ソードアート・ポケットモンスター・オンライン 作:RYUNA
ひょんなことから偶然出会ったヒビキとバグ?か何かで花の楽園というエリアにたどり着き、まぁ色々あって割り勘でプレイヤーハウスを購入し同居することになった私。
早速購入した新居にヒビキと入ってみると家の中はすっからかんだった。
「予想はしてたがここまで何もないといっそ清々するな。」
「あ、あははは。」
確かにヒビキの言う通りかもしれない。
私たちは一緒に家の中を見て回ることにした。1階はリビングにキッチン、お風呂にちょっとした物置部屋。2階はとりあえず個室が4部屋。さらになんと地下まであるようす。これだけの広さでこれだけの部屋数。割り勘したとはいえいい買い物をしたと思う。
とりあえず2人で話し合った結果残ったお金を使って家具などを揃い集めようということになった。ちなみに一部の家具ならヒビキが自慢の製造系スキルで作ってくれるらしい。
一通り必要な家具をメモに残しているとヒビキが誰かにメッセージを書いていた。気になって横からちょっと覗き込むと右手で頭をぐわっと掴まれる。
「なにを覗いている。」
「いや、何しているのかなぁと。」
「今まで世話になっていた所に新しく家を買ったから荷物を引き取りに行くってメッセージを書いていただけだ。」
「どこかに住んでたの?」
「第10層にある武器屋で鍛冶屋のおっさんと武器を作って商売していた。」
「そうなんだ。でもいきなり出て行って大丈夫?」
「元々家を買ったら出ていくって話だったからな。」
ヒビキの指がウィンドウに表示されている【送信】に触れ、メッセージがそのおっさんと呼ばれた人の所に飛んでいく。
そのあと5分もたたないうちにその人からメッセージが帰って来たようで荷物を取りに行くなら今来てくれた方がいいとのこと。
だけど22層から10層まで荷物を取りに行くのって絶対に大変だと思う。しかもここは22層フィールドの一番奥の端っこのそのまた奥にあるのだから。
「ヒビキひとりで行くの?」
「まぁ、俺の事情だからな。」
「私空を飛べるポケモン持ってるよ。だから一緒に行って手伝ってもいいかな?」
「リオが迷惑でないなら頼んでもいいか?」
「迷惑だなんて、これから一緒に暮らす仲なんだからお互い助け合っていこうよ。」
「そうだな。」
またヒビキが薄く笑ってくれた。ほんの数時間しか経ってないけど最初に会った時より随分と私の中のヒビキのイメージが変わっているような気がする。
まぁ初めて会った時からずっと私のことを心配して気遣ってくれてたから見た目や少し鋭い雰囲気に反して優しい人なのは間違いないだろう。
彼とうまくやっていけるかちょっと心配だったが、たぶんきっとこれなら大丈夫だ。
「あ、そうだ。お互いのポケモンの顔合わせしない?仲良くなってほしいし。」
「あぁ。構わないぞ。」
私は腰からモンスターボールを3つ取り出して放り投げる。室内だからプテラはちょっと窮屈そうだけど天井にこの子のあたまがぶつかっていないという辺りこの家の大きさが分かっていただけるだろうか。
対するヒビキさんはボールを2つ取り出した。そこから出てきたのはカブトムシのような見た目をしているカブルモともう1匹はとても珍しいポケモンだった。
なんとヒビキのポケモンのうちもう1匹はミカルゲ。ボールから出てくるなりゲラゲラと笑いながら家の中を飛び回り始めた。なんというかまるでなにか薬でもキメてしまっているような感じのため思わずミカルゲを凝視してしまう。
「随分と変わった子だね。」
「まったくだ。アイツの根元に石があるだろう。どこかは忘れてしまったがあれを見つけて拾い上げた瞬間にあの本体が現れてな。それから数日ずっとついてこられたからゲットしたんだ。」
「じゃあさっき言ってた戦闘を任せきりにしてるっていうポケモンは…。」
「ほとんどコイツだ。好戦的なのか近くにモンスターが居れば勝手に攻撃しに行くんだ。迷惑することもあるがそのおかげで俺は何もしなくても経験値が貰えるんだけどな。」
やれやれと首をすくめながらヒビキは言うけどそれを聞いたミカルゲはむしろ嬉しそうに彼の周りを飛び回っている。
