ソードアート・ポケットモンスター・オンライン 作:RYUNA
やっとテストが終わりましたがまだ学校行事のイベントが残ってる・・・
球技大会とか・・・もう・・・足手まといになるに決まってる・・・
回廊のあちこちで武器がぶつかり火花を散らす音が響く。
戦闘が始まって30分近くが経とうとしていた。それでも俺たちは今だに誰もHPがゼロになることなく戦いを続けている。
それはきっとディアベルの的確な指示と、ポケモン達のおかげだと俺は思った。
「A隊、C隊、一度下がれ!ミズゴロウ、れいとうビーム!」
ディアベルが指示をすると素早くA隊とC隊は後ろに下がり、一瞬の間も開けずミズゴロウの技、れいとうビームがセンチネルを2体捕らえた。
体の一部を凍らされて動きが止まった所をすかさずA隊とC隊はスイッチをしてルインコボルトセンチネルを攻撃した。
ミズゴロウのれいとうビームはこの戦いでかなり役に立っていた。相手の動きを一瞬でも止めれるのはとてもありがたいことだ。
その後もディアベルは的確に指示を繰り出していく。今のところ事の運びは順調だった。
「D、E、F隊、センチネルを近づけるな!!」
「了解!」
俺の所にも指示が渡り、俺は目の前のセンチネルに一撃を加える。
体勢を崩したセンチネルを一瞥し、俺は少女にすかさず声を掛けた。
「スイッチ!!」
「3匹目!!」
少女は疾風のごとく俺の傍を駆け抜けセンチネルに何発もの突きを打ち込んでいく。
パーティを初めて組んだらしく、スイッチも知らないとなると初心者かと思っていたがかなりの手練れだった。
口頭で説明しただけのスイッチも上手くできているし、何より剣先が早すぎて見えないのだ。
「イーブイ、アイアンテール!」
攻撃を全て入れ終わると彼女のイーブイは鋼のように光沢を放つ尻尾をセンチネルの頭に上から叩きつけた。入れ替わりのタイミングはバッチリだった。
その攻撃を受けてセンチネルは光を放ちながら散っていく。
「グッジョブ・・・。」
俺は自然にそう呟いた。
と、
「ぶいぶい!」
俺のイーブイが突然気迫のある声で泣き出した。ハッとなって辺りを見回すと俺のすぐ傍でセンチネルが出現していた。
俺はソードスキルを発動させながら命令を下す。
「シャドーボール!」
ジャンプした俺のイーブイがセンチネルの頭めがけてシャドーボールを放つ。
途端に爆発の影響で黒い煙がわき起こり、煙が晴れる前にソードスキルをセンチネルにぶち込んだ。
チラリとボスの方を見るとHPゲージがついにレッドゾーンに入っていた。ボスが持っていた武器を思いっきり放り投げる。
ここまでは情報通り。
「下がれ!俺が出る!」
プレイヤー達の間をディアベルが駆け抜けた。だが俺はそこでふと疑問を持った。
大体こういう時はパーティで取り囲んで対応するのがセオリーだ。確かにHPゲージは既にレッドゾーンに入ってるから1人でも倒せないことはないが。
何故?という眼差しを向けているとディアベルと目が合った。俺がその視線の意味を考えているとボスが新たな武器を取り出した。
(・・・!タルワールじゃなくて野太刀!?ベータテストと違う!?)
