりも大きい。
どうすればいいか分からなくなるとそんなつもりはないのに唸り声が出る。
アスナともっと仲良くなりたい…らしい。