だけどなんだかんだ言いながらヒビキもミカルゲが嫌いなわけではないだろう。でなきゃここまでずっと一緒に来るわけがない。
私たちがそんな話をしている間に他のポケモンたちも自己紹介をし終わり仲良くなったみたいなのでさっそくヒビキの荷物を取りに行くことに。
プテラだけを引き連れて家の外に出るとなぜかカイリューが傍に寄ってきてヒビキに背中を向けた。
「もしかしてお前も手伝ってくれるのか?」
「バゥ。」
「じゃあ頼むぞ。」
ヒビキの問いにカイリューは返事と共にコクリと頷く。図鑑でもカイリューは優しいポケモンであると書いてあったような気がするが文字通り優しい子だ。
私はプテラに、ヒビキはカイリューに乗って花の楽園を後にし、22層のフィールド上空を駆け抜けた。
ソノオタウンの上空まで到着するとたくさんの人が私たちを見上げていた。恐らくはカイリューのことが珍しいんだろう。私もこの世界で見たカイリューはこの子で初だ。
「ゲートが見えてきた。」
「めんどくさい、このまま突っ込むぞ。」
「え、それって大丈夫なの?」
「ちゃんとどこに転移するか頭に思い描いていれば大丈夫だろう。いくぞ。」
運よくゲートの周辺に人は居なかったし、どうせ10層についたらまた空を飛んで移動するつもりだったので私はヒビキの言う通りにすることにした。
それでも万が一のことがあってはならないためあらかじめ2匹にはスピードを極力落としてもらってゆるーい速度で私たちはゲートを潜った。
さっきの花が咲き乱れるソノオとは一転して特に何かがあるわけでもない普通の街並みである10層が視界いっぱいに広がる。
私たちがゲートを潜り出てきたとたんに周りにいるプレイヤーの視線が先ほどのソノオタウンの時よりもたくさん向けられた。
「大注目だね。」
「構ってる暇はない。」
それだけ言い残してヒビキとカイリューは飛んで行ってしまったので私とプテラも後を追いかけた。
3分もしないうちに目的の武器屋さんに到着。店の扉にはcloseの札がひっかけられていていたがヒビキは意に介することもなくその扉を開け放った。
「おっさん。来たぞ。」
「ようヒビキ。えらく早かったな。」
「ポケモンに乗って来たからな。あと、手伝いもひとり。」
「どうも、こんにちわ。」
ヒビキに促されて私も店の中に入る。いたるところに武器が置いてある店はどことなく威厳のある雰囲気を漂わせていて少しだけ肩に力が入る。
そして私たちの正面に立っているやたらとガタイの良い筋肉質な男の人がヒビキの言っていた「おっちゃん」のようだ。
少し長めの黒い髪に同じ色の顎髭はより一層渋さとダンディさを強めている。そして何よりその目の上のサングラス。すごく良いと思います…!
「君がヒビキの言ってたお手伝いさんか。」
「はい、初めましてリオといいます。」
「俺はエドウィン。まぁ気軽にエドとでも呼んでくれや。ところでリオちゃんはヒビキのお友達?」
「ええーっと、まぁ…そんなところだと思います。」
「なんだそりゃ。」
そう言われても今日会ったばかりなんですけどこれから一緒に暮らすことに~なんてとてもではないが言えない。
しかもこれを言って色々と問題にされるのはたぶん年上のヒビキの方だろうし。とりえず曖昧にぼかして笑っておいた。
何がどれだけ必要なのかというのは私には分からないのでヒビキやエドさんに言われたものをひたすらに運んでいく。
現実ならすぐに音を上げてダウンしていたであろうこの作業もこの世界では筋力パラメーターなるもののおかげで重いと顔を顰めることも疲れを感じることもなくすいすいと進んでいく。
ストレージに入れられるものはすべて入れ、少々残った手荷物を持って私たちはエドさんの武器屋を後にすることにした。
「お前の作る武器を売れないのは困るからな。ちゃんと届けてくれよ?」
「分かってる。今まで世話になった。」
「おう。そうだ、無事に独り立ちするお前にこれをやろう。」
「なんでサングラスなんだ。まぁ、もらっとく。」
なんともあっさりした、でもすっきりスマートな別れの挨拶をする2人。サングラスの件は謎だけどまぁいいだろう。
エドさんに見送られながら2人で武器屋を後にして、そこでちょっと問題が発生。プテラとカイリューが見当たらない。