が、それは俺たちが得ていた情報通りではなかった。だがディアベルの動きは止まらずそのままソードスキルを打ち込もうとしていた。
俺はベータテストの時にタルワールと野太刀を使うモンスターと戦ったことがある。もちろん攻撃の仕方も動きも双方全く違うものだ。
俺は目の前のセンチネルをありったけの力で突き飛ばし、すぐに振り向いてディアベルに叫んだ。
「ダメだ!!全力で後ろに飛べ!!」
だが俺の必死の叫びも虚しく、ディアベルは正面からボスに突っ込んでいった。
ディアベルのソードスキルが直撃する寸前、ボスは大きく飛び上がり、回廊の支柱を足場に自由自在に飛び回り始めた。
そこでディアベルもボスの行動パターンが違うことに気づいたのか一度動きを止めたが、もう遅かった。
「ぐうぁあああああああああああああぁぁぁ!!!」
背後を取られたディアベルはそのままボスの野太刀に両断され、勢いよく後方に吹っ飛んだ。
それだけに留まらず、飛んでいる間もボスの攻撃が加えられさらに追い打ちをかけられる。
俺はすぐにポーションを取り出しながらディアベルの元に駆けつけた。既に彼の元にはミズゴロウも駆け寄っている。
表示されている彼のHPゲージが勢いよく減っていく。
「なぜ1人で・・・。」
全てのHPが無くなる前に回復をさせようとポーションを差し出そうとしたが、その手は目の前の彼によって遮られた。
何もかも諦めたような視線とぶつかる。ゆっくりとディアベルは言葉を放った。
「お前も・・・ベータテスターだったら・・・分かるだろ・・・。」
その言葉を聞き俺は驚いた。俺がベータテスターだと気づいていたことに、そして彼がベータテスターだったということに。
そして全てを理解した。なぜ彼が最後に1人で突っ込んでいったのか。
「ラストアタックボーナスによる、レアアイテム狙い・・・。」
俺がそう呟くとディアベルは自嘲気味に薄く笑った。
ボスに最後の一撃を入れるとレアアイテムがゲットできる。それがラストアタックボーナス。ベータテストの時に俺は必死でそれを狙っていたものだ。
もちろんそれは欲しかったから。ただそれだけ。ゲーマーに取ってレアアイテムというものはお宝のようなものだから。
でもディアベルはベータテスト時の俺みたいに醜い個人的な理由でそれを狙ったわけでないだろう。これまでの彼を見ていれば自然に分かることだった。
ディアベルがそっと視線をすぐ傍で心配そうに彼を見ているミズゴロウに移る。
「ごめんな・・・。お前のがんばりも無駄になってしまった・・・。でも、いままでありがとう。」
ディアベルの言葉に疑問を持った。確かにディアベルのHPゲージはもう無くなってしまっているが、ミズゴロウはまだかなり余裕がある。
その疑問はすぐに解決した。ディアベルの体が薄く光を放つと同時にミズゴロウの体も光り出したのだ。ミズゴロウのHPゲージが無くなっていた。
「頼む・・・ボスを、ボスを倒してくれ・・・。みんなのために。」
「ごよごよ。」
そしてディアベルとミズゴロウは俺の腕からポリゴンの煌めきとなり消滅していった。他のプレイヤー達もそれを見て声をだせないでいた。自分の腕がどうしようもなく震える。
俺はこのデスゲームが始まったとき、自分が生き残ることしか考えていなかった。始まりの街でアイツを置いていったことを思い出した。
だがディアベルは違った。ベータ上がりなのに彼はプレイヤー達を見捨てず、みんなを率いて見事に戦った。それは俺ができなかったこと。
「ぶい!」
「っ・・・!イーブイ・・・!」
いつの間にか俺の傍まで来ていたイーブイが叱咤するように鳴いた。「立ち上がれ、戦え。」と言われているような気がした。
俺は唇を噛みしめて立ち上がり、ボスの方へ振り向いた。指揮を無くしたプレイヤー達はじりじりと後ろに後退している。自分の手にある剣を堅く握りしめた。
ふと俺の隣に人影が映った。
「・・・私も。」
「ぶい!」
それはあの少女だった。彼女のイーブイも隣にいる。その声に俺はとても心強い気持ちになった。
「頼む・・・。」
そう言った後、俺たちは同時にボスに向かって駆けだした。前を駆けるイーブイに倣って俺たちも全速力で回廊を駆けた。
「手順はセンチネルと同じだ!」
「分かった!」
遠くにいたボスがどんどん大きくなっていく。走る速度を緩めることなく俺たちはイーブイに命令を下した。
「シャドーボール!」
「スピードスター!」
俺のイーブイから黒い砲が、彼女のイーブイから無数の星の煌めきが放たれ、合体したそれはボスが振り下ろした野太刀と衝突しかき消されたがボスの動きが大きく揺らぐ。
俺は間髪入れずにソードスキルを発動させボスの野太刀に向かって放ち振り上げた。ボスの体が大きく後ろによろめく。
「スイッチ!」
