ソードアート・ポケットモンスター・オンライン 作:RYUNA
テストの結果にげんなり・・・
今猛烈にペンタブが欲しいです。
「や・・・やったあああああああああああ!!!!」
後ろからプレイヤー達の歓喜の声が聞こえてきた。戦闘が終わった回廊は役目を終えたかのようにスッと暗くなる。
俺は必死に呼吸を整えた後、目の前のウィンドウに視線を向けた。
【You got the last attacking bonus!!!】
これが先程言ったラストアタックボーナス。俺のストレージに新しく装備が1つ追加された。
「ぶいぶい。」
ふと足元を見ると俺のイーブイが尻尾を振りながらこちらを見ていた。
俺はその小さくてフワフワの頭を優しく撫でた。本当に嬉しそうに俺の手にすり寄ってくる。頬が緩んだ。
「お疲れ様。」
「見事な剣技だった。この勝利はアンタのものだ。」
声のした方向に顔を向けるとアスナとおっさんが俺に労いの言葉を向けてくれた。
俺はすぐに「そんなことない。」と言おうとしたが、更に後ろにいたプレイヤー達の声でそれはかき消された。
たくさんの拍手と言葉に俺はかなりすがすがしい気持ちになった。頑張って良かったと思った。
が、すぐにそれもかき消されてしまった。
「なんでや!!」
言葉を発したのはキバオウだった。一瞬で辺りが静かになる。
彼は床にあぐらを掻いて座っており、深く顔をうつむけていた。
「なんで、なんでディアベルはんを見殺しにしたんや・・・!」
「見殺し・・・?」
押し殺したようなキバオウの言葉に俺がさも何故?という風に答えると、キバオウは勢いよく顔を上げ俺を睨み付けた。
その目には涙が光っていた。
「そうやろがぁ!!自分はボスの使う技知っとったやないか!!最初からあの情報を伝えとったら、ディアベルはんは死なずにすんだんや!!」
確かに俺は野太刀のことを知っていた。だが、ここのボスが野太刀を使うことは知らなかった。
ベータテスタの俺が知らないとなると、情報を提供していた他のベータテスタ達も同じはず。
だから戦闘前にディアベルに野太刀の情報を伝えるというのは未来予知でもしないかぎりできないのだ。だって知らないのだから。
だがすぐにあちらこちらからキバオウの意見に納得するプレイヤーが出てきた。
「きっとアイツ、元ベータテスターだ!!だからボスの攻撃パターンも知ってたんだ!知ってて隠してたんだ!!!!」
先程まで俺に拍手を送っていたプレイヤーが恐ろしい形相で叫びだした。
彼の言葉にキバオウも頷く。その通りだとでも言うように。
「他にもいるんだろ!?ベータテスター共、でで来いよ!!」
急に辺りがざわめきだした。かなり深刻な状況になっているのが手に取るようにわかる。
みんながみんなを疑っている状況なのだ。誰がベータテスターだ、と。獣のように標的を探し回っている。
このままではベータテスターだからという理由で1000人もの人がきっと他のプレイヤーからひどい扱いをされてしまう可能性がある。
情報を提供してくれたベータテスターでさえ。みんなの為に健闘してくれたディアベルでさえも、周りが知らないとはいえそういう扱いをされたことになるのだ。
(みんなの・・・ために・・・。)
ディアベルの最後の言葉を思い出した。最後までみんなのために命を張った彼を。
ここは俺がなんとかするしかない。1つだけ、1つだけこの場を治める手段があった。今の俺にはそれ以外思いつかない。
「ぶい。」
なかなか一歩を踏み出せないでいるとイーブイが俺に一歩歩み寄った。強い瞳で俺を見つめてくる。
どうやら俺の考えていることが既に分かっているようだった。その瞳に俺は勇気を貰った。そうだ、俺がやらなきゃいけないんだ。
俺は自分の心を強靱な殻の中に押し込んだ。
「っふはっはっはっは・・・あっはっはっはははは・・・。」
自分の口から自分のものとは思えない笑い声が漏れた。回廊中に大きく響き渡る残酷で愉快な声。
思っていた以上にすんなりと声が出た。もしかしたら、本当は俺は元々心が歪んでいたのかもしれないな。
背中を向けていても周りが俺に奇異の眼差しを向けていることが分かった。
いまここで真の悪役を演じること。それが俺の役割だ。