「ありゃ…あの子たちどこいったのかな。」
「はぁ…。」
隣でヒビキがため息を吐く。首を動かして空を見上げても2匹らしきものは視界のどこにも映らない。
待ちくたびれてどこかに遊びに行ってしまったんだろうか。だとしたらちょっと申し訳ないことをしたなぁと思う。
とりあえずこんな所で立ち尽くしているのもどうかということでゲートのある街の広場までヒビキと歩いて行くことにした。
歩いていると若干私がヒビキの後ろになってしまうのは歩幅の違いのせい。でもヒビキがたまにチラチラこっちを気にして速度を落としてくれていることに私は気付いていた。
いつもより多めに足を動かしているとき、私はヒビキが背負っているあるものに目がとまった。
「ねぇ、ヒビキの背負ってるそれってバイオリン?」
「よくわかったな。」
「やっぱり~。私の家にあったバイオリンのケースに似てるからもしかしてと思ったんだ。」
「お前もバイオリンを弾くのか?」
「バイオリンは弾けないけどピアノは弾けるよ。」
「そうか。」
ヒビキはそれだけ言って黙り込み少しの沈黙。それを気まずい、と私が思うわけでもなく。心の奥底に眠っていた音楽への思いに少し焦がれていた。
実際は21層のシッポウシティのカフェであのおじさんのアコーディオンを聞いた時からじわじわと蘇ってきてはいたんだけどね。
そう、私は音楽が好きだ。前世の私の生活は音楽と友達と家族とゲームで成り立っていたと言えるくらいには。勉強は知らない。
それは今世に転生しても変わらず、家でピアノを弾いて自分の世界に浸るのが大好きだった。
「そのバイオリンはどこかで買ったの?」
「いや、俺が作った。」
「ええっ!?すごい!!スキルでこんなのも作れるんだ!!」
恐るべしSAOの世界。もしかしてスキルレベルがMAXになればどんなものでも作れるようになるんじゃないだろうか。
ここはさすがゲームの世界とでも言っておこう。
と、その時だ。私はあることに気付いた。
「もしかしてヒビキのそのプレイヤーネームって音が響くのあの響から来てるの?」
「…まぁ、間違ってはいないな。」
少し恥ずかしげに顔を逸らすヒビキに頬が少し緩む。こんなに近くに同じものを好きな相手がいることが嬉しかった。
なんとも締まりのない表情をしていたら隣からヒビキの声が聞こえて私は顔を上げる。
「お前も、音楽が好きなんだな。」
「うん。」
共通点を見つけた私たちの距離が少しだけ短くなったと思ったのは私だけではないと思いたい。
なんとも心地よい気分でゲートのある広場へと到着。そこで私たちがずっと探していたものが見つかった。
広場のど真ん中で我が物顔で佇んでいたのは怪獣2匹…もとい、プテラとカイリューだった。武器屋のあった通りが狭かったからこっちに移動してきたのだろうか。
もちろん周りのプレイヤーたちは興味津々で、それでもその2匹の大きさに圧倒されてか近づいてくる人はいない。
プテラとカイリューは広場に入ってきた私たちに気付いたのか嬉しそうにドカドカと駆け寄ってくる。彼らが地面を踏むたびにかすかに振動が伝わってきて、これでは本当にただの怪獣だなぁとどこか他人事のように思った。
「ごめんね~ずっと放置しちゃってて。でも勝手にどっか行ったらビックリするから駄目だよ。」
私が苦笑気味にそう言うと2匹は嬉しそうな表情から一転してしょんぼりと目尻を下げる。こっちはまるで小動物のようだ。
それでも「待っててくれてありがとう。」とフォローをすればみるみるうちに嬉しそうに尻尾を動かすので心がほっこりする。
2匹に跨ってゲートを潜り、22層に戻ってくるころには既に夕日が赤く輝き空が少しだけ虹色に染まっていた。
「家具を買いに行くのは明日にするか。」
「うん。もう日も暮れちゃうし。」
その後私たちは2人でヒビキさんの荷物を整理し、どんどん暗くなっていく空を見上げながら庭でポケモンたちと木の実を食べた。
ちなみにヒビキさんも私と同じで木の実と黒パンを食べる生活をしていたことにまたも親近感を覚えたのはここだけの話。
ヒビキの手持ちポケモンが出てきましたが紹介はまた今度ということで。