そしてすぐに俺のかけ声を合図に彼女が相手の懐に飛び込んだ。彼女の握っている細剣がスキル発動のエフェクトで光り輝く。
俺がさっきの反動でよろけながらその様子を見ていると脇にいたイーブイ達が焦ったように鳴き出した。
その視線を追うとボスは後方によろめきながらも体勢を立て直し野太刀を振り下ろそうとしていたのだ。
「アスナッ!!」
反射的に大声で、初めて彼女の名前を呼んだ。瞬間、野太刀が振り下ろされる。
だが野太刀はギリギリ彼女に直撃することはなかった。変わりに彼女が羽織っていたフード付きのマントがその攻撃によって消滅した。
この時フードの中に隠れていた『彼女』を初めて見た。
「せやああああっ!!!」
凛とした声と共に彼女、アスナはそのまま後退することなくソードスキルをボスに打ち込んだ。
長い栗色の髪が先程消滅したマントのエフェクトと合わさってキラキラと輝いている。一言で言えばそれはとんでもなく美しかった。
が、今はそんなことを思っているひまではない。俺はすぐに立ち上がり先程と同じようにボスの攻撃を振り上げさせる。すぐにアスナが2撃目を入れる。
だがボスの動きは止まらない。攻撃後の硬直で動けないアスナにまたも野太刀を振りかぶろうとする。
「イーブイッ!!!」
俺がそう叫ぶと2匹のイーブイはシャドーボールとスピードスターを同時に繰り出した。
ボスは正面からそれを受けてしまい、動きが鈍る。俺はすかさずアスナの前に出てありったけの力でボスにソードスキルを打ち込んだ。
が、
「グルオオオオオアアアアアアアアアアアア!!!」
「・・・ッ!?まっ・・・!」
俺の繰り出したソードスキルはすんでの所でかわされ、ボスの振り上げた野太刀が俺に直撃した。
強烈なノックバックが発生し俺はすぐ後ろにいたアスナとイーブイ達を巻き込んで後方に思いっきりぶっ飛ばされた。
だが、相手は待ってくれない。俺がその衝撃に動けないでいるとすぐ頭上に影が差した。ボスがスキルを発動させ俺たちに振り下ろそうとしている。
もう終わりかと思ったそのとき、野太い声とともにそれをはじき飛ばした者が居た。
攻略会議の時に場の空気を落ち着けさせたあのおっさんだった。他のプレイヤーも彼にならうように後から走ってきていた。
「回復するまで俺たちが支えるぜ!!」
「あんた・・・。」
そう言って彼はボスの元へ走り出していった。
俺はまだ衝撃で痺れが残る体をなんとか起きあがらせる。と、目の前にポーションがずいっと突きつけられた。アスナだった。
小さく「サンキュ。」と言い、それを一気に煽った。俺のHPが満タン寸前まで回復する。
突如多くの悲鳴が聞こえた。前方に目をやると大きく飛び上がったボスがそのままさっきのプレイヤー達めがけて野太刀を振り下ろそうとしている。
俺はやっと痺れが抜けてきた体を動かし、ソードスキルを発動させながら大きく飛び上がった。
「とどけええええええええぇぇぇ!!!」
切なる願いを込めて放ったソードスキルは空中で見事ボスに直撃し、だいぶ離れた位置に突き落とすことができた。
俺もすぐにプレイヤー達のそばに着地する。
「イーブイ、来いっ!」
俺がそう言うとイーブイが俺の肩によじ登ってきた。
目線を合わせて大きく頷く。
「アスナッ!最後の攻撃一緒に頼む!!」
「了解!」
そう返事を返すと彼女のイーブイも彼女の肩によじのぼる。
アスナもすぐに俺の後を追って駆けだした。
今だに両手を床に着いて動けないボスに一直線に俺たちは走っていった。
ボスが近くなると俺たちは剣を持ってない方の腕を前に突き出す。同時にイーブイ達がそこから走ってジャンプしボスの顔面にとりついた。
視界を塞がれて動けないボスに俺とアスナが交互に攻撃を容赦なく入れていく。
「はああああああああああああああ!!!!」
そして最後に俺は獣のように咆哮しながらソードスキルでボスの体をほとんど真っ二つに切り裂いた。
空中でボスの体が光り出す。まもなくボスはポリゴンの欠片となって完全に消滅した。
ディアベルさん、本当にお疲れ様でした。
ここでポケモンの設定をちょいと説明。
本編で説明する機会がなさそう(というか私が物語をその方向に持って行けなさそう)なので、ここで軽く説明します。
是非目を通しておいていただけると嬉しいです。
・ポケモンは体力ゲージが0になるだけでは消滅しません。
ゲームでのポケモンと同じ瀕死の状態になります。
瀕死の状態はアイテム屋なんかで売っているポケモン専用の回復アイテムを使うことで
回復させることができます。
お値段はそこそこします。余裕でポンポン買えるものではないです。
ただし、自分の主人が体力0つまり死んでしまったときはポケモンも主人と同じく
消滅してしまいます。ポケモンの体力がまだ満タンでもです。