ソードアート・ポケットモンスター・オンライン 作:RYUNA
第21層の攻略を終え、私たちSAOプレイヤーは第22層へとその足を進めた。
第22層は他の層よりも自然が豊かでゲームの世界なのに空気がおいしいと思ってしまうほど気持ちがいい。
「うわぁ~綺麗だねぇ。」
私がそう感想を呟くと同じ事を思っていたのか私を背中に乗せていたプテラがコクリと頷く。
フィールドに出てしばらくになるが、モンスターと遭遇することもなく本当に今までと打って変わって穏やかな層だ。
そんな22層の街はポケモンDPptにあったあのソノオタウン。街のあちこちに咲き誇る花は日々攻略で荒んでいるプレイヤーの心の癒しになるだろう。
私もさっそく街に下りてみる。飛んでいるプテラから飛び降りるといつも周りのプレイヤーにビックリされるがこれが結構スリルがあって楽しいので止められない。
上空を飛び回るプテラをボールに戻して私もソノオの街を回ることにした。
綺麗な花を見て癒されつつゆったりと足を進めているとなにかチラシを配っているNPCを発見。
そういうのが断れない私はもちろんチラシを受け取った。そこにはプレイヤーハウスを買いませんか?という宣伝のような文字の羅列が。
「プレイヤーハウスかぁ。確かに憧れるけどお金がなぁ…。」
プレイヤーハウスというか自分の住む場所を持たないプレイヤーはみんな毎日宿を取って暮らしている。私もそのひとりだ。
それでもゲームの中だけど自分の帰る場所があるというのは少し羨ましいし憧れる。
でもそれを実現するには莫大なお金が必要になる。あまりお金を使わないように常日頃心がけていた私はそこそこ蓄えがあるけど、それでもプレイヤーハウスを買えるかといえば少々怪しい。
「うーん。とりあえず見に行くのはタダだよね。」
この層はモンスターも出てこないっぽいし今日はレベル上げはお休みにして私はプレイヤーハウスを見て回ることにした。
さっきチラシを配っていたNPCに今買い取られていないプレイヤーハウスの場所を聞いてメモを残し、そこを一軒一軒回っていくことにする。
22層は他の層に比べると倍近く広く移動するだけでも大変だけど、プテラがいる私にはあまり関係ない。
彼の背中に乗って22層のフィールドを飛び回る。それでもいちいちプレイヤーハウス同士の距離が離れているからプテラに乗っているとはいえ大変だ。
私は全てのプレイヤーハウスを見て回った。どこも木造の素敵な一軒家でどれも家から見える景色は文句の付けようがないくらい最高だった。
それでもだ。やはりそれだけの好条件が揃っていれば当然お値段も高くつくわけでして…。
「んー…いちばん高いので1千万コルかぁ…。安いのも数百万コルするしやっぱ買うのは難しいかな…。」
憧れのプレイヤーハウスはやっぱり憧れのままになってしまった。
その時だ。ふいに森の茂みからカサカサという物音が聞こえてくる。何か居るのかと思い忍び足で見に行くとそこにはあるポケモンが居た。
「し、シェイミ!!」
「ミー!」
なんとそのポケモンは幻のポケモンであるシェイミだった。まさか!こんなところで幻のポケモンに出会えるとは!!
しゃがみこんでおいでおいでと手招きをすれば特に警戒することもなくシェイミは私のすぐ近くまでトコトコと歩いてきてくれる。
ストレージからモモンの実を取り出して差し出せばおいしそうに食べてくれた。
「ミー!ミー!」
「お礼なんていいよ~。私もあなたに出会えて嬉しかったから。」
実際これは貴重な出来事だ。まさか伝説や幻のポケモンに会えるとはさすがの私も思ってなかったのだから。
せめて目にできる形で残したかったのでこっそり写真を撮ったあと、街に戻るためにプテラに乗ろうとしたら装備の裾をシェイミに咥えられた。
どうしたのかと振り返るとシェイミはついてこいと言わんばかりに私をチラチラ振り返りながらどこかへと進んでいく。
あの先は確かフィールドの一番端っこになるけどそこになにかあるのだろうか。気になった私はプテラをボールに戻してシェイミについていくことにした。
「ねぇ~シェイミ。いったいどこに向かってるの?」
シェイミについていきだして5分くらいが経っただろうか。未だにシェイミの歩みが止まることはない。
そもそもシェイミの足が小さく短いので時間がかかるのは仕方のないことなんだけど。
しかしなんど辺りを見回してもただ木がたくさん生えているだけのなんの変哲もない森のエリアだ。何か特別なオブジェクトらしきものもない。
ほどなくして目の前にさっきまでの緑豊かな景色とは真逆の真っ黒い壁のようなものが目の前に現れた。ここがフィールドの一番端っこのようだ。
だけどシェイミは足を止めることなくその黒い壁に近づく。シェイミが近づいてきたことに反応して、真っ黒い壁に侵入不可を知らせるメッセージが表示されるがそこで信じられない光景を目にした。
「なに…いまの。」
