ソードアート・ポケットモンスター・オンライン   作:RYUNA

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ここからしばらくの間、視点が変わります。
主人公はちょいとお休み。




4

 

すっかりワニノコのレベル上げに夢中になっていつもより帰る時間が遅くなってしまった。

街の中心地に入る。とそこでたくさんのプレイヤーが同じ方向に流れていくのを見た。

その方向を目で追っていき、その時私は今日はボス攻略会議があることを思い出した。

フィールドの入り口付近に人が少なかったのは、普段狩りに出ている人がみんな会議の方に行ってしまったからだろう。

 

(もし良かったら参加してくれないかな?)

 

昨日誘ってくれたディアベルさんの言葉を思い出す。

私も早く次の層に行きたいのはやまやまだが、ボスモンスターと戦うのは正直怖かった。

中身はもう三十路突入な私だけど怖いものは怖いのだ。それに行ったら行ったでなんだかバカにされそうな気もした。

レベルがちょっと高めと言っても私は12歳のちいさな少女。誰も歓迎なんかしてくれないと思うし。

 

「ディアベルさんには悪いけど、今日はワニノコのレベル上げに専念しよう。」

 

きっと昼でもフィールドはがら空きだろう。

私は会議には参加せず、フィールドで引き続きワニノコとのレベル上げをすることにした。

 

 

 

 

 

〔side キリト〕

 

このデスゲームが始まってもうすぐ一ヶ月が過ぎようとしていた。

残念ながら俺たちはまだこの1層すらも突破できていない状況である。

俺はフィールドに出てモンスターを狩りまくっては宿に戻るという生活をもう何度も繰り返していた。

そして今日はついに第1層ボス攻略会議が行われる。俺の気は自然と引き締まっていた。 が。

 

「ぶいっ!」

 

「イテッ、なんだよ・・・腹でも減ったのか?」

 

「ぶぶぃ!」

 

「分かった分かった。少し早いけど朝ご飯にしよう。」

 

「ぶいぶい!」

 

突如として俺の背中に軽く一撃を入れられ思考がとぎれる。

俺がやれやれという感じで振り返るとそこには茶色の毛がフワフワした小さなモンスターがいた。

こいつの名前はイーブイ。産まれたときにそう名前が書いてあったような気がする。

産まれたというのは俺が茅場から貰ったあの謎の卵から産まれたのだ。産まれたのは5日前だ。

ベータテストの時はポケモンなんて設定もモンスターも無かったから俺は自分がすごく驚いたことを覚えている。

大体元々システムにあったモンスターテイムによる『使い魔』と何か違いがあるのかと頭をもたげたものだ。

イーブイの上に出ているカーソルはブルー。モンスターはレッドだからこれが見分けの目印になるのだろう。

アイテム欄から質素なパンを取り出しちぎってイーブイに与えた。イーブイはおいしそうにそのパンを租借している。

その様子を見て俺は自然と頬が緩むのを感じた。もう1つちいさくちぎってイーブイに与える。

今このデスゲームという状況の中で何百人、いや何千人という人たちが精神的に追いつめられ大変なことになっている。

そんな中で俺が落ち着いて攻略を進められているのはベータテスターだからということもあるだろうが、このイーブイが知らぬ間に俺を癒してくれているからだ。

それに一緒に狩りをしたときはコイツの戦闘勘の良さに関心したものだ。俺の命令もちゃんと聞くし、俺が命令できないような状況であれば自分で的確に行動してくれる。

そこで俺は1つの結論に至った。使い魔はプレイヤーのサポート的役割でお世辞にも戦闘能力は高くない。だがポケモンは戦闘能力に特化し、さらに戦闘に直に役立つサポートもできる。

ポケモンと使い魔の違いはそこだろう。あくまで俺の考えた答えだが。

自分の分のパンを租借しながらステータス画面を開く。俺のステータスは無視してイーブイのステータス画面に移動した。

 

「イーブイ、レベル6、♂、性格はゆうかん、技はたいあたり、てだすけ、あなをほる、シャドーボール。よくは分からんがてだすけって技は便利だな。」

 

てだすけは俺が一度フィールドのモンスターに囲まれてしまったときにイーブイが自分で使ってくれた技だ。

効果は味方の攻撃力が1.5倍になるんだとか。俺は上がった攻撃力で一気にモンスターを殲滅することができた。

その戦闘の後俺はイーブイを持ち上げてたかいたかーいをしてはしゃいだ。コイツがいなかったら俺は死んでいただろうしな。

 

「さて、そろそろ行くぞ。」

 

「ぶいっ!」

 

俺は腰からモンスターボールを取り出しイーブイをボールの中に戻した。

ちなみに俺はこのモンスターボールを探すのに街の中心地を1時間はさまよった。

モンスターボール店はどこだどこだと探しても見つからず、先にポーションを買っておこうと普通のNPCショップに行った。

そしたらそこの商品リストの一番端の方にモンスターボールを見つけたというわけだ。なんともいえない話である。

 

 

朝の午前10時頃。第1層ボス攻略会議は行われた。

主催したヤツはディアベルという青年だった。最初に軽い冗談などをかます辺りかなり好印象の持てるヤツだった。

途中でキバオウというプレイヤーがベータテスターについて色々と言って雰囲気が悪くなりかけたが、でかいおっさんがなんとかしてくれた。

ベータテスターである俺は少々痛い思いをしたが、今はそんなことに構っている余裕などはない。

俺はチラリと隣にいる少女を見た。フード付きマントを羽織っており表情は伺えない。

この子は先程俺とパーティを組んだ子だ。お互いに組む相手がおらず最終的にあぶれ者同士で組んだというわけだ。

『アスナ』という名前のこの少女。一体どれほどの経験を積んできてるのだろうか。

 