「元ベータテスターだって?俺をあんな素人連中と一緒にしないでもらいたい。なぁ、イーブイ。」
俺が手を差し出すとイーブイはそれを伝って肩までよじ登ってきた。そしてプレイヤー達のいる方向に振り返る。
俺のその神経を逆なでするような言葉にキバオウが「なんやと!?」と噛みついてきた。
そんな彼を俺とイーブイはフッとあざ笑う。
「SAOのベータテストに当選した1000人のうちほとんどは、レベリングのやり方も知らない初心者だったよ。今のアンタらの方がまだマシさ。俺はあんな奴らとは違う・・・。」
プレイヤー達の間を通りながら俺は言葉を紡ぎ続ける。自分の声色をなるべく意識しながら。
最後にアスナとおっさんの間を通り過ぎ、俺は狼狽えているキバオウの前で足を止める。
「俺はベータテスト中に他の誰も到達できなかった層まで登った。ボスの刀スキルを知ってたのは、ずっと上の層で刀を使うモンスターと散々戦ったからだ。他にも色々知っているぜ・・・。情報屋なんか問題にならないくらいなぁ!」
その時の俺は相当なドヤ顔をしていただろう。たぶん肩の上のイーブイもそうだ。
実際俺の言っていることは別に嘘ではなかった。
目の前のキバオウは呆然として呟いた。
「な・・・なんやそれ・・・そんなんベータテスターどころやない。もうチートやチーターやろそんなん!!」
「そうだ!そうだ!」
「ベータのチーター・・・だからビーターだ!!」
あちこちから俺を罵倒する声が上がる。だが、もうここまで来たら引き下がることはできない。
疼く心を抑えつつ俺はその罵倒を甘んじて受け続けた。
「ビーター・・・言い呼び名だな、それ。そうだ、俺はビーターだ。これからは元テスターごときと一緒にしないでくれ。」
俺は片手でウィンドウを操作しながらそう言った。その言葉に周りは更に唖然とした表情になる。
俺はボスからゲットした装備を慣れた手つきで装備する。それは悪役にふさわしい、真っ黒のコートだった。
最後に小さくフッと笑い、俺はこの場を後にすることにした。これで俺の役目は終わったんだ。
第2層に続く扉の前の階段を上っていく。すると高い声に呼び止められた。アスナだった。
俺は足を止める、が、振り向くことはしなかった。
「あなた、戦闘中に私の名前呼んだでしょ。」
「ごめん。勝手に呼び捨てにして。それとも読み方違った?」
「どこで知ったのよ・・・。」
彼女の意外な質問に俺は一瞬頭が真っ白になった。そして彼女が初心者だったということを改めて思い出した。
「この辺に自分の以外に追加でHPゲージが見えるだろ?その下に何か書いてないか。」
俺は指でツンツンと上を指して場所を示した。
しばらくの沈黙の後、アスナの微かな声がポツリポツリと聞こえだした。
「き、り、と・・・キリト?これがあなたの名前?」
「あぁ。」
「・・・なんだ、こんなとこにずっと書いてあったのね。」
俺がそう相づちを打つとアスナが初めてクスリと笑った。
戦闘中はあまり意識していなかったがこうして横目で見てもだいぶ綺麗な少女だ。
ふと、俺のイーブイがずっとアスナのイーブイを見ていることに気がついた。軽く頭を小突いて視線を外させる。
ちょっと恨めしそうな鳴き声が小さく耳に届いた。
「君は強くなれる。だからもしいつか誰か信頼できる人にギルドに誘われたら断るなよ。・・・ソロプレイには絶対的な限界があるから。」
「なら・・・あなたは・・・?」
アスナがそう聞いてきたが俺はそれに答えることしなかった。できなかった。
少しでも口に出してしまえばせっかく作った殻が一瞬で砕け散ってしまいそうだ。それほどに今の俺はだいぶ不安定だった。
ウィンドウからパーティ解散の表示をタッチする。視界の端に見えていたアスナのHPゲージが一瞬で消えて見えなくなった。
そのまま俺はアスナに振り返ることなく、第2層へと続く扉を開け放ち、無情に足を進めた。
キリト視点はこれにて終了。
次回から休暇中だった主人公が舞い戻ってきます。
どうでもいいんですけど、エギルさんのセリフの「コングレイチュレイション!」のスペルが分からなくて必死に探してたんですけど結局分からなくてそこだけカットしました。
すごく、すごく入れたかったです・・・