なんとシェイミがあの真っ黒い壁の中に入っていったのだ。まるで幽霊が壁をすり抜けるように。
私はゆっくりとその黒い壁に近づいた。さっきのシェイミの時と同じように侵入不可のメッセージが表示されるがそれを無視して左手をその壁へと伸ばす。
そして私の左手は壁の中に埋まるようにめり込んだ。なんの感触も感じない。
未だに目の前には侵入不可のメッセージが表示されているけど、確かに私の左手はそのエリアに侵入を果たしている。
これはどういうことなのかと首をひねっている時だった。
「お前!なにやってるんだ!!」
「ひゃあああ!!!!」
いきなり背後から男の人の怒声が飛んできて私は思わず突っ込んでいた左手を引き抜いた。
振り返るとその男の人が眉間に少し皺を寄せてこっちを凝視している。背は170cm以上あるだろうか。全身赤を基調とした装備で整え背中には真っ黒でどこか気品あふれる槍を掲げている。茶色い髪と同じ色の瞳は獣のごとく鋭い。
彼は私のすぐ傍まで歩いてきながらこう言った。
「さっき何をやっていた?」
「何って…あっちにポケモンが歩いて行っちゃったので…。」
「ポケモン?この中にか?」
男の人は疑うような目で侵入不可と表示されている黒い壁を見る。
というか彼はいったい何者だ。いつから私のことを見ていたんだろうか。
「あの…あなたは?」
「すまない自己紹介が遅れたな。俺はヒビキ。」
「私はリオです。あの…いつから私のことを?」
「さっきプレイヤーハウスを見ていただろう。俺もプレイヤーハウスを買おうと思って色々見て回っていたから参考までにお前に聞こうとしたら…お前が何もないはずの場所に向かって歩き出すから気になってついてきたんだ。さっきポケモンって言っていたが、追いかけていたのか?」
「はい…野生の子なんですけど、モモンの実をあげたらついて来いって言われてるような気がして追いかけてました。」
一連の事情をヒビキさんに説明する。どうやらヒビキさんからは私の前を歩いていたシェイミの姿が見えなかったらしく、だからこそ不審に思ったんだろう。
そのポケモンがこの壁をすり抜けていったということを伝えるとヒビキさんは右手をそこに近づけていく。やっぱり右手は壁の中にめりこんだ。
「これは…バグかなにかか?あまり近づかない方がいいかもしれない。」
「そうですか…それじゃあさっきのプレイヤーハウスまで一緒に…。」
その時だ。黒い壁の奥から「ミーミー!」とシェイミの鳴き声が聞こえてきた。まるで誰かに呼びかけているかのような声。
私とヒビキさんはお互いに目を丸くして顔を見合わせた。そしてまた黒い壁に視線を戻す。
すると今度はすぐ足元から声が聞こえてきた。
「ミー!ミー!」
「おい、コイツ…。」
「し、シェイミ…!」
なんとシェイミが黒い壁から半分だけ顔を出して私たちを見上げていた。非常に言葉にしづらい光景に私もヒビキさんも固まってしまう。
シェイミは私たちの顔をジッと見つめた後、さっさとついてこいよという風に一声鳴いてまた黒い壁の中に埋もれていった。
「なんか…ついてこいって言われてますよねやっぱり。」
「あ、あぁ。…お前は行ってみたいのか?」
「そりゃまぁ。この先がどうなってるのか気になりますし…。」
「…分かった。だがお前をひとりで行かせるわけにはいかないから俺も行く。」
「あ、ありがとうございます…?」
勝手にしろとでも言われるのかと思った私は想定外の優しい言葉に思わず語尾が疑問形になってしまった。
なぜなら今までの会話からヒビキさんはなんというか表情があまり動かない人で声もあんまり抑揚がない。本人にそのつもりはないんだろうけどその鋭い目つきも相まって見つめられるとまるで睨まれているような感じになる。
それでも私がビビッてないのは兄さんにどことなく似ているからだ。私の6つ年上の兄さんも目つきが鋭くて表情があまり動かない。そのくせ私に対して過保護ともいえるような態度を取るのでその辺のギャップがおもしろいのだが…。
「なにをしている。早くいくぞ。」
「あ、はい。」
兄さんとの思い出に浸っていると待ちかねたらしいヒビキさんが右手を差し出してきた。もしかしてと思いつつそっと左手を伸ばすと大きな角ばった手にしっかりと左手を握られる。
完全に子ども扱いされているなぁと思いつつも体温を感じないその手の感触に心地よさを感じた。
せーのとタイミングを合わせて私たちは壁の中に突っ込んだ。
おいなんだこのヒビキって奴は!と思いの皆様は次の話の後書きにて!
とりあえず(不必要かもしれませんが)この人を紹介しておきます。
槻間疾風(つきまはやて)
槻間家の長男で璃緒の兄。現在18歳。
髪の色は父親ゆずりの黒髪だが、瞳の色は璃緒と同じ碧色をしている。
表情があまり動かないため冷たい印象を抱かれがち。
実際家族と気を許している人物以外には好意的に接しようともしない。