「攻略会議は以上だ。異論はないかな?」

 

みんながコクリと頷く。

 

「それじゃ、出発は明日の10時!解散!」

 

ディアベルのかけ声と共に攻略会議はお開きとなった。

 

 

時は過ぎて夜。街の広場の方では明日ボス攻略に挑むメンバー達で賑わっていた。

俺はその輪に交ざることなく、路地裏の人気のない所に入っていく。ふと見知った後ろ姿を見つけた。

俺とパーティを組んだ少女だった。夕食中のようであの微妙なパンを懸命にかじっていた。このパン結構堅いんだよな。

俺は緊張を隠して少女に話しかけた。

 

「よう。」

 

「・・・!」

 

「座って良いか?」

 

「・・・。」

 

無言を推定と取り俺は人1人分ほどの間を開けて少女の隣に腰をかけた。すぐに少女がさらにもう1人分ほど離れる。

地味に傷ついた俺が少女に目を向けると彼女の足元に何かがいることに気づいた。それを見て俺の口から思わず声が漏れた。

 

「・・・・・・イーブイ?」

 

「・・・なんでこの子の名前知ってるの?」

 

ハッと少女が振り向く。相変わらず表情は分からないが声色からして驚いているようだ。

俺は無言で腰からモンスターボールを取り出し、ポイッと投げた。そこから出てきたのは少女が連れているのと全く同じポケモン。

それを見て更に少女が息を呑んだのが分かった。

 

「それ、茅場から貰った卵から?」

 

「えぇ、3日前に孵ったばかりよ。」

 

「俺もつい5日前だよ。」

 

そんな話をしながら俺は足元の2匹のイーブイに目を向けた。

俺の方のイーブイは興味津々に、少女の方のイーブイは少し警戒気味にお互いを見つめていた。

どちらも動かない状況の中、俺のイーブイが一歩足を踏み出した-と同時に少女の方のイーブイはびくっと体を震わせる。

そしてそのまま少女の膝の上に移動し、顔を隠すように丸まってしまった。俺のイーブイの耳が少し力無く垂れた。

 

「すまない。驚かせてしまって。」

 

「ん、別に大丈夫。」

 

そう言いながらイーブイを一撫でした後、少女はまたパンをかじりだした。

俺もアイテム欄から同じパンを2つ取り出し、1つをイーブイが食べやすいようにちぎった後、俺もパンを食べ始めた。

 

「これ結構うまいよな。」

 

「・・・本気でそう思ってる?」

 

「もちろん。この街に来てから一日に1回は食べてるよ。まぁ少し工夫はするけど。」

 

「・・・工夫?」

 

その工夫とやらに興味を持ったのか不思議そうに首をかしげてくる。俺はアイテム欄からその『工夫』とやらを取り出し少女と俺の間に置いた。

それは小さなビンのようなもの。俺が前の街のクエストで手に入れた報酬だった。

 

「それにつけてみろよ。」

 

そう言って俺は自分のパンを少し持ち上げて少女を促した。おずおずと少女が綺麗な人差し指でビンをコツッとつつく。

すると彼女の指に小さな光がまとわりついた。その指がパンの上を滑るとそこにトロッとしたものがついた。

 

「くりーむ・・・?」

 

ボソリと少女が呟く。おれも自分のパンにクリームを塗りたくる。たった2回使っただけでビンは消滅してしまった。

今だに少女がパンに手をつけないので先に俺が大口でパンにかじりついた。それを見て少女はやっと小さくパンを一口かじる。

 

・・・・・・・・・

 

少しの沈黙の後、少女は一気にパンを食べ尽くした。ふぅと息をつく様子を見て俺はやっとこの子が人間らしさを見せてくれたことに少しホッした気持ちになった。

どうやらこのクリームは気に入っていただけたようだ。

 

「1つ前の街で受けれるクエストの報酬。やるならコツを教えるよ。」

 

俺がそう言うと少女は無言で首を振った。膝の上のイーブイを撫でながら小さく呟く。

 

「おいしいものを食べるために、私はこの街に来たんじゃない。」

 

「じゃあ、何のため?」

 

「私が、私でいるため。最初の街の宿屋に閉じこもって腐っていくくらいなら、最後の瞬間まで自分のままでいたい。たとえ怪物に負けて死んでも、このゲーム、この世界にだけは負けたくない・・・。」

 

噛みしめるように呟く少女の様子が気になったのか、膝の上のイーブイが丸めていた体を戻し少女にすり寄る。

また俺のイーブイががっつきそうになるのを押さえて俺は彼女たちの様子を静かに眺めていた。

星が瞬く夜空を目を細めて見上げ、俺は呟いた。

 

「パーティメンバーには死なれたくないな。せめて明日は止めてくれ。」

 

その言葉に覇気はなく虚しく夜の闇に吸い込まれていった。

 

 





アニメでは第2話のところですね。
次回の更新は少し遅くなります。


キリトのイーブイ

性別:♂
性格:ゆうかん
茅場から貰った卵から孵ったポケモン。食い意地が張っている。
アスナのイーブイがちょっと気になる。


アスナのイーブイ

性別:♀
性格:ひかえめ
茅場から貰った卵から孵ったポケモン。アスナが大好き。
キリトのイーブイが少し怖